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【ゆゆゆ】鷲尾須美「私が未来を知るとき」

1OvIXvCt3nM:2018/10/08(月)18:25:25 ID:e1s()
ゆゆゆい時空で東郷さんが須美ちゃんに元の時代へ帰った後の運命を告げるという話です。
キャラ崩壊などがある可能性があるので閲覧注意。
ちなみに初投稿です。
2OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:27:00 ID:e1s()
〈Side 東郷〉
 「須美ちゃんに、元の世界に帰った後の運命について話そうと思うの」
 ある日私の部屋へそのっちを招いて、いつかしなくてはと先延ばしにしていた私たちのすべきことを実行に移そうと相談すると、目を白黒させながらこう返してきた。
 「へ?わ…わっしー、それ本気で言ってる?」
 「ええ、本気よ。いつ園子ちゃんにも言うかどうかはそのっちに任せるけど、須美ちゃんに限って言えば早目に教えておいて立ち直らせる時間が必要になると思うの」
 「あー…」
 大人びた雰囲気を気取ってはいるけど案外私は精神的に弱いところがある。おそらく元の世界でこれからたどる運命を告げられたとしたら立ち直るまでに時間がかかる。
この世界の記憶を持ち帰れるかどうかはわからないが、下手に帰るぎりぎりで知るよりもまだ少し時間に余裕があるであろう今知っておいた方が心が折れてしまった後のケアをすることができるだろうという判断だった。
 「過去とはいえ、わっしー自身のことだから私が口を出そうとは思わないけど…ミノさんと園子ちゃんには絶対に言わないように口止めしてよ?」
 「分かってる」
 「それと、もしかしたらリトルわっしーがショックで暴れちゃうかもしれないから話すときは私にも声をかけてね」
 「了解。ただできれば二人きりにしてほしいのだけれど…」
 「なら私は自習室のドアの前で見張りをしておくよ。そして何かあったら止めに入るから。」
 「それならお願いできるかしら」
 「おーけー」
 私の話だけではもしかしたら信憑性に欠けると思われるかもしれない。とくに瀬戸大橋跡地の合戦で私が気を失った後の話はそのっちにしてもらう必要があるだろう。そういったことを考えればそのっちの協力を得られたのは大きい。
 「いつ話すつもりなの?」
 「今度の〇曜日にしようかと思うの。その日なら校内にみんなが散らばってるから園子ちゃんと銀に気づかれずに決行できるでしょう?」
 その後も少し打ち合わせをしてその日は解散となった。
もしかしたら言わないでおいた方がいいのかもしれない。それでも突然ともだちを喪うよりはやはり覚悟を決めさせてあげたい。それにもしかしたら事前に知っておくことで打開策をひらめくかもしれない。そんな一縷の望みに賭けてみたいと思ってしまうのだ。
3OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:29:50 ID:e1s()
〈Side 須美〉
 「内緒で教えたいことがあるからついてきてくれるかしら?」
 
 ある日の勇者部室で二人きりで処理していたPC作業がひと段落すると、未来の私である東郷さんからそう告げられた。
 
 「はい、でも内緒っていったいどんなことですか?」
 
 「いいからついてきてちょうだい。それとこれから教えることは他言無用よ、特に園子ちゃんと銀には」
 
 「わかりました」
 
 硬い表情で私に話す東郷さんの様子から、おそらくあまり良い話ではないということは予想がついた。
 
 「少し待って」
 
 そう言ってスマホを取り出すと、東郷さんは電話をかけ始めた。
 
 「もしもしそのっち?あの話をこれからするから図書館の自習室にきてくれる?」
4OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:37:09 ID:e1s()
 戦闘中でもあまり見ないほどに張り詰めた雰囲気を放つ東郷さんと、いつになく真面目な顔で合流してきた園子さんに連れられて図書館の自習室に着く。
しかしなぜか園子さんは自習室の前で立ち止まった。
 
 「この部屋は防音だからまず大丈夫だと思うけど、一応私が外で見張ってるよ~。
  ただ、いざという時のために鍵はかけないでね」
 
 「わかったわ。もしもの時はよろしくね、そのっち」
 
 どういうことだろう?もしもの時?そして防音の部屋で見張りまで立てなくてはできない話っていったいなに?
 そんな私の疑問をよそに、部屋の奥側の席に私を座らせた東郷さんは少し迷うような表情をした後、私をまっすぐに見つめて口を開いた。
 
 「須美ちゃん。あなたたちは神世紀298年7月10日の遠足前にこの世界に召喚された。
  それで間違いないわね?」
 
 「ええ、その通りです。でもそれがなにか?」
 
 「単刀直入に言うわ。その遠足の帰りにバーテックスの襲来があって銀は戦死することになる」
 
 「えっ…?」
 
 時間が止まった。確かに2年後の勇者部に銀はいなかった。
 東郷さんと園子さんが変に銀に甘いことからうすうすは気づいていたが、まさか本当に…?

 「驚かないのね」

 「とりあえず最後まで聞かせてください。その…私たちに待つ運命を…」

 正直に言えば今からでも叫びだしたいし、冗談ではないかと言いたい。でも東郷さんの表情から察するにまだ続きがあるのだろう。東郷の家に戻っている理由もそこに。
5OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:40:14 ID:e1s()
 「分かったわ。でももう聞きたくないと思ったらいつでも言ってちょうだいね」

 「いいから続けてください!」

 「銀がどんな戦いを繰り広げて落命したのかは私たちも知らない。私とそのっちは射手座と蟹座、蠍座の攻撃が直撃して気を失ってしまったの。
  そして目を覚ました私たちが見たのは、3体を撃退することに成功したあと立往生している銀の遺体だった」

 「それって…」

 つまり銀が文字どおり命が尽きるまで戦っている間、自分はのんきに気絶していたということ…?

 「冗談…じゃないですよね…?」

 「本当よ。そしてまだ話には続きがあるの。その…銀が亡くなった後が」

 まだ続くのか。今聞いた部分だけでも未来の自分のふがいなさにはらわたが煮えくり返りそうなのに。

 「ごめんなさい…少し何を言っていいか整理させてちょうだい」

 私の心の乱れを察してか東郷さんはそう言って言葉を切った。

 「分かりました。すこし…外の空気を吸ってきます」

 そう言って私は自習室を出た。今東郷さんと無言で向き合っているよりは少し外で頭を整理したかった。
6OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:44:56 ID:e1s()
〈Side 東郷〉
 決行の日を決めてそのっちと打ち合わせまでして、それでも須美ちゃんに話を切り出すまで迷いがあった。
 知らないでいた方がもしかしたらよいのかもしれない。
 でも、何も知らせてくれなかった大赦に反感をもって反旗を翻した経験がある私が「何も知らない方がいい」という理由で口をつぐむわけにはいかない。
 そう腹をくくって須美ちゃんに話を切り出した。
 
 「内緒で教えたいことがあるからついてきてくれるかしら?」
 
 そのあとは驚くほど機械的に物事が進んでいった。
 事前の約束通りにそのっちを呼び出して、「絶対に二人には伝えてならない」と言われ、どこか事態が呑み込めていないような顔をしている須美ちゃんを図書館の自習室へ連れていく。
 席について、改めて覚悟を決めると私は口を開いた。
7OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:47:10 ID:e1s()
 一気に銀の戦死までを語り終えて一度話を切ると、すこし外の空気を吸ってくるとだけ言って須美ちゃんは部屋を出て行った。無理もないだろう。自分のふがいなさが原因で親友を死なせてしまったとなれば心穏やかでいられるはずもない。
 
 「わっしー…大丈夫?」
 
 心配そうに外で見張りをしていてくれたそのっちがきいてくる。
 
 「ええ…まだ銀の死を告げただけだから…それに私の犯した罪はまだある。これくらいで心折れていられないわよ」
 
 「罪って…どれも仕方がないことだよ…」
 
 「それはそうかもしれないけど…ただ、須美ちゃんはきっと私の行いを許さないでしょうね…」
 
 おそらく語り終えたとき須美ちゃんは私に対して怒り狂うだろう。
 ともだちを犠牲に一人だけ日常へ帰った私の行いを許すはずがない。
 それでも甘んじて過去の自分からの裁きを受け入れよう。
8OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:49:23 ID:e1s()
 「ねえ…わっしー、無理だけはしないでね」
 
 「分かっているわ。でももうここまで知らせたら最後まで伝えないと須美ちゃんは止まらない。
  もう賽は投げられてしまったのよ」
 
 
 「わっしーがそう言うなら止めないけど…」
 
 「多分そろそろ須美ちゃんが戻ってくるわ。瀬戸大橋跡地の合戦の話をお願いするかもしれないからそのっちも覚悟を決めて頂戴」
 
 「…分かった。私も覚悟しておくよ」
 
 話し終えて無言の静寂に耐えがたくなってきたあたりで須美ちゃんが戻ってきた。

 「すみません今戻りました」
 
 「いいのよ。じゃあそのっち、またよろしくね」
 
 「はーい」
 
 そう言ってそのっちはまた外へと出て行った。入れ違いに須美ちゃんが元の席に着く。
 
 「それではおねがいできますか?銀の死後の話を」
 
 いくらか落ち着いた声で須美ちゃんが話の続きを求めてきた。
 
 「ええ、じゃあ続けるわね」
 
 そう返して話を続ける。これから目の前の私が歩むことになる生き地獄の話を
9OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:51:20 ID:e1s()
〈Side 須美〉
 一度外に出て肺いっぱいに空気を吸うと、いくらか頭が冷えてきた。
 もともと私たちの戦いは傷だらけが当たり前だったのだから、いつだれが落命してもおかしくはない。
 それが近い将来の銀であることに納得がいくわけではないけれど、とりあえず泣くのも怒るのも東郷さんの話をすべて聞き終えてからにする。
 そう自分に言い聞かせて自習室に戻ろうとした。するとそこに聞きなれた声が聞こえてきた。

 「いやぁ疲れたな~あたしらだけだと落ち葉が多くて大変だったな」

 「お掃除上手のわっしーがいればもっと楽に片づけられたかもね~」

 廊下を銀とそのっちが歩いてくる。そういえばあの二人は校内の落ち葉拾いに出かけていた。
 任された部分が終わって戻ってきたのだろう。私に気づいた二人は少し疲れが見える顔で話しかけてきた。
10OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:55:22 ID:e1s()
 「あ!わっしーだ~どうしたの?すごく怖い顔してるよ?」

 「須美は東郷さんとデータ整理してたんだっけ?」
 
 銀の顔がまともに見れない。わたしたちがこの世界から帰ると、あなたはすぐにこの世を去るなんて言えるわけがない。
 
 「ごめんなさい。東郷さんに呼ばれてるから行かなくちゃ」
 
 「ん?なんか秘密の話?あ!エベレストの育て方か~?」
 
 「ミノさんセクハラだよ~?」
 
 「もう!」
 
 すこしだけ銀の軽口に怒ってみせたが、やっぱりどこか心にとげが刺さったようになる。
 
 「まあ冗談はこれくらいにして、東郷さんを待たせてるなら早く行ったら?」

 「東郷先輩はわっしーと同じで遅刻すると怖そうだしね~さすが未来のわっしー」

 「ええ…じゃあまたあとで」

 そう言って二人と別れて自習室へ戻る。東郷さんと園子さんはまるでお通夜のような顔をしていた。
 私が耐えきれるか以前に、話しているこの二人こそ途中で心が折れてしまうのではないか。
 そう感じながら、園子さんと入れ違いに自習室へ入って席に着く。

 「それではおねがいできますか?銀の死後の話を」

 これから語られるであろう過酷な話に改めて覚悟を決めて東郷さんに話の続きを促す。

 「ええ、じゃあ続けるわね」

 そう言って東郷さんは話を再開した。
11OvIXvCt3nM :2018/10/08(月)18:56:05 ID:e1s()
一度ここまでです。続きは今晩か明日にでも
12OvIXvCt3nM :2018/10/11(木)16:47:24 ID:nUZ()
遅くなりました。投下していきます。
13OvIXvCt3nM :2018/10/11(木)16:50:57 ID:nUZ()
〈東郷 Side〉
 
 「銀の葬儀は遠足の2日後だった。葬儀中に乙女座が襲ってきたけどこれに関しては撃退に成功したわ」

 「銀なしでも1体だけなら撃退に成功したんですね?」

 「ええ。最も3人しかいない勇者のうち1人が亡くなったことを受けて大赦は最強の盾と矛を実装することを決めた」

 「矛と盾?」

 「盾は須美ちゃんも知っているはずよ?勇者が大きなダメージを受けそうになれば自動で防御を行う精霊システム」

 個人的には精霊システムは初めから実装しておいてほしかった。
 そうすればそもそもあの3体の連携でも気を失わずに済んだだろうし、銀1人の戦いでも生きて帰ってこれたであろうことは想像に難くない。

 「それで…矛というのは?」

 「私たちが戦う上で武装や身体能力が神樹様によって強化されることは知っているわね?」

 「はい、もちろんです」

 「その神樹様から供給される力を一時的に増加させ、勇者を大幅に強化する切り札“満開”よ」

 「満開…“花が満ち開く”?」

 「ええ、大赦は私には武装が大火力の砲台、そのっちには複数の刃を飛ばして攻撃を行う船を満開時の武装として与えた」

 「あれ…?確かこの世界の勇者システムは最新のものなんですよね?満開なんてシステムにありませんでしたよ?」

 「ええ、最新の勇者システムにおいて満開は外されているわ」

 「なぜですか?そんなに強い武装があるならもっと戦いが優位になるはずなのに…」

 最新の勇者システムならば、盾の精霊と併せて矛たる満開も実装されているはずだという疑問はもっともだろう。
 ならば答えなくてはならない。最強の矛を振るう対価が何であるのか。
14OvIXvCt3nM :2018/10/11(木)16:52:40 ID:nUZ()
 「その話をする前に、ここからはそのっちにも入ってきてもらいましょう」

 そう言って外で待っているそのっちに声をかける。

 「どこまで話したの?」

 「精霊と“満開“が実装されたところまで。これから瀬戸大橋跡地の合戦を話すわ」

 「わかった」

 そう言ってそのっちを中へと招き入れる。

 「リトルわっしー、ここまで聞いて満開はどんな風に思った?」

 「非常に強い武装だと思います。なぜ今はシステムから削除されているのかわからないほど」

 「そっか…わっしー、続けてあげて」

 「満開は確かに強い武装だったわ。ただ、人の身に余る神の力を振るうには代償が必要だったの」

 「代償?」

 「ええ、まず神樹様に大きな負担がかかるということが1つ、そして…」

 言いたくない。ここで話を打ち切って逃げてしまいたい。けれどそれはできない。
 私が犯した罪を残さず話してしまわなくては、打開策を見つけてもらうこともできないのだから。

 「1度満開を使うたびに体の機能が1つ失われる“散華”。それが満開の2つ目の対価よ」

 そのっちが苦虫を噛み潰したような顔をする。これから語る戦いで私とそのっちが失うものを思い出しているのだろう。
 そして2年に及ぶ生き地獄ともいえる日々の暮らしも。
15OvIXvCt3nM :2018/10/11(木)16:55:33 ID:nUZ()
 「…え?その…大赦はそれを知っていて実装したのですか?」

 「おそらくはね。現に鷲尾と野木の両親には、内々に娘が障害を負ってゆくことを覚悟するようにと伝えていたようだし」

 「それを本人には知らされずに…?」

 須美ちゃんが矢継ぎ早に聞いてくる。当然だろう。ともだちを喪い、自分もまた障害を負
 ってゆくことを前提としたシステムを使わされると聞いて冷静でいられるはずがない。

 「少なくとも私が“鷲尾須美”であった時には満開は単に勇者の力を強化するものだとし
 か聞かされていなかったわ」

 「…」

 「続けるわね。とはいっても鷲尾須美が満開を使って戦ったのは1回だけよ」

 「神世紀298年10月末に起こった“瀬戸大橋跡地の合戦”だね~」

 「瀬戸大橋跡地の合戦?」

 「須美ちゃんも知ってる通り、2年後の世界で瀬戸大橋は破壊されてしまっている。その原因となった戦いよ。
 満開が実装された初めての戦いであり、鷲尾須美の最後の戦いになったわ」

 「最後って…なにがあったんですか…?」

 「獅子座を中心に、複数体のバーテックスが襲撃をかけてきたの。
 その戦いで私は2度満開し、下半身の自由と2年間の記憶…“鷲尾須美”であった時の記憶を散華してそのまま意識を失ったわ」

「は…?ってまた私は戦いの最中に意識を失うんですか!?」

 須美ちゃんがぽかんとした顔をする。ついさっき自分が気を失ったせいで銀を犠牲にしたというのにまた自分が意識を失って戦線を離脱するとは思わなかったのだろう。
16OvIXvCt3nM :2018/10/11(木)16:57:50 ID:nUZ()
 「ええ。そしてそのあとはそのっちの方が詳しいから…そのっち、お願い」

 「うん…わっしーは記憶を散華したことで戦いを続けることができなくなったんよ…
 事実上10歳に逆戻りしたところに全く見覚えのない樹海の中だからね…」

 その時の記憶はおぼろげながら覚えている。
 現実とは思えない世界で、全く知らないファンタジックな服装と槍を持った少女が、「わっしー」と誰ともわからない名で私を呼んだことに恐怖と不信しか感じなかった。

 「わっしーが気を失った後、壁の外から10数体のバーテックスが襲撃してきて私はただ一人満開を繰り返してすべて撃退した。満開1回でバーテックス1体を圧倒できることはわかってたからね」

 「それで…園子さんは何回満開したのですか…?」

 須美ちゃんが恐る恐るきいてくる。ともだちを、文字通り身を削って戦う戦場にただ1人残してしまうという未来を聞いて顔は青ざめていた。

 「20回満開したよ。私が把握してた限り片目と片耳・発声を行う機能、記憶は残ってたけど、心臓や肺の機能、全身の自由は失っちゃったね」

 「にじゅっ…」

 信じられないという顔をしている。実際に寝たきりのころの本人に会ったことがある私でさえ20回も満開したということに現実感がないのに、ましてや話で聞くしかない須美ちゃんにとっては全くリアリティーがないのだろう。
17OvIXvCt3nM :2018/10/11(木)17:00:34 ID:nUZ()
 「あれ…?でもお二人とも普通に立って歩いてらっしゃいますよね?
 特に体が不自由そうなところもありませんし…あ!もしかして全部冗談とかなんですか?もう!人が悪いですよ!」

 私たちが共謀して悪い冗談を言っている。一縷の望みにかけてそう言ったのだろう。
 でもね須美ちゃん…私がやらかす未来はまだまだあるのよ…?

 「いいえ。全部本当のことよ」

 「でも!満開は今のシステムにない、お二人も体の機能を失ったといいながら五体満足なんて辻褄が合いません!
 それとも何ですか!?神樹様が憐れんで『対価に体の機能を奪ったけど、かわいそうだから返してあげよう』と返してくれたとでもいうんですか!?」

 「ああ、リトルわっしーはやっぱり思った通りの返事をしてくれたね」

 「ええ…我ながらここまで思った通りのことを言うなんて…」

 「話をそらさないでください!」

 「分かったわ。続きを話してあげる。ただ、少しだけ休憩と考える時間をちょうだい」

 「…分かりました」

 須美ちゃんの返事を受けて一度私は話を切る。そして頭を整理することにする。
 私が犯した、人類を道連れにしようとする大犯罪についてどう話せばいいか。
18OvIXvCt3nM :2018/10/11(木)17:15:18 ID:nUZ()
今日はここまでです。
19OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:37:45 ID:r3D()
ようやく書けたので投下していきます。
20OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:40:14 ID:r3D()
〈Side 須美〉
「考える時間をちょうだい」そう言ってまた東郷さんは話を切る。
東郷さんの話はまだまだ続きそうだ。
正直信じられない。元の時代に帰れば銀は24時間もしないうちに命を落とし、そのっちも冬を迎える前に散華とやらで全身の自由を失って寝たきりになる。
それなのに私は下半身の自由と2年間の記憶と引き換えに東郷の家に戻されてのうのうと生き続けることになる…?
しかも最後の最後まで戦い抜いた結果として日常に帰ることを許されたというのならば、まだしょうがないと割り切ることができた。
でも話を聞く限り2人が倒れる戦場において、2回とも私は無様に意識を手放してたった1人で戦うことを強制しているではないか。
そんな未来が待っているなんて到底受け入れられないし、なぜすべてが終わった後に私は自分を裁こうとしなかったのか理解できない。
もっとも、東郷さんが言うことを全面的に信じれば、私は銀やそのっちと一緒に戦っていたことすら忘れるのだから、自分を裁きようもないのだけれど。

そう考えていると、3度東郷さんが口を開く。

「ここからは、少し時間が飛んで2年後…私が中学2年生になってからの話になるわ」

「それまでバーテックスは全部園子さんが撃退していたのですか!?」

「ううん、私はその2年間1回も戦ってないよ。私が20体以上倒したからあっちも戦力を再建するのに時間がかかったんだろうね」

未来のそのっちが、不自由な体を押して孤独な戦いを続けることにならずに済んだと知って少しほっとする。
21OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:42:07 ID:r3D()
「そうですか…すみません話を切ってしまって」

「いいえ。続けるわね。私が記憶を散華して“鷲尾須美”から“東郷美森”に戻った後に、私は讃州市へと引っ越すことになる」

「身内だけではバーテックスとの戦争をやっていけないと判断した大赦は、勇者適性1位のゆーゆのそばにわっしーを置いて次の襲来に備えたんだよ」

「そして、大赦に勇者候補生を集めるように命じられた風先輩が設立した勇者部に私たちは入部した」

「勇者部にそんな目的があったなんて…」

なんで「ボランティア部」などではなく「勇者部」なんて名前が付けられているのかと思ったが、裏にそんな理由があったとは思わなかった。
というか、記憶を無くした私はよくそんな名前の部活に入ろうとしたわね…

「そして、中学2年生に上がったある日、私たち勇者部は2年ぶりの乙女座の襲来をきっかけに勇者のお役目についた」

「私はまだ秘密兵器扱いだったから病院のベッドの上だったけどね~」

「そのあとに夏凜ちゃんが合流して、5体までを倒した。そのあとに獅子座・水瓶座・天秤座・牡牛座・牡羊座・魚座・双子座の7体による一斉攻撃があったの。その戦いで夏凜ちゃん以外のみんなは満開を使うこととなった」

「ということはやはり散華も…」

「ええ、私は左耳、友奈ちゃんは味覚、風先輩は左目、樹ちゃんは発声機能を散華した。でも大赦からはそれが一時的なものだとしか伝えられなかった」

「そうですか…」

ここでも大赦は勇者を欺くのか。もともと秘密主義が強いとは知っているが、せめて満開の代償くらいは覚悟させておくべきではないか。
22OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:44:39 ID:r3D()
「これで12体のバーテックスをすべてを倒したと思っていたのだけれど、実際には双子座がしばらくして襲撃をかけてきた。この戦いの後に私と友奈ちゃんはいつもの学校の屋上ではなく大橋の祠に転送された」

「私が少し神樹様に干渉して転送先を変更したんよ」

「そこで私達はそのっちに精霊と散華の真実…精霊は勇者を何があっても守り、散華は二度と治ることはない障害であることを知らされた」

「どうして園子さんはそんなことを?」

「その時の私はいつか勇者部のみんなも私と同じく全身を散華して祀られるとおもっていたからね。せめて覚悟だけはさせるべきと考えたんよ」

「その情報を基に少し“実験”をした私はそれが真実と確信し、改めてそのっちのもとを訪れた。そこで世界の真実、壁の外の様子を知った」

「壁の外…?確か人類にとって致死性のウィルスが蔓延しているはずでしたよね…?」

「それは大赦の公式声明であって真実ではないわ。実際には、天の神によって理が書き換わり、炎とマグマの世界に変えられている」

「は?」

何を言っているのか。しかし、そうすればつじつまが合う。
なぜ西暦の末期に突然神々は四国に神樹となって降臨したのか、なぜ同じ地球の生命とは思えないバーテックスが外の世界で生まれているのかはずっと不思議に思っていた。
しかし、外の世界が神樹様以外の神によって支配されており、バーテックスはその神が創造しているとなれば何らおかしくはない。
23OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:46:35 ID:r3D()
「つまり私たちとバーテックスの戦いは…外の世界を支配する神と神樹様の戦争だったということですか…?」

「ええ、もしも記憶をもって元の世界へ帰れたら壁の外へ行きなさい。世界の本当の姿が見れるわ」

「そうですか…続けてください」

「その真実を知った私は壁外でバーテックスがまた生まれている様子を見て、ある決断を下した…勇者部の皆が犠牲になるくらいならばと壁を破壊して神樹様もろとも世界を殺そうとした」

絶句した。ここまでの話を総合すれば、私は友達2人を犠牲にした挙句に人類を滅ぼしつくしかけた史上最悪の悪人になるということか。
嘘だと言いたかったが、立会人である園子さんの顔は真実だと告げている。つまり…東郷さんの、いや未来の“私”が語った一連の話はすべて実際に起こったということだ。

「…そのあとは…?」

自分の声ながら驚くほど冷たかった。もはや東郷さんの顔を見るだけで怒りを通り越して殺意がわいてくる。

「壁を壊してバーテックスを招き入れた私は友奈ちゃんに説得されてバーテックスを殲滅した。そして多数のバーテックスを生贄として力を回復した神樹様は壁を修復して余った力で私たちの散華した部分を返還してくれた。これがいま私たちが五体満足でいる理由よ」

自分を殺しかけた反逆者まで神樹様は貴重な力を使って散華した場所を癒してくれたのか。そしてそんな慈悲深い存在に未来の私は反旗を翻すのか。
そんな恩知らずの畜生以下の存在に私は堕ちるのか。そして、ほかの人の話を聞く限り何のお咎めもなしでのうのうと日常生活をこの非国民は送っているのか。
24OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:48:00 ID:r3D()
「許さない…」

つい声が漏れる。そんな未来は認めない。こんな存在を生み出すわけにはいかない。
かくなる上は…未来の私をこの手で罰して、私もこのような存在になる前に自害すべきだろう。
そう腹をくくり、東郷さんにとびかかる。

「ちょ…須美ちゃん!?」

「り…リトルわっしー…?ショックなのはわかるけど落ち着いて!?」

机を超えて東郷さんを押し倒し、馬乗りになった私に二人が声を上げる。うまくやれば押し倒した勢いで頭を打って“私”の意識を奪えると思ったけどそうはいかず、青坊主がバリアを張って東郷さんの頭を守った。

「止めないでください!!こんなこと許せるはずがない!」

「須美ちゃん!」

「黙れこの非国民!あなたなんかに私がなるなんて到底受け入れない!」

短刀を寮の部屋に置いてきたことが悔やまれる。あれがあればこの場でこいつの首を取ってそのまま切腹して果てられたというのに。

「ごめんわっしー!みんなを呼ぶね!」

そう言って園子さんが自習室を出ていく。それに目もくれず、私は東郷さんを殴りながら怒鳴る。

「ここぞという時に気を失って銀を犠牲にする!そのっちには全身の機能を失うまで戦わせて自分はのうのうと日常に帰る!挙句の果てに世界を滅ぼそうとする!?ふざけるな!そんな屑になるくらいならこの手であなたを討ち取って、私も腹を切ってやる!」

「その意味が分かっているの!?今の私を殺すのはこの際いいわ!でもあなたが自決すればどちらにせよ2人は死んで世界は終わる!」

「じゃあどうしろというの!?今あなたが語った未来を受け入れろとでも!?」
25OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:49:10 ID:r3D()
互いに怒鳴りあっていると、複数の足音が聞こえてきた。ドアを開けて園子さんと銀とそのっちが入ってくる。そのあとにも勇者部の皆が駆け寄ってくる音が聞こえた。

「わっしー、ごめん遅くなった!」

全力で走ってきたのだろう。息を切らせた二人が園子さんに続いて叫ぶ。

「須美!落ち着け!何があった!?」

「わっしー!なんで東郷先輩を殴ってるの!?」

二人に羽交い絞めにされて東郷さんから引きはがされ、追いついてきた勇者部の方々に押さえつけられる。

「止めないで!こいつだけはこの手で仕留める!」

「だから落ち着けって!」

「わっしー、とりあえず落ち着いてよ!何があったか教えて!」

落ち着けるはずがないし、二人に今の話を聞かせられるはずがない。
そうこうしているうちに若葉さんや風さんがやってきた。

「風さん!とりあえず須美は寮の部屋に連れていく!」

「若葉たちはそうして!東郷!乃木!何があったの!?」

そのあともなんとか拘束から逃れようとはしたが、放してもらえずに私は寮の部屋へと連れていかれることとなった。
26OvIXvCt3nM :2018/10/14(日)19:49:49 ID:r3D()
いったんここまでです。

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【ゆゆゆ】鷲尾須美「私が未来を知るとき」
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