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【モバマス】二宮飛鳥「セカイが終わる日」

130lx83ehPU:2018/09/23(日)17:09:49 ID:1BV()
「また変なモノを作って…副作用とか大丈夫なんだろうな」

「にゃはは、もちろん。何なら私も今朝使ってたくらいだしね」

「ならいい…のか?」

セミの声も聞こえなくなった秋口の朝、事務所の扉を開いたボクの耳に届いたのは聞き慣れた二つの声だった。

部屋の奥へと進むと、その声の主のうちの一人がソファに座っていた。

「おはよう」

「ああ、おはよう飛鳥」

そう軽く挨拶を交わす。

今ボクを飛鳥と呼んだのはこのアイドル事務所、346プロダクションのプロデューサー。

そしてボクは、同じくこの事務所に所属しているアイドル、二宮飛鳥。

早朝の事務所は、時計の針の音が静かに響く、お気に入りの空間だ。
230lx83ehPU :2018/09/23(日)17:19:59 ID:1BV()
静かなのは結構なことだが、何気無い話題ついでにと思い浮かんだ疑問をそのままプロデューサーことPに投げかける。

「志希の声が聞こえたようだけど…彼女は?」

一ノ瀬志希。
ボクと同じくこの事務所のアイドルで、奇天烈でよく突拍子も無い行動を起こす特異な人物だ。

「笑いながら窓から飛び出して行ったよ、なんか目がキマってたしまた徹夜でもして…いや、寝たとは言ってたな…」

「…?まぁ彼女のことだ、深く考えても無駄だろうさ」

彼女の行動は、彼女自身の特殊な感性から来るものだ。
『才能』と言い換えてもいい。何にせよボクら凡人にはおよそ理解が及ぶものではないので、彼女の行動を制御することなど出来はしないのだ。

「ふむ…それもそうだな」

わざとらしく考え込む素振りを見せてから、Pは笑った。
330lx83ehPU :2018/09/23(日)17:32:00 ID:1BV()
「それにしても、今日は飛鳥はオフじゃなかったか?」

「まぁそうだけど…早朝の散歩ついでさ、構わないだろう」

Pとローテーブルを挟んで対面のソファにスカートを揃えながら座りながら答えた。
ここは居心地が良い。今はボクだけだが、よく他のアイドルも自発的にここを訪れる。

「最近は涼しくなって来たからな、散歩したくなる気持ちは分かるよ。コーヒー淹れるけど、砂糖とミルクは?」

そう言って席を立つP。ボクも自分で淹れようと席を立とうとしたが、手で制されてしまった。

「…ブラックで」

少し迷ってからそう伝えた。本当は甘い方が好きなのだけれど、何だか子供っぽく見られたくなくてついそう言ってしまった。

「砂糖三つと、ミルク二つだな」

何食わぬ顔でトンチンカンなことを言い出すP。ボクは軽く睨みつけたけれど、鼻歌まじりにかわされてしまった。
430lx83ehPU :2018/09/23(日)17:52:14 ID:1BV()
「そういえばさっきの志希との話だけど、どこから聞いてた?」

コーヒーを淹れながらPがそう聞いてきたので、「最後の笑い声あたりからだけ」と答えると、Pは「そっか」とだけ答えた。
間も無くして、2杯のマグカップを持ったPがこちらに戻ってきた。

「はい、砂糖三つとミルク二つの飛鳥の好きな甘めのコーヒー」

「言い方に悪意を感じるんだが」

普段は人前ではブラックでコーヒーを飲むボクだが、少し前に一人で砂糖三つとミルク二つのコーヒーを飲んでいるところを目撃されて以来、しばしば笑いのタネにされている。
恨めしい視線を再びPに送るが、この男は涼しげにブラックコーヒーを煽っていた。

「明日、世界が終わるとしたらお前はどうする?」

コーヒーを冷ますボクに対して、Pは唐突にそう質問してきた。

「…何だい?唐突に」

「いや、まぁ参考に」

脈絡もない質問に少し構えたが、まぁありきたりといえばありきたりな質問だ。特に意味は無いのだろう。
530lx83ehPU :2018/09/23(日)18:23:20 ID:1BV()
「そうだな…」

思案しながらコーヒーを一口啜る。
少しの間考え込んだが、突飛すぎて想像もつかないことなのだから正解などないだろう、と気楽に答えることにした。

「いつも通り過ごすさ」

「ほう」

「いつも通り、朝に事務所に来て、コーヒーを飲んで、レッスンがあるならレッスンをして…いつも通りの一日を過ごすさ」

「なるほどなぁ」

聞いておいて素っ気ない返事だな、とコーヒーから視線を上げてPの顔を見てみると、いつもの澄まし顔だけれどその口元は少し緩んでいた。
630lx83ehPU :2018/09/24(月)17:56:07 ID:TDp()
「何かおかしいことでも言ったかな?」

そう聞くと、「ああ、いや」と随分と適当に誤魔化されてしまった。
ボクはふん、と一度鼻を鳴らして仕返しとばかりに聞き返す。

「じゃあキミはどうなんだい」

「世界が終わるとしたら?」

「もちろん」

「そうだな」

Pは明後日の方向を見ながらコーヒーを飲み干した。答えを待ちながらボクも手元のカップの中身を減らしていく。
しばらくして、マグカップを置きながらPは

「飛鳥と同じかな」

とだけ答えた。
730lx83ehPU :2018/09/24(月)18:05:37 ID:TDp()
「何だよ、ボクの答えを笑ったクセに」

「じゃあこれでおあいこだな」

軽口を言い合い、ボクらは目を合わせて少しだけ笑った。
やっぱり、ここの居心地は悪くない。
コーヒーで少し温められた身体が、自然とソファに沈んでいって。

「……ふぁ……」

自然と欠伸が出てしまう。嚙み殺そうとしたが、弛緩しきった身体はそれを拒んだ。

「まだ朝早いし、眠いなら少し寝るか?」

ソファの脇にかけてあったタオルケットを取りながらPはそう言った。
別に寝不足なわけではないのだが、何だか急に眠くなってしまった。

「…ああ、それじゃ少しだけ…」

重たい瞼に抗うのをやめ、視界が暗くなっていく。
そのままボクは、微睡みながら意識がふわりと何処かにいく感覚を感じていた。
830lx83ehPU :2018/09/24(月)18:16:41 ID:TDp()

その時だった。

事務所のドアが一切の手加減を無しに開かれ、バァン!と響いた音にボクは跳ね起きた。
対面のソファでPは目を丸め、たった今開かれた扉の方に目を向けていた。
そちらを見ると、息を切らした明るい緑色のスーツを着た女性が大粒の汗をかきながら立っていた。

千川ちひろ。
この事務所の事務員で、プロデューサーさんの補佐をしている少しお茶目なコスプレ好きの人だ。

「どうしたんですか、」

ちひろさん。と続けようとしたPの言葉は、そのちひろさん当人のより大きな声でかき消された。

「テレビを、テレビを付けてください!」

鬼気迫るその表情に、ボクらは只事ではないと言われた通りに備え付けのテレビのリモコンを操作する。
テレビに映った画面では、地デジ放送にも関わらず海外の人間が、海外の言葉で喋っていた。
930lx83ehPU :2018/09/24(月)18:27:15 ID:TDp()
Pは二、三とチャンネルを変えたが、どのテレビ局でも「緊急会見」だの「アメリカのNASAから」だのと一言だけのテロップが出ているだけで同じ人物を映していた。
何を言っているのかはサッパリだが、一人画面の真ん中で話している人物には見覚えがあった。

アメリカ合衆国、大統領。
過激な発言が目立つが、今の日本の大統領と随分仲がいいとたまにニュースなどで眺める人物だ。

その番組では、一切の翻訳音声も字幕も無く、たかだか中学生のボクにはたまに聞き取れる単語がある程度だったが、チラとPの顔を見るとその顔は今まで見たこともないほど険しい表情をしていた。

ちひろさんとPの糸を張ったような緊張感に当てられて、息苦しい空間で4、5分を過ごした。
それから、中継が終わり、日本のテレビ局のスタジオで、日本のニュースキャスターが日本語で話し始めた。

『…詳しい翻訳は後ほどお伝えします。皆さんは落ち着いて、避難の準備をよろしくお願いします。』

具体的なことは分からなかったが、避難だとか言われたり、ニュースキャスターの強張った喋り方だとかを見て、ひどく落ち着かない気分になった。
1030lx83ehPU :2018/09/24(月)18:33:29 ID:TDp()
Pは立ち上がって、パソコンと電話のある自分の机へと向かいながらちひろさんに声をかける。

「ちひろさん、今レッスンしている皆と寮の皆を呼んできて下さい。俺はそれ以外の子たちに連絡します」

「お、お願いします!」

それだけで会話を切り上げ、ちひろさんはバタバタと出て行ってしまった。

パソコンの画面でインターネットブラウザを開くPに向かって、「何が」とだけ聞く。何が何だか分からず焦るばかりで、たった三文字話すだけでどもりどもりになってしまった。

「飛鳥、落ち着いて聞いてほしい」

先ほどまでの柔らかい雰囲気はこの部屋にはもうない。牢獄のように硬く、暗い空気の中でPは言った。



「明日、地球が終わるらしい」

昇った太陽が足元の床を照らす。背中に冷たい汗が一筋流れるのをボクは感じていた。
1130lx83ehPU :2018/09/27(木)01:03:42 ID:9ET()
二節

意外なことに、世界は『いつも通り』だった。
少なくとも、あの発表から1時間が経過した午前10時の時点では。

やれ『直径100kmを超える隕石が、明日地球に降り注ぐ』だの、

やれ『隕石は、日本時間で明日の20時に日本上空で爆発し、東アジア全土に数kmサイズの隕石降り注ぐ』だの、

挙げ句の果てには『その衝撃は地球のマントルより上の層を吹き飛ばし、陸の津波として世界中を飲み込む』ときたもんだ。

事務所の目の前の路地で新聞会社の人間がばら撒いていた号外新聞を机に放り、ボクは一つため息をこぼした。

「今時B級映画でももう少しひねってくるぞ」

「まったくだ」

PCのキーボードを忙しなく叩きながら、Pは答えた。
1230lx83ehPU :2018/10/01(月)23:06:37 ID:XS5()
「よし」

キーボードを忙しなく叩いていたPがそう言って立ち上がった。
彼が何をしていたかをこの1時間の間に聞いていたボクが「終わった?」とだけ聞くと、「うん」と短い返事。

ピロリ、と携帯が鳴った。ボクのケータイのメールの着信音で、差出人は今目の前にいるPからだった。
その内容は既に事務所の全員が知っている今のこのセカイのことと、事務所としてのその対応。
仕事熱心なことだ、と素直に思う。

「飛鳥、ちょっと出掛けるからついてきてほしい」

「こんな状況でどこに?」

「銀行、それとコンビニ」

会話だけしていると、一瞬今が地球規模の大騒動の最中だということを忘れそうになる。
それくらい、目の前の彼はいつも通りだった。

「よし、行こうか」
1330lx83ehPU :2018/10/01(月)23:18:02 ID:XS5()
あの会見の中継を見てから、まず彼は事務所のアイドル全員にメールを送った。

「実家にいる人間はすぐに家族と一緒に飛行機の当日予約を探して逃げろ」
「寮生はちひろさんからの説明を受けろ」
「絶対に諦めず、生き延びろ」

要約するとこんな内容だった。
このメールの内容が、一番現実味を感じないものとしてボクの携帯にも保存されている。

ボクを含む寮生には、今すぐに家族に電話するよう言い渡された。

ボクが電話した時はまだ繋がっていて、両親と話をして飛行機を使ってとにかく日本から離れること、それぞれ別の空港からになるが行き先は合わせること、いつどこで合流するかを話し合い、10分程度でその会話は終わった。

P乃迅速な指示のお陰か、寮生全員は無事に家族と連絡を取ることが出来た。
それが、午前9時半。
今はもう、日本中の電話回線はパンクして連絡を取る手段は無くなってしまっていた。
1430lx83ehPU :2018/10/01(月)23:35:34 ID:XS5()
そして、Pが寮生全員分の飛行機の当日予約を済ませ、この外出と相成ったわけだ。

「どこのお店も、どうしてふつうに営業しているんだろうな」

「勤務時間中にテレビを見る人はあんまりいないからなあ」

真面目な人々がいる街だ。
最寄りの銀行とは違う、大きな銀行に着いてPがカウンターで何やら手続きをしているのを、少し離れたところで座って眺めていた。

「おや、これはまた珍しいところで会ったね」

「あいさん」

東郷あい。

同じ346プロダクションのアイドルで、気品のあるクールな大人の女性だ。

「どうしてここに?」

「ボクはPに連れられて。あいさんこそ、ニュースを見てないじゃないんだろう?」

「もちろん」
1530lx83ehPU :2018/10/01(月)23:43:57 ID:XS5()
「…あいさんは、これからどうするんだい」

「私は海外にいくつかツテがある、そこを訪ねてみようかと思っている。君達こそ、飛行機のアテはあるのかい?」

「ああ、寮の皆の分ならPが予約してくれたよ」

「自衛隊のヘリだとか、各国から来ている応援の飛行機は?」

「もう空港には人が殺到している。乗れるかわからない飛行機を追いかけるより確実に席を用意するべきだ、だそうだ」

「なるほど、堅実な彼らしい」

「そういうわけでボクも今夜にはここをサヨナラってわけさ」

「…………」

そこで会話が途切れ、何だろうとあいさんの表情を伺ってみると、珍しく隠しきれない不安の色を滲ませていた。
1630lx83ehPU :2018/10/03(水)00:12:54 ID:vgT()
「今夜…か」

「ああ、それがどうかしたかい?」

「…いや、無事を祈るよ」

やはりどこか不安そうだ、それについて言及しようか迷っていると、何らかの手続きを終わらせてきたらしいPが戻ってきた。

「待たせたな、飛鳥…あれ、あいさん」

「やぁ、こんなところで会うとはね」

「あいさんも、ご無事で何よりです」

「そうだな、その様子だと…そちらも大丈夫かな」

「ええ、なんとか」

2人とも平静を装ってはいるが、互いに少し安堵しているようだった。少しだけ語調が柔らかい。
1730lx83ehPU :2018/10/03(水)00:18:17 ID:vgT()
「分かっているでしょうが、あいさんも早く逃げてください。これからどうなるか分かりませんから」

「…ああ、そうだな」

「ヨーロッパ圏でも、南米でも。あいさんならお知り合いがいるでしょう、そこを訪ねればきっとなんとか…

Pがそこまで言ったところで、小さな声であいさんが遮った。

「なぁ、Pくん。そんなことをして…意味はあるんだろうか」

「…はい…?」

「君ほどの人間が、状況を把握していないわけではないだろう。確かに直撃をまぬがれるために海外に行くのはいいが…」

「…あいさん」

2人の表情が一気に曇っていく。あいさんは苦虫を噛み潰したような顔で言葉を続ける。
1830lx83ehPU :2018/10/03(水)00:24:24 ID:vgT()
「あらゆる研究者の見解が合致している。たとえ明日すぐにここで隕石の被害を被るよりかはいいかもしれないが…」

「………」

「地の果てまで逃げようとどうせ我々は…

「あいさん!」

Pが声を荒げる。ビクリと身体を震わせ、あいさんは言葉を紡ぐことをやめた。

「…飛鳥が聞いている前で、そういうことは…」

「……ああ、すまない…」

あいさんは深く肩を落とし、それに呼応するようにPの握られていた拳からも力は抜けた。
それから2、3だけ言葉を交わし、あいさんとは別れボクたちは事務所へ戻った。

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