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提督「いなづま…か」

1xfwHIDvFPk:2018/09/20(木)23:47:18 ID:OtR()
独自解釈や創作を大きく含む艦これSSです。
まったりとやっていきます。
2xfwHIDvFPk :2018/09/20(木)23:57:39 ID:OtR()
某年、日本国西方海域

「この度は本当に助かりました」

『いいえ、当然の任務ですから。むしろ、もっと早くに着いていれば…』

「…」

『あの、このような立場で言うのもなんですが、気を落とさないで下さい』

『彼らの最期を見たわけじゃないのです。きっと生きています』

「…そうですね。確かに気を落とすのは早すぎるし、あいつらにも失礼ですよね」

『えぇ。そのとおりです。落ち込む前に我々は与えられたことをこなすべきです』

『彼らも、それを望んでの行動でしょうから』

「えぇ、あいつらの為にも。必ずこの任務を終わらせます」

「そして、この国を守らなければ…」

『その意気です。しかし、お疲れでしょう。港まではまだ少しかかります』

『その間は我々の土俵。心配ありません。この船である限り、必ずあなた方を送り届けます』
3xfwHIDvFPk :2018/09/21(金)00:06:42 ID:rZg()
「…はぁ」

無機質な鉄の扉を閉めて、男は力なくため息を吐いた。
─艦長室、と書かれた扉を再度見る。
組織が違う為詳しいことはわからない。
しかし、同じ階級社会に身を置く者として、先程室内で話した彼が自分よりも上の立場であることはわかる。
それもかなりの。

普段であれば自分のような身分が、彼と話すことはないだろう。
しかし今は普通の状態ではない。
自分の所属する部隊では、自分こそが一番上位の者なのだから。
いや、一番上位になってしまったのだから。
4xfwHIDvFPk :2018/09/21(金)00:19:53 ID:rZg()
「挨拶は済んだのか」

与えられた部屋に戻ろうとしていると、聞き慣れた声に呼び止められた。
彼は男と同期で、本来ならば男と同じく挨拶に行くべきだが、『1名でいいだろう』と露骨に嫌な顔で面倒事を押し付けた。

「階級を武器に変な雑用を押し付けられなかったか」
面倒事を押し付けておいてこの言い草だが、本人を含め自分たちの身を案じているのだろう。
「大丈夫だよ。優しい艦長だった。俺たちの組織の上もああいう人達ばかりだと良いのに…と思えるくらいだった」
鼻で笑いながら答えたが、彼は怪訝そうな表情を浮かべる。

「おまえ…」
同期の彼は、男の違和感について何か言いそうになるが
「わるい…ちょっとその辺を見てくる…」
と、男は話を切り上げ、逃げるように立ち去るのだった。
5xfwHIDvFPk :2018/09/21(金)00:35:30 ID:rZg()
「…」
男は船のデッキを無言で歩く。
(立派な船だ…)
あらためて、人の小ささ、船の大きさを歩いて実感した。

(この船の名前は…)
乗船してから今まで、かなり混乱した状況にもあった為、船の名前すら知らない。
艦長も自らの名前は名乗ったが、船の名前までは紹介してくれなかった。
デッキには何やら作業をしている者もいるが、忙しなく働く彼らに今更船の名前を聞くのはなんだか気が引けた。

結局その場で解決することなく、後から船内の備品を見るなり調べるなりして、艦名を知ることとした。
(そろそろ戻ろう。あいつらにこれからの指示をしないと…)
あいつら。とは男にとって数少ない部下である。
強い組織とは、全員が同じ方向に進むことができる組織だ。
同じ方向に進む為には、判断し決断を下す者が必要となる。
男は今、その立場におかれている。
これまで上がしていたことを、今はしなくてはならない。

正直不安しかない。
しかし、同期の彼となら何となくできる気がしていた。
6xfwHIDvFPk :2018/09/21(金)00:42:35 ID:rZg()
「あれ…ここからは行けないのか」

デッキから船内に戻った男は、船独特の複雑な構造の迷路に見事に迷ってしまった。
男も方向音痴ではない。
見当もつかず彷徨っているわけではなく、概ねの方向は理解した上で行動している。
しかし、行こうとした方向は壁となっていたり、配管ばかりで通れなかったりと行く手を阻まれるのだった。

(これは一度外に戻って、来た道を戻ろうか)
基本に立ち返ろうとしていた時。

「どうかされましたか??」

不意に声をかけられた。
見ると船の乗務員が彷徨っている男を見かねて声をかけてくれたようだった。
事情を説明すると、彼は
「今日この船初めてですよね?それは冒険し過ぎです!」
と明るく笑った。
半分驚きといったような感じの笑いで、決して馬鹿にしたような笑いではなかった。
7xfwHIDvFPk :2018/09/21(金)00:55:24 ID:rZg()
「基本はやっぱり外からの入るほうが確実ですが、特別なルートを教えましょう」
乗務員の彼は、男の冒険心に心をくすぐられたのか、船内から行けるルートを案内してくれた。

「船の機関室や、弾薬庫を通るルートです。一般人ならもちろん通れませんが、あなた達ならいいでしょう」
そう言いながら彼は複雑な船内をどんどんと進んでいく。
男も途中まではルートを覚えていたが、複雑な構造を前に次も彼の案内に頼ろうと情けない予定を立てていた。

「もうすぐ着きます」
彼がそう言ったところで、ザザというノイズ音が頭上から聞こえ、船内放送が入った。
『航海科・機関科至急第一会議室へ』
放送を聞くと彼は残念そうに笑い
「すみません。呼ばれたので行きますね」
と言って、すぐに走り出した。

「目的の部屋はこの先の倉庫を抜ければすぐにあるので迷わないはずです!」
彼は去り際、思い出したかのように男に叫び、男が頷くと「それでは良い船旅を」と言って再度駆け出した。
8xfwHIDvFPk :2018/09/21(金)00:57:59 ID:rZg()
一旦ここまで
9xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)19:45:01 ID:6fJ
今日もまったりと書いていきます
10xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)19:59:35 ID:6fJ
(どこの組織も同じか…)
乗務員の後ろ姿を見ながら男は思う。

自分が所属する組織も、今世話になっている組織も若輩者は皆同じ。
己の正義を信じ、組織の正義を信じ、その身を仕事に投じる。
その瞳には少しの曇も無い。

しかし、果たして今の自分はどうなのだろうか。
組織の正義を、一点の曇りなく主張することができるだろうか。
己の正義を貫くことができているだろうか。

今の男には答えを出すことができなかった。
しばらく思考の海に入っていた男だが、はっと今の任務を思い出す。
今は私情を挟む暇はない。
部下の命を授かる身として、全力で職務を全うしなければならない。

小さく深呼吸をして、先程乗務員の彼に教えてもらった通り、倉庫を抜ける。
しかし倉庫出口の扉に手をかけたところで、耳を劈く炸裂音と共に大きな衝撃が加わり、地面が揺れ、男の視界は暗転した。
11xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)20:13:02 ID:6fJ
──航海は順調だった。
天候は良く、波も穏やか。
予定通りに航行すれば2日もしないうちに港へ戻ることができる。

はずだった。

「未確認物体多数接近!」
「海上に武装した人形兵器及び魚型兵器を確認!」
「上空。球状の兵器を確認!」

「戦闘配置につけ!近距離戦闘と対空戦闘を用意!」
「CIC!11時の方向!」
戦闘指揮所は突如と現れた的に混乱していた。
「なぜレーダーに出なかった!」
「煙幕を展開しろ」
「駄目だ!こっちも見えなくなる!」
12xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)20:22:09 ID:6fJ
「船の状況は?」
艦長である彼は、比較的落ち着いていた。
「はい!至近弾で若干の衝撃あるも、直接的な損傷は今のところありません」
部下の報告を聞いて、しばらく思考する。
「敵の戦力はかなり多い。こちらの艦隊はかなり不利だろう」
あくまで冷静に、悔しいと思う感情を押しこらえて言う。
「とにかく逃げるぞ。両舷全速」
「了解です!」
13xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)20:31:56 ID:6fJ
(ついに来たか…)
艦長の彼は覚悟を決めていた。
近年世界各国の海域で発見される未確認兵器。
当初はどこかの国が新たに開発したものではと物議を醸した。
しかしいずれの国も否定。それを証明するごとく、未確認兵器は全ての国の艦船を攻撃した。

その兵器は当初魚型のものが多数目撃されていたが最近では女性のような人型のものがでてきた。
通常兵器の攻撃は通じるものの、彼女らは大量の戦力をレーダーに映すことなく奇襲的に現れる。
その結果民間船、軍艦を問わず多くの船が沈んでいる。
決定的な対抗策が無い現状、戦うよりも逃げることが吉とされる。
(せめて、少しだけでも時間を稼ぐんだ…)
もちろん、逃げて必ず助かるという保証はない。

(頼むぞ…いなづま…)
14xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)20:38:54 ID:6fJ





「っ!敵機多数直上!!!」



「CIWS斉射!!」




「総員!衝撃に備え!」
15xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)20:47:53 ID:6fJ
──て…

遠くから声が聞こえる。

──きて…

初めて聞く声だが、とても優しく、心地の良い…

──おきて…

「っは…!」
どれくらい気を失っていただろうか。
状況を必死に思い出す。
(そうだ、部屋に戻ろうとして。)

(何が起きてるんだ…)
さっきまで灯っていた照明が消え、赤暗い電気が荒れた倉庫の中を照らしている。
消防ベルのような音がけたたましく鳴り響き、時たま轟音が衝撃と共にやってくる。
16xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)20:54:59 ID:6fJ
(とにかく部屋に戻らないと…)

そう思い、先程手をかけた扉をもう一度開けようと…
「くそ…」
倉庫の棚や資材が重なり合い、扉が塞がれていた。
(来た所を戻って、とにかくデッキに出よう)
道に自信はないが、とにかく戻るしかなかった。
17xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)21:14:44 ID:6fJ
「各種レーダー損壊!」
「右舷中腹に被弾!浸水発生!」
「機関損傷!速力20ktまで低下」

状況は圧倒的に不利だった。
兵装もやられ、速力も下がってきた。

「敵艦隊。更に数増加」
「どっから出てくるんだ!くそ!」

しばらくは黙っていた艦長は、静かに口を開いた。
「よし…もう。いいだろう」
18xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)21:22:51 ID:6fJ




「総員退艦だ」
19xfwHIDvFPk :2018/09/23(日)21:25:23 ID:6fJ
一旦切ります
20名無しさん@おーぷん :2018/09/23(日)22:49:11 ID:rgG
おつ
21xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)20:50:52 ID:jwN
──総員退艦!総員退艦!ただちに船を離れよ!!

鳴り続ける警報と共に緊迫した声の放送が聞こえてきた。

男は複雑な船の中未だデッキに出れないでいた。
「総員退艦?この船はもう…」
船の知識はそれほどないが、言葉が意味することは分かる。
現に先程から船が浸水し初めて、海水が膝下まで迫っていた。
「くそっ…早く出ないと」

とにかく進もうとするが、扉の開放を水が邪魔する。
─ゴン
鈍い音と共に船が激しく揺れる。
ギチギチと金属の軋む音の後、勢いよく水が吹き出してきた。
「くっそおおおお」
これまでか、そんな気持ちと共に、男は天を仰いだ。
22xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)21:01:10 ID:jwN
「機関部、船倉部、弾薬庫も全て避難完了しています」
「そうか、もう誰も残っていないな」
「はい、あとは我々のみです。機関室を放棄した今、船が止まるのも時間の問題です」

CICの乗員は皆黙っていた。
機械の唸る音のほか、外の爆発音が篭って聞こえるのみだった。

「皆、よくやってくれた」
この船のトップの男は、穏やかに、それでも力強く言った。
「悔しい結果だろう。まだまだ戦えただろう。しかし、それは命を掛けることになる」
船の限界まで戦う。それは彼らの任務を考えると当然のことだ、しかしその場合の命の保証はない。
「皆が命を掛けるつもりでウチに入ったことは知っている。しかし、今はまだその時じゃない」


「この悔しさを。是非、次に繋げてほしい」
23xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)21:24:26 ID:jwN
艦長の言葉に異議を唱える者はいなかった。
涙を流しながらも、次への活路を探している者ばかりだった。
それぞれの仕事場に別れを告げ、席を離れて行く。

すっかり誰もいなくなったCIC。
「艦長、CIC含め総員退艦しています」
「お客さんはどうした?」
「固まって避難していましたが…詳細の人数は数えれていません」
「…そうか」
「艦長、あなたも早く…」
説得する声には焦りが見え始めていた。
船は傾き、電灯もチカチカと限界を示している。

「副長、君は先に行ってくれ」
「─は?」
呆気に取られた声。

「この船に関する機密資料がある。私が出るのはそれを処分してからだ」
「しかし…もうこの船は」
「副長」
「……はい」
艦長の一言は副長を納得させるのに十分だった。
副長は理解した。この男の意思を。そして、その決意は自分の立場では決して覆らないことを。

「ありがとう。これは私の身勝手な行動だ」
副長は静かに涙を流しながら首を横に振る。
「私は良い部下に恵まれた。本来なら、今後も一緒に戦うべきなのかもしれない」




「ただ、この船を一人で逝かせるわけにはいかない」
24xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)21:40:52 ID:jwN
「くっそがあぁ…ひら…けっ!」

火事場の馬鹿力を駆使しても駄目だった。
海水はもう腰の高さまで来ている。
「はぁ…はぁ…」
呼吸は荒い、が20分前から5mも進めていない。
「あぁ…だめか…」
諦めては扉の開放を試みていたが、今度こそ動く気になれなかった。
何とかしたいが、何もできない。道具の無い人間はこれほどまで無力なのか。
脱力し、壁にもたれ掛かる。大勢が低くなった為顔が水に浸かる。

(このまま早く意識を無くしたほうが楽かな…)
頭まで水に浸け、溜め息も兼ねて肺の空気を全て吐き出す。
苦しい。でも、辛くはなかった。
(ついこの間まで死にたかったんだ…ちょうどいい)
チカチカというブラックアウト直前の視野低下を感じ、男はゆっくりと目を閉じた。
25xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)21:47:38 ID:jwN
──きて…
(誰だ…)

──おきて…こっち…
(この声…さっきも…)

「っぶは!」
水中から頭を上げる。
「はっ…はっ…」
目がチカチカする。手先が痺れる。
「はぁ───はぁ───」
深い呼吸を繰り返す。
「誰だ?どこにいる?」
見えない声の主を探す。

──こっちです。早く

声のする方向を向く。
「嘘だ…扉が」
驚いた、先ほどどれだけ力を加えても開かなかった鉄の扉が開いている。

──早く!

状況はわからない。
しかし、とにかく声のするほうへ向かった。
26xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)21:53:10 ID:jwN
(いったいどうなってる…)

不思議な現象だった。
閉じている扉は勝手に開き、分かれ道では声が導いてくれる。

(この声はいったい…)

女性の声。
機械音声ではない、聞いていて心地の良い、落ち着く声。

──早く!こっちです!

最初は幻聴かと疑うくらいのぼんやりとした声が、今ははっきりと聞こえる。
感情的というか、声に焦りがあることも分かる。

──階段を上がって!

言われた通り階段を上がる。
久しく見ていなかった光が見えた。
27xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)22:04:33 ID:jwN
「なっ…」

デッキに出た男は言葉を失った。
先ほどデッキで見た立派な船は横に傾き、いたる所で火災が発生し煙に包まれていた。
もうこの船は限界なんだと、素人が見てもわかる。

『おいっ!飛び込め!!』

今まで聞こえていた声とは違う声は、海のほうから聞こえた。
見ると小さいボートから、この船の乗員であろう者が拡声器を使って叫んでいた。
男は咄嗟に海に飛び込もうとしたが、ふと思いとどまり、今自分が上がってきた階段のほうを向く。

「おい!君も早く!どこにいるんだ!」


返事はない。



「おい!」
堪らず階段を降りようとすると。


──来ちゃだめ!

「なんで…」
理解が追いつかない。
しかし、声は続く。

──私は、行けません…行けないのです…

「いったい…君は…」

──っ…!早く、早く海に!
これまでに無い、彼女の焦った声。
その瞬間、バコンという大きな爆発音と共に船が大きく傾いた。

男は諦めるしかなかった。

「くそ…!頼む!せめて、せめて君の名前を…!」

──わた…わたしは…
28xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)22:05:56 ID:jwN




──わたしは…いなづま…
29xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)22:12:48 ID:jwN
「いな…づま…」

彼女からの告げられた名前を聞いてはっとする。

「ありがとう、いなづま。君は…」
男が言いかけた所で、再度大きな爆発音と共に船が大きく揺れた。

──早く海に!

「くそ!」

半ば船に振り落とされるようにして、男は海に飛び込んだ。
男が海に入ると同時に、船が唸り、速度を上げて離れて行った。

──さよ…な……ら
30xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)22:23:24 ID:jwN
「機関順調。何だ、まだまだ走れるじゃないか」

ボロボロになったCICで一人の男が愉快そうに呟いた。
先ほどまでの威厳はなく、言うならば少年のように今の状態を楽しんでいた。

「救命艇に攻撃しない報告はあるが、できるだけ敵を惹きつけたほうがいいだろう」

「ところで、最後のお客さんはエスコートできたかい?」
男の問いかけながらも、答えは分かっていた。

「そうか、さすがだ」
男は満足そうに微笑む。

「僕はこれでいい。これまで君と走ってきたんだ。どこまでも君と行く」

「礼を言われることじゃないよ…それに、君だって寂しいだろう…」

「そう感傷的になりなさんな…僕が後悔してないんだから」



「まったく…困ったお嬢さんだ…」
男は満足そうな笑みを浮かべながら溜め息をついた。
31xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)22:41:34 ID:jwN
戦闘報告書

××月××日
○○時○○分
領海にて敵機動部隊を発見。

○○時○○分
戦闘配置完了。

○○時○○分
敵機動部隊攻撃を開始。
88条に基づき本艦も攻撃を開始。

○○時○○分
右舷魚雷発射管、CIWSを損壊。

○○時○○分
機関室被弾。速力低下が始める。

○○時○○分
主砲以外の兵装が使用不可。
艦長より総員退艦準備の指示。

○○時○○分
速力10ktまで低下。
総員退艦開始。

○○時○○分
艦長と臨時乗員1名を除く総員退艦完了。

○○時○○分
臨時乗員1名が左舷から飛び込むのを確認。
船の速力回復。原因は不明

○○時○○分
救命艇から約1海里北の位置で船の爆発を確認。
護衛艦いなづま轟沈。

以上
32xfwHIDvFPk :2018/09/30(日)22:43:28 ID:jwN
今日はここまでです。
遅いし分かりにくいしですみません。

>>20
ありがとうございます
33xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)20:11:47 ID:l0e
こんばんは
進めていきます
34xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)20:25:00 ID:l0e
翌月
──東京・霞が関

数ある省庁のオフィスが並ぶビルのひとつに、男は呼び出されていた。
おそらく普段は使われていない会議室を、今日のためにセッティングしたのであろう。
パイプ椅子に座った男の眼の前には、長机を挟んでスーツを着た3人の男性。
傍から見れば就職試験の面接会場だが、流れている空気はおそらくそれより重いのでは、と男は思っていた。

「遠路はるばる申し訳ない」
真ん中の中年の男性が本当に申し訳なさそうに言う。

「いえ、このような国の中枢機関に呼ばれて、内心わくわくしています」
男はすこし表情を緩ませて答える。
男の答えを聞くと、正面の3人も少し表情を緩ませた。
これが厳正な面接試験なら、もちろん男もこのような緩い受け答えはしない。
しかし、これがそこまで厳正ではないということは男も知っている。
だから敢えて素人のような受け答えをした。

「それで、ご質問は」
相手からの答えは知っているが、男は改めて聞く。
「もちろん、先月の一件についてです」
正面の男性は緩い表情を少し強張らせて答えた。
35xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)20:33:23 ID:l0e
「乗船時の状況は──」
「船内のどちらに案内を──」
「話したと記憶している船員は──」

質問の内容は、おおよそ考えていた通りだった。
特に不都合も不利益もない男は、ただ淡々と質問に答える。
質問してくる男性もあくまで作業的に質問を続けるだけだ。

「最後に、脱出時の状況についてです」
しかし、この質問については今までの声色と違っていた。

「…はい」

「脱出の直前、あなたはどこに」

「はっきりとわかりません。おそらく自分達の待機室横の倉庫だと思います」

「なぜそんな所に」

「船内を乗務員の方に案内してもらい、いわゆる近道という形でその倉庫から待機室へ抜けようとしていました」

「その後船が攻撃を受けたわけですね」

質問のペースが明らかに早くなってきている。
しかし何も隠すことはない、男は事実を述べるのみだった。
36xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)20:40:15 ID:l0e
「それで、どのようにして複雑な船内から脱出できたのですか」

「それは…」

事実を述べるのみだが、男は答えに迷った。
自分が体験したことをありのままに伝えて、果たして信じてもらえるのか。
精神錯乱者として、病院送りにならないかなど、くだらない想像を一瞬のうちに膨らませた。

「なぜですか」
これまで通りのペースで答えない男に、正面の男性は追い打ちを掛けるように質問を繰り返す。

(正直に言えばいいだろ。信じてもらえなくても、彼女に助けられたのは事実だ…)
「──ッ」

「声が聞こえたんじゃないか」
男が答えようとした瞬間、左前の初老の男性が男の答えを言った。

「は、はい」
男は驚きを隠せないままに肯定する。
37xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)20:53:10 ID:l0e
「声はどこから」
呆気に取られている男をよそに、正面の男性は大して驚きもせず、先ほどのペースで質問を続けた。

「船…の放送がかかっているような感じでした」

「声の性別は」

「女性…です」

「名前は聞きましたか」

「いなづま…です」
未だ何が起きているか分からない男だが、質問は次々と進む。

「次で最後です」
正面の男性は混乱している男のためか、一呼吸置いた。
「あなたは、その声の正体を何だと思いますか」

「…それは」
この答えは、男も既に考えていた。

「船そのものの声だと思います…自分でも信じられませんが、あの声には感情がありました…」

何も知らない人間が聞けば、ただの妄言だろう。
しかし3人の男性は黙って男の意見を聞く。
「人工知能とかじゃない。あの時彼女は僕の身を案じて、外まで誘導してくれました」

「国と国民を守る人を護る。船そのものの声だったと、僕は思います」
38xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)21:09:54 ID:l0e
「わかりました」
正面の男性は、男の答えを聞くと納得したように立ち上がった。

「本日はお疲れ様でした。これで終了です。貴重な話を聞けました」
これまでにない、明るい声で男を労う。
「本当に、これだけの為に来てもらって申し訳ありませんでした。あ、そちらのお上には我々から連絡しておきますので」
男性が手元の書類を片付けている様子を見て、男はまずいと思った。

「待って下さい。あの、僕だって知りたいことがあります…」
男性は作業の手を止めて男を見る。
「あなたの質問はわかります。声の正体は何か…でしょう」
そこまで分かっているなら、なぜ答えを言わないのか。男はもどかしさに囚われる。

「…いずれ、わかります」
質問の答えは男を落胆させるものだった。
しかしこれ以上聞こうとも思えない、明らかに無駄だと、男性の口調から聞いて取れた。
「……失礼します」
男はゆっくりと椅子から立ち上がり、一礼をして部屋の出口へ向かう。

「今日は東京にお泊りでしたっけ?神田の蕎麦は美味しいですよ。あ、あまり好まないんですかね」
男性は機嫌を取ろうとしているのか明るく声を掛けてくるが、男はどうも、と会釈程度の返事しかできなかった。
39xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)21:24:51 ID:l0e
男が出た後、3人の男性は椅子に深く腰掛け男が出ていったドアを見ていた。

「どうしましょう。不信感しか持ってないですよ、彼」
真ん中の男性が呟くように言う。
「まぁやむを得んだろ。いずれにせよ、彼はやってくれる」
初老の男性が答える。
「何も問題なけれないいですが…それで、どうだった?」
真ん中の男性は、男が在室中一言も発さなかった男性に声を掛けた。

「問題ありません。指揮官としての素質を十分に確認できました。彼なら必ず艦隊を指揮できます」
答える声は見た目と違い、若い女性の声。

「ほら、大淀くんのお墨付き」
初老の男性は促すように言う。

「えぇ…では、決定ということで…」
中年の男性は安堵したように言った。
40xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)21:37:10 ID:l0e
「あの、そろそろ変装取っても…」
「あぁ!申し訳ない…!」

─────────────────────

日が暮れて人の増えた繁華街を男は歩いていた。
(あの右端の人…女性だよな…)
不思議なこと、違和感は多くあった。
(真ん中の男は…官僚か何か?現場には出てない…)
なぜ自分が呼ばれたのか、これから自分はどうなるのか、先ほどのやり取りから最大限予想する。
(左端の男は現場レベル…いくつか死線を抜けてる…)
男の予想は当てずっぽうではない。
人の目を見れば、おおよその人物像がわかる。
それは今の部署に来てから学んだ。というより、身についた。

(このままで終わるはずはないよなぁ…)
何せ東京まで呼ばれたのである。
何かしらのアクションがある筈だが、これまで男の経験では答えが出せなかった。

(…蕎麦でも食べに行くか)
機嫌を取られたようで、少々癪ではあったがせっかくの好意である。
男は考えることをやめ、さきほど男性から貰った情報を頼ることにした。
41xfwHIDvFPk :2018/10/08(月)21:38:00 ID:l0e

一旦ここまで

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提督「いなづま…か」
CRITEO