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【艦これSS】ハードボイルド不知火

1名無しさん@おーぷん:2017/01/30(月)22:40:29 ID:aDK()
ダニエル・フリードマンに多大な影響を受けています。
2名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:42:49 ID:aDK()
1
「9号室全員揃いました」
冬の朝の点呼ほど不快なものはない。特に起床ラッパで叩き起こされた朝ほど。
部屋長の陽炎が駆逐舎長に報告している中、私はそう思った。相部屋の黒潮もまだ眠そうである。
いつもは起床ラッパより早く起きるように心がけているが、昨日は夜更かしをしてしまった。
陽炎と黒潮の茶飲み話に付き合わされてしまったのだ。彼女らにとっては毎日の慣行であり、
毎日起床ラッパを目覚まし代わりにしている。同期の仲とは言え腹立たしい。
3名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:43:40 ID:aDK()
昨晩の話は支給品の九四式拳銃を受け取るか、ということについてであった。我々艦娘には任意で九四式拳銃が支給される。
拳銃は入隊時の他に一年に二回支給を要求できる機会がある。今日がその日だ。
深海棲艦に対して通常の火器は効果がほぼ無いため欲しがる者ほぼはいない。私は入隊時に支給してもらったが。
支給されたはいいものの自殺用と評判の九四式は欠陥だらけであった。
そこで私は二ヶ月間給与を貯め、M1911と悩み抜いた末、十四年式拳銃を購入した。
4名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:43:56 ID:aDK()
十四年式は素晴らしい銃だ。今までに街で暴漢を二人を大人しくさせた。
一人目は私に乱暴しようとしたので、太ももにピンポン玉大の穴を開けてやった。
二人目は陽炎に乱暴しようとしたので、肩を吹き飛ばしてやった。
昨晩の事に話を戻すと結局二人は支給してもらわないそうだ。もったいない。
5名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:44:32 ID:aDK()
考え直した方がいいです」私は報告し終え帰ってきた陽炎に小声で言った。
「何を?」陽炎もまた、まだ眠そうである。
「拳銃です」
「まだ言ってるんかいな」黒潮が割り込んできた。
「だって素手じゃ危ないですよ。この前だって私の十四年式が無かったらどうなっていたことか」
「素手で三人張り倒したあんたに言われてもねぇ…」陽炎は呆れ顔である。
一度だけ拳銃を持たずに街へ出たことがある。黒潮も一緒であった。そこでも乱暴をされそうになったので張り倒してやった。
世界はロリコンに溢れた危険な所だ。だがこっちは軍人である。チンピラなんぞには負けない。
6名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:44:58 ID:aDK()
ですがあれは危険でした。だからこの通り」ブレザーの中のホルスターと拳銃を見せた。
「肌身離さず持ち歩いています」
私が持ち歩いているのは知っているはずだが、二人がたじろいだ。
どうやら銃というのは持っているだけでも威圧感を放つようだ。
「静かに!」駆逐舎長が叫んだ。囁き声が聞こえなくなった。
「これより講堂に向かいます!全員確実に列を乱さずついて来てください!」ぞろぞろと一行は歩き始めた。
7名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:45:35 ID:aDK()
普段なら運動場で朝礼ののち解散し、それぞれ部屋に戻ってから朝食である。
何かあったようだ。
「なんやろか?司令はんが昇進でもしたんか?」黒潮は相変わらず楽観的だ。
「そんなことじゃわざわざ朝っぱらから全員集合させないでしょ」陽炎はいくらか察しは付いているようだ。
「窃盗でもありましたかね?」嫌な理由も思いついたが、考えられる中で最もマシだろうものを私は挙げた。
「暴力沙汰でもあったのかも知れへん」ご丁寧にあえて言わなかった方を言い当ててくれた。
8名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:46:07 ID:aDK()
その時列の前の方でどよめきが起こった。
見てみると資源保管倉庫の前に<立入禁止>と書かれた黄色いテープが張ってある。これを見るのは三度目か。
「どうやら盗みみたいやな」黒潮が言った。しかし彼女は楽観的すぎる。
さっき倉庫の壁にちらりと赤黒いものが見えた。近付くと何か分かった。やはり血だ。
「暴力沙汰かぁ、怖いわねぇ」陽炎は小声だ。
処理をしている警備員が五人、サッカーのフリーキックよろしく横並びで視界を塞いでいる。
しかし足の隙間からちらりと黒い袋が二つ見えた。事態は思っていたより深刻なようだ。
9名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:46:39 ID:aDK()
「殺しみたいですね」動揺を覚られないように極力感情を込めずに無表情で言った。
二人とも答えない。昨晩はあんなに元気だったと思うと不謹慎ではあるが滑稽である。

それから三分ほど歩き、講堂に着いた。駆逐舎が一番最後の到着だったようで、
もうすでに他の宿舎組は並んでいた。
10名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:47:10 ID:aDK()
横に士官達が偉そうに背もたれに寄りかかって座っている。
その中から指令が立ち上がった。中肉中背、30代といったところだろうか。
指令は私が入隊した一年後に前任の老人が急死し、副指令から昇進した。
偉そうで成果主義、おまけに口臭のきついいけ好かない野郎だ。
11名無しさん@おーぷん :2017/01/30(月)22:47:43 ID:aDK()
「朝早くから呼び出してしまいすまない。諸君らの中にも知っている者がいるかもしれないが」
指令は一呼吸置いた「昨晩、資源保管倉庫が襲撃を受けた。歩哨二人が殺害され、犯人は未だ逃走中である」
どうやら拳銃はしっかり手入れしておいた方がよさそうだ。
「やっぱり拳銃もらっておこうかな」陽炎は青ざめて小声で言った。
やっと理解してもらえたようだ。
12名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)15:00:29 ID:gY5
期待
13名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:02:09 ID:U2h()
2
軍隊の生活は単調だと言う人間は、ここの朝食を一度食べてみるといい。
スクランブルエッグの一皿でさえ、焦げた部分、トロトロの部分、冷たい部分とバラエティに富んでいる。
鎮守府の食事はバイキング形式だ。今朝のメニューは洋食で、ロールパン、
スクランブルエッグ、ソーセージ、ベーコン、シーザーサラダ、卵スープ、ベーグルである。
14名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:02:48 ID:U2h()
陽炎がバイキングから帰ってきた。彼女らしいバランスのとれた、正に朝食といった品揃えである。ややサラダが多い事が気にはなるが。
「私、できれば選ばれたくないなぁ」陽炎が言った。
あの後、指令は今後の対応について話した。捜査は艦娘の中から信用のある者を選抜し、その中でくじ引きを行って決める特別委員会で行うとのことだ。
それから今朝時点で鎮守府内にいたもの全員に外出禁止令が出た。事務員や警備員も含めてである。
どうやら大本営は徹底した緘口令を敷き、内部だけで問題を解決したいようだ。その為に私たちは軟禁状態だ。
15名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:03:35 ID:U2h()
「あの警備員はんたちも可哀想やな」黒潮も帰ってきた。
陽炎とは違い、かなり資質とタンパク質に偏っていた。そこまでしてベーコンを食べたいのだろうか。
「事件が解決したら普通に開放できるとも思わないわね」
陽炎は朝食の楽しむ気持ちと憲兵に対する哀れみの気持ちが入り混じった何とも言えない表情をしていた。
「メンインブラックのアレみたいに記憶消せばええやろ」
脳みそまでタンパク質に侵されたのかと一瞬考えたが、案外あっているかもしれない。
「あんたねぇ…」
16名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:04:11 ID:U2h()
「そうかもしれませんね」陽炎が何か言いかけたようだったが私は食い気味に言った。
陽炎も黒潮も唖然としている。お前が言い出したのだろうと。
「不知火たちは記憶を書き換えられていますよね?」我々艦娘というのは艦の史実の記憶を与えられるのだ。
「なるほど」陽炎は合点がいったようである。黒潮はふざけていったことが真面目な話になりばつが悪そうだ。
17名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:04:59 ID:U2h()
周りを見回すと私たち三人のように元気に朝食にがっついている者はかなり少ない。無理もない。
艦娘というのは仕事柄、血だの破片だのなんてのは見慣れている。
イ級を至近距離で吹き飛ばした時に得体の知れない体液のシャワーを浴びたこともあるし、
ル級の砲撃を太腿に被弾し野球ボール大の穴が開いたこともある。
一昔前ならば脚の切断を余儀なくされただろう。
しかし人間が殺されるのは、なかなかお目にかかれない。
私も今日初めて見た。平然と朝食をとっているのが異常なのだろう。
18名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:05:24 ID:U2h()
などと思っていたら皿の上のものをすべて平らげてしまった。
「ベーグルを取りに行ってきます」私は一回目でデザート以外のものを目一杯皿にのせて食べる。
その後でデザートを取りに行くのだ。立ち歩くのは二回と決めている。
「相変わらず早食いやな」黒潮が後ろで言った。
「早く食べ始めましたから」なんと答えていいか分からずよくわからない返事をしてしまった。
19名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:05:53 ID:U2h()
皆食欲が無いようで、いつもよりも多く大皿に料理が残っている。
ベーグルというのある種のパンのようだ。そういえばユダヤ人の食べ物と聞いた覚えがある。
デザートといった風体ではない。どうやら誤解していたようだ。
ベーグルを皿に二つ取り、朝食にデザートが無いことに落胆しつつ私は席に戻った。
20名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:06:10 ID:U2h()
席に戻ると陽炎はいなかった。
「陽炎は?」二単語だけで人の居場所を聞ける日本語は優れた言語だ。
「サラダ取りに行ったで」黒潮はベーコンをぱくついている。黒潮と二人きりだ。
よくわからないパンを食べている場合ではない。これは勧誘のチャンスだ。
「黒潮もどうです?」
「何がや?」と言いつつ何となく察しは付いているようである。
「拳銃ですよ」私が言うのと同時に黒潮が逃げの体勢をとった。
21名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:06:40 ID:U2h()
私が拳銃を勧めるのは何も野蛮人を吹っ飛ばした体験からだけではない。
前任司令官の老人(当時は現役の指揮官であった)が私の初参加する戦域攻勢作戦の前に我々の武運を祈りに来た。
私は彼と握手をして、生きて作戦を終えるにはどうしたらいいか、と尋ねた。
私を見た彼の瞳には本当の悲しみがあった。それは、我々の内にもいくらか戦死者が出ると分かっていたからだ。
彼はその歳に似合わないほど力強く私の方を掴み「しがみつくものが無くなった時には、君の銃をしっかりと握っておけ」
と言った。良い忠告に思えたので私は従った。危うく脚を一本失いかけたが、私はこうして生きている。
この体験を生涯忘れることは無い。
22名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:07:01 ID:U2h()
「ウチも取りに行ってくるわ」そう言うと黒潮はそそくさと立ち去っていってしまった。
私はベーグルに手を付けた。一口食べて手を止めた。
どうやらユダヤ人というのは一風変わった食文化を持っているようだ。
23名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:07:48 ID:U2h()
一人になり、資源保管倉庫の襲撃事件について考えた。内部の人間の犯行だろうか、外部の人間の犯行だろうか。
目的は何だろうか、金を欲しがる者ならいくらでもいるが資源を欲しがる者はそうそういない。
転売すれば金になるだろうから目的はそれか?この物騒なご時世にプライバシーとか何とかで
鎮守府の中で監視カメラが設置されているのは指令室や食堂のある本棟だけだ。おかげで二人の歩哨が死亡した。
大体この食堂の中にも殺人犯が混ざっているのかもしれないのに、何を呑気に朝食を食べているのか。
24名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:08:26 ID:U2h()
「なに険しい顔してんのよ」顔を上げると陽炎と黒潮が二人並んで戻ってきていた。
黒潮はしたり顔だ。私は黒潮のことを思って言っているというのに。
「このベーグルという食べ物がよく分からないのです」私は明るい話題になるよう心掛けた。
「ちょいまち~」黒潮があのボタンのない携帯電話を出した。皿を見るとついにベーコンしかのっていない。
陽炎もこのパンに興味深々である。あまりにも欲しそうだったので一つ分け与えた。陽炎の皿にはサラダしかのっていない。
そろいもそろって偏食だ。
25名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:09:17 ID:U2h()
「〝パンの一種。東欧系ユダヤ人の食べ物として知られる。乾燥を防げば品質は数日間保たれる。
また、水分量が少ないので、冷凍保存なら家庭用の冷蔵庫でも1ヶ月程度は充分に保存できる。”だそうや」ベーコンが言った。
「なるほど」問題はユダヤ人の食文化でなく、鎮守府の調理職員の技術のようだ。
「でもこれ…」サラダ食べようとしては鎮守府流ベーグルの異常性に気付いたようだ。
ここの調理職員は驚愕のベーグル調理法をマスターしている。なんと底を黒焦げにしつつも中を凍った状態に保てるのだ。
26名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:09:37 ID:U2h()
「凍らせたまま食べるものではないようですね」愚痴じみていった。
「手付けちゃったよ。どうしようか」陽炎に食べてもらう案はすぐさまキャンセルされた。
「とってこうへんでよかったわ」黒潮は食べずに済みそうだ。
「黒潮、リスクは仲間内で共有するべきだと思うんです」
私は手元のベーグルから1/3を切り分けながら言った。
「私もそう思うよ」陽炎も不敵な笑みを浮かべて切り分けている。
こうして三人は平等に食堂の生み出した負の遺産を食べる事となった。
27名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:10:10 ID:U2h()
全く最悪だ、ついていない。鎮守府で朝食は比較的悪くない時間だ。
それを資源倉庫を襲ったくそったれと、パンとシャーベットのキメラに害された。
私が食べ終わっても二人はまだ食べている。
心なしか周りの空気もさっきより重くなっており話しかける雰囲気ではない。
仕方がないのでポケットからトランプを出した。
ひとりブラックジャックは暇つぶしにぴったりだ。
15…悪くはない。
28名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:10:50 ID:U2h()
『ピーンポーンパーンポーン』放送を告げるチャイムだ。
『艦隊司令部より連絡です。以下の人は八○○○に指令室に集合して下さい。金剛さん、比…』
「特別委員会の件ですかね?」分かってはいるが私は同意を求めた。トランプの出目は8だ。
「せやろな」黒潮はベーグルの表面、凍っていない部分だけを食べている。
5…雲行きが怪しくなってきた。24。11。早く良い数を出さないと不味そうだ。
29名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:11:09 ID:U2h()
『鳥海さん。那…』
25。9。8。焦りでカードがうまく取れなくなってきた。
13。4。9。
『陽炎さん』
「えー!」陽炎が大声をあげて立ち上がった。食堂中の目が陽炎を見る。
『不知火さん』視線が私に移った。出目は3、もはや奇跡としか言いようがない。
30名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:11:33 ID:U2h()
『以上です』今は七時五十分。どうやら部屋にも戻れなさそうだ。
「陽炎、早く食べてください。行きますよ」平常を装って言ってみたが隠せただろうか。
「頑張れや」私は放送が再開されて黒潮の名前も呼ばれることを全力で願っている。
「それじゃ、これ食べといて」陽炎はベーグルを黒潮に押し付けながら言った。
私もこうしておけばよかった。
唖然としているベーグルの犠牲者を後目に私は食器を片付ける。
歯を磨くことすら出来なさそうだ。せめて口ぐらいゆすがなければ。
31名無しさん@おーぷん :2017/02/01(水)19:12:05 ID:U2h()
荷物をすべて片付け私はトランプをまだ片付けていない事に気が付いた
。陽炎はまだ荷物をまとめていないようだし最後に一度やってみようか。
一枚はAだ。これは何もしなくていいだろう。
陽炎が戻ってきた。
「陽炎、急ぎましょう」
今朝は最悪だった、ついていなかった。だが、最後の最後には必ず運が回ってくる。
AとKを片付けながら私はほくそ笑んだ。
32名無しさん@おーぷん :2017/02/05(日)04:14:17 ID:8nJ
読んでるよ
おつおつ
33名無しさん@おーぷん :2017/07/07(金)07:26:13 ID:16P
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