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艦これSSスレ@おーぷん 2隻目

1名無しさん@おーぷん:2014/10/18(土)15:30:09 ID:cre4c4enO()

ここは艦これSSスレです。

・作品投稿する際は投稿の衝突などを避けるため、一声かけてから投下してください。
・他の投稿者や感想を述べたい人に投稿終了が解るよう、投降の終わりが解るような告知もお願いします。
・皆が気軽に楽しむ為、荒らしなどと言った行為は慎むようお願いします。
・新スレは、投稿作品がスレまたぎとなりそうな場合に、その作品を投稿する人の判断で立てて貰って構いません。

その他のルールは随時追加していく形でお願いします。

前スレ
http://engawa.open2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1395904211/
2駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:30:50 ID:uBO2e06Ty
>>1
pixivに投稿したものですがよければお目汚し程度にどうぞ

キャラ崩壊言われましてもうちの長門さんはこんな感じなので崩壊してません
3駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:31:56 ID:uBO2e06Ty
「夕雲型一番艦、夕雲、着任しました。提督、甘えてくれてもいいんですよ?」

「なん……」

「だと……」

 夕雲着任の挨拶に提督と長門が身を乗り出す。

「はい、二人共ストップ。夕雲も二人をからかわないで……めんどくさいから……着任したてで疲れてるでしょ?巻雲の部屋開けてあるから早く休むといいよ」

「皐月さんありがとうございます。では休ませてもらいますね、久々に妹達の顔も見たいですし。それでは」

「うむ、それでは」

 頭を下げ執務室から出ていこうとする夕雲の後を長門が追おうとする。

「ちょっと待て、そこのビックセブン。俺を差し置いて何をしてるんだ」

「ハハハ、勝てばよかろうなのだ!!」

「はぁ……二人共いい加減にしないと……ボク……怒るよ?」

『すいませんでした!!』

 どこからともなく日本刀を取り出した皐月に二人の華麗な土下座が決まる。
4駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:33:02 ID:uBO2e06Ty
「はぁ……というかさ、なんで長門さんいるの?秘書艦ボクだよね?」

 皐月が提督を睨みつける。

「いやちょっと待て、俺は関係ないぞ。気づいたら自然にここにいたぞこいつ」

「フフン、この長門、新しい駆逐艦が来たとあらばお迎えするのが当然だろ!!」

「うん……もういいよなんでも……ほら司令官、夕雲着任の書類まとめちゃって、今日の執務それで終わりだからさ。そうだ、晩御飯どうする?」

「了解っと、晩飯かーどうすっかなー」

「私は皐月が作ってくれたものなら何でもいただくぞ」

 何故か居座っている長門が二人の間に割って入る。

「……長門ちょっと飲みに行くか」

「え?でも?皐月の手作り――」

「皐月今日はそれでいいか?もしなんだったら久々に睦月達と晩飯食ってこい。俺の権限で少しだけどサービス券やるから」

「そうだね、ボクはそうするよ」

 長門の発言を無かったものとして二人は会話を続ける。
5駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:33:34 ID:uBO2e06Ty
「では私もそちらに――」

「長門お前は今から鳳翔さんの所行って待ってろすぐ行くから、というか提督命令だ。従わないと今後駆逐艦との接触を禁止する」

「なに……卑怯な……まぁいい、先に行っておこう。じゃぁな皐月、睦月たちによろしく言っておいてくれ」

 長門は少し不満気な顔を見せ、ブツブツと呟きながら執務室を後にした。

「なぁ皐月?」

 提督がため息混じりに皐月に声をかける。

「何、司令官?」

「あいつ本当に、栄誉ある連合艦隊の旗艦なんだよな?」

「断言できればいいんだけれど……ボクも正直自信がないよ……」

 ため息混じりに皐月がその問いかけに答える。
 その後何の問題もなくデスクワークを終えた提督と皐月はそれぞれがそれぞれの夕食場所へと向かっていった。
6駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:34:20 ID:uBO2e06Ty
「こんばんわ、鳳翔さん。長門は?」

 鎮守府敷地内の一角にある居酒屋。艦娘が130人以上に増え、出撃がない艦娘達はそれぞれ自分の経験や能力を活かし鎮守府内部で様々な事を行っている。ここは主に鳳翔が切り盛りしている小さな居酒屋で、隼鷹や千歳はもちろん、料理の美味しさから暁達にも好評である。

「こんばんわ提督。今日もお疲れ様です。長門さんなら奥の席にいらっしゃいますよ。お飲み物はどうします?」

 普段の装いと殆ど変わらない、変わるところといえば艤装を外している鳳翔が笑顔で提督を迎える。

「うーんじゃあハイボールで。料理はこの予算でオススメをお願い出来る?」

「ふふっ、了解しました。それじゃぁ先にお酒だけお渡ししますね。ごゆっくりしていってください」

「うん、ありがとう」

 提督はその場でジョッキを受け取ると長門が通されているという奥の個室へと向かう。

「長門……ってお前もう飲んでるのか……別にいいけどさ」

「フフッ疾きこと島風の如しだ!!」

「いやドヤ顔で何言ってんだお前。そもそもお前島風じゃねえし、でかいし」

「私だって……できれば駆逐艦に生まれたかった……」

 提督の一言で大きなビールジョッキを抱えながらその場ににうなだれる長門。

「いやお前、うちの鎮守府にはいないけど世の中には戦艦になりたい駆逐艦だっているんだぞ、というか恐らくそっちの方が大多数だよ」

 提督はため息混じりに長門に突っ込みながら、外套や帽子を外し、襟元を緩めながら長門の対面に座る。
7駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:34:53 ID:uBO2e06Ty
「その駆逐艦がこなかったのは提督の運と指揮のせいだと聞いているが?」

「あの作戦で誰かさんが毎回大破しなけりゃうちにも磯風がいたかもな」

「痛いところを……」

「あらあら、早速盛り上がっていますね。今日は貸し切りにしておいたので存分に騒いでいってくださいね。はい長門さんビールです」

「ありがとう鳳翔」

「サンキューな鳳翔さん」

 提督と長門が簡単な問答をしていると鳳翔が大ジョッキよりも大きなジョッキに注がれたビールと、簡単な料理を持って二人のところに現れ、いつもの笑顔のまま再び奥へと引っ込んでいく。

「仕切りなおしだ、乾杯と行くか」

「うむ、それでは――」

 二人が頭上にグラスを掲げる。

『やっぱり駆逐艦は最高だぜ!!』

 そんな掛け声とともに乾杯が酌み交わされ。すぐに提督が頭を抱える。
8駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:37:30 ID:uBO2e06Ty
「ついついまたやっちまった!!青葉?青葉いないよな?」
「どうしたんだ提督よ?いつものことではないか」
「お前、この件で前の夏にすっごい望月に煽られたんだよ!!」
 提督は夏の一件を思い出し、隠しカメラや盗聴器が設置されていないか、座布団の下から天井までくまなく探す。
「ご褒美じゃないか!!……いやそうでもないか……まぁ、落ち着け。鳳翔の店だぞ?そんなことあるわけがないじゃないか……多分」
「そうだよなぁ……考え過ぎかなやっぱ……うん」
 長門の言葉に促されるように提督は元の座に着いた。
「それでだ、私が思うに提督は少々贔屓がすぎると思うのだが?」
「いきなりぶっこんでくるなお前は……で、そう思う理由は?」
「そうだな、まず第一に――」
 長門がジョッキのビールを空ける。
「この鎮守府の艦娘を練度が高い順にデータ整理するだろ?そこでトップ10を見てみると、まず皐月。まぁこれはしょうがない、続いて比叡や加賀、最上が出てくるのも分かる……がトップ10の中にレーベ、望月、ひび……今はヴェーヌルイか……が含まれている。他の鎮守府のデータも見たことがあるがTOP10人のうち3人が駆逐艦というのはあまり見たことがないぞ……」
「……そ……ソンナコトナイヨ」
「提督よ……目を逸らしながら人口音声みたいな声になるのはやめろ……。次にだ、そんな駆逐艦好きの提督ではあるが提督に辛辣な駆逐艦、主に曙、不知火、満潮等だが極めて練度が低い。その割に、取るに足らない点ではあるが、あくまでも客観的に見て、性能が低いとされる睦月型の練度が何故か高い、とまぁこんな所だ。どうだ?」
「反論の余地はないが言い訳させてくれ……」

 ヤケ気味に酒を煽りながら、うつむき加減の提督は呟く。

「何だ?」

「駆逐艦好きに関してはもう言い訳すら出来ない、睦月たちについてもだ。曙たちについてなんだが、そのなんだ……決して嫌ってるわけではないし、俺の贔屓は全員がある一定のラインの上に立った+地点からという認識を持って欲しいんだが――」
 提督がジョッキに残った酒を飲み干す。
「この世界でぐらい優しくされたいじゃん!!こっち来てまでクソだの使えないだの俺の心そんなに強くないんだよ……いや分かってる。あいつらもいい子だし、頑張ってるって知っているからそれには応えたい、でも出来ることなら優しくされたいじゃん?」
「提督、それ以上世界を壊す発言はやめておけ……なるほどな。しかし、私もこの前勝手にお泊りしようとしたらクソ戦艦と罵られたがアレはアレで良いものだったぞ」
「お前と一緒にすんなこの変態」
「ふむ、しかし提督にそのようなことを言われても何も感じないな。まぁ、しかし――」
 長門が自身の後ろにある窓から上空に輝く月を眺めながら微笑み、
「私は提督が、この鎮守府の艦娘皆を大事にしていることは知っているし、今日更に知ったぞ。多分他の皆もだ。そうだろ鳳翔?」
「ええ、そうですね。提督はちょっと不器用なところもありますし、変なところもありますけど、その点に関してだけは私達皆が知っていますよ。はい、お二人共ビールやハイボールもいいですけど今日いい日本酒が入ったのでいかがです?いい季節ですし熱燗ですよ。それと追加のおつまみです」
 タイミングを見計らったかのように現れた鳳翔が、二人のジョッキを片付け、新しく徳利とおちょこ、料理を机の上に並べる。
9駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:38:31 ID:uBO2e06Ty
「うーん、なんか複雑だけどまぁいっか」
 提督が上機嫌で二人の言葉を受け止める。
「あとこんな風に単純なところもだな」
「ですね」
 長門と鳳翔がそんな提督の様子を見て顔を合わせて笑う。
「なぜ笑う……俺は至って正直だぞ全てにおいて。というか長門お前も――」
 提督がおちょこの中の日本酒を空けると楽しそうに笑う長門見据えなおす。
「何だ提督?私になにか不満な点でも?あぁ、ありがとう」
 提督から酌を受けながら何かを言いたそうな提督と顔を突き合わせる。その二人の顔はほんのり赤くなっている。
「いやさぁ……練度も申し分ないんだけどさ……まだ鎮守府内の駆逐艦達に対する変態行為はビックセブン補正とか色々あって、ギリギリ法の範囲ならまぁ許してもいいんだけど……何でお前出撃して最初に敵の駆逐艦狙うんだよ!!結果として敵戦艦空母が残って、お前が皐月やらレーベ庇って被弾して撤退が多いんだよ!!あ、ありがとう」
 若干熱くなっている提督に長門が酌をし、少しバツが悪そうにはにかむ。
「あーそれは……うーん……なんというか提督は私達艦娘の成り立ちというか、どういう存在なのかは皐月に聞いてるよな?」
「あぁ、ケッコンカッコカリした時に聞いたよ。簡単にいえば良い付喪神なんだろ?まぁそうじゃなければ、性格の微妙な差はあれども同じ姿の艦娘が多数存在する理由が付けられなくなるしな。それは納得してる」
 お互いちびちびと酒の手を進めながら若干落ち着いた様子で話を進める。
「では、深海棲艦のことも大まかには理解しているという認識でいいかな?」
「まぁ、俺の認識が合っていればだけどな」
 提督の答えを聞くと長門は残っていた酒を一気に飲みほす。
「私は……開放してやりたいんだよ。戦っている時に感じる『あの娘達の』負の感情から……それが例え敵であっても、その呪縛からな……戦うのは私達だけでいい……私の思いが伝わっているかどうかは分からないがそういうことだ。それに、こうして変態だがある程度有能な提督の元にいる、沈むことはない、少なくともあの光の中でな……」
 長門が少し遠くを見ながらそう呟く。
「変態は余計だよ、そっくりそのままお前に返してやる。お前の考えは理解した、敵の感情は戦場にいない俺には計り知ることができない……だがな、戦術もある。恐らくだがお前考えていることは他の皆も同じはずだ。だから、あまり気負わず仲間に任せてみるのも一計だぞビックセブン。なぁ、鳳翔さん?」
 提督も残りの酒を飲み干し、長門に真剣な表情そう伝え鳳翔の方に顔を向ける。
「ええ、そうですよ長門さん。皆強い娘ばかりです。それに、少し変ですけどこの提督もいるんですから」
「鳳翔さんそのオブラートが逆に辛いからやめて……」
 笑顔でそう告げる鳳翔の言葉に提督は肩を落とす。
10駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:39:26 ID:uBO2e06Ty
「フフッそうだな。私も気づかぬうちに連合艦隊旗艦という称号を気負っていたのかもしれんな。だがな……私の駆逐艦達に対する愛はこれからも変わらんぞ!!」
「むしろそっちを少し自重しろよ!!このながもんが!!」
「変なアダ名をつけるな!!だがそれ駆逐艦達の間で流行るともっとこう親しみが湧きそうだからどうにか流行らせておいてくれ!!」
「やっぱなんか残念だよお前!!もっと他の鎮守府の長門みたいに凛と出来ないの??」
「提督には残念と言われたくない!!それに、よそはよそ!!うちはうちだろ!!」
「お母さんかお前は!!」
「まぁまぁ、おふたりとも落ち着いてください。追加のお酒持ってきますね」
 連合艦隊旗艦と舞鶴鎮守府提督のどうでもいい口論を鳳翔が止めに入る。
「あ、鳳翔さん使って申し訳ないんだけど――」
 その場をさろうとする鳳翔を提督が呼び止める。
「なんでしょうか?」
「せっかくだから、隼鷹やら千歳、ビスマルクも呼んでやってくれませんか?誰か連れてきてもいいって感じで。このままだと喧嘩になる」
「フフッ、分かりました。お酒は大勢で飲むともっと楽しいですからね」
「提督!!」
 二人の間に長門が割って入る。
「何だ?」
「駆逐艦は!!」
 長門はバンバンと机を叩きながら催促する。
「……鳳翔さんえーっと……レーベとマックス追加しても大丈夫?」
「ええ、問題無いですよ。提督はここで飲まれる時大人数になることは分かっていましたから、連絡が来た時にもう色々準備してあるんですよ。任せて下さい。それでは座を外させていただきますね」
 鳳翔がポンと胸を叩き、再び調理場へと戻っていく。
「よろしくお願いします」
「ちなみに提督、そのチョイスの意味は?」
「呑兵衛軽空母と、ビスマルクは酒強いからな……で、駆逐艦の中でも割りと飲めそうな奴らをチョイスしてみた。ヴェーヌルイは今日は第六駆逐隊でゲーム大会やるって言ってたし、睦月型は今日は皆でゆっくりしろって皐月に言っちゃったからな」
「なるほど、そういうわけか納得した、フフッ楽しくなりそうだ」
「あんまり変態行為するなよお前」
「その言葉そっくりそのまま返すよ。お、丁度一杯ずつ酒が残っているようだな。提督よほら」
 長門が提督に酌をする。
「おう、ありがとう。ほらお前も」
 提督も残りの酒を長門のおちょこに注ぐ。
「それじゃあ、仕切りなおすか。何に乾杯する?」
「決まってるだろ?」
 二人がアイコンタクトで盃をあげる。
『駆逐艦に乾杯!!』
 本日二度目の乾杯が交わされた。
11駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:40:06 ID:uBO2e06Ty
「ヒャッハー、提督、それに長門さん呼ばれてきたよ―?」
「お邪魔しまーす」
「お前ら酒持参かよ……」
 乾杯から少し間をおき隼鷹、千代田が一升瓶を持って姿を現す。
「提督、こんばんわ。呼んでくれてありがとう」
「ふふっ、楽しそうね」
「ドイツ産のビールたくさん持ってきたわよ!!」
 ほんのり顔が赤いレーベ、マックス、ビールケースを抱えたビスマルクもほぼ同時に姿を現す。
「もう飲んでるのか。って長門さり気なくレーベとマックスの間に入るな。むしろ俺が――」
 目にも留まらぬ速さでレーベとマックスの間に移動し正座している長門に提督が突っ込む。
「あっれー?提督いいの?皐月ちゃんにいっちゃうよ?」
「勘弁して下さい……」
 縮こまる提督の姿を見て全員が笑う。
「そういえばあの娘は?」
「あー、お手洗い言ってから来るってさ。しかし、まぁ偶然とは言えよく一緒に来たね」
「ん?千代田、誰か連れてきたのか?まぁいいけど。大人数のほうが楽しいしな」
「皆さんお待たせしました、ほら曙ちゃんもこっちこっち」
 料理を持った鳳翔の後ろから曙が少し恥ずかしそうに顔をのぞかせている。
「お、曙。珍しいなお前がこういう会に来るなんて」
「何よクソ提督?何か文句でもあるわけ?」
「いや、無いけど。とりあえず座れって……ってビスマルクとマックスは何大爆笑してるんだ?」
 ビスマルクとマックスが腹を抱えて大爆笑している姿が提督の目に映る。
「フフッ……クソ提督って。ハハハハハハッッハ、クソってフフフフフフ」
「曙いいわそれフフフフフ、私も明日からそう呼ぼうかしら、クソってフフフフフ」
「ちょっとマックス……それにビスマルクさんも……ブフッ」
 二人をたしなめようとしたレーベもその段階で吹き出す。
「沸点低いなドイツ組!!まぁいいや、全員揃ったし乾杯するぞ、鳳翔さんもほら、曙もとりあえず座れ座れ」
「では、お言葉に甘えて」
「しょうがないわね」
 提督が鳳翔と曙を招き入れグラスを渡す。だがその視界には何故か曙の前で土下座する長門の姿があった。
「おいそこのながもんさん……何してんの?」
「曙よ!!私を罵ってくれ!!」
 長門が全力で叫ぶ。
「何言ってんのよ、このクソ戦艦!!」
「ありがとうございます!!それでは乾杯と行くか」
 満面の笑みでグラスを掲げる長門と、それを見て大爆笑する隼鷹と千歳。そして若干引いている曙。
「本当お前は……曙も気にするな、こういう奴だ。じゃあ、いくぞ」
『乾杯!!』
 大きな声で、楽しそうに乾杯が交わされた。
 その後、メンバーが増えたりしながらこの飲み会は朝まで続いた。
 次の日、作戦に支障をきたすレベルの二日酔いになった各人はそれぞれの姉妹や秘書艦にこっぴどく怒られたという。ただ一つ変わったことがあるとすれば、曙の表情が少しだけ柔らかくなったことらしい。(漣談)

艦!!
12駆逐艦は最高だぜ :2014/10/19(日)23:40:56 ID:uBO2e06Ty
以上です。
見やすいように改行挟んで書いてたら行数めっちゃ増えてしまったので後半圧縮しました
申し訳ないです


シリアスってどうやんの……
13名無しさん@おーぷん :2014/10/20(月)16:50:08 ID:qZ41rLtz2
凛々しく変態やってるながもんさんw

SS投稿しても大丈夫でしょうか?
14ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:04:53 ID:qZ41rLtz2
自分がケッコンしたときの状況っぽく書いてみました。

女提督です。

「ねぇねぇ、知ってるー?ケッコンカッコカリってのが実装されるんだって」

とある鎮守府の食堂で、向かい合わせになった北上と大井が頬杖を突きつつ話していた。
「北上さんは興味あるの?」
「んー、まぁ、現状、あたしが一番練度が高いからねぇ、にしし」
「……そう、ですね。でも、うちのところの提督、ケッコンするのかしら?」
「どうだろねー。艦隊に組み込んだ子はもれなく好きになるタイプだから、一人に決められないんじゃない?」
「あー、確かに……」
北上がふらりと通りすぎようとした艦娘に声をかける。
「ねー、川内はどう思う?」
「……何?夜戦に最適な装備について?」
「あはは、違う違う。ケッコンカッコカリだよ、聞いたことない?」
川内は眉をひそめ、考え込む。
それを見た大井が茶化すように言う。
「夜戦に関係ないから覚えてないんじゃないですか?」
「…………私達、艦娘だから提督とは結婚出来ないんじゃないの?」
「え、あー、そっちじゃないんだけどねぇ」
「まだ大本営からの正式な発表はないけど、練度の上限解放が出来るって噂よ。当分関係ないでしょうけど」

「上限解放……もっと夜戦出来るかな?」
15ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:07:34 ID:qZ41rLtz2
(どうぞと言われる前にやってしもた……)

「ふふーん、テートクとケッコンするのはこのワタシデース!」

「……なんでこちらを指差しながら言っているのでしょうか?あ、紅茶のお代わりいただけますか?」

赤城は紅茶のカップを金剛に渡しつつ、もう片方の手でマフィンを取り、口に放り込む。

「アカギ、何杯飲んでるネー!ンモー、仕方ないデスネー……」

「金剛さんの淹れる紅茶が美味しくてつい……それで、ケッコンカッコカリとはなんなのでしょう?」

「きっと、テートクと愛の契りを交わす儀式デース!」

「愛の契り……身体を交わすのでしょうか?」

「は、はひっ?!あ、アカギ、大胆だヨー……」

「……?金剛さんはそういう意味でおっしゃったのでしょう?」

「あ、えと、その、い、意地悪はノーなんだからネー!」


「お姉さまケッコンしちゃうのかな……」

「は、榛名は金剛お姉さまの幸せな顔が見られたらそれで充分です……!」

「……比叡お姉さまも榛名も少しは落ち着いて下さいよ」

本を片手に霧島は比叡と榛名をたしなめる。

「どうするかは司令次第ですし、私達にはどうにもできませんよ」

「わ、分かってるけどー!」

「そもそもこの鎮守府の誰も練度が足りないじゃないですか」

「き、キス島でも榛名は大丈夫です!」

「気合い!入れて!入れて…………なんとかする!」

はぁ、とため息ひとつ吐いて霧島は読書に戻った。
16ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:11:58 ID:qZ41rLtz2
「ていとくぅ、皆がケッコンカッコカリの話するんだけどさぁ、ぶっちゃけどーなの?鈴谷にだけ、教えて♪」

鈴谷は小柄な提督を後ろから抱きしめる。
その瞬間、勢いよく執務室の扉が開かれる。

「抜け駆けは許しません」

「げ、加賀さんじゃーん……どしたのー?」

加賀はいつにもなく冷たい眼で鈴谷を見詰める。

「……貴女こそどうしたのかしら?そんなに提督に近づいて。」

「鈴谷はお話しに来ただけだしぃ……」

「あら奇遇ね。私もお話しに来たのよ。大事なお話するから、席を外してくれないかしらね?」

「えー、鈴谷今来たところなんだけどぉ」

提督を挟んで、二人の間に見えない火花が激しく飛び交う。

「あ、あの、二人ともお話って、何……?」

苦笑いしつつ提督から話を切り出す。

「んー、提督さー、ケッコンカッコカリって知ってる?」

「あぁ、うん、大分前から噂になってたね」

加賀は鼻先が付きそうなほど顔を近づけ、問う。

「単刀直入に伺いたいのですが、提督はどの艦娘とケッコンなさるおつもりでしょうか」

「え、えっ、ちょ、ま、えっ?」

「逃げない逃げないー♪」

より強く抱きしめられると同時に、後頭部に豊満な胸が押し付けられる。

「さぁ、教えてください」

椅子の上でじたばたと暴れるが、艦娘の力には勝てるはずもなく……。
17ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:12:17 ID:qZ41rLtz2
しばらく奮闘して。

「やぁっと静かになった。ほらほらー、白状しちゃいなー♪」

鈴谷は小悪魔な笑みを浮かべながら、提督の頬をむにむにともてあそぶ。

「ほのー、きめてないれふ……」

「そう、ですか」

「さっきからほーいっへるひゃーんみゅー」

「あはは、変な顔」

「鈴谷、それ以上はやってはだめ」

「はーいっ、んじゃーねー」

妙にぼろぼろになった提督がぼそりと呟いた。

「……なんだったんだいったい」
18ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:15:28 ID:qZ41rLtz2
そのあとも、執務室にはケッコンカッコカリについて質問する艦娘が後を絶えなかった。
その度に私は、その予定は今のところないと伝えていた。

肩を落として帰る娘もいれば、教えるまで帰らないと居座る娘もいた。
帰らない娘には秘書艦をしてもらったが。
そんなことを繰り返すうちに、私は、少しずつケッコンカッコカリについて考えるようになった。
色々私なりに考えて出した結論は―

ケッコンカッコカリ実装まであと数日を控えたある日のこと。

ぴーんぽーんぱーんぽーん

『軽巡洋艦川内、至急執務室まで来るように』


「川内参上!どーしたの?」

「やっほい、川内ちゃん、しばらく秘書艦やってもらうからね」

「はい、分かりました。夜戦する?」

「必要ならするよー」

「やったぁ!」

川内は鼻唄を奏でながら書類を整理していく。

「あ、そういえばさ、提督」

「んー?」

「ケッコンカッコカリってどう?」

「ぐ、う、き、決めて、決めてないっ!」

「……顔真っ赤だよ?」

「あああ違うっそんなことないって!」

「身体辛いなら無理しないでちゃんと休みなよ?」

「は、はひ……」
19ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:17:54 ID:qZ41rLtz2
「えぇー?!それ、自白してるみたいなものだよぉ!」

「え、そうかなぁ?」

「決めつけない方がいいんじゃないかしら……?」

川内型の部屋のベッドの上で三姉妹が会話の華を咲かせる。

「いやいやー、ケッコンの話したら顔真っ赤にするとか、絶対そのつもりだよ!那珂ちゃんの灰色の脳細胞がそう言ってるよ!」

「……姉さんはどう思っていますか?」

「んー……まぁ、そう思ってくれてるなら、私はそれに答えるだけ、かなぁ。夜戦いっぱいしてくれるから、提督のことは好きだよ」

「おおぉっ!両想いだぁっ!」

「な、那珂ちゃんっ、ちょっとっ」

神通が那珂を呼び寄せ耳打ちする。

「そっとしておいた方がいいと思うわ」

「えー……そうかなぁ」

「二人のためです、暖かく見守りましょう」

「んー、そっかぁ。じゃあ、静かに応援しちゃお!」
20ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:21:51 ID:qZ41rLtz2
それからしばらく経ち、春になった。
大本営より、特別海域に出撃し敵を撃破せよと命令が下った。
私は川内を旗艦とした艦隊で誰一人欠けることなく、特別海域を攻略していった。

そんなある日。

やっと、この箱を渡すことができる。
手のひらに乗った小さな青い箱を見つめながら私はため息をひとつ、吐いた。

こんこん、と執務室の扉がノックされる。

「どうぞー」

「……どうしたの、提督?」

川内が不思議そうにこちらをみつめてくる。

「あ、ん、えっと、その、ちょと、こっちきて」

顔が熱い。
胸に言葉がつっかえて出てこない。
そんな私の様子を見て、川内が心配そうに、だけど、少し茶化すように私に声をかける。

「どうしたの?そんなに赤くなって?」

川内は少し大人びた表情で私の頭を撫でる。

「う、んと……」

「……はっはーん、さては私と夜戦したいんだなぁ?」

私はこくりと頷き、青い小箱を彼女に差し出す。

「そっかそっかー、じゃ、夜戦しよっか!……ん?なにこれ?」
21ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:22:13 ID:qZ41rLtz2
目の前で箱を開いた。

「指環、だね……」
「指環……です。ひ、左手、出して」

川内は私の意図を察したのか、左手袋を外した。

「せ、川内ちゃん、ケッコンしてください。これからも一緒に夜戦しましょう」

そう言ってから、私は彼女の左薬指に指環をはめた。

「なんか……強くなった気がする!」
「ほ、ほんと?」
「うん!これでもっと夜戦ができるよ!」

満面の笑みを浮かべた川内を見て、私は安堵した。

「提督、左手出して」
「ん、はい」

川内は私の手を取り、どこから取り出したのか、対になる指環を薬指にはめた。

「どこから出たの?」
「指環はめてもらったときに手のひらから出てきた……はず」
「はず?!」

「それにしても提督の手ちっちゃいねー。むにむにしてるし」
「身体小さいからねー……陽炎型にも負ける……」

不意に、川内から抱き締められる。

「そういうところも含めて提督だからさ……これからも、よろしくね」
「あぁ、うん、よろしく」
22ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:23:35 ID:qZ41rLtz2
「え、テートク、センダイとケッコンしたノー?!」

「あー、やっぱりねー、そんな感じしたわー」

「んもー、鈴谷にあれだけセクハラしたくせにー!」

「姉さんが幸せになれたら私はそれだけで嬉しいです……!」

「……神通ちゃんの持ってる写真さえなければ、那珂ちゃん素直に賛成できるんだけどなー」

「ケッコンおっそーい!」

ケッコンを発表したとき、皆の反応は様々だった。
間宮さんがお祝いのケーキを振る舞ってくれたが、それ以上は特になく、またいつもの日常に戻っていった。



……改二に向けて他の艦娘を秘書艦にした事で川内に迫られたりしたけども、それはまた別のはなし。

艦!
23ケッコン狂想曲 :2014/10/20(月)17:25:43 ID:qZ41rLtz2
何回か改行多いと怒られました。
もう少しいじくるかもしれませんが、pixivの方に投稿するかと思います。
24名無しさん@おーぷん :2014/10/20(月)17:55:57 ID:o2aBcDIGR
ケッコンものいいなあw

自分は改行は適度にある方がいいと思ってる派です
会話だけで状況を表す文章がない場合は、息が入るタイミングで改行
説明文が入る場合は、説明文と会話との間に改行
みたいな感じでやってるかなあ・・・
25名無しさん@おーぷん :2014/10/20(月)20:16:02 ID:qZ41rLtz2
息が入るタイミングで改行になるほどと思いましたー
みんなバラけてるのも統一感に欠けますしなぁ……

みんなのケッコン話読みたい……デース
26名無しさん@おーぷん :2014/10/20(月)23:51:52 ID:9cf78r9z7
>>12
ただ駆逐艦が好きってなだけじゃないのね、良いながもんだ
下戸なので楽しい飲み会を書ける人っていいなと思う
>>23
指輪交換いいな!ニヨニヨしてしまった
初めてのケッコン相手はもう決めてるんだけど…早く99にしたい
27名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:49:38 ID:IObDb4FNv
ここが新しい艦これSSスレか

こんにちはディケイドです

取り敢えず、前回前々回投稿分と同じ量出来たので、流していきますね
見てくれてる人がまだ居ると信じてw
28名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:51:42 ID:IObDb4FNv
【新帝海軍本部】

副司令「よく来たね。前は顔を出せず済まなかったよ」

提督「ご多忙な中時間を割いて頂き光栄です」

提督を出迎えたのは、物腰の柔らかそうな老齢の男性だった。

副司令「随分と提督業も板に付いてきたようだね」

提督「いえ、まだまだ若輩者です」

副司令「まぁ…その傷を見る限り、まだヤンチャなのは分ったよ」

提督「これについては、返す言葉もありません…」

副司令「なに気にするな。説教をするつもりで呼んだ訳ではないからね。さ、書類手続きには時間が掛かるから総司令と話してきなさい」

提督「分かりました。…して、総司令は何処へ?」
29名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:52:10 ID:IObDb4FNv

福司令「機龍の搬出デッキで陣頭指揮を取ってらっしゃる。あの方も随分と張り切っているからね」

提督「ありがとうございます。では…」
30名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:52:46 ID:IObDb4FNv
【新帝海軍本部/機龍搬出デッキ】

総司令「ついに、ここを出る時がきたか…」

金剛「親心ですネ?」

総司令「金剛はうまい事を言うな、息子…いや、娘になるのかな。…頼んだぞ」

金剛「お任せ下サーイ」

提督「総司令」

総司令「おぉ、君も来たか。どうだ?あのじゃじゃ馬は元気か?」

提督「天龍ですね。えぇ、時折無茶はしますが元気にしていますよ」
31名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:53:36 ID:IObDb4FNv

総司令「君の目に狂いはなかった、という所か」

提督「否定はしません」

総司令「良いな。偽りのない最高級の答えだ」

提督「総司令、いよいよですね…」

総司令「あぁ」

三人の眼前には、鉄製の巨大な物体が鎮座していた。
大きさ形は丁度正規空母一隻分程だろうか、この中で機龍は起動の瞬間を待ち続けている。
32名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:54:33 ID:IObDb4FNv

蒼龍「提督ー!」

飛龍「私達もいつでもいけます!」

飛龍と蒼龍は、それぞれ機龍運搬用コンテナの脇にスタンバイし、遠くの提督達へ準備完了の旨を伝えた。

提督「あぁ!では、1200!提督権限の元、限定的第二艤装解放を許可する!」

提督の号令を確認し、飛龍と蒼龍は前面へと手をかざす。すると、まるで電流同士がぶつかり合って弾けていくかの様に眩い粒子が辺り一面に溢れ始めた。

総司令「いつ見ても、凄いな」

次第に、搬出デッキ内には独特な気流音がなり始める。何も無かった空間へ突如巨大な物体が出来る事で、空気の流れが変わった音だ。

提督「自分も未だに信じられない時があります。ひょっとして夢なのではないかと」

眩い光と、大きな音を合図に、機龍運搬用コンテナの両脇に巨大な鋼の塊が現れ出す。
33名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:55:18 ID:IObDb4FNv

総司令「無論…夢ではないが、希望だよ。人類のな」

やがて、何も無かった筈の空間には正規空母二隻がその体躯を誇るかの如く、静かに鎮座していた。

蒼龍「私達は先にガントリークレーンに行ってますねー!」

飛龍「また後でー!」

提督「ご苦労だったー!まだ時間はあるから休憩しておけー!」

総司令「いい娘達だな」

提督「えぇ、うちの艦娘達は皆優秀ですから」

総司令「うむ」

総司令は満足そうに一度頷くと、手元に用意されたマイクを持つ。
34名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:56:04 ID:IObDb4FNv
総司令『あー、聞こえるかね?整備士諸君。直ちに正規空母二隻と機龍運搬用コンテナのドッキング作業を開始したまえ。全行程終了目標は1400とする、引き締めてかかってくれ』

マイクからスピーカーを通して総司令の声が搬出デッキへと響き渡り、にわかに現場は慌ただしくなる。

金剛「では私は護衛艦隊との最終打ち合わせ、行ってますネー!」

金剛は駆け足気味に搬出デッキを後にした。

総司令「提督よ」

提督「何でしょう?」

総司令「大事な話がある」

提督「大事な話、ですか。ならば人気の無い所でお伺いいたします」

総司令「いや、喧騒の中だからこそ良い」

提督「は…」

提督は今一総司令の意図を汲み取れずに居た。
35名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:56:25 ID:IObDb4FNv
総司令「最近機密事項の報告過程におかしい点が見受けられる」

提督「まさか、漏洩…」

総司令「私も憶測ばかりでは話せんが、恐らくな。それに、どの時点で誰が、どこへ漏らしているのかはまだ断定出来ん」

提督「炙り出しますか?」

総司令「いや、私が直に対応する。これは本部の問題だからな」

提督「ですが、本部に居る者全てがグレーである以上、本部で人員を手配しての調査は難しいのでは?」

総司令「構わん。時間は掛かるだろうが、どこかでボロはでる。そこを叩く」

提督「迂闊に手を出しては危険かと…」

総司令「私だから迂闊に手を出せる。幸いにも私はこの組織のトップだからな、早々消される事もない」

提督「…。くれぐれもお気を付け下さい」

総司令「あぁ。そちらも、足元をすくわれるな」

二人の会話は、整備員達の威勢の良い掛け声によって掻き消されて行く。
36名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:57:52 ID:IObDb4FNv
【新帝海軍本部/ロビー】

金剛「では、護衛艦隊の編成は私を旗艦とし、高雄、摩耶、神通、島風、天津風の六隻になりマース」

提督「金剛、首尾はどうだ?」

金剛「あ、テートク!」

摩耶「たかが護衛に随分と大袈裟じゃねぇか」

高雄「摩耶、そういう言葉遣いをしてはいけません!」

提督「この娘達か」

提督は金剛との会話も程々に、金剛を除く護衛艦隊五隻へと向き直した。
皆口元を引き締め一様に敬礼で提督を迎えている。

提督「すでに伝達済みだと思うが、今回の任務は護衛となる。それ自体に危険性は認められないが、道中何が起こってもおかしくはない。気を引き締めて任務に取り組め!」
37名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:59:06 ID:IObDb4FNv

「やっぱり君は威厳があるなぁ」

提督の後方から優しげな男性の声が聞こえる。

提督「お前は…」

第四鎮守府提督(以降四提督)「僕が言うとどうにもしまらないと言うか。…っと、久しぶりですね」

提督「赴任先を言い渡されて以来か。なぜここに?」

四提督「君達の護衛、ですよ。そこの艦娘達は第四鎮守府所属の娘達です」

提督「てっきり本部付きの艦娘達なのかと思っていたが…」

四提督「僕も詳細は知らされていないけど、別命で大規模な作戦行動中らしい」
38名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)13:59:56 ID:IObDb4FNv

提督(機龍搬送以上に重要な作戦、か…)

四提督「それで、一番近かった第四鎮守府にお鉢が回ってきたんじゃないですかね」

四提督も少し困った様に、最も現実味のある憶測を述べる。

提督「そうか…。ともかく世話になる」

四提督「同期のよしみです、気にしないで」

提督「アテにさせてもらう。さて、機龍の心臓をお迎えにあがるとしよう」
39名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:00:37 ID:IObDb4FNv
【鎮守府/司令室】

士「…」

伊8「…」

士「そこ、待った…!」

伊8「待ったは三回まで、って言ったのね」

最上「副提督は将棋が弱いなぁ」

士「うるさい、じゃあもう一回だ」

伊8「仕方無い、お相手しましょー」

雪風「ふくてーとく頑張って!」

叢雲「どうせまた負けるんだから辞めときなさいよ…」

榛名「あなた達…」
40名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:01:01 ID:IObDb4FNv

利根「どうした?はの字よ」

榛名「みんなして司令室に集まらないで下さい、ここは仕事場です!あとその呼び方はやめて下さい!」

士「良いじゃないか、仕事も全部終わってんだ」

榛名「はぁ、そういう問題じゃないんで…!!」

榛名が話し終わる前に、鎮守府館内にけたたましくサイレンの音が鳴り響いた。

最上「敵襲!?」

士「どうやら、仕事が出来たらしいな。第二艤装召喚を許可する、榛名は俺を乗せていけ」

一同「はっ!」
41名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:01:36 ID:IObDb4FNv


【鎮守府近海】

榛名「嘘…この多さは何…?」

鎮守府より出港した艦娘達の遥か前方に、鎮守府近海とは思えない数の深海棲艦の姿が見える。

木曽「幸い、駆逐級と軽巡級しか見当たらないが…」

天龍「量だけ多くても、オレ達には勝てねぇぜ」

士「その通りだ。それに提督が居ない時ばかり現れるのも気に入らん、叩き潰すぞ」

会敵までのわずかな時間、艦娘達と士はお互いを鼓舞する。
42名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:02:14 ID:IObDb4FNv

叢雲「…会敵!」

士「艦砲射撃で数を減らすぞ、砲撃開始だ!」

士の合図の元、尚も進行している深海棲艦へと弾幕が振り注ぐ。
深海棲艦付近には無数の水柱が立つも、至近弾に留まり状況は好転しない。

最上「着弾点観測出来たよ!誤差修正を!」

榛名の第二艤装内で、士は宙に浮いたコンソールパネルに送られてくる情報を逐一チェックしている。

士「ふん、次は外さん。第二射撃ち方始め!」

弾頭発射時の衝撃で艦橋付近まで白波が立ち上がる。
発射から数秒後、今度は水柱だけでなく幾つかの爆発と煙が立ち上り始めたのが見えた。

利根「直撃弾じゃ!」
43名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:02:48 ID:IObDb4FNv

夕張「進撃をやめる気はないみたいだけど、いずれも中破程度の損傷が認められるわね」

菊月「フッ、この距離…抜き身となった我が刃からは逃げられない…」

秋雲「何言ってるか良く分かんないけど、雷撃戦開始!って事だよね」

士「よし、ゾンビ共に魚雷をお見舞いしてやれ」

駆逐、軽巡、重巡に搭載されている酸素魚雷がすでに満身創痍の敵艦隊へと向かっていく。
多くの敵勢は魚雷によって轟沈していったが、免れた深海棲艦からも魚雷が放たれる。

榛名「深海棲艦、魚雷発射を確認!」

士「チッ、しぶとい奴らだ…航路上にある艦娘達は回避行動を取れ!指向性機雷の散布も許可する」

雪風「わわわわ!えっと、機雷…機雷」

魚雷の接近を察知し、最適なタイミングで散布された指向性機雷が爆発しだす。
魚雷の大半は破壊出来たものの、それでも残党は進んでくる。
44名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:03:40 ID:IObDb4FNv

木曽「ぐっ…」

最上「うわっと!」

木曽と最上の近くに水柱が上がる。

士「大丈夫か!」

木曽「少しだけ、浸水が発生してる…!」

最上「こっちもだね…」

士「分かった。お前ら二人は艦隊後方への移動と浸水区画のハッチ閉鎖、バラスト調整も忘れるな!」

木曽と最上が後退している中、健在な艦娘達によって再度魚雷が射出される。

利根「ふむ、残存勢力は確認出来んのう」
45名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:04:54 ID:IObDb4FNv

叢雲「…おかしいわね、戦況不利が明確だったにも関わらず撤退していかないなんて」

天龍「いや、全滅してねぇ。残骸の奥の方…何か居やがる」

士「榛名、モニターに回せるか?」

榛名「は、はい!」

士の前にはコンソールパネルの他に映像用のモニターが現れる。

士「なんだありゃ。…女?」

徐々に映像が鮮明になり、海面に佇む一人の少女の姿があらわとなっていった。目深にフードを被っているためその表情まで読み取る事は出来ないが、その身から滲み出るただならぬ気配は戦場に居るもの全てを包み込んでいく。

榛名「呼び掛けますか…?」

士「あぁ。通信回線を全領域で開け」
46名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:05:15 ID:IObDb4FNv

天龍「…何か嫌な予感すんな」

夕張「…何よ、らしくないわね」

天龍「別に。狂犬の勘って奴だ」

士『あーそこの女、聞こえるのか?』

士の言葉に反応したのか、艦隊の前方に居るアンノウンは静かに顔をあげる。徐々にその表情はあらわになり、口元には戦場に似つかわしくない程の笑みがこぼれていた。
47名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:06:58 ID:IObDb4FNv

士(この距離で目があった?馬鹿な…)

士『なぜこの海域に居る?お前は一体…』

士の言葉を遮るように爆音が響き、高速戦艦榛名の真横には巨大な水柱が上がる。

士「く…」

艦橋の揺れがその衝撃を物語り、士も思わずよろけている。

榛名「士さん!」

士「大丈夫だ、それより奴は!」

先程まで動きを見せていなかった彼女は艦隊へとその手を向け、手の近くからは硝煙のようなものが上がっている。
その挙動に、もはやその存在がアンノウンなどではなく凶悪なアンノウンエネミーである事を艦娘達は察していた。
48名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:07:43 ID:IObDb4FNv

秋雲「…あれって」

利根「恐らく我々の第二艤装の召喚と類似したものだろう」

叢雲「チッ…副提督!攻撃命令を」

士「分かってる!撃ち方始め!」

再度艦隊による一斉掃射が行われ、士の眼前にあるコンソールパネルには次弾装填や着弾、弾道修正などの情報が次々と映し出されていく。

天龍「やったか!」

爆発により発生した煙幕と水蒸気が晴れ、彼女が元居た場所が明らかになる。

士「化物か…」

あれだけの弾薬をその身に受けて尚、彼女は健在であった。
49名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:08:37 ID:IObDb4FNv

「はぁ」

彼女は笑みを浮かべたまま一息つくと、ゆっくりとその場に屈み、次の瞬間には尋常ならざる速度で戦艦榛名の艦橋へと飛び込んで行く。

榛名「く…!」

榛名も第二艤装に積載されている機関砲で即座に応戦するも、それすらも間に合わない。笑みに狂気を宿した彼女は尚も留まる事を知らず、しまいには艦橋の強化ガラスを突き破り中へと侵入を果たした。

「ねぇ、君は誰なんだい?」

士「お前こそ何者だ」

「そうだね、それも知りたい。ボクは誰なんだい?」

士「人に聞いてばかりってのは…感心出来ないな」

榛名「士さん!」
50名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:09:22 ID:IObDb4FNv

士は極めて冷静に対応するも、その首は戦場に蔓延する狂気の大元によって絞められていた。

「そっか知らないかぁ…。じゃあ、このまま首を折ってあげよう!」

まるで名案が浮かんだ、とでも言いたげな表情で士の首を折にかかる。

士「一つだけ…教えてやるよ…!」

「うん?」

士「俺はな…通りすがりの、仮面ライダー…だ!」

士は不敵に笑っている悪鬼の腹を蹴り飛ばし、どうにかその手から逃れる。

士「変身!」

ディディディディケイド!

「へぇ、君面白そうだね!」
51名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:10:41 ID:IObDb4FNv

榛名「士さん、ここは私が…」

士「いや、俺の仕事だ。お前は各艦娘への伝達と、自分の身を守れ」

榛名「…!…分かりました」

士「さて…お前が何者かなんて知らないが、お仕置きの時間だ」

「いいね!楽しいの好きだ!」

悪鬼とディケイドは示し合わせたかのように艦橋を飛び出し、甲板で激しい闘いを繰り広げる。

士「まさか剣を手で受け止めるなんて、思わなかったぜ」

士はライドブッカーからせり出ている刃を軽く撫でる。
52名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:11:39 ID:IObDb4FNv

「だってそれでやられたら痛いんでしょ?痛いのはやだもん」

士「微妙に話が噛み合ってないが、まぁ良い。これで最後だ」

士はライドブッカーより一枚のカードを取り出し、手際良くベルトへと挿入する。

ファイナル・アタックライド

士「はぁー…!」

士と彼女の間には幾重にもカード状のエネルギー体が発生し、士は高く飛び上がるとそのカードを通り抜けながらエネルギーを吸収していく。
最後には全エネルギーを帯びた、艦娘の主砲をも凌ぐ程のキックを彼女へと打ち込む。

士「…!?…」

「だからさ、痛いのは嫌いなんだって」

渾身の力を込めて打ち出されたディケイドのキックは、彼女の後方から姿を現した不気味な存在によって奇しくも阻まれていた。

士「尻尾か!!」
53名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:12:27 ID:IObDb4FNv

「可愛いでしょ?でもこっちが尻尾なのか本体なのか分かんないんだよね」

屈託ない笑顔で、まるでお気に入りの服を見せびらかすかの様に彼女はその場で回ってみせる。

「…ッ!またかぁ、なんか頭?かな、痛くなるんだよね」

士(今なら…!)

アタックライド・ブラスト

「ちょっと待ってってば」

隙を狙った一撃にも動じる事なく、自身の頭痛を治めることに専念している。

「あーダメだ、治らないや。頭痛いから今日は帰るね」

士「おい待て!」

完全に戦意を失った彼女は士の言葉を聞き終わる前に、戦艦榛名の甲板を後にする。
54名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:13:14 ID:IObDb4FNv

夕張「皆準備はいい!?」

雪風「はいです!」

秋雲「オーケー!バッチシだよ!」

利根「うむ、いけるぞ!」

叢雲「こっちも良いわ!」

菊月「生まれ出た時から定めは決まっている…!」

天龍「この時を待ってたぜ…!酸素魚雷、一斉発射だぁー!!」

「わっ!っとと…」

無数の酸素魚雷により、ダメージこそ負わないもののさしもの悪鬼も体勢を崩して大きく後退していく。

天龍「…掛かった!」

今まで、海底近くで戦況を見守っていた艦娘が千載一遇のチャンスを逃すまいと静かに浮上してくる。
55名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:14:10 ID:IObDb4FNv

「もう、帰るって言ってるじゃんかー。ん、なにこれ?」

鬱陶しげにしている彼女の足元には、海面ぎりぎりで密集している機雷群があった。

夕張「今よ!」

伊8「落とし前、つけてもらうの!」

密集している機雷群に向けて、伊8から一本の魚雷が射出される。

「今更そんなのでどうにか出来る訳…うぁ!?」

指向性機雷は向かってくる魚雷に反応し、連鎖反応を起こしながら大規模な炸裂を引き起こしていく。

「うぅ…な、なんで…!」

天龍「火薬で駄目なら鋼鉄をぶつけてやるまでだぜ!」

利根「機雷にはたんまりとベアリング弾が詰まっているからのう!」
56名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:15:14 ID:IObDb4FNv

「痛いのは…痛いのは嫌いだって、言ってんだろぉー!!」

予想外の攻撃に満身創痍となった悪鬼は、悲鳴にも似た雄叫びを上げながら、何も無い空間から酸素魚雷らしきものを無数に射出し出す。

雪風「お、おぉー!!」

天龍「くっそ、回避行動を…!」

次第に艦隊付近で幾つかの水柱が上がり始める。

榛名「皆!大丈夫ですか!?」

菊月「すまない…怪我をしてしまった様だ」

夕張「こっちも第二艤装を破損したわ…」

天龍「轟沈、大破がなけりゃそれで良い!それより奴は…」

士「もう逃げたらしい」

変身を解き、衣服の汚れを払いながら士が短く呟く。

天龍「なっ…!」
57名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:16:16 ID:IObDb4FNv

機雷の残骸のみを残して、第三鎮守府の艦隊に打撃を与えたアンノウンエネミーの姿は忽然と消えていた。
気のせいか、どことなく海の様相も穏やかなものへと戻っている様に感じる。

士「しかし驚いたな…。まさか機雷でダメージを与えられるとは」

夕張「指向性機雷は中身が特殊合金のベアリング弾だから。面のダメージが通らないなら点を突こうって訳」

利根「偉そうに言ってるが、全て榛名の発案じゃ」

士「そうだったのか…。お手柄じゃないか榛名」

榛名「…」

士「お、どうした?」

榛名「何か…言う事はありませんか?」

士「特に無い、と思うが」

榛名「…ですか…」

士「ん?」
58名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:17:05 ID:IObDb4FNv

榛名「指揮を任される者が率先して戦闘行為をおこなうとは何事ですかぁ!!」

士「い、いや」

榛名「いやもカカシもありません!撃退出来たから良いものの、もし士さんがやられていたら…私達は!…私達はどうなるんですか…」

榛名から矢継ぎ早に繰り出される怒号は途中から、いつしかむせび泣く声へと変わっていた。

士「…」

天龍(泣かしたな)

木曽(あぁ、ついに泣かせた)

叢雲「サイッテー」

夕張「度し難いわね」

士「お前等そんな目で俺を見るな…。榛名、すまん。俺が悪かった」

榛名「…分かってくれれば、それで良いです」

士「さて…さっさと帰って傷の手当て、するぞ」

榛名「…はい!」
59名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:17:49 ID:IObDb4FNv


【海洋上/機龍格納庫甲板】

提督「…」

四提督「ここに居たんですね」

提督「傷には潮風が良いらしいからな、打撲に効くかまでは分からんが」

四提督「君らしいね」

提督「奥さんとはうまくやっているか?」

四提督「まぁ…可もなく不可もなく、ですかね。君は確か艦娘と婚約したと、風の噂に聞きましたが」

提督「あぁ、金剛とな。…婚約してしばらくで、轟沈したよ」
60名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:18:26 ID:IObDb4FNv

四提督「…ごめん、配慮に欠けていたようだ」

提督「気にするな。…それに、代わりって訳じゃないが、今はアイツが俺を支えてくれてる」

提督が指差す先には、護衛艦隊の先頭で指揮をとっている戦艦金剛の姿があった。

四提督「君も随分と、色々あったようですね」

提督「否定は出来んな。…しかし見てみろ、空母3隻分が結合してるとまるで巨大な要塞だ」

四提督「無数の艦載機と機龍、それに護衛艦隊も。間違っても敵には回したくありませんね」

提督「あぁ。…下手をすれば海軍すら屠れるかもしれんしな…」

四提督「さすがにそれは不謹慎ですよ」

提督「口が過ぎたな、すまん」
61名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:20:02 ID:IObDb4FNv

「提督ー!」

提督「どうした、まだ到着までは随分と時間があるぞ?しらさぎ」

しらさぎ「そうではありません。少しはお身体を気遣って静かにしていて下さい」

提督「ずっと自室に居ては滅入ってしまうからな」

しらさぎ「金剛さんからお目付け役を仰せつかっている私の事も考えて下さい…」

提督「全く、あいつ余計な事を…」

四提督「しっかりした良い娘ですね」

提督「機龍のパイロットとしては申し分無い。だが少し口煩い気もするがな」

しらさぎ「口煩くされたくなければ、静かにしていて下さい…キャッ!!」

突如三人は激しい振動に見舞われ、その場で体勢を崩す。

四提督「ぐっ…敵襲!?」
62名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:21:07 ID:IObDb4FNv

しらさぎ「まさか、この包囲網の中どうやって…」

提督「何かがぶつかった?」

金剛『テートク!何事デース!』

異変を察知した金剛から提督宛に通信が入る。

提督「いきなり何かがぶつかった様な衝撃があった!そちらは何も捕捉していないのか!ぐ…まただ!!」

金剛『ちょっと待つネ!レーダー種類変更…周波数の固定…サーモグラフ直結…うぁぁーもう分かりづらいデース!』

半ば発狂しながらも金剛は手を止めることなく、迅速に作業を勧めていく。

四提督「岩礁地帯は避けているし、一体なんなんでしょうか…」

しらさぎ「深海棲艦の可能性は低そうですが」

金剛『ビンゴ!テートク、データを送りマース!!』

金剛からの通信を合図に、提督の端末へデータが送信されてくる。
63名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:22:04 ID:IObDb4FNv

提督「なるほど…通常のレーダーでは捕捉出来ん訳だ。良くやった金剛!」

四提督「一体なんなんだい?」

提督「第一種戦闘配置、こいつは怪獣だ!」

四提督「怪獣ですか…!分かりました。護衛艦隊に情報を送ります」

摩耶『おい四提督、何も捕捉出来ねーぞ!』

四提督「摩耶さん!今送ったデータを元に、周波数の切り替えとサーモグラフの併用を行って下さい!」
64名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:23:33 ID:IObDb4FNv

高雄『…!!…これは』

神通『全長約300m…こんなものに気付けなかったなんて』

四提督「どうやら身体を常に振動させてレーダー反射から逃れているようです」

天津風『面倒臭いなぁ…これだから怪獣って嫌いだわ』

四提督「また来るみたいだ…提督」

提督「あぁ、頼む」

四提督「皆、敵は海中を進んでくる!酸素魚雷の準備…出来てますね?」
65名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:24:25 ID:IObDb4FNv

島風『早く撃っちゃおうよー!』

摩耶『へへ、腕がなるぜ』

高雄『いつでもどうぞ!』

神通『準備…出来てます!』

天津風『こっちも行けるわ』

四提督「第四鎮守府の売りは他の追随を許さぬ命中率にあります。くれぐれも外さぬように。…発射ぁー!」

四提督の命令を合図に、海中には無数の酸素魚雷が射出される。

蒼龍『提督!』

飛龍『私達は何もしなくていいの?』

提督「怪獣は護衛艦隊に任せる。お前達がやられる事は任務の失敗にも直結しかねん、…機龍を頼む」
66名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:25:21 ID:IObDb4FNv

蒼龍『うん!』

飛龍『同じ「龍」だしね、お姉さん達に任せてよ!』

四提督「5、4、3、2、1、…0」

高雄『着弾確認!』

艦隊の前方に巨大な水柱が立ち、提督達の元まで水しぶきが飛来する。
局地的な海の荒れが治まる間もなく、ついに荒波の隙間から怪獣がその姿をあらわにした。

四提督「あれは巨大な海蛇…!」

金剛『リヴァイアサン!?それともヨルムンガンドデース!?』

提督「恐らくカテゴリで分類するならばマンダ、だな」

四提督「何度か別個体と交戦したデータが海軍に残っていましたが、いずれも酸素魚雷での撃破が確認されていますね…」
67名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:26:01 ID:IObDb4FNv

提督「こいつは…」

四提督「未だ健在、ですね」

提督「それに、データの奴よりも倍以上デカい」

予想外に傷を負わされた事に激昂したのか、マンダはその細長い上半身を海上にもたげたまま、まるで超音波の様な雄叫びをあげている。

四提督「うーん、下手に手負いにしたのは逆効果ですかね」

提督「あのまま放置して状況が改善したとも思えん」

四提督「確かに。それに、倒せない訳ではない」

高雄『四提督、次弾いけます』

四提督「分かりました。次弾発射ぁ!!」

再度酸素魚雷が放たれると、マンダもそれに気付いたのか素早く潜行に移る。
68名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:27:07 ID:IObDb4FNv

しらさぎ「提督、幾らなんでもあのマンダは規格外です」

提督「そのようだ」

しらさぎ「私も…私も機龍で出ます!」

提督「それは許可出来ない」

しらさぎ「なぜですか!被害が出てからでは遅いんですよ!?…私達なら」

提督「我々は軍属だ。必ず優先事項が付いて回る。…君を疑う訳じゃないが、戦闘に絶対は存在しない」

しらさぎ「…出過ぎた事を、言いました。申し訳ありません…」

しらさぎのその言葉とは裏腹に、その目には不満がありありと浮かんで見えた。

提督「しらさぎ、我々を見くびるな」

しらさぎ「え?」
69名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:28:18 ID:IObDb4FNv

提督「艦隊がこのままやられる、と言う事は機龍もそのまま海の底に沈む事を意味する。ここまで啖呵を切っておいて、もしそうなれば末代までの恥だろうな」

しらさぎ「な、何を…」

提督「我々は艦隊に対する圧倒的な信頼と自信があるからこそ、機龍を出す判断はしない。艦隊はマンダに勝つ、機龍は無傷で守り通す」

しらさぎ「…随分と、自信がお有りなのですね」

提督「そうでも無ければ提督なぞ務まらん。命令があれば、機龍すらも戦艦一隻で落としてみせる覚悟を持ち合わせているぞ」

しらさぎ「私は、勘違いしていたようです」

提督「ほう?」

しらさぎ「提督はもっと、聡明且つ冷静な方なのかと思っていましたが…」

提督「すまんが、見ての通りだ」
70名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:29:05 ID:IObDb4FNv

金剛『皆サン、隊列を維持するネー!あれに巻き付かれでもしたら厄介デース!』

摩耶『わぁーってるよ!』

高雄『攻撃の手を緩めなければ、そうそう近づけない筈…』

四提督「しかし、大きいだけあってさすがに打たれ強いですねー…」

島風『四提督ー、いつまで続けるのー…?』

天津風『ただデカいだけの癖にっ!』

神通『いえ、巨体に似合わず結構俊敏みたいです…』

四提督「ふむ」

四提督はおもむろに手持ちの海図を開き、静かにマンダを殲滅するための策を模索し出す。
71名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:29:46 ID:IObDb4FNv

金剛『うぅー…水中に入られるとワタシの主砲が使い物にならないデース…』

四提督「いえいえ、そうでも無いですよ金剛さん」

金剛『え?』

四提督「今から伝えるポイントに移動をお願いします」

しらさぎ「…。勝てますか?」

提督「勝つさ」

四提督「ほらほら、二人共。マンダを殲滅する準備が整いましたよ」

金剛『配置についたネー』

四提督「はい。では金剛さん以外の方々はリアルタイムリンクを駆使して、指定されたポイントへの魚雷発射をお願いします!」

作戦開始に伴い、指定のポイントへ次々と酸素魚雷が撃ち込まれていく。
直撃弾こそ無いものの、マンダの動きはそれに制限されて徐々に一定の方向へと向かい始める。
72名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:30:37 ID:IObDb4FNv

高雄『マンダ、加速していきます!』

四提督「上手くいきましたか。皆さんも配置に」

艦隊を構成している艦娘達はマンダを囲み込む様に追い込んでいく。
すると、今まで海中を進んでいたマンダが徐々にその姿を海上へと現し、最後には艦隊の前にその巨体を完全にさらけ出していた。

金剛『フッフッフ!姿が見えればこっちのもんデース!』

しらさぎ「あれは…」

提督「この海域で一番浅い岩礁地帯に誘導したんだ。完全に大きさが仇になったな」

四提督「さて、仕上げです。皆さん、艦砲射撃用意!…発射!」

金剛以下数隻からなる護衛艦隊の総攻撃がマンダに襲い掛かる。けたたましい砲撃音と共にマンダの体はあらゆる所から引き裂かれ、間もなく、か細い断末魔を最期に動く事はなくなった。

高雄『マンダ、沈黙を確認しました』

摩耶『っしゃー!』
73名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:31:19 ID:IObDb4FNv

四提督「状況完了。こちらで航路修正を検討するので、皆さんは警戒レベル2に引き下げて待機をお願いします」

神通『分かりました』

天津風『はーい』

島風『早くねー!』

しらさぎ「…」

提督「勝っただろう?」

しらさぎ「…結果論だと、思います」

提督「そうだな。今はそれで良いさ」

四提督「お二人共、お怪我は有りませんか?」

しらさぎ「はい」

提督「問題無い。助かったよ」
74名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:31:49 ID:IObDb4FNv

四提督「まさか怪獣が出現するとは、災難でしたね」

提督「怪獣は深海棲艦と違って勢力圏など関係ないからな」

しらさぎ「守っていただいて、ありがとうございました…」

四提督「気にしないで下さい、これが護衛艦隊の務めですので」

しらさぎ「…」
75名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:32:34 ID:IObDb4FNv

【鎮守府/司令室】

士「お前は入渠しなくていいのか?」

榛名「榛名は大丈夫です、第二艤装の損傷も軽微だったので。それよりも、その書類!ちゃんと目を通して承認印を押して下さいね」

士「はぁ…こういう地味なのは俺には似合わん!」

二人が事務整理に追われていると規則正しく二回、司令室の扉が叩かれる。

士「誰だー?」

大淀「大淀です。副提督、定時報告にあがりました」

士「よし入れ」

大淀「失礼します」
76名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:33:20 ID:IObDb4FNv

士「じゃあ話してくれ、手短にな」

大淀は一度困った様な笑みを浮かべるも、すぐに口元を引き締め報告へ移る。

大淀「まず各艦娘の修復率についてですが、本日一杯で木曽、最上両艦娘の修復が完了予定です。残りの艦娘達は明日中には修復完了の見込みです」

士「案外早いんだな」

大淀「ふふ、それが艦娘なんですよ。では、次の報告ですが…先日深海棲艦撃破後に交戦された正体不明の敵についてです」

士「ふん、あの変な奴か…」

大淀「当鎮守府近海から消息を絶った後、二箇所での出現報告がありました。また、そのいずれも別の鎮守府所属の艦隊と交戦、いずれも当方に甚大な被害が生じています」

士と榛名は交戦時の記憶を辿りながら、大淀からの報告を静かに聞き続ける。
77名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:34:15 ID:IObDb4FNv

大淀「なお、様々な情報を総合した結果、艦娘や深海棲艦との関連性が深く考えられ、その容姿や攻撃性からこの度「深海棲艦レ級」と呼称される事が決定しました」

榛名「レ級、新しい深海棲艦…」

大淀「レ級と対峙するに当り、危惧しなければいけない点がありす。それは、水雷戦、戦艦クラスの主砲、身のこなし、その全てが艦娘で見た時の艦種別トップクラスの性能を有している事です」

士「一人で何でもやっちまうって事か」

大淀「残念ながら…。レ級の生態については解明されていない部分が非常に多い為、今後の情報をお待ち下さい」

大淀は必要な報告を全て済ませ、司令室を後にする。
78名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:35:01 ID:IObDb4FNv

榛名「…はぁ、まるで霧の艦隊とでも戦ってるみたいです…」

士「なんだ、その霧の艦隊ってのは」

榛名「士さんが来る以前に、敵として戦った事がある艦隊です」

士「深海棲艦と怪獣以外にも敵が居たのか…」

榛名「えぇ、それはもう…とても圧倒的でした。でも霧の艦隊の中の数隻がこちら側に加勢した事で、撃退に成功したんです」

士「そいつらはもう居ないのか?」

榛名「名前の通り敵も味方も霧のように姿を消してから、出現報告は一切あがっていません」

士(別次元からの来訪者、ってとこか…)

榛名「でも、味方についてくれた霧の艦隊は自分達の技術を提供していってくれたんですよ。例えば先日の指向性機雷とか、士さんが使っていらしたコンソールパネルも」
79名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:35:35 ID:IObDb4FNv

士「ま、未だ役には立ってるって訳だ…ん?」

二人の会話に割って入る様に、司令室の電話が激しくなり始める。

士「たく、うるさい電話だ。…もしもし!こちら副提督の門屋士だが?…あぁ、なんだお前か。そうか…分かった。出来る限り準備しておく」

榛名「士さん?」

士「榛名」

榛名「は、はい」

士「お迎えの準備だ。もうすぐ箱入り娘の到着らしい」
80名無しさん@おーぷん :2014/10/22(水)14:37:12 ID:IObDb4FNv
今回はここまで

マタネ!
81鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:03:52 ID:Ee7lxbYpc
暇つぶしで書いたものを投下しまかぜ
元ネタはフルメタル・ジャケット
あのシーンを艦娘たちで表現、若干オリジナル要素を加えています
82鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:04:30 ID:Ee7lxbYpc
ここは鎮守府。

艦娘たちが海原の戦場に向かうために準備を行う場所であり、また帰ってくる場所である。

普段なら事故鍛錬に励む艦娘たちの掛け声や歳相応の少女のように遊ぶ、非番の艦娘たちの笑い声が聞こえてるくるのだが、今日だけは違った。

鎮守府内には仰々しい映画撮影セットと、映画会社のスタッフたちがその中に入り込みより一掃騒がしさが増していた。

提督「では、監督今日はよろしくお願いします」

監督「かっかっか!そんなかしこまらんといてーや提督はん、アンタはお国の英雄やもっと胸張りいや」

監督「おまけにこんな別嬪さん揃いで、ワシもあと20年若かったらのう!」

提督「ははは…」

監督「ほな、訓練教官の挨拶シーン撮ろか!カメラ回す用意せえよ」

スタッフ1「はい!」

スタッフ2「合点承知の助!」
83鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:05:00 ID:Ee7lxbYpc
監督「神通ちゃん、スタンバイよろしゅう!」

神通「あの…本当に私なんかで、よかったのでしょうか」ブルブル

神通「長門さんとか、加賀さんとかの方が適任だと思うのですが…」

那珂「なに言ってるの神通ちゃん!映画に出るなんてすごいことなんだよ?」

那珂「那珂ちゃんは神通ちゃんが羨ましいなぁ」

提督「確かにこの教官の挨拶シーンは長門や加賀の方が適任だと思われるがな…」

提督「あの長門だぞ?駆逐艦たちが勢揃いしているから顔がニンマリしたままあの挨拶だ」

那珂「那珂ちゃんも長門さんが駆逐艦たちの前で『今日から私を"長門お姉ちゃん"と呼べ!』って言うと思うな、絶対」
84鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:05:48 ID:Ee7lxbYpc
メイク担当「うっふん、神通ちゃんのスベスベなお肌が映えるようにしておいたのよん?」ウインクバチコーン

メイク担当「でも素材が良すぎるからどうやってメイクしようか悩んだわん」クネクネ

メイク担当「お肌の悩みを持つ者としてはちょっとジェラシーよん」クネクネ

提督「そういうことだ神通。お前に与えられた役、しっかり果たしてこい」

神通「で、ですが失敗でもしたら…二水戦の皆に合わせる顔が」

提督「大丈夫だ。撮影期間内なら何回でもやり直しがきくから」

メイク担当「提督さんの言う通りよん、アタシのメイクを無駄にしないでちょうだいねん」クネクネ

神通「うぅ…」モジモジ

提督「……机の引き出し、上から2段目」

神通「?!」ビクッ

提督「その中身を鎮守府にいる全艦娘に知られたくなかったらさっさと行ってこい」

那珂「提督女の子の弱み握るなんてサイテー」

神通「…分かりました」スゥッ

神通「川内型二番艦、第二水雷戦隊旗艦神通。行って参ります!」

提督「頑張ってこい」

那珂「ガンバレー!神通ちゃーん!」

川内「何?夜戦?!」

提督「うるせえ座ってろ」

川内「(´・ω・`)」
85鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:06:31 ID:Ee7lxbYpc
監督「よっしゃ!んじゃあ、試しに本番行くで!」

ディレクター「本番いきまーす!」

涼風「ガッテンダー!」

不知火「頑張るぬい」

長波「なに?田中少将の話?」

卯月「うーちゃん、頑張るぴょん!」

荒潮「あら、本番?」

夕立「夕立、頑張るっぽい!」

島風「おっそーい!」

提督「大丈夫かなコレ」

スタッフ3「では本番いきまーす!」

監督「よぉ~い…アクション!」

カンッ!
86鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:08:40 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
わたしが訓練担当の軽巡洋艦神通です
話しかけられたとき以外は口を開かないで、 口で重油たれる前と後に“マム”と言いなさい
分かりましたか、ウジ虫ども!

<駆逐艦たち>
マム, yes, マム!

<神通>
ふざけるな!
大声だしなさい!
缶落としたか!

<駆逐艦たち>
マム, yes, マム!

<神通>
貴女たち雌豚どもが私の訓練に生き残れたら ...
各人が艦娘となります。深海棲艦に祈りを捧げる死の司祭です
その日まではウジ虫です!
地球上で最下等の生命体です
貴女たちは艦娘ではありません
イ級のフンをかき集めた値打ちしかない!

貴女たちは厳しい私を嫌うでしょう…
でも憎めば、それだけ学びます
私は厳しいが公平に接します
艦種差別は一切許しません
睦月型、特型、白露型、陽炎型、夕雲型を私は見下しません
すべて平等に価値がないのです!
私の使命は役立たずを刈り取ることです 愛する艦隊の害虫を!
分かりましたか、ウジ虫ども!

<駆逐艦たち>
マム, yes, マム!
87鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:09:08 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
ふざけるな!
大声だしなさい!

<駆逐艦たち>
マム, yes, マム!
<神通>
芋臭い顔、名前は?

<吹雪>
特Ⅰ型駆逐艦「吹雪」です!

<神通>
主人公(笑)
ふざけるな!
本日より芋臭モブモブ丸と呼びます
いい名前ですね、気に入りましたか?

<芋臭モブモブ丸>
マム, yes, マム!
88鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:12:24 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
聞いて驚くかないように、芋草モブモブ丸!
うちの食堂では芋料理は出しません!

<芋臭モブモブ丸>
マム, yes, マム!

<曙>
いったい何なのよこれ?
クソ教官じゃない

<神通>
誰ですか!
どのイ級のフンですか!
深海棲艦の手先の●●●豚め!沈められたいのですか!?
答え無し?
魔法使いの金剛ババアですか!

<??>
ワッツ?!表出ろや、マザーファッカー!

<??>
金剛お姉さま!演技、演技ですから!

<??>
金剛お姉さまが年増でも榛名は大丈夫です!

監督「あかん!カット、カット!」

提督「大和!金剛を抑えろ」

金剛「離せゴルァ!ヘイ、神通一発殴らせるネー!」
89鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:15:43 ID:Ee7lxbYpc
監督「もう、アカンで金剛ちゃーん」

提督「頼むから大人しくしててくれ、な?」

金剛「納得いかないネー」ぶすぅ

神通「あ、あの、ごめんなさい金剛さん」ペコペコ

金剛「許しまセーン」プイッ

神通「うぅ…」
90鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:19:18 ID:Ee7lxbYpc
監督「あー、じゃあさっきのとこからもう一回や!」

スタッフ「はーい、シーン15の金剛ババアのとこからワンモア入りまーす」

金剛「誰がババアだこの●●●●●!」

榛名「金剛お姉さま、女性がそんな言葉を口にしてはいけません!」アタフタ

比叡「お姉さま…」

霧島「いいマイク使ってますね。これ、どこで売ってるんです?」

提督「お前は平常運転だなホント」
91鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:22:09 ID:Ee7lxbYpc
監督「ほないくでえ!」

監督「よぉ~い…アクション!」

カンッ!

<神通>
誰ですか!
どのイ級のフンですか!
深海棲艦の手先のおフェラ豚め!沈められたいのですか!?
答え無し?
魔法使いの金剛ババアですか!

<神通>
上出来です、
頭が死ぬほど妙高さんとぶつかってもらいます!
魚雷発射管の穴でミルクを飲むようになるまでシゴき倒します!

監督(さすが華の二水戦の旗艦や…気迫がワシにも伝わってくる)

監督(あの声でワシも罵られたいんじゃ^~)
92鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:23:23 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
貴女ですか、腐れイ級は?

<卯月>
マ…マム, no, マムぴょん!

<神通>
クソガキが!
貴女でしょう、臆病イ級は!

<卯月>
マム, no, マムぴょん!

<曙>
(確か、このタイミングで…)
ア、アタシが言いました!

<神通>
そっちのイ級のフンでしたか…
勇気あるファッキン・コメディアン デストロイヤー
正直なのは感心です
気に入りました
部屋に来て那珂ちゃんをファックしていいですよ

ドゴン!

<曙>
モルサァ!
93鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:27:18 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
じっくりかわいがってあげます!
泣いたり笑ったり出来なくしてあげます!
さっさと立ちなさい!
隠れて司令官を罵ってみなさい 艦種切り落として酸素魚雷撃ち込みますよ!

<初風>
ひぃっ!く、首はダメ…

<曙>
マム, yes, マム!

<神通>
なぜ艦娘になったのです?

<曙>
憎き深海棲艦を殺すためです!

<神通>
殺し屋志願ですか

<曙>
マム, yes, マム!
94鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:31:14 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
戦争の顔をしなさい!

<曙>
へっ?

<神通>
殺すときの顔です!
キェエエエエエエエエ!

<曙>
(うるさい…)キーン

<神通>
これが殺しの顔です、
やってみなさい!

<曙>
きええええええ!

<神通>
ふざけるな、
それで深海棲艦が殺せますか!
気合いを入れなさい!

<曙>
キエエエエエエエエエ!

<神通>
迫力なし
練習しときなさいクソ駆逐艦

<曙>
マム, yes, マム!
(こ、怖かった…)
95鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:31:57 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
貴女の言い訳は?

<文月>
言い訳ですかぁ?

<神通>
アホ相手に質問するのは私の役です!

<文月>
マム, yes, マム!

<神通>
続けてよろしゅうございますか?

<文月>
マム, yes, マム!

<神通>
不安ですか?

<文月>
マム, yes, マム!

<神通>
私のせいですか?

<文月>
ふみぃ…

<神通>
何ですか?
私をクソバカと呼びたいのですか?

<文月>
マム, no, マム!
96鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:34:22 ID:Ee7lxbYpc
<潮>
ひゃい!【自主規制】です!

<神通>
まるでそびえ立つ徹甲弾ブラですね
サバ読んでるのですか?

<??>
…武蔵、艤装とってきて

<??>
落ち着け大和、演技だ演技!

提督「すみません監督!一旦切ってください!」

監督「カットカット! こらそこの艦娘さん、マイク持って帰らんといて!」
97鎮守府にて映画撮影◆cCHmnYMLXU :2014/10/25(土)00:34:52 ID:Ee7lxbYpc
眠いので今日はここまでです。
あと、色々ごめんなさい
98名無しさん@おーぷん :2014/10/25(土)01:12:29 ID:KmmCMd2We
乙ー

ほっぽちゃんのピーは冷凍ピーとか歌うんやな……(白目
99鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:02:30 ID:Ee7lxbYpc
こんばんみ
続きが書けたので投下していきます
100鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:03:35 ID:Ee7lxbYpc
あ、酉変えました


監督「はぁーもう!艦娘の嬢ちゃんたちは別嬪さんなんはええけど、灰汁の強いんが多いな」ガシガシ

提督「でも根はいい奴ばっかりなんですよ。たまに五月蝿くてイライラしましけど」

監督「特にあの神通ちゃん?戦争が終わったら、ぜひうちの役者に欲しいなあ」チラッ

提督「はははっ。それもいい話ですね」

提督「でも、彼女たちは『人間』としての生活を捨てて『艦娘』になったんです」

提督「明日から『人間』にもどれ、って言っても彼女たちは納得しません」

監督「あそこで見ている背が高いお姉ちゃんも、あのちんまい艦娘さんたちも、ワシら力がない一般人の為に頑張っとる」

監督「せやけどその艦娘さんたちをやれ『軍人の慰みもの』だの、『売女』だの悪う言うやつがおんなん」

監督「提督はん。この映画はな、そんじょそこらのプロパガンダ映画と違うのにしたいんや」

提督「監督…」
101鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:03:51 ID:Ee7lxbYpc
監督「確かに見てくれは戦意高揚のためのプロパガンダで、『艦娘カッコカワイイぺろぺろぶひぃ!』って大きなお友達ホイホイでな?」

提督「は、はぁ…」

監督「艦娘を目指す女学生さんたちが、少しでも艦娘さんの世界に触れて『自分も頑張ろう』って気持ちになってもらいたいんや」

監督「そしてこの映画の売り上げは、この鎮守府に全額寄付させてもらいますわ」

提督「そ…そんなことワザワザしていただく無くても、自分たちは…」

監督「例え金が届かんくても、ワシらは日々日本の海を守ってもろてる艦娘さんたちに感謝の気持ちを届けたいんや」

提督「いえ、その気持だけでもありがたいです監督」

監督「あかん、なんか湿っぽくなったな… ほな、気分入れ替えまひょか!」

監督「続きいくでー!準備せえよ」

スタッフ「オッケーでーす!」

監督(絶対に最高の映画に仕上げたるねん… 見とれよ頭でっかちの官僚ども)

官僚「よぉ~い…アクション!」

カンッ!
102鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:04:49 ID:Ee7lxbYpc
>>101の誤植訂正
監督「よぉ~い…アクション!」

カンッ!
103鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:05:42 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
まるでそびえ立つ徹甲弾ブラですね
サバ読んでるのですか?

<潮>
マム, no, マム.

<神通>
ふざけるな!
パパの精液がシーツのシミになり、ママの割れ目に残ったカスがおまえだ!
どこの穴で育ったのですか?

<潮>
う、浦賀ですl

<神通>
浦賀でとれるのはメス豚と痴女だけですよ、ウシ乳駆逐艦
メス豚には見えませんから痴女ですか!
貴女もストリップするんでしょう?

<牛乳>
マム, no, マム!

<神通>
春を売ってるんですか?

<牛乳>
マム, no,マム!

<神通>
その我儘乳を見せるだけ見せて、ピーピー泣き喚いて外交儀礼もない駆逐艦ですね
きっちり見張りますよ!

<神通>
両親がわざわざ生かしておいたのですか?

<潮>
マム, yes, マム!
104鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:10:40 ID:Ee7lxbYpc
鈴谷「うっわぁ…神通ちゃん、あんなセリフよく言えるわぁ」

熊野「ねえ鈴谷、あのセリフってどういうことですの?」

鈴谷「えっ、どの部分?」

熊野「パパの精液がシーツのシミになり、ママの」

鈴谷「うわわわっ!言わなくていいから」アセアセ

熊野「鈴谷、お顔が赤いですわよ」キョトン

熊野「熱でもあるのではなくて?」

鈴谷「違うんだって~…これは、その、恥ずいから///」カアアアアアア

熊野「? どこが恥ずかしいんですの」

鈴谷「だ、だから~…その…うぅ」モジモジ

熊野「小用でしたら、早く行ったほうがいいですわよ」

鈴谷「違うってばあ…」
105鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:16:12 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
貴女の胸を見たら嫌になります!
現代美術の醜さです!
名前はホルスタインですか?

<潮>
特II型の10番艦の潮です…

<神通>
潮?
「人生」と銘打たれるゲームの人物ですか?

<潮>
マム, no, マム!

<神通>
単純な名前ですね、
田舎者ですか?

<潮>
マム, no, マム!
106鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:16:43 ID:Ee7lxbYpc
<神通>
貴様もおっぱいを揉むんでしょ?

<潮>
マム, no, マム!

龍驤「揉みたくても揉めんやつもおるんじゃー!」ガシャーン

スタッフ「ぎゃー!セットに大穴開いた!」

提督「大鳳、龍驤を抑えろ!まて瑞鳳、室内で九九艦爆を飛ばすな!」

監督「あかん、艦娘さんがお怒りや!カット、カッート!」
107鎮守府にて映画撮影◆Ia1C9UEcGE :2014/10/25(土)19:18:16 ID:Ee7lxbYpc
小出しでごめんなさいだけど今日はここまで
鈴熊は正義
108名無しさん@おーぷん :2014/10/25(土)20:11:16 ID:bvAcZdaKL
正義すぎて照れますw
ディケイドの人も乙でしたー
109名無しさん@おーぷん :2014/10/27(月)01:14:51 ID:871E4MhQY
>>107
期待

なんか調べると「アイアイマーム/サー!!」って言うのもあるっぽい?
110名無しさん@おーぷん :2014/10/31(金)23:59:00 ID:53aC15e23
ここって十話以上続くようなSS貼っていいのかな?
111名無しさん@おーぷん :2014/11/01(土)01:35:15 ID:QyWCPDnc5
いいと思います
112名無しさん@おーぷん :2014/11/01(土)08:44:13 ID:6embSggjI
わくわく……
113名無しさん@おーぷん :2014/11/01(土)08:52:44 ID:CZhf1LSKu
>>110
期待
114OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)18:58:40 ID:Pe2OSpSPR
前スレで「進め、百里浜艦娘隊!」というSSを書いた者です。
SS速報の方に行っていたのですが、あちらは自分に合わないと感じ戻ってきました。
前スレ投下分も合わせて投下させていただきます。
115進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:02:13 ID:Pe2OSpSPR
第1話 不知火、お散歩します


 海から吹き付ける潮風。波の音が静かに、大きく響いている。
 海辺の平地に作られた大きな施設。土地は広く、周囲は高い塀で囲まれている。一般的な
公的施設に比べると古めかしい作りになっていた。
 国防海軍対深海棲艦百里浜基地と書類には記されることが多い。
 とことこと敷地を歩く小柄な少女。
 後ろで縛った紫色の髪の毛と、ぴしっと着こなせた制服。スカートの裾からは黒いスパッツが
覗いていた。青い瞳には鋭い光が映っているものの、今はどこか眠そうでもある。
 少女はふらふらと敷地を歩いていた。



 こんにちは。不知火です。
 午後の風が気持ちよいです。
 今日はお休みなので、ゆったりと基地内をお散歩です。外出許可書は貰っていないので、基
地内の探検ですね。もう少し練度を上げられれば外出許可も簡単に取れるのでしょうが、あい
にく不知火はまだ建造後半年にも満たない見習いです。

「殺風景な場所ね」

 基地といっても、観光名所のようなものはありません。
 とりあえず、行き先を決めずぶらぶら歩きます。
 朝に起きる予定でしたが、昼過ぎまで寝ていました。同じ部屋の陽炎に八時に起こしてくれと
頼んだのですが、彼女も不知火同様お昼前まで寝ていました。
 今度は目覚まし時計を買おうと思います。

「ヘイ!」

 声を掛けられました。
 が、無視しましょう。

「ヘイッ!」

 再び声を掛けられましたが――
 どうしましょうか? 振り向くべきか無視するべきか。重要度の低い難問です。

「ヘイ、レッスン! ルゥゥック!」

 はぁ。不知火の負けです。
 大きくため息をついて、不知火は視線を上げます。
 基地の西側。工廠近くに置かれた荷物運搬用の大型クレーン車。普通の工事現場のものよ
りも頑丈そうな作りです。そして、今はクレーンを上げた状態で停まっていました。
116進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:02:45 ID:Pe2OSpSPR
「ようやくこっち向いてくれましたネー。無視はノーセンキューデース」

 クレーンのフックに引っかけられた艦娘が一人。
 金色のカチューシャと茶色い髪の毛、水干のような白い着物に黒いスカートと、巫女っぽい
服装をしています。自称イギリス生まれの帰国子女。金剛型一番艦、金剛さんですね。後ろ手
にがっちりと縛られ、宙吊りにされていますが……。
 ちなみに我が百里浜基地の金剛さん、余所の鎮守府や基地の金剛に比べて、ちょっと背が
低くアホ毛が二本あります。そのあたりは同じ種類の艦娘の個体差らしいです。

「不知火に何か御用ですか?」

 見てしまった以上、無視するわけにもいきません。

「というか、何をしているのですか? 金剛さん。新しい遊びですか?」

 ジト目で不知火は尋ねます。
 百里浜鎮守府の主力の一人が、宙吊りにされている。意味が分からない。
 金剛さんはゆらゆらと揺れながら、楽しそうに語り始めました。

「いやー、実はデースネー。お昼休みに提督の部屋に書類を持って行ったら、提督がお昼寝し
てたんですヨー。お昼寝ー。英語で言うとシエスタデース」

 なるほど。
 うちの司令官はお昼ご飯を食べた後に、軽く昼寝をする習慣があります。
 金剛さんは不満そうに唇を尖らせ、

「せっかくなのでバカボンのパパのヒゲを書き込もうとしたんデースヨ。でもあっさり見つかっち
ゃいましタ。それから全力全開エスケープしたんですケド、見ての通りの宙吊りデース。しばらく
反省しろ――と」

 ゆーらゆーら。

 いじけたように揺れています。この人は。

「事情は飲み込めました」

 不知火は自分の額に手を当て、こっそりとため息をつきました。
 昼寝の最中にバカボンのパパのヒゲを描く。そんな事されたら、誰だって怒りますね。未遂で
すが。宙吊りのお仕置きで済ませている司令官は、寛大だと思います。不知火だったら、絶対
に額に「肉」とか「金」とか描いてしまいます。
117進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:05:52 ID:Pe2OSpSPR
「金剛さん」
「なに?」

 とりあえず何か言うべきでしょう。慰めでも非難でも励ましでも。
 不知火は口を開き、告げます。

「なお、余談ですが、バカボンのパパのヒゲ、あれ鼻毛だそうです」
「レアリィ!?」

 両目を見開き、二本のアホ毛をぴんと立てる金剛さん。やはり驚きでしたか。驚いてもらって
不知火はとっても満足しました。
 不知火は落ち着いて続けます。

「冗談です。あれは正真正銘ヒゲだそうです」
「笑えないジョークはノーセンキューネ」

 安心したように金剛さんは息を吐いています。手が自由だったら、額をぬぐっていたかもしれ
ません。バカボンのパパは作中であれをヒゲと言っているようです。しかし、これで終わりでは
ありません。
 人差し指を立て、不知火はさらに続けました。

「鼻毛なのはワンピースのゴールドロジャーでした」
「マヂで!?」

 かっと目を剥き、口を四角く開ける金剛さん。
「こっちはマヂです。設定は変わっているかもしれませんけど」

 不知火の無慈悲な言葉に、金剛さんは仰け反って空を見上げています。

「うーぁー。知りたくない事実を知ってしまったのデース……。たった今私は、意味もなくとっても
イヤーな大人の階段登っちゃったネェ……」

 ぐねぐねしながら、悶えています。
 退屈な休みの日の午後ですが、意外と暇が潰せました。さすがは戦艦の面白い担当。

「それでは不知火はこれから散歩の続きをしますので。さようなら」
「ウェィツ、ア、ミニッツ!」

 しかし、あっさりと呼び止められてしましました。
 不知火は再び金剛さんを見上げます。

「助けて下さいヨー。ヘルプミー、不知火ちゃーん。私たちの仲じゃないですカー」

 困りました。これはどうしたらいいのか?
 数秒黙考してから、不知火は答えます。

「ぶっちゃけ面倒くさいと、不知火は正直に言います。それに、そのワイヤーもかなり頑丈そう
ですし、外すのは工具が必要だと思います。不知火たちは力があるといっても、陸上ではたか
がしれています」
118進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:06:28 ID:Pe2OSpSPR
登場人物

不知火
陽炎型 2番艦 駆逐艦。
半年ほど前に建造された見習い。レベルは8くらい。
散歩が趣味。

金剛改
金剛型 1番艦 戦艦
かなり昔から基地の主力の一角を務めている高速戦艦。
レベルは80くらいだが、改二ではない。
余所の金剛に比べて少し背が低く、アホ毛が二本あるのが特徴。
イタズラ好きで、不知火曰く艦隊の面白い担当。
119進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:08:54 ID:Pe2OSpSPR
投稿順番ミスです。
>>118よりもこちらが前でした。

 見た目は普通の女の子の艦娘。しかし、人間ではありません。普段は人間と変わらないくら
いの膂力に抑えていますが、本気を出せばオリンピック選手並の身体能力を発揮できます。
海上では海の力を得て、さらにパワーアップします。
 逆を言えば、陸上ではあくまで人間レベルの力が限界です。頑強なワイヤーを引きちぎるよ
うな怪力は出せません。

「むーぅ。仕方ないデース」

 残念そうに肩を落としている金剛さん。
 その時でした。

 ズンッ!

 下腹に響く重い音と衝撃。

「む!」

 不知火は息を止め、音のした方向に向き直りました。
 爆発のようです。
120進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:09:49 ID:Pe2OSpSPR
第2話 ウィークリー・エクスプロージョン


 土煙を伴って吹き抜ける風。風と言うより、空気の壁が流れていくような感じです。衝撃波な
ので、まさに音の壁ですね。あまり陸上では体験したくないものです。

「へ……クシュン――!」

 小さなくしゃみ。

「うーん、やっぱり爆風は鼻に来るネー……」

 鼻をすすりながら、金剛さんがぼやいています。
 他人の作った爆風を受けると反射的にくしゃみが出る体質らしいです。深海棲艦との戦いで
は、地味に鬱陶しい癖と以前愚痴っていました。

「これは」

 煉瓦造りの工廠棟。その奥の方に作られた古い小型倉庫。物置――というよりもがらくた倉
庫と貸しているのが現状ですが。その倉庫がひとつ無くなり、煙が舞い上がっています。そこ
が爆心地のようですね。
 ぱらぱらと砕けた木材やらが落ちて来ます。危ない……。

「デ、デン! イッツ、ア、クエスチョン! 三択デス! 何が起こったのでSHOW!」

 唐突に、やたらハイテンションな声を上げる金剛さん。
 不知火が顔を向けると、片目を瞑って、

「答え1、むっちゃんエクスプロージョン!
 答え2、大鳳ちゃんエクスプロージョン!
 答え3、いつもの」
「どう考えても3ですね」

 ため息とともに不知火は答えを決めます。いつもの。この百里浜基地には、気が向くと爆発
起こすトラブルメーカーが一人います。

「あら」

 不知火は空を見上げました。
 青い空を背景に、人間がくるくると回りながら宙を舞っています。さきほどの爆発に巻き込ま
れて吹き飛ばされたのでしょう。地上からの高さはおよそ五十メートル。

「オー、提督がお空を飛んでマース」

 白い帽子に、白い詰め襟。白いズボン。
 標準的な制服を纏った男。
 我が百里浜基地の司令官です。一応一番偉い人です。
 おそらく爆発に巻き込まれて空中散歩をしているのでしょう。
 司令官は壊れた人形のような格好で落ちていき、
121進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:10:22 ID:Pe2OSpSPR
 ゴンッ

 埠頭の荷物運搬用小型橋型クレーンに激突。
 そして。

 ぼちゃん。

 海に落ちました。

「人間ってこういう音も出せるんですね。不知火、初めて知りました」
「えーと、不知火ちゃん。手が空いてそうなところでお願いなんだケド、ちょっと提督拾って貰え
るかな? そんなに深くはないと思うからサー」

 金剛さんが視線で司令官の沈んだ辺りを示しています。
 不知火は足を持ち上げ、茶色い靴を指差しました。

「靴の艤装はあるので海の上ならどうとでもなりますが、海面下は管轄外です」

 深海戦艦と戦う力を生み出す艤装。砲や魚雷発射管などから、靴や服も艤装に含まれます。
今も艤装の制服と靴は身につけていますので、海上移動はできます。が、不知火の艤装に海
中移動能力はありません。
 艤装外せば素潜りできますけど、不知火は泳ぎがそんなに得意ではないです。

「むー。私もダイビングは苦手デース……」

 眉間にしわを寄せ、金剛さんが首を捻っています。
 不知火達は艦娘。極端に言ってしまえば、人の姿をした船です。海面下は基本的に管轄外
なのです。泳ぐ程度はできますが、泳ぎが得意な娘は少ないと思います。

「ここが潜水艦の子たちに頼むべきですね」
「それがいいデース。モチはモチ屋に頼むのデース」

 不知火の提案に、金剛さんが頷きます。
 海面よりも下は潜水艦のお仕事です。

 おや?

 カラン、カランコ――

 と、近づいてくる下駄の音。

「おーい。不知火ちゃんに金剛ちゃん、無事かい? ワシの倉庫が爆発したようだけど」

 やってきたのは一人のお爺さんです。
 わらわらと足下に着いてくる工廠の妖精さんたち。多分数十人。
 この人は、百里浜基地で働いている、数少ない人間です。余談ですが、普通の人間が長時
間艦娘といると、「当てられてしまう」そうです。そのため同じ場所で働くには適正が必要と言わ
れています。当てられるというのがどういう状態かは知らないのですが。小さい神様と長時間
一緒にいるのは、生身の人間には危険、らしいです。
122進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:11:18 ID:Pe2OSpSPR
 閑話休題。
 不知火と金剛さんは、ジト目でやってきた爺さんを眺めました。

「敷嶋博士……」
「ドクター・シキシマ……」

 この騒ぎの張本人です。
 背広の上に古ぼけた白衣を纏った、やや猫背気味の老人。
 両足は裸足に下駄履きです。年齢は六十歳くらいでしょうか。そして一番重要な事。この人
まともではありません。横のみ白髪の残った禿頭には、何故かネジが一本ぶっ刺さってますし、
年齢不相応に目付きがギラギラしています。何よりも全身から立ち昇るマッドサイエンティス
トオーラ。実際、マッドです。
 厄介な事に、この見るからに危ない科学者が、不知火達の百里浜基地の工廠長です。皆か
らは敷嶋博士と呼ばれています。下の名前は知りません。ついでにうちの爆発担当です。気
が向くと何か爆発させています。

「不知火たちは無事です。それよりも今度は何をしたんですか?」

 一応確認しておく必要はあるでしょう。
 不知火は爆発した倉庫を指差します。
 どこからか持ってきた予算や資財で変なものを作って、大抵最終的に爆発させるのが日課
です。それだけならただの危ない人なのですが、装備職人としての才能と技術と、工廠妖精た
ちとの相性は天才的です。この人の作る装備は本当に高性能なんです。厄介な事に。厄介な
事に――! 大事な事なので二回言いました。
 博士は黒煙を上げる倉庫を一別し、両手を腰に当てて大笑いましました。

「カッカッカァッ! 心当たり多すぎて分からんわい。まっ、おおかた提督のヤツがワシの倉庫
片付けようとして、うっかり自爆スイッチでも押したんじゃろ。前から倉庫をがらくた置き場にす
るなとか騒いでたしのう」
「それで倉庫壊したら本末転倒だと思います」

 無駄と分かっていても言わないといけません。
 本部棟や寮から出てきた人たちが、消火活動を初めています。博士の爆発癖に対して、み
んな慣れたものです。新入りの不知火はまだ慣れてませんけど。

「あと、何にでも自爆装置組み込むの辞めて下さい」
「細かい事は気にしちゃいかんよ、不知火ちゃん。それに自爆装置は男のロマンじゃ!」

 拳を天に突き上げ、博士は断言しやがりました。
 まったく、この人はァ――!
 陸奥さん、大鳳さんの猛烈な抗議に加えて、司令官ががっちり釘を刺しているおかげで、博
士が不知火たちの装備に自爆装置を組み込むことはありません。が――自分で作るものに
は、躊躇無く組み込みます。

「ロマンではありませんし……。週一で爆発騒ぎ起こすのは止めて下さい」

 人の話を聞かない人というのは理解していますが、抵抗する意志というのは大事だと不知火
は信じています。
123進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:11:49 ID:Pe2OSpSPR
「ヘイ、そこ! 何してるデース!」

 じたばたと暴れる金剛さん。

 うん……?

 見ると博士が金剛さんの真下に移動し、によによと笑いながら鼻の下を伸ばしていました。
実に幸せそうな表情ですねぇ……。

「いやー、今日はピンクか。ふむふむ。絶景絶景」

 まったく、このエロジジィは……!

「何勝手にスカートの中覗いてるデース! セクハラデース! 軽犯罪法違反デース! という
か、エロジジィはゲットアウェイ! あっち行けっ、しっしっ」

 クレーンに釣るされた金剛さん。
 激しく揺れながら叫んでいますが、効果は無しですね。
 真下から覗けばスカートの中は丸見えです。金剛さんはがっちり拘束されて身動きも取れず、
逃げることも反撃することもできません。

「女の子が吊されてるのに、覗かん男は男じゃないわい!」

 鼻息荒く、エロジジィが断言します。
 人間正直なのはいいことですが、正直すぎるのは問題です。

「参りました」

 不知火は明後日の方向に目をやり、こっそりと独りごちます。今日は大切なお休みの日です
し、これは見なかった事にして散歩の続きをしましょうか? 抵抗する事は大事ですが、人生
諦めも肝心と言いますし。
 もうゴールしちゃっていいよね?
 かなり本気でそう考えていると。

 ガン。

 固い音。

 ぽて。

「あら」

 不知火が振り向くと、博士が仰向けに倒れました。
 脳天にはたんこぶができています。固いもので脳天をぶん殴られたようです。ひくひくと痙攣
しているので死んではいないでしょう。殺しても死ぬとも思えませんし。
124進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:12:20 ID:Pe2OSpSPR
「……何してるんだ?」

 黄色い隻眼が周囲に向けられました。
 灰色の刀身と赤い刃。船首を模したと思われるサーベル型の剣――こんなSF風味の接近
専用武器を持っているといったら、この人しかいませんね。
 ショートカットの青みがかった黒髪と左目を覆う眼帯。頭には耳のような艤装を付け、背中に
は大きな戦闘用艤装。軽巡とは思えない豊満なプロポーションを黒い制服で包んだ、百里浜
基地の遠征番長にして事務仕事の帝王です。
 どうやら遠征帰りのようです。

「うーん……」

 左手で頭を掻きながら、首を傾げています。
 吊された金剛さん、爆発した倉庫、足下で倒れているエロ博士。工廠妖精さんたちは離れた
場所に避難しています。

「どこから訊けばいいのか俺もよくわかんねーけど、何なんだ、この状況……?」

 右手に剣を持ったまま、困ったように左手の人差し指で頬を掻いています。



登場人物

敷嶋博士
オリキャラカッコカリ。
基地で働いている数少ない人間の一人。
役職は工廠長。艦娘の扱う艤装を作るのが主な仕事。
自他共に認めるマッドサイエンティストで、何にでも自爆装置を付けたがる。
どこからか予算と材料を持ってきては何かを作って、最終的に爆発させている。
装備職人としての才能と技術と、工廠妖精たちとの相性は天才的で、作る装備はどれも高性能。
エロジジィ。
125進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:12:51 ID:Pe2OSpSPR
第3話 私はここにいる


「天龍さん」

 不知火は声をかけます。
 とりあえず事情を説明しておく必要はあるでしょう。
 天龍さんが不知火に目を向けて来ます。先ほどまであった困惑は薄れ、疑問の眼差しに。つ
まりそれは、この不知火が状況説明が可能だと、認めてくれているということですね。自称最
新鋭軽巡の姉さん。

「私もいるよー?」

 不意に。
 天龍さんの後ろから現れたもう一人の軽巡娘。
 背丈や体格は天龍さんとさほど変わりません。頭の上に浮かんだ輪っかのような頭部艤装。
中分けボブカットの青みがかった黒髪。優しそうな笑顔には、しかしどこか影があります。豊満
な胸を強調する、アンミラ風の黒い制服。両手で抱えるように持った槍。

「龍田さん。こんにちは。遠征お疲れ様です」

 不知火は一礼しました。
 天龍さんの相方。龍田さんです。いつも天龍さんと一緒にいます。たった今まで居なかったよ
うに思えるのですが、まぁ細かい事は気にしてはいけません。

「ふふふ、そんなに疲れるような事はしてないよー? ねぇ、天龍ちゃん」
「遠征は、ここからが本番だろ?」

 にこにこ笑う龍田さんに、天龍さんが釘を刺します。
 よく言われる事ですが、遠征の本番は報告書作成です。深海棲艦討伐任務に比べて遠征は
危険度が少ないですが、逆に報告することはかなり多いです。
 天龍さんの肩に寄り添い、龍田さんがにっこりと頬笑んでいます。

「頼りにしてるわよー、天龍ちゃん」
「自分の報告書は自分で書けよ……?」

 そんな会話をしていると。
 前触れ無く。

 がばっ!

 仰向けに倒れていた敷嶋博士が飛び起きました。頭にたんこぶできていますけど、元気そう
です。バネ仕掛け人形のような速度は、はっきり言って老人のソレではありません。

「いきなり何するんじゃ、天龍ちゃん!」

 かっと目を見開き、天龍さんを睨み付けます。
126進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:13:27 ID:Pe2OSpSPR
「ワシの行動に非があることは認めよう! だがしかぁし、刀で斬りつけるのはさすがにどうか
と思うぞ、ワシは! もし、万が一、脳神経とか脳血管がアレしてコレしれ、装備が作れなくな
ったらどうするんじゃ!」

 と自分の頭を指差します。
 武器、装備開発にかけては国内屈指と言い張る頭脳。何故かボルトが刺さっていますが。実
際、博士の作る装備は高性能です。万が一脳に障害が残るようなことがあっては、我が百里
浜基地は、それなりに困るでしょう。

「大丈夫だろ、峰打ちだし。力も入れてない」

 ぱたぱたと手を動かしながら、天龍さんが苦笑いをします。
 ちょこんと小首を傾げ、龍田さんが口を開きました。眉を内側に傾けつつ、

「でも、天龍ちゃん。刀はマズいかもねー。敷嶋博士は私たちと違って生身の人間なんだから、
固いもので頭叩いたらダメだよ? 打ちどころが悪いと死んじゃうし」

 不知火たち艦娘は、頑丈です。生命活動を肉体のみに依存していないため、多少無理が利
くとのことです。また単純に身体自体が頑丈という特性もあります。船の化身やら憑喪神やら
のようなものですし。
 龍田さんが博士に声をかけました。転んだ子供に接するように優しく。

「ケガは無い、先生?」
「うぇーん、痛かったよー。龍田ちゃーん!」

 満面の笑顔で両腕を広げ、涙を迸らせながら龍田さんの胸めがけて飛びついて――
 あ。死んだな、これ。

 どすっ。

「おぅ!」

 龍田さんの左腕がエロ博士の脇腹に突き刺さりました。
 笑顔のままのリバーブロー。それなりに手加減はしているようですが、肝臓に一撃食らって
博士が、白目を剥いて前のめりに崩れていきます。

 ゴスッ。

 そこに迷わず右アッパーカット。
 跳ねる髪の毛と大きな胸!
 下がった顎を打ち上げられ、博士は後ろに仰け反り。

 ばたっ。

 仰向けに倒れました。
127進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:14:04 ID:Pe2OSpSPR
 ノックアウトです。一発です。カウントすら必要ありません。確実に脳震盪起こす殴り方で、実
際起こしました。仰向けのままピクピク痙攣しています。

「でも、素手なら大丈夫よ」

 黒いグローブに包まれた拳を持ち上げ、楽しそうに言ってのけます。明らかに天龍さんよりも
酷いことをしていますね……。

「それは、刀でドツく方がまだ安全だと思うネ……」
「相変わらず容赦ないですね、龍田さん」

 金剛さんと不知火は正直に感想を述べました。
 いつもにこにこと穏やかなように見えて、やることは基本的に容赦も躊躇も無い人です。今
回は思い切り胸に飛びつこうとした敷嶋博士が悪いですが。

「大丈夫か、爺さん……」

 冷や汗を流しつつ、天龍さんが倒れた博士の側に屈み込みました。

「だ、だっ……じょぶ――じゃ」

 天龍さんに顔を向け、博士はおもむろに右手を挙げました。脳震盪のせいで腕が震えてい
ます。しばらくはまともに動けないでしょう。その状態でぐっと親指を立ててます。
 見えてるんですね……。天龍さんは気付いてないようですけど。
 龍田さんは頬に手を当て、博士を見下ろしました。

「ふふふ、大丈夫よ。死んだり後遺症残ったりしないようにちゃんと加減してるからぁ。それに、
問題あっても間先生に頼めば大体治してくれるわ。一回死んだ人を生き返らせたなんて逸話
があるくらいの名医さんなんだから」

 嬉しそうに槍の刃先を指でなぞります。

「…………」

 素早く天龍さんのスカートの中から目を逸らすエロジジィ。
 まったく、この人は――。

 ちなみに、間先生とはうちの基地で従軍医師を務めている方です。名前は間玄男。主な仕
事は不知火たち艦娘の治療と体調管理です。入居ドックの管理もしています。医師としての腕
は天才的で、一度死んだ人間を蘇生させたという逸話まであります。
 博士がヤバいことになっても、間先生に頼めば問題なく治してくれるでしょう。

 ガシッ。

「ん?」

 聞こえた固い音に、全員が振り向きました。
128進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:14:36 ID:Pe2OSpSPR
 岸壁に作られた柵を、真下から伸びた手が掴んでいます。今の音は柵を掴んだ音のようで
すね。白い手袋と白い長袖。ここから海面までそれなりに高さがあるようですが、頑張って登っ
てきたようです。

「司令――」

 実を言いますと、不知火すっかり忘れ去っていました。
 無言のまま――柵を掴み身体を引き上げ、そのまま柵を跳び越える若い男。全身ずぶ濡れ
で、肩に藻が引っかかっています。白い軍帽と詰め襟という標準的な服装。
 我が百里浜基地の司令官です。
 名前は鈴木一郎。有名な野球選手とほとんど同じ名前ですが、野球は苦手だそうです。特
徴は……何も無いです。本当に、何も無いです。一度見たら次の瞬間には顔を忘れていそう
なほどモブい容姿が特徴と言えば特徴ですね……はい。もし制服以外の格好をしていたら、
それが司令と気付かない自信が、不知火にはあります。

「オーゥ。提督ゥ、元気そうですネェ!」

 クレーンに吊されたままの金剛さんが元気に声を上げてます。

「チョーットお願いがあるんだけどサー、いい加減下ろしてくれないかナー! もう十分反省しま
したネ! それにベリーベリー退屈で、おへそでティーを沸かしそうデース!」
「あまり反省していないようだな……」

 金剛さんを見上げてから、司令はため息ひとつ。肩に付いていた海草を掴んで海へ放り投
げます。それからこちらに向かいながら、天龍さんと龍田さんを見ました。

「天龍、龍田。海上護衛は終わったか?」

 いくらか引きつつも、天龍さんが答えます。

「予定取り無事終了だ。深海棲艦との接触は無し。チビたちは風呂に行かせた。これから報
告書作るから、そうだな二時間待ってくれ」
「分かった。報告書を作ったら、ゆっくり身体を休めてくれ」

 頷く司令官。普通に仕事の会話しちゃってますけど――

「司令。お怪我はありませんか?」

 不知火は平静を装いつつ声を掛けます。不知火の認識が正しければ、生身の人間が空飛
んだり落ちたりすれば無事では済みません。普通死んでます。

「ケガはないよ、不知火。私も鍛えているからこれくらいでは何ともない」
「人間ではありませんね」

 思わず本音が漏れますが、司令官は気にしていないようでした。
129進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:15:07 ID:Pe2OSpSPR
「しかし敷嶋先生」
「ぎくっ!」

 死んだふりをしていた敷嶋博士が震えます。
 倒れたままの博士を司令は片手で持ち上げました。荷物を担ぐように肩に担ぎ上げていま
す。ぐっしょりと濡れた司令の身体に、博士は露骨に嫌そうな顔をしています。しかし司令は無
視して歩き出しました。

「色々とお話があります。一緒に来ていただきたい。今回のはさすがにやり過ぎです。工廠施
設と倉庫の私物化もいい加減見過ごすわけにはいかないので」
「あー。めんどいのぉ」

 げんなりと呻く博士。始末書なり反省文なり書くのでしょう。でも、それに懲りず一週間くらい
経つとまた爆発起こすのでしょう。うちの基地ってその辺りの軍規とかどうなっているのでしょう?
割と本気で謎です。

「行ってしまいました」

 去っていく司令の背中を眺め、不知火は呟きました。

「提督ゥ、結局私のこと下ろしてくれなかったネー」

 唇を尖らせながら、金剛さんがぼやいています。
 でも、それは自業自得ですよね?


登場人物など

天龍改
天龍型 1番艦 軽巡洋艦
レベルは50くらい。百里浜基地では古参組。
軽巡とは思えない豊満ボディが特徴。
口は荒いが面倒見は良く、駆逐艦たちには好かれている。堅実な遠征を得意とする遠征番長
にして、報告書作成など事務仕事の帝王。人呼んで縁の下の力持ち。

龍田改
天龍型 2番艦 軽巡洋艦
レベルは50くらい。天龍とは同期。
おっとりにっこりとした性格だが、天龍に危険が迫った時は、容赦も躊躇もない行動を取る。
変に刺激しなければ優しいお姉さんです。

提督
百里浜基地の提督。一応一番偉い人。
名前は鈴木一郎。野球選手のイチローとは、郎の字が違う。
標準的な制服を纏った若い男。特徴がない事が特徴と言えるくらいに、特徴が無い。稀に見る
モブ顔。不知火曰く、制服以外の格好をしていたら司令と気付かない自信がある。
普段から鍛えているため、非常に頑丈。
130進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:15:57 ID:Pe2OSpSPR
ここまでが前回投下分です。
131進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:16:28 ID:Pe2OSpSPR
第4話 大井と北上と――?


 百里浜基地の西側――丘側に並んでいる艦娘寮。
 そのひとつである第二艦娘寮。艦娘たちからは巡洋艦寮と呼ばれている。呼び名通り、軽
巡と重巡が暮らしていた。二階建ての建物で、外見は学校校舎を小さく切り出したみたい、
と言われている。なお、かなり頑丈に作られている。
 北側の廊下を歩く二人の少女。

「いやー、大井っちの雷撃は凄かったねー」

 緑色の制服を着て、長い黒髪を三つ編みにしている少女。趣味なのか、長いもみあげも
緩く三つ編みにしている。軽巡洋艦北上。
 のんびりと笑いながら、隣の少女に話しかけていた。

「北上さんにそう行って貰えると、嬉しいわ」

 そう返すのは、同じく緑色の制服を着た、明るい髪の毛の少女。軽巡洋艦大井。
 雷巡コンビと言われるが、まだどちらも練度が足りず軽巡である。

「早くあたしたちも改二になりたいねぇ。全四十門の魚雷発射管から放たれる超雷撃。空母
も戦艦もバシバシ沈める、みんなの憧れパイパーズ――!」

 右手を持ち上げ、ぐっと拳を握りしめる。
 桁違いの雷撃値から繰り出される、大火力の魚雷。直撃すれば戦艦だろうが沈める格上
殺し。火力は凄まじいが、意外と装甲が薄いので運用には注意したい。

「甲標的が本体なんって言っちゃダメだぞ」

 表情そのままで北上が付け足す。
 大井は苦笑いをしながら足を止めた。
 四角い木のドア。そこが二人の部屋である。基本的に艦娘寮は数人で一部屋を割り当て
られている。一人部屋もあるが、多くは二人部屋から四人部屋である。

「まだ私たちは改にもなってないから、先は長いわね」

 大井がドアを開け、部屋に入った。小さめの玄関で靴を脱ぎ、室内用のサンダルに履き替
える。午後の演習を終え、自由時間である。

「でも、気長に頑張りましょう。ああ、早く酸素魚雷が撃ちたいわー」

 両手の指を組んで、きらきらと大井は瞳を輝かせていた。
 まだ見習いであるため、支給されるのは三連装魚雷や四連装魚雷である。酸素魚雷や艦
首魚雷は見るだけでまだ撃ったことがない。

「いいよねー。酸素魚雷」

 しみじみと同意する北上。
 靴を脱ぎ部屋に入る。
132進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:17:02 ID:Pe2OSpSPR
 寮はアパートのような部屋割りだった。床は板張りで、壁紙はシンプルな白である。ダイニ
ングキッチンと小さめの風呂、トイレ。そして寝室。もっとも、食堂もトイレも大浴場も別にあ
るので、部屋の設備を使うことは少なかったりする。

「そうだ。北上さん、先にお風呂いただいてもいいかしら?」

 大井が風呂の扉を指差した。部屋にある風呂は小さいが、一人でゆっくり使うことができ
る。大浴場でのびのび疲れを取るのもいいが、一人で気ままに浸かるのもいい。

「いいよー」

 ぱたぱたと手を動かし、北上は答えた。
 が、ぽんと手を打ってから、声を掛ける。

「そうだ。大井っち、一緒にお風呂入らない?」
「一緒に?」

 大井が瞬きをした。
 部屋の風呂は一人用である。二人で入るのにはさすがに小さすぎた。しかし、多少無理を
すれば二人で入れるほどの大きさはある。

「いやー、姉妹だし裸の付き合いって大事だと思うよ、あたしは」

 両手を広げて、北上が笑った。頬が少し赤く染まっている。よく見ると口元が緩み、目には
怪しい光が灯っていた。
 北上の様子には気付かず、大井は首を傾げる。

「そうねぇ」

 ばたん。

 寝室のドアが開いた。

「くまー」

 緩い声とともに部屋に入ってきた少女。
 腰辺りまで伸ばした茶色い髪の毛。触手のような大きなアホ毛が飛び出している。水色の
縁取りのなされたセーラー服と、ハーフパンツという出で立ちだった。
 球磨。大井、北上の姉であり先輩であり、この部屋の室長でもある。

「あら。球磨姉ぇ。いたの?」

 眉を持ち上げ、大井が驚いていた。部屋には誰もいないと思っていたのだ。誰かいるよう
な気配もなかった。しかし、現実として球磨はここにいる。

「………」

 こっそりと北上が渋い顔をしていた。
 とことこと球磨が二人の元に歩いてくる。
133進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:17:59 ID:Pe2OSpSPR
「部屋のお風呂はそんなに大きくないクマー。二人で入るとさすがに狭いクマー。それにお
風呂は一人でゆっくり浸かるものクマー。無茶言っちゃ駄目クマー」

 ぐっ。

 と球磨が北上の肩に右腕を回しつつ、大井に向かって片目を瞑る。

「そうねぇ」

 頬に指を当て、大井は天井を見上げた。白くきれいな天井。建物自体はかなり古いが、時
折工廠の妖精たちが修理をしているため、汚れなどもなくきれいである。
 北上に目を戻し、にっこり笑う。

「それじゃ、北上さん。お先にお風呂いただいていいかしら?」
「うん、いいよー。あたしはちょっと球磨姉ぇと話があるからさ。ゆっくりたっぷりのぼせるくら
い浸かってきてよ」

 手を動かしながら、北上が笑う。
「のぼせちゃ困るけど」

 苦笑いをする大井。
 後の行動は速やかだった。寝室に移動し着替えを持って来てから、脱衣所へと入る。ぱた
りと閉まるドア。換気用の鎧窓のついた木のドア。上部に小さな磨りガラスが嵌められてい
る。当然だが脱衣所内部の様子は見えない。
 北上はダイニングの隅に移動した。肩を組んだ球磨と一緒に。

「球磨姉ぇ――」
「何クマ?」

 低い声音で唸る北上に、球磨はしれっと訊き返す。

「どういうつもり?」
「お風呂に入るときは、誰にも邪魔されず自由で、なんというか……そう、救われてなければ
いけないんだクマー。たとえ姉妹でも、それを邪魔するのはマナー違反クマ」

 両目を閉じ、球磨は蕩々と語った。子供に言い聞かせるような優しく穏やかな口調で。し
かし、北上の肩に回した腕にはしっかりと力を込めて。

「………」
「…………」

 沈黙。
 風の音や、海の音。演習による砲撃音などが聞こえてくる。どこからか他の艦娘たちの話
し声も聞こえた。誰の声か、何を言っているかまでは分からない。
 脱衣所からは大井が服を脱ぐ衣擦れの音が聞こえてくる。
 そちらを数秒凝視してから、北上は球磨に目を戻した。

「で、本音は?」
134進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:19:13 ID:Pe2OSpSPR
 ジト目で北上が訊く。
 優しげな――胡散臭いくらいに優しげな表情を引っ込め、球磨は北上に顔を近づけた。鼻
が触れあうほどの距離。こちらも妹同様ジト目で告げる。抑えた声音で。

「妹が越えちゃいけない一線越えるのは、ぞっとしないクマ……!」
「むぅ」

 きっぱりと告げられ、北上が視線を逸らした。
 肩から腕を解き、球磨が一歩下がる。両手を腰に当てて、

「それに提督にも言われてるクマ。北上が大井に変な事しようとしたら、砲撃してでも止める
クマって。それでもどうしようもないなら、自分を呼べって言ってたクマ」
「くっ、やはりあたしたちの前に立ちはだかるのは、提督か……」

 右手を力任せに握りしめ、北上は呻く。瞳に怒りの炎を灯しながら。影の薄い提督だが、
噂によるとかなり強いらしい。

「あー。まったく昔を思い出すクマ……」

 その様子を眺め、球磨は肩を落としている。眉を寄せ、陰鬱に。

 球磨に目を向け、北上が呟く。

「前の大井っちはかなり問題児だったみたいだね」

 先代大井である大井改二。同じく先代北上改二とともにハイパーズとして暴れまくったらし
い。その後、艦娘としての寿命を迎え、二人一緒に解体された。そして、今の北上たちはそ
の後継である。まだ見習いであるが。
 一度北上に顔を向け、

「くまぁ……」

 球磨は両手で頭を抱えてうなだれた。
135進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:19:44 ID:Pe2OSpSPR
登場人物など

北上
球磨型 3番艦 軽巡洋艦
三ヶ月ほど前に建造された見習い。レベルは大体7くらい。
まだ練度が足りないため、改にはなっていない。
緩い性格に見えるが、大井に対してはかなり危ない感情を持っている。
もみあげを緩く三つ編みにしている。

大井
球磨型 4番艦 軽巡洋艦
北上と同じ時期に建造された。レベルは大体7くらい。
大人しく素直な性格であるが、魚雷に対する思い入れは強い。
北上は気の合う相棒という認識。

球磨改
球磨型 1番艦 軽巡洋艦
レベルは大体55くらい。軽巡たちのまとめ役のような立ち位置でもある。
適当そうな性格だが、やることはちゃんとやる。かなり苦労人。
北上、大井の先輩であり姉であり、生活指導のため同じ部屋に住んでいる。提督からは
北上の暴走を止める役割を任せられている。
先代大井には相当に苦労していたらしい。
136進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:21:11 ID:Pe2OSpSPR
第5話 色々な過去

※ 原作には無い独自設定が多めに出てきます。

 くたりと、しおれているアホ毛。

「だいじょぶ、球磨姉ぇ?」

 若干引きつつ北上は姉の様子を眺めていた。球磨型姉妹のネームシップとして、妹たち
の面倒を見ている長女。色々癖の多い姉妹であるため、気苦労は絶えないのだろう。
 頭を抱え、球磨はぶつぶつと呻いている。

「あれはかなりヤバかったクマ……。ついでに先代の北上も、あのクレイジーサイコレズと普
通に接するよーな、まるで太平洋の心の広い――というか超鈍感系だったクマ。球磨も胃
が痛かったクマ」

 と、お腹を押さえる。

(凄かったんだねぇ)

 同じ北上として、先代の話は聞いている。北上至上主義の大井と、それを意に介さない超
絶マイペースな北上。話半分に考えていたが、球磨の様子を見るにおおむね事実のようだ
った。強烈な性格だが二人の間で関係が完結していたので、他の艦娘に迷惑はかけていな
かったらしい。

(これは、やっぱりね。前々から思ってたんだけど)

 十数秒、天井に視線を泳がせてから、北上は口を開いた。

「あのさ、あのさ。あたしたちって、大規模更新組だよね。あたしも大井っちも」
「球磨型姉妹じゃ、木曾もクマ」

 顔を上げ、球磨が付け足す。
 艦娘にはその能力を維持できる時間に限界がある。いわゆる寿命のようなものだ。短い
者では数年、長ければ数十年。寿命の限界を迎えた艦娘を解体し、その素材で新しい艦娘
を建造する事を更新と呼ぶ。
 百里浜基地では約半年前から三ヶ月前までの四半期で、所属艦娘の三割が更新された。
 全国的に類を見ない大規模更新である。
 本来なら定期的に行う更新だが、諸事情により百里浜基地では力の限界を迎えても解体
されずに仕事を行う者が多かった。重要航路防衛を行う横須賀鎮守府の補助が仕事の主
という立ち位置が災いしたのだろう。結果、基地としての機能に支障が出始め、その事態を
重く見た防衛省上層部は一斉更新を決断、今に至る。
 その際には各基地の担当地域の再編や、人事の再編などもなされた。百里浜基地は新
造艦娘が戦力として成長するまで、教育に力を入れるように方針が変更された。

 閑話休題。

「艦娘更新ってさ、艦娘の力ほとんど失って人間の女の子に生まれ変わるか、素体と艤装
失って、別の艦に生まれ変わるか……どっちかだよね?」
137進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:21:42 ID:Pe2OSpSPR
 北上はそう尋ねる。
 艦娘の最後は二種類ある。ひとつは艤装を外し、核と素体を完全に融合させ、生身の少
女を作り上げるというもの。その際には艦娘としての能力をほぼ全て失う。
 もうひとつは、核を抜き取り、艤装と素体は資材に分解されるというもの。こちらは実質的
な死だ。身体も艤装も全て一度消えるが、多くの場合別の艦娘として再建造される。つまり、
更新――生まれ変わりである。
 球磨は腕を組み、右腕を顎に添える。

「大体の娘は、次の世代の艦娘に生まれ変わることを望むクマ。球磨も限界が来たら、更
新するクマ。でも、艦娘辞めて人間になった子も知ってるクマ」

 多くの艦娘は更新によって別の艦娘に生まれ変わることを望む。球磨も限界が来たら解
体され、別の艦娘に建造されるつもりのようだ。
 もっとも強制ではなく、それぞれの理由から普通の女の子になる者もいる。
 球磨の言ったことを噛み締めてから。
 北上は口を開いた。少し慎重に。

「先代の私と大井っちも更新を選んで、別の艦娘になったんだよね?」

 先代のハイパーズは更新を選んだ。一度解体され、それによって作られた開発素材によ
って別の艦娘に生まれ変わる。

「大抵の場合、所属場所で新しい別の艦になるっていうけど――」

 特に理由が無い限り、解体された艦娘は、所属する鎮守府や基地、泊地にて新しい艦娘
として建造される。
 球磨の頬を冷や汗が流れ落ちる。
 一度息を吸い込み、北上は訊いた。

「あたしって、もしかして前世、大井っちだった?」
「………」
 
 何も言わず腕を組み、球磨は壁に背を預けた。

「艦核や装核の扱いは最高機密クマ。球磨は知らないし、調べる権限も持ってないクマ。そ
っちの管理は提督の仕事だから、提督に訊くクマ。でも、答えるとは思わないクマ」

 北上は自分の胸に手を当てる。心臓部に組み込まれた核。この核が具体的に何なのか、
それは最高機密として扱われている。
 疲れたような眼差しを、球磨は北上に向けた。

「でも……北上は、多分あの大井だったと、球磨は考えてるクマ」
「そう」

 目を閉じ、北上は苦笑する。
 一応、自分が大井に強烈な執着心を持っている自覚はあった。本来"北上"にはそのよう
な事は起こらないはずだが、自分を構成しているのが先代クレイジーサイコレズだと考えれ
ば、自分の感情にも納得がいく。
 そして問題がもうひとつ。
138進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:22:56 ID:Pe2OSpSPR
「じゃ、大井っちは――」

 ぎらりと目を輝かせ、北上が球磨に問う。
 先代大井はおそらく今の北上になった。なら、先代北上は? 先代北上の性格とよく似た、
今の大井。先代北上は更新によって今の大井になったのではないか? そんな考えはた
やすく浮かぶ。

「そこまでは何とも言えんクマ」

 投げやりに、球磨は首を振った。
 艦娘の核は最高機密である。情報は解析されているらしいが、一艦娘がその情報に触れ
るのは不可能だ。

「ま、あたしは大井っちが元々誰だろうと気にしないけどねー」

 肩をすくめ、北上は笑った。
 前世が誰であろうと北上は北上である。そして、大井は大井である。現在そこにいるのは、
前世でも来世でもなく、今を生きている北上と大井なのだ。

 ガシ!

 球磨の腕が北上の肩を掴んだ。

「とか言いながら、どこ行くクマ?」

 ごく自然な動きで脱衣所に向かっていた北上。
 球磨に捕まれ足を止める。
 肩越しに振り向き、北上は球磨をまっすぐ見据えた。頬を赤く染め、瞳に意志の輝きを灯
し、口元を引き締め、きりっと眉を内側に傾けている。

「大井っちのパン――」

 言い切るよりも早く。

 バンッ。

「よう。ちょーっといいかい?」

 部屋のドアを開け、女が一人入ってきた。
 それだけで、空気の重さが増す。

「あ、寮長……」

 北上は息を呑み、入ってきた女を見上げた。
 歳は四十ほどだろう。背は高い。ウェーブのかかった濃い灰色の髪をポニーテイルに結い
上げ、赤いビジネススーツを着崩し、火の点いていない葉巻を咥えている。顔や胸元、腕に
は大きな火傷跡が走っていた。背中には、布とベルトで縛った巨大な十字架のようなものを
担いでいる。
139進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:23:49 ID:Pe2OSpSPR
 どう見てもカタギではないこの女が、艦娘寮を管理する寮長である。

「則捲寮長。見回りお疲れクマ」

 球磨が挨拶をする。
 寮長は球磨に軽く手を振ってから、玄関で靴を脱いだ。近くにあった適当なスリッパを引っ
かけ、北上の目の前まで歩いてくる。
 少し腰を屈め、北上と視線の高さを合わせた。口元に浮かぶ凶暴な微笑。

「何となく危ない気配がしたから、来てみたんだがな。まー、あれだ。イチャイチャするくらい
なら誰も何も言わないし、キスくらいまでは大目に見よう。ちょっと危ないシスコンなんてのは
――アタシが現役だった頃から普通にいたしな。はは」

 横を向いて、呆れたように空笑い。
 それから再び北上に向き直る。茶色い瞳がまっすぐに北上の瞳を貫いていた。

「ただ、その先の一線越えるのは見逃せないな。いくら仲がよかろうと双方合意の上だろと
何だろうと。お前らの生活を預かる身としちゃぁなァ?」

 にやりと口元を歪め、背負った十字架に親指を向ける。布とベルトで包まれたデカブツ。
本人曰く、問答無用調停装置パニッシャーくん1号らしい。2号、3号もあるとか。
 音もなく、北上の頬を冷や汗が流れ落ちた。

「それに、憲兵さんの世話になるのは、イヤだろ? ん?」
「はい」

 硬い口調を、北上は返す。
 何か言い返したいが、どうすることもできない。突きつけられる気迫に、北上は固まってし
まっていた。艦娘は艤装無しでも人間より数段強い。しかし、北上が寮長と戦ったら確実に
負ける。そう確信させるだけの凄みがあった。
 脱衣所のドアが開く。

「あら寮長さん。こんにちは。どうかしました?」

 身体にバスタオルを巻いた大井が、寮長の姿を見て瞬きをしている。バスタオルの胸の部
分は大きく押し上げられ、バスタオルの縁からは谷間が覗いていた。お湯で濡れた両足は
無駄なく引き締まっている。

 ごくり。

 と北上は喉を鳴らす。

(やっぱり大井っちは大きいねー! これは、思い切り揉みたいねー! 生で揉みしだきた
いねェ! あと、太股すりすりぺろぺろしたいね! うん、決めた。あたし、決めた! やる。
いつか絶対やる! 球磨姉ぇも寮長も提督も憲兵さんも超える! 超えてやるからね! 今
は無理だけど、必ず――!)

 表情は微動だにさせず、静かに決心していた。
140進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:25:11 ID:Pe2OSpSPR
「うんや、騒がしかったから覗いただけだ。邪魔したな」

 寮長は片手を上げ、大井に笑いかける。北上に向けた威嚇の表情ではない。気さくな笑
顔だった。見た目はどこぞのマフィアな寮長だが、真面目に生活している子には普通に優し
く面倒見も良い。顔は怖いが。

「っと、そうだ。演習の疲れはゆっくり休んで明日に残すなよ?」

 軽く手を振ってから、北上を睨み付け、

「お前は自重しろ」

 しっかりと釘を刺してから部屋を出て行った。
 ドアが閉まり、大井も風呂に戻っていく。
 ダイニングに残された北上と球磨。

「ねえねえ、球磨姉ぇ」

 北上は球磨を見やり、問いかけた。

「寮長ってさ、元艦娘なんだよね?」

 艦娘は艦娘の能力を失うことで、生身の少女になることができる。もっとも、完全な人間に
なるわけではない。寮長は艦娘の能力を失い、生身の少女になったという過去を持ってい
る。二十年以上も昔の話らしいが。

「そう聞いてるクマ」

 頷く球磨。

「……あんな子いた?」

 艦娘から人間になっても、普通は元は何の艦娘だったか分かるものだ。髪型や身長体型
が変わっても、艦娘の気配は確実に残る。寮長には艦娘の気配がある。だが、元々何だっ
たのかは分からない。今は存在しない種類の艦娘かと思うほどに。

「というか、あんなに変わるものなの?」
「むーぅ」

 球磨は眉間にしわを寄せ、話し始めた。

「球磨の聞いた話だと……大昔に則捲さんて偉い学者さんの養子になって、しばらくしてか
ら世界を見てくるとか言って一人旅に飛び出して、一回音信不通になって何年か経ってふら
っと戻ってきたらあんなんなってたみたいクマ……」

 簡潔に語られる無茶苦茶な物語。
141進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:26:54 ID:Pe2OSpSPR
 球磨自身、寮長の変化が納得できていないようだった。

「本人の話だとロシアの方で色々遊んでたらしいクマ。具体的に何してたかは知らないクマ。
で、なんやかんやあって十年くらい前からうちで寮長やってるクマ」
「まさに人生波瀾万丈だね……。自叙伝書いたら絶対に売れるねぇ」

 どこか投げやりに、北上は呟いた。


登場人物など

先代北上、先代大井
超絶鈍感マイペースとクレイジーサイコレズのハイパーズコンビ。レベルは80くらい。
どちらも性格に難ありだが、当人たちの間で関係は完結していたので、他の艦娘に迷惑を
かけることはなかった模様。球磨の胃痛の種。
大規模更新に伴い解体される。

『更新』
オリジナル設定。
艦娘を解体し、その素材で新しい艦娘を作る事。平たく言うと生まれ変わり。
艦娘の力は数年から数十年で限界を迎える。いわば寿命であり、寿命を迎えた艦娘は、艦
娘の力を失い生身の女の子になるか、解体されて別の艦娘に生まれ変わるかのどちらか
を選ぶことになる。後者を更新と呼び、多くの艦娘は更新を選ぶ。
百里浜基地では半年前からの四半期で、基地内の艦娘の三割を更新した。


寮長
オリキャラカッコカリ。
球磨には則捲寮長と呼ばれる。名前は不明。
濃い灰色の髪の毛をポニーテイルにした四十ほどの女。顔や腕、胸元など全身に削ったよ
うな火傷跡がある。布とベルトを巻いた巨大な十字架をいつも持っている。十字架は問答無
用調停装置パニッシャーくん1号という名前らしい。2号、3号もある。
寮の風紀を乱す者は容赦なく制裁するが、真面目に生活している艦娘には優しい。

元艦娘だが、元は何の艦だったのかは不明。世界を見て回る一人旅の最中、ロシアで色々
遊んでいたら別人になっていたらしい。
142進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:29:50 ID:Pe2OSpSPR
第6話 百里浜正規空母部隊


 百里浜基地沖合、海上演習場。
 黒髪をサイドテールにした、淡々とした表情の女が立っている。大きな弓を持ち、白衣に
青い袴風のスカートで、胸当てを付け、左肩に飛行甲板を装備していた。
 百里浜基地所属の正規空母、加賀。



 水上を走り、弓を構えながら加賀は静かに呟いた。

「まずい――」

 青い空を切り裂き、飛翔する艦戦。
 加賀の操る数十の艦載機が、次々と落とされていく。撃墜された艦載機は、海面に落ちる
前に消えていった。矢や紙などを媒介にして艦娘の力で実体化されたものなので、支えを失
えば消えてしまう。
 視線の先に佇む一人の空母。

「なかなかいい動き。でも甘いわ」

 黒髪のツインテールに、藤色の上着と柿渋色のスカートを纏った正規空母。左肩に迷彩
模様の飛行甲板を装備している。五航戦の瑞鶴だった。
 三本の矢を弓に番え、放つ。邪道とも言える三本撃ち。しかし、効果は本物だった。三本
の矢が艦戦へと姿を変え、空中へと飛び上がっていた。
 瑞鶴操る艦戦が加賀の艦戦を圧倒している。

「そんな……」

 静かに、加賀は息を呑んだ。
 強い。
 最近建造された自分と、練度の高い瑞鶴。
 普通に考えれば瑞鶴の方が強い。しかし、その強さは予想以上だった。

「くっ」

 飛来する艦爆、艦攻。
 艦爆は大きく上昇し、一転急降下してくる。艦攻は海面すれすれを飛びながら、魚雷投下
のタイミングを狙っていた。上下から撃ち込まれる攻撃。
 避けるしかない。
 加賀は弓を下ろし、走る。
 だが、無駄だった。
 急降下から放たれる爆撃、そして水面下を走る雷撃。

「馬鹿な――」

 ドッ!

 爆発に飲み込まれ、加賀は吹き飛ばされた。
143進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:30:23 ID:Pe2OSpSPR
 意識が吹き飛び、視界が白く染まる。重力が消え音も消えた世界で、空の青と海の青が
入れ替わり、何度か衝撃を受けた。他人事のようにそれを実感する。
 音が戻り、重力が戻る。
 加賀は水面に倒れていた。

(訓練弾だから多少痛いだけだけど、実戦だったら大変ね……。よくて大破かしら?)

 冷静に自身のダメージを判断する。
 ふと瑞鶴を見ると、満面の笑顔で飛び跳ねていた。

「見た! これが五航戦の本当の力なのよ!」


 ◇ ◆ ◇ ◆


「大丈夫、加賀?」

 陸に移動した加賀を迎えたのは、そんな言葉だった。
 長い黒髪、白衣と赤いスカートという出で立ちの女。右肩に飛行甲板を装備し、背中に矢
筒を背負っている。正規空母、赤城。

「問題ありません」

 背筋を伸ばし、加賀は答える。多少身体が痛むが、訓練弾なので大したことはない。
 基地の北側にある演習場。艦娘用桟橋が並んでいる。艤装があれば水面を歩ける艦娘
用のため、海面に続く坂道のような見た目だ。陸上にはグラウンドなども作られている。
 加賀たちがいるのは、東屋のような休憩所だった。屋根と柱、木の長椅子と机。休憩だけ
でなく簡単な食事もできる。

「あなた、強いのね。思っていた以上だわ」

 椅子に腰掛けたまま、加賀は向かいの瑞鶴を見つめる。
 きっかけは単純だった。新米空母とは別行動をしている五航戦がどれほどの実力なのか
知りたかったのだ。結果は予想以上である。手も足も出ずに倒されてしまった。

「当然よ――」

 両手を腰に当て、瑞鶴が頷く。
 おもむろに椅子から立ち上がった。口を三日月型に歪め、目蓋を半分下ろす。瞳からハ
イライトが消え、全身を黒い凶暴なオーラが包み込んだ。息が詰まるほどの気迫。
 どこか壊れたように肩を震わせながら、瑞鶴は怨嗟の言葉を吐き出す。

「あのサディスト空母に、もう笑えるくらいに扱き倒されましたからねェ! いや、本当に。もう
冗談のようにね。吐いても泣いても気絶しても、叩き起こされてバケツぶっかけられて次の
無理難題……! フフフ……。お前はどこの鬼軍曹だってーの!」
144進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:30:55 ID:Pe2OSpSPR
 がしっ!

 振り抜いた拳が、木の柱に叩き付けられる。拳を引くと、柱に拳の後がくっきりと残ってい
た。一方拳の方は無傷である。
 加賀は無表情のまま、赤城は苦笑いをして、瑞鶴を眺めていた。
 両腕を持ち上げ、十指をわきわきと蠢かせながら、

「あァ、あの焼き鳥製造器ィ! 思い出しただけではらわたが煮えくりかえるわ!」

 茅葺きの天井に向かって吼える。
 それから腕を下ろし、大きく息を吐いた。両目を閉じ、燃え上がった怒りを収めるように深
呼吸を繰り返している。

「先代に相当に鍛えられたらしいわね。手紙に書いてあったわ」

 淡々と、加賀は告げる。
 大規模更新の際、加賀が建造された直後に先代加賀は解体されたらしい。時間や予定
の都合で顔は合わせていないが。自分が解体される前に後継者ができたと知った先代は、
加賀宛に簡単な手紙を残していた。
 そこには瑞鶴を鍛えまくっておいたとも書かれていた。

「加賀さんてば自分がもう限界だからって、やり過ぎなくらいに鍛えたのよ。私がいなくなった
ら、あなたがこの基地を支えるんだって」

 赤城が瑞鶴を見る。先代加賀は百里浜基地最強の空母だった。しかし、寿命を迎え、最
強空母としての力を維持できなくなると悟り、伸び代のある瑞鶴を鍛え上げた。文字通り、
最強空母の後継者を作るために。

「でも、瑞鶴。あなたが加賀さんを沈める気になれば、沈められたわ。あなたにはそれだけ
の力と技術がある。加賀さんが限界を迎えていた事を差し引いても、あなたは加賀さんより
強くなってるわ」
「そうね。確かに、その事には感謝してるわ……!」

 額を拭うような動作をしつつ、瑞鶴は頷いた。ジト目で。
 先代加賀によって無茶苦茶な鍛え方をされた瑞鶴は、既に先代加賀の全盛期を超える力
を得ていた。名実ともに百里浜基地最強の空母となっている。
 わきわきと五指を蠢かせながら、

「だからこそ、この手で沈められなかった事が心残りなのよ――!」

 青黒いオーラを纏いつつ、不吉な笑みを浮かべていた。眼に映る本気の殺意。非常識な
鍛え方をした代償として、先代は相応の恨みを買っているようだった。
 その様子を眺め、加賀は静かに決心する。

「なら、私は瑞鶴を超えなければなりませんね」
「ほほう。言ってくれるじゃない。ひよっこが」

 瑞鶴が不敵な眼差しを向けてきた。
145進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:31:27 ID:Pe2OSpSPR
 その目を真正面から見つめ返し、加賀は宣言する。

「私は先代と同じ加賀として、あなたの恨みや憎しみは受け止める義務があります。今はま
だ無理ですが、首を洗って待っていて下さい。いずれ決着は付けます」
「楽しみに待ってるわ」

 にやりと凶暴な笑みを見せる瑞鶴。
 唐突に。

「ご飯の匂いがする」

 赤城が呟いた。

「みなさーん。お昼持って来ましたよ」

 手を振りながら歩いてくるのは、小柄な少女だった。
 腋の開いた白い上着と、黒い胴当て。赤いスカートと黒いスパッツという格好だ。装甲空母
の大鳳である。ボウガンを腰に差しているだけで、他の艤装は装備していない。
 そして、その横を歩いている背の高い男。

「お嬢様方、少々遅めのランチをお持ちしました」

 黒い高級スーツに身を包んだ男。中分けにされた明るい色の髪の毛。長く伸ばした左前
髪が、左目を隠している。右目の上にある眉毛は、どういう構造なのか先端がくるんと丸ま
っていた。

「料理長! お待ちしていました」

 きらきらと光を纏いながら、赤城が声を上げる。

 山路料理長。それがこの男の肩書きだった。間宮さんの上司と言えば、その実力はわか
りやすいだろう。艦娘、および職員の食事を一手に引き受ける男である。
 料理長は両手で風呂敷に包まれた大きな弁当箱を抱えている。演習前に注文したものだ
った。二十人前くらいに見えるが、加賀たち四人ならば普通に全部食べてしまう。

「演習で疲れた後に、こう暖かい海辺で食べるお弁当は最高っすよ」

 東屋の机に、料理長は慣れた手つきで料理を広げていく。
 大きなランチ用マットを机に広げ、弁当箱を空け、並べていく。大量のおにぎり、卵焼き、
ウインナーソーセージ、漬け物、サンドイッチ、食べやすく切った果物。高級品は無いものの、
まさにお弁当だった。
 さらに小型のウォーターサーバーを机に乗せた。中身は麦茶である。ガラスのコップに麦
茶を注いでから、それぞれの前に並べる。

「すごい……」

 並べられた料理と手際の良さに、加賀は息を呑んでいた。

「料理長。いつもありがとうございます」
146進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:32:28 ID:Pe2OSpSPR
 大鳳が料理長に一礼する。

「可愛いお嬢さん方のために精一杯美味しい料理を作るのは、俺たち料理人の義務であり
権利であり喜びですよぅ! はーはっはー!」

 恥ずかしいのか頬を染めながら、料理長は明後日の方向に笑っていた。


登場人物

加賀
加賀型 1番艦 正規空母
四ヶ月ほど前に建造された。レベルは大体15くらい。
見習い期間は終わり、現在は主に赤城と一緒に深海棲艦の討伐を行っている。

瑞鶴改
翔鶴型 2番艦 正規空母
百里浜基地最強の正規空母。レベルは大体95くらい。
先代加賀によって行われた地獄の鍛錬によって、百里浜基地最強の空母の力と技術を得
る。自分を強くしてくれた事には感謝しているが、恨みはそれ以上。先代加賀の事を思い出
すと、殺気と怨念が駄々漏れになる。この手で沈められなかった事が心残りらしい。

先代加賀
四ヶ月ほど前に解体された。
レベルは大体80くらい。元百里浜基地の最強空母、艦娘としての寿命を迎え、自分の戦力
が落ちる前に、伸び代の大きい瑞鶴を徹底的に鍛え上げた。相当に無茶な事をやったらし
く、瑞鶴には殺したいほどに恨まれている。

赤城改
赤城型 1番艦 正規空母
かなり昔から百里浜基地で正規空母を勤めている。レベルは65くらい。
空母たちのまとめ役であり、今は加賀の先輩として戦闘を教えている。
食べ物には敏感。

大鳳
大鳳型 1番艦 装甲空母
一年ほど前に建造された装甲空母。レベルは30くらい。
普段は瑞鶴とともに行動している。
礼儀正しく真面目な性格。爆発は嫌い。

山路料理長
オリキャラカッコカリ
基地の食堂を仕切る料理長。山路を何と読むかは人によってそれぞれ。長い前髪隠した左
目と、くるんと巻いた眉毛がチャームポイント。
147進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:33:12 ID:Pe2OSpSPR
第7話 加賀さん頑張る

 もっ、もっ、もっ。
 むしゃむしゃむしゃ。

「外で食べるご飯は美味しいわ」
「身体を動かした後の食事も、最高です」

 お弁当箱の中のおにぎりを、満面の笑顔で食べている赤城と、無表情のまま静かにだが
確実に胃に収めている加賀。三十個入っていたおにぎりは、既に二十個になっている。

「あんたたち、本当によく食べるわね……」

 サンドイッチを齧りながら、瑞鶴は二人を眺めた。
 理由はよく分からないが、赤城、加賀の二人は大食いである。元気に食べる姿から赤城
は有名だが、加賀は静かにだが着実に食事を勧める。

「食事は基本です」
「だって、料理長の作るご飯は美味しいじゃないですか!」

 二人して顔を向け、それぞれ言ってくる。
 ため息をつき、瑞鶴は呟いた。

「大鳳……」

 咀嚼していた卵焼きを飲み込んでから、小柄な少女が眼を向けてくる。

「何でしょう? 瑞鶴さん」
「自分の分は早めに確保しておかないと、無くなるわよ……。本当に。一航戦の食欲ははっ
きり言って異常よ。空母のくせに、長門型以上に食べるし、少しは節制というものを理解して
ほしいものね……」

 動くために大量のエネルギーを消費する戦艦勢は、大食いである。艦娘用の燃料弾薬だ
けでなく、人の肉体を維持するために大量に食べるのだ。空母も戦艦ほどではないが、大
食いである。もっとも、普通は戦艦ほど食べる必要はない。

「はぁ」

 困ったような顔の大鳳に、瑞鶴は皿を差し出した。

「それに料理長もちゃんと、こういう取り分け皿用意してくれてるしね」
「では、遠慮無く」

 大鳳は弁当箱に箸を伸ばした。


   ◆ ◇ ◆ ◇
148進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:33:42 ID:Pe2OSpSPR
 用意された弁当を全て食べ終わった頃。

 ガッ!

 赤城の箸と、加賀の箸がぶつかる。

「赤城さん……。これは譲れません」
「加賀。一航戦の誇りは――甘くありませんよ?」

 瞳に暑い炎を燃やしながら、赤城と加賀が睨み合っていた。箸と箸が微かに軋んだ音を
立てている。殺気を纏った視線が絡み合い火花を散らしていた。
 弁当箱に残っていた卵焼きが一切れ。それが火種である。

「とぅっ!」

 先に動いたのは、赤城だった。
 素早く箸を翻し、加賀の箸を払いのけ卵焼きを掴み上げる。
 だが、加賀も引かない。巧みな箸裁きで、赤城の箸から卵焼きを奪い取る。
 一瞬二人の顔に壮絶な笑みが映った。

 ガッ、カカカカカカカッ

 空を走る四本の箸、そして中を舞う卵焼き。
 残像を画いて箸が踊り、卵焼きが跳ねる。箸の激突する固い音。しかし、卵焼きは傷ひと
つ無く柔らかな形を維持していた。

「楽しそうですね」

 麦茶を飲みながら、大鳳が笑っている。
 デザートのパイナップルを口に入れながら、瑞鶴は半眼で一航戦を眺めていた。

「そうかしら……?」

 いつの間にか両手に箸を構え、椅子の上に立ち、目にも留まらぬ勢いで箸を振り回してい
る。まるで紙吹雪のように舞っている卵焼き。決着はしばらく付かないだろう。

「でも、卵焼き相手に箸で空中戦するって、そう見られる光景じゃないわよね」

 麦茶を一口飲みながら、瑞鶴がぼやいた。


 ◆ ◇ ◆ ◇
149進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:34:21 ID:Pe2OSpSPR
「ん?」

 眼を開けると白い天井が見えた。
 鼻をくすぐる消毒液の匂い。
 加賀は自分の置かれている状況を確認する。白い天井と周囲を覆う白いカーテン。清潔
そうなベッド。自分はそこに寝かされていた。船渠棟にある医務室である。服は入院服に着
替えさせられていた。
 カーテンに映る小柄な影。

「電……?」

 その呟きが聞こえたのだろう。
 少女が入ってきた。
 十代前半くらいのどこか気弱そうな女の子。長い茶色の髪をアップヘアーにしている。服
装は暁型のセーラー服だった。右腕に『看護係』と記された腕章を付けている。
 暁型4番艦駆逐艦、電。
 艦娘は深海棲艦討伐だけではなく、基地内での仕事を持っていることもある。電の場合は
従軍医師である間先生の手伝いだった。
 電は加賀の姿を見つめ、

「あっ。加賀さん、起きました? 無理に起き上がらないで下さい。まだ、体力は完全に回復
していないのです」
「分かったわ」

 加賀は淡泊に返事をする。言われてみると、確かに身体が鉛のように重い。腕を動かす
だけでも、骨や筋肉が軋むような感覚がある。酷く消耗しているようだった。

「先生ー」

 電がカーテンの隙間から出て行く。
 そして、十数秒。

「お目覚めかね。加賀くん」

 カーテンの隙間から入ってきた男。
 顔を斜めに走る大きな縫い跡。その左右で肌の色が違っている。髪の毛も半分が黒髪で
半分が白髪だった。服装は普通の白衣と医師のそれである。
 百里浜基地従軍医師の間玄男。皆からは間先生と呼ばれている。

「私は一体……」

 加賀の問いに、先生は応えた。苦笑いとともに。
150進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:34:58 ID:Pe2OSpSPR
「演習場で倒れているのを、提督が発見して連れてきたんだ」
「この程度で気絶してしまうとは、私も未熟ですね」

 乾いた笑みとともに、加賀は吐息する。思い出した。
 演習場で一人で訓練を続けていたのだが、途中から記憶がない。身体が動かなくなるま
で訓練を続けて、そのあと一線を突き抜けナチュラルハイ状態になった。さらに続けていた
のだが、そのまま限界を超えてしまったらしい。
 額を抑える間先生。

「君らしい台詞だ。しかし、過剰な鍛錬は逆に身体を壊してしまう。お勧めはできない。強くな
るために鍛えて、戦うことすらできなくなっては意味は無いのだよ」
「そうですか……」

 両目を閉じ、答える。
 にやりと間先生が笑うのが分かった。

「しかし、だ。この百里浜基地には私がいる。この間玄男がね。気絶しても血を吐いても、骨
が折れても心臓が止まっても、元通りに治してあげよう。私はそれができる」

 右手を持ち上げ、不吉な笑顔で言い切る。百里浜基地での従軍医になる以前、どこで何
をしていたのかは知らない。しかし、その腕は超一流だ。絶対に助からないと言われた人間
を蘇生させたのは、一度や二度ではない。

「だから気が済むまで鍛えなさい」
「ありがとうございます」

 加賀は頭を下げた。
 これは間先生なりの優しさなのだろう。どんなに無茶をしても自分が治すから、好きなだけ
無茶をしなさいという、奇妙な方向を向いた優しさ。支えてくれる者がいるということは、安心
できるものだ。
 緩く腕を組み、間先生が横を向く。

「ただし、他人への強要は禁止だ。肉体の回復は私の感覚だけど、削れ落ちた精神の回復
はさすがに管轄外だ。人に無理矢理鍛えられて強くなっても、心が付いていかなければ、真
に強くなることはないのだからね」
「………」

 おそらく、先代加賀と瑞鶴の事だろう。
 一拍置いてから、加賀は答えた。

「分かりました」
「あと、身体を鍛える前には、これを飲むといい」

 すっ。

 と、ジョッキを差し出してくる。何故か得意顔で。

「……なんですか、これは?」

 眉を寄せ、加賀は出された液体を凝視する。
151進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:35:29 ID:Pe2OSpSPR
 謎の液体。そうとしか表現できないものだった。色は青緑で、薄く向こう側が透けている。
発泡成分でも入っているのか、時々小さく泡の弾ける音がしていた。
 本能が告げる。身体に入れるな、と。

「間玄男特性栄養ドリンク、間汁――!」

 ジョッキを掲げ、間先生は断言した。何故か勝ち誇ったように。
 加賀の瞳を見据え、朗々と説明する。

「数々の薬草と食材、各種栄養素とその他諸々を絶妙なバランスで配合し、じっくりことこと
煮込んで濾過した栄養ドリンクだ。滋養強壮に効果的で、新陳代謝を高め、疲労回復や持
久力強化の効果もある。単純に栄養価も高いから、緊急時の食事代わりにもなる。さあ、飲
んでみなさい。ああ、違法薬剤は入れていないから安心していい」
「し、失礼します」

 気圧されるがままに、加賀はジョッキを受け取った。
 匂いはそれほどでもない――と思う。青汁のような生臭さに、薬品臭を足したくらいだろう。
もっとも、それで十分危険と理解できる匂いだった。
 しかし。
 一度大きく深呼吸してから、

(南無三――!)

 加賀はジョッキの中身を一気に喉に流し込んだ。

「……ぐっ!」

 強烈な不味さが舌をえぐり、喉を削り胃まで落ちていく。薬品やら何やらをごちゃ混ぜにし
たような味だ。他に表現方法も浮かばない。そんな凄まじい不味さである。およそ身体に入
れていいようなものではない。
 目元から涙が一筋こぼれ落ちた。

「くはっ……! はっ……はぁ……」

 軽い吐き気を抑えるように、何度か呼吸を繰り返す。
 しかし、効果はすぐに現れた。身体の奥が熱くなっている。体温が上がり、心拍数が微か
に上がっている。手足に指に、乾いた土に水が染み込むように力が満ちていった。
 身体に溜まった疲労が、血液に乗って流されていくような感覚。

「言い飲みっぷりだ。さすがは一航戦」

 腕組みをしながら、間先生は満足げに頷いていた。

「これは、効きますね。いただきます」

 先生を見上げ、加賀は不敵に笑った。
152進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:35:59 ID:Pe2OSpSPR
登場人物

電改
暁型 4番艦 駆逐艦
レベルは30くらい。
前線で戦うことは少なく、主に医務室で間先生の手伝いをしている。

間玄男
オリキャラカッコカリ。
百里浜基地従軍医師。通称間先生。
顔を斜めに走る縫い跡。その左右で皮膚の色が違う。髪の毛も半分が黒髪で半分は白髪。
百里浜基地に来る前は何をしていたのかは不明。医者としての腕は超一流。絶対に助から
ないと言われた人間を蘇生させたのは一度や二度ではないらしい。
謎の栄養ドリンク間汁を加賀に渡す。
153進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:37:03 ID:Pe2OSpSPR
第8話 加賀さんの秘密


「よい湯加減でした」

 扉を開け、加賀は自室に戻った。
 青と白の寝間着姿である。髪は解いていた。自主訓練を終え、大浴場で身体を休め、部
屋に戻ったところである。
 空母寮の一室。赤城と同じ部屋である。畳の敷かれた和室だ。壁のスイッチを入れると天
井の灯りが点き、部屋が白く照らされる。
 時刻は夜の十一時。普通ならば皆眠っている時間である。

「間先生の栄養ドリンクは効きますね」

 限界まで無茶をしているはずだが、まだ身体には余力が残っていた。先日間先生より渡さ
れた栄養ドリンクを飲むようになってから、持久力が増加している。味は酷いが、医者の作
ったものだけあり、効果は本物だ。
 冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップを持ってちゃぶ台の前に座る。
 コップに麦茶を注ぎつつ、寝室の扉を見た。

「……赤城、さんは……寝ていますね?」

 小声で確認する。よく寝て良く食べる赤城。大体十時くらいには寝てしまう。一度寝たらぐ
っすりと起床時間まで眠っている。急に起きることはないだろう。

「誰も見ていませんね?」

 きょろきょろと部屋を見回す加賀。
 部屋にいるのは自分だけ。赤城は眠っている。入り口の鍵は閉めているので、他の空母
が入ってくることもない。部屋に監視カメラが付いていることもないだろう。

「よし」

 頷いてから、加賀は座布団を一枚掴んだ。
 心持ちくたびれた四角い座布団。それを頭の上に乗せる。頭の頂点に座布団の中心が来
るように。左右に落ちることもなく、座布団は加賀の頭の上で安定した。

「やはりこの体勢は落ち着きます」

 麦茶を飲んでから、息を吐き出す。
 ちゃぶ台の前に座り、頭に座布団を乗せながら麦茶を飲む。傍から見れば滑稽な姿であ
ると断言できる。他人に見せられるものでもないし、見せようとも思わない。
 いつ気付いたかはよく覚えていない。
 頭にそこそこ重さのあるものを乗せていると、落ち着くのだ。これは加賀だけの秘密であり、
今まで他人に言ったことはない。赤城にも言ったことはない。
154進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:38:16 ID:Pe2OSpSPR
 麦茶を一口飲み、天井に眼を向けた。

「私も正規空母ですから、練度が低くとも即戦力として使えます。それなりに危険度の高い
海域に行くこともあります」

 誰へとなく呟く。
 建造したてで練度が低くとも、とりあえず即戦力となる正規空母。加賀も基本的な訓練を
終えてすぐに深海棲艦討伐に参加するようになった。それなりに強力な深海棲艦の出る海
域に向かうこともある。そういう場合は、赤城や他の空母と一緒だが。

「そういう場所で時々頭に大きな帽子を乗せた深海棲艦見ますけど……」

 何度か対峙したことがあった。
 厄介な相手だったと記憶している。
 白いボディスーツに黒いズボン。大きなマントを羽織り、杖を持った深海棲艦。色合いを除
けば、人間の少女とそう変わらない見た目。頭に大きな黒いクラゲのようなものを乗せ、一
部で揚げると美味しそうと言われる艦載機を操る敵空母。ヲ級。

「私……絶対アレでしたよね」

 目蓋を半分下ろし、呻いた。
 頭に座布団を乗せていると、前世というものを実感する。
 加賀たち艦娘と深海棲艦は、本質的に同じもの。沈んだ艦娘が深海棲艦になることもあり、
深海棲艦から取り出した艦核から艦娘を作ることも可能である。
 おそらく加賀は、ヲ級の核から作られたのだろう。
 もっとも、艦娘が今の艦娘になる前に何であったかは、公開されることはない。ただ、時々
前世の名残が現れることがある。名残の形は人それぞれだ。身体的な特徴や性格として現
れる場合が多いらしい。
 加賀の場合は頭に何か乗せると落ち着くという、奇妙な癖として。

 それはそれとして。

「ああ、もう少し重いものが欲しいですね。丁度いい物はないでしょうか?」

 首を動かしながら考える。
 座布団では重さが足りない。何も乗せていない状態よりは落ち着くのだが、物足りないと
いうのが本音だった。畳んだ布団は以前試してみたのだが、逆に微妙に重い。
 ぱっと思いついたのは、黒いクラゲもどき。

「アレ、鹵獲するのは――無理ですよね……」

 ため息とともに、加賀は第一案を却下した。
155進め、百里浜艦娘隊!◆OXWzOz3HBs :2014/11/01(土)19:39:59 ID:Pe2OSpSPR
全部投下するとさらに長くなってしまうので
今回はここで終了させていただきます。
続きは少し間をおいて投下したいと思います。
156名無しさん@おーぷん :2014/11/02(日)22:57:09 ID:SpsTKY3Vq
スレ違いだとは思ってるんだけど、
替え歌ってここに投下しちゃダメかな?
157名無しさん@おーぷん :2014/11/02(日)23:01:18 ID:KbukrrzWT
どうせ人少ないんだ!
やったれやったれ!
158名無しさん@おーぷん :2014/11/02(日)23:07:18 ID:SpsTKY3Vq
>>157
あんがと、おーぷんの本スレに書くにはなんか長くてねwww
出来はまぁお察しでww


朝目覚める度に 君の抜け殻(抱き枕)が横にいる
ぬくもりを感じた パンツの中が冷たい
テレ笑いをやめて 痛いカーテンを開けよう
眩しすぎる夕日 僕とリアルとの追いかけっこだ
あの日 スレで見つけた
涙流す時雨 膣内のぬくもり
忘れようと思う度に
心が 右手が 君を覚えている

Your love forever
瞳を閉じて 君でオナるよ それだけでいい
たとえ運営が 僕の心を 置き去りにしても


いつかは君の絵で なにも感じなくなるのかな
今の枕抱いて 眠る方がまだ いいかな
あの日 見てたpixiv
願いかけて 君を探したタグは
瞬く間に消されるのに
心は 体は 君で溢れている

I wish forever
ペンタブ持って 君を描くよ それしか出来ない
たとえ憲兵が 僕の身柄を 確保しようとも


Your love forever
ネットの中で君を探すよ それだけでいい
たとえ法律が 僕を残して 色を変えようとも
フォルダの中に 君を残すよ それだけでいい
辛い現実を 耐える強さを 君がくれたから
君がくれたから
159名無しさん@おーぷん :2014/11/02(日)23:17:09 ID:KbukrrzWT
何の曲かはわからないけど
こういうノリは大好きだ
160名無しさん@おーぷん :2014/11/02(日)23:24:16 ID:SpsTKY3Vq
>>159
平井健の『瞳を閉じて』なのよさ
んでもう一個

笑顔が消える 指が震える
にじんでく景色


大和に会いたくて建造したの
純粋な火力眩しくて
秋イベ近いけど もっともっと
減ってく資源は見えないフリ

本当に大切な艦を
いつまでに手に入れるの?
はしゃいでる いつも通りおしゃべりね?(金剛デース!!)
突き刺さる現実

笑顔が消える 指が震える
見てないフリしてうつむく
大和が…いない
ここには…いない
レシピはあるのに埋まらない距離


画像見てるだけで嬉しくなる
凛々しい瞳につつまれて
秋イベの告知に怯えながら
精一杯の資源 そっと溶かした

本当に大切な出逢い
いい加減終わらせたい
届けたい 届かない いつからか
不安だけふくらむ

会えないことが運命なんて…
きっと出会えると信じてた
大和が…出ない
ここには…いない
受け入れられずに溶かし続けた


ココロが折れる コトバは消える
消えてく資材 貯まらない
大和が…いない
ここには…いない
ゆき先なくした 孤独なため息

資源貯めるから…次は出てきて
161名無しさん@おーぷん :2014/11/02(日)23:26:53 ID:SpsTKY3Vq
タイトル付け忘れた
>>160はPCゲーム『スクールデイズ』のエンディング曲「あなたが…いない」
162名無しさん@おーぷん :2014/11/02(日)23:33:02 ID:KbukrrzWT
>>161
ナイスボートオチになりそうな
163駆逐艦は最高だぜ :2014/11/03(月)00:15:58 ID:LLgwos8Qq
時雨「他に誰も……いませんよ?」
164名無しさん@おーぷん :2014/11/03(月)00:16:29 ID:LLgwos8Qq
専ブラでタイトルが残ったままだった申し訳ない
165名無しさん@おーぷん :2014/11/03(月)05:35:40 ID:PCvMuVPlm
>>158
口ずさもうと思ったけどなんかにやけてしまってできなかったwww
166名無しさん@おーぷん :2014/11/07(金)11:35:16 ID:MJG9k3ro1
>>155
乙です
それぞれに先代がいるってなんか面白かった
>>158>>160
ワロタww
167進め、百里浜艦娘隊! :2014/11/07(金)21:52:58 ID:LoUSXEgJu
投下します
168進め、百里浜艦娘隊! :2014/11/07(金)21:53:38 ID:LoUSXEgJu
第9話 川内は夜戦がしたい



 月の照らす静かな海。
 オレンジ色を基調としたワンピースを纏った少女が、海の上を走っていく。前分けの茶色
い髪の毛と、額に巻いた鉢金。腰に魚雷を装備し、左足に探照灯を取り付けている。川内
型二番艦、神通だった。
 通常の装備の他に、腰の後ろに一本、白樫拵えの刀を差していた。

「九時――」

 神通はふと空を見上げた。雲のない空には、半月が浮かんでいる。時計は見ていないが、
時間は漠然と分かる。深海棲艦発生海域まではまだ時間がある。

「姉さんたち、大丈夫かしら……?」

 ふと、そんな事を呟いた。


   ◆ ◇ ◆ ◇



「現在時刻フタヒトマルマル時! これより、我夜戦に突入する!」

 八畳の居間の真ん中で、あたし元気に声を上げる。晩ご飯は食べたし、お風呂も入ったし、
コンディションは万全! 普通はこれから寝る時間だけど――あたしたち川内型にとって
は夜戦の時間です!

「イエーイ!」

 隣では妹の那珂が元気にマイクを振り上げている。
 あたしも那珂も服装はいつものオレンジの制服。部屋に居るときは部屋着に着替えちゃう
んだけど、夜戦といったらこのスタイルだよね。
 軽巡寮二階の東の角部屋があたしたち川内型の部屋。畳敷きの和室で、卓袱台が置い
てあったり。あたしとしては洋室の方がいいけど、和室は和室で風情あると思うな。
 両手の指を組み、あたしは感慨深く呟いた。

「嗚呼。平穏な夜戦ターイムが満喫できるって一体何年ぶりかな……!」
「神通お姉ちゃん、今日は出撃だからね。那珂ちゃんたちは、お姉ちゃんが帰ってくるまでフ
リー! 朝までノンストップライブだってできちゃうよー!」

 那珂が元気にマイクスタンドを振り回している。神通がいたらこんなにはっちゃけられない
からね。絶対に止められるし、でも今日は止める神通はいない。
 神通。あたしの妹。
 腕組みしながら普段の様子を思い返す。
169進め、百里浜艦娘隊! :2014/11/07(金)21:54:09 ID:LoUSXEgJu
「あの子は真面目だからねぇ。うんうん。真面目なのはいいことだけど、『夜に騒いだらみん
なの迷惑になるですよぉ!』って涙声で言いながら、裸締めするのはやめて下さい。お姉さ
んってばマジで死ぬかと思いました……」

 思い出して脱力する。
 いつだったかまでは覚えてないけど、夜戦突入しようしたら問答無用で首締めて来ました、
あの子。一瞬で背後を取られ、抱え込むように腕で頸動脈と気道を同時に圧迫。あ、ヤバ
イと思ったら、落ちてたし。気がついたら朝になってたし……。

「神通お姉ちゃんって、言ってる事と行動が時々あってないよね」

 頭を押さえながら、那珂が苦笑いをしている。
 真面目で大人しく、ちょっと気が弱いように見える神通だけど、何か行動起こす時は凄く
速い。しかもやることが容赦ない。わかりやすく言うなら、ぶっ殺すと心の中で思った時はスデ
行動は終わってるんだッ! って感じ。

「うちの軽巡最強の切り込み隊長だしね。妹が立派になってお姉さんは鼻が高いよ。早くあ
たしも改二になって、ばしばし夜戦やりたいね!」

 ぐっと左手を握る。妹が最強の軽巡と呼ばれるのは嬉しいけど、やっぱり妹に抜かれるの
は気に入らないのよ。同じ時期に建造された姉妹としては、なおさら。
 頬に手を当て、那珂は身体を傾けていた。

「那珂ちゃんも、早くクラスチェンジして可愛さに磨きを掛けたいんだけど――。このあたり
からキツくなってくるんだよねー。神通お姉ちゃん凄いよね」

 数値にしてて40くらいからかな? その辺りが軽巡の練度の壁って言われてる。壁を越え
るには、地道な実戦か、無茶な鍛錬か。神通は後者でそれを乗り越えたみたいだけど、あ
たしたちにはちょっとムリかな……?
 まっ、そういう小難しい話は後にして。

「さて、それじゃ派手に夜戦と行きますか!」
「おーっ!」

 あたしと那珂はドアに向う。夜戦といっても誰かと戦うわけじゃなくて、夜通し騒ぐだけなん
だけど。夜はあたしたちの時間だしね!

「はい。盛り上がってるところ、ごめんな?」

 不意に。
 ドアが開き、一人の女が入ってきた。
 年齢四十ほどのスーツを着崩した長身の女。ウェーブのかかった濃い灰色の髪に、顔や
胸元に除く削ったような火傷後。口に火の付いていない葉巻を咥えている。そして、背中に
は布とベルトで締められたゴツイ十字架を背負っていた。

「寮長!」
「どうしてここにいるんですか!」

 あたしと那珂は同時に叫ぶ。
170進め、百里浜艦娘隊! :2014/11/07(金)21:54:46 ID:LoUSXEgJu
 数十人は殺していそうなこの女極道が、百里浜基地の寮長だ。元は艦娘だったらしいけ
ど、艦娘やめて人間になって、紆余曲折会ってここで寮長やってるみたい。北上は自叙伝
書いたら売れるよね、とか言ってたけど。
 入り口を塞ぐように十字架を起き、にやりと笑う。

「寮長が寮の中にいても何もおかしくはないだろう? なにせ寮長なんだからな。寮の整備と、
寮に住んでるヤツの面倒を見るのもアタシの仕事さ」

 あたしと那珂は数歩後ずさる。
 いきなり強敵出現。夜戦ターイムを満喫するには、この寮長を退けなきゃいけないってわ
けね。かなりキツい条件かな――!

「それに神通に頼まれててな。姉と妹が騒ぐと思うから、止めてくれってよ?」
「さすが神通お姉ちゃん、対策はばっちり!」

 那珂が両腕を振り上げる。
 あたしは歯を食い縛り、

「くっ、神通め! あたしたちの事を全然信用してないのか!」
「実際騒ごうとしてるだろ、アホ」
「…………」

 力を抜いて、そっと眼を逸らす。
 いや、おっしゃるとおりでございます。あたしたちもがっつり夜戦しようとしてるし、あたしと
神通が逆の立場でも寮長か誰かに止めるように頼むよねー。
 寮長が十字架のベルトに手を掛けた。

「夜戦したいならアタシが相手になってやるよ」

 バチッ、ばさっ。

 ベルトの留め金を外すと、十字架に巻き付いていたベルトが弾け、ベルトに引っ張られる
ように布が剥ぎ取られる。

「……うわ」
「これが、パニッシャーくん一号……」

 思わず後退るあたしと那珂。
 現れたのは、巨大な白い十字架だった。墓石を思わせるような無骨さで、あちこちに傷や
欠けた跡がある。それらの傷がタダでさえ大きな威圧感を、さらに大きくしていた。中央部に
は穴が開けられ、髑髏を模した板がはめ込まれている。名前は問答無用調停装置パニッシ
ャーくん一号。寮長の獲物だった。二号、三号もあるみたいだけど、寮長はいつも一号を持
ち歩いている。
171進め、百里浜艦娘隊! :2014/11/07(金)21:55:37 ID:LoUSXEgJu
 寮長は中央のドクロ部分――銃握に手を入れ、十字架を持ち上げた。
 足があたしたちに向くように。

 ガシャン――。

 内部機構が動き、外側のカバーが上下に開いた。
 顔を覗かせる銃口。内部に仕込まれた12.7mm重機関砲だった。噂には他にもいくつかの
武器が仕込まれている。思いっ切り銃刀法違反だと思うんだけど、捕まるとか没収されると
かは無いみたい。
 ヤバいね……。これは、かなりヤバいね。

「安心しろ、中身は模擬弾だ。当たっても凄く痛い程度だ」

 サドい笑みを浮かべつつ、寮長が左手でぺしぺしと十字架の足を叩く。
 演習や訓練なんかに使われる模擬弾。海上で艤装ありなら当たってもそんなに痛くない。
陸で装備が制服だけなら……凄く痛い程度ね。凄く痛いをどう考えるべきか。

「そうですか。なら――」

 あたしと那珂は視線を交わす。
 那珂はマイクスタンドを両手で槍のように構えた。

「那珂ちゃんは、この程度じゃ絶対に路線変更しないんだから!」
「我、夜戦に突入する――!」

 あたしは静かに、だがきっぱりと宣言した。


登場人物など

神通改二
川内型 2番艦 軽巡洋艦
百里浜基地最強の軽巡にして、斬り込み隊長。レベルは75くらい。
標準装備の他に白樫拵えの刀を一本持っている。
大人しく生真面目な性格だが、時折言ってる事とやってる事がズレる。川内曰く、「ぶっ殺す
と心の中で思った時はスデ行動は終わってるんだッ!」という性格。
無茶苦茶な自己鍛錬によって、現在の力を得る。

川内改
川内型 1番艦 軽巡洋艦
自他共に認める夜戦マニア。レベルは40くらい。
神通、那珂とはほぼ同じ時期に建造された、中堅艦娘。
姉として立派になった神通は誇らしいが、一方で劣等感も少なからず感じている。改二にな
ってばしばし夜戦するため、地道に自己鍛錬中。神通のような鍛錬をする気は無い様子。

那珂改
川内型 3番艦 軽巡洋艦
自称艦隊のアイドル。歌と踊りはそれなりに上手い。レベルは35くらい。あまり大声で言うこ
とはないが、川内同様夜戦好きで夜に騒ぐのも好き。
172進め、百里浜艦娘隊! 10話 :2014/11/07(金)21:57:12 ID:LoUSXEgJu
第10話 寮長を撃破せよ!



 相手は寮長ひとり。対してこっちはあたしと那珂の二人。状況は二対一で一見有利だけど、
簡単に勝てるような相手じゃない。
 それでも、逃げるわけにはいかないよ。

「では!」
「行きますっ!」

 たっ!

 あたしと那珂は視線を交わさぬまま、横に跳んだ。あたしは右に、那珂は左に。ちょうど二
人で立っている位置を交換するように。基本的な攪乱方法。
 寮長の目に一瞬躊躇いの色が浮かぶ。
 そして、あたしは寮長に向かって床を蹴り。

「那珂ちゃん、センター! 回避には自信あります! 突撃いいいっ!」

 元気に声を上げながら、マイクスタンドを振り上げ、那珂が突っ込む。スタンドはこういう使
い方するものじゃないけど、今は細かいことは言ってられない。

「上等!」

 寮長はすぐさま反応した。
 十字架の銃口を那珂に向け、銃握部分の引き金を引く。
 あたしは無言で拳を固め、寮長めがけて突進す――

 どぐぉん!

 ガゴォン!

 ぱらぱら……。

 止まる。
 全てが止まる。
 世界が、時間が、思考が、意志が。
 なにもかもが止まって。

「…………あれ?」

 拳を固めて駆け出した体勢で、あたしは固まっていた。えっと、これ……。
 十字架の銃口から立ち上る硝煙。そして、飛び込みのように床に突っ伏してる那珂。顔を
上げて、呆然と見つめる先には――
173進め、百里浜艦娘隊! 10話 :2014/11/07(金)21:57:43 ID:LoUSXEgJu
 大きな穴の開いた壁があった。近くの窓ガラスが砕け散っている。

「リョウチョウさん、カベにアナあいちゃってるンデスケド」

 身体と声を強張らせながら、あたしは寮長を凝視した。どう考えても、これは模擬弾の威
力じゃないですよ! 実弾のそれですよ! 壁に大穴空いちゃってますよ!

「ちっ、あー。しまった……」

 寮長は十字架を抱えたまま、空いた左手で気まずそうに頭を掻いていた。

「提督用の実弾から艦娘用の模擬弾に変えるの忘れてた。めんごめんご。てことは、こっち
もグレネードのままか。マズったな、こりゃ……」

 十字架の頭部分を眺め、眉を寄せる。咥えていた葉巻の先が揺れていた。
 つまり、この十字架には実弾がわさっと入っている事になるよね。あたしたち艦娘は人間
に比べれば頑丈だけど、それでも限度がある。陸上で艤装無しで実弾食らったら、さすがに
大破は免れないね。
 というか、気になった言葉が――

「提督用って、テイトクヨウ?」

 提督っていうのはうちの提督だよね? 存在感の薄さとひたすらモブい容姿が特徴の鈴
木一郎提督。このどこぞのマフィアな風貌の寮長さん、これで提督を撃つつもりだったみた
い。いいのかな? 普通に考えればよくないよね!
 寮長は一度瞬きしてから、あたしたちに向き直り。

「ほら、五日前に間宮で特製プリン売ってたろ? アタシも柄にも無く並んで買おうとしてたん
だよ。美味いからな、間宮のプリン」

 と、重々しく頷く。
 本当に美味しいよねー、間宮さんのプリン。ほとんど不定期で販売とほぼ同時に売り切れ
ちゃうから、艦娘からは幻のプリン扱いになってる。あたしは二回食べた事あるけど、あれ
は美味しかった。うん、凄く美味しかったなぁ。また食べたいよね。
 で、それがどう提督撃つ理由に繋がるの?
 あたしの疑問の視線に、寮長は額に青筋を浮かべわきわきと左手を蠢かせた。

「それでよぉ、あと三人で買えるって時に、あのクソ提督ッ! いきなり呼び出しかけやがっ
た! なんでそのタイミングなんだよ! え? あと三分待てよ! でもな、こっちも仕事だ、
涙を飲んで列を離れたよ! 戻って着た時には当然売り切れだったけどな!」

 ドン! と床に足を叩き付ける。

 ……ご愁傷様です。提督を撃ちたくなる気持ちは分かるかも。
 ふっと力を抜き、寮長はぱたぱたと十字架を叩いて見せた。

「で、軽くお礼参りしようと準備してたんだけど、寮長さんも忙しくてなー」
174進め、百里浜艦娘隊! 10話 :2014/11/07(金)21:58:17 ID:LoUSXEgJu
 と、肩をすくめる。仕方ないね、って感じに。
 なるほど。大体理解できたわ。提督を襲撃しようと思って準備したけど、仕事が忙しくて提
督襲撃は後回しになって、そのまま忘れちゃったってことね。そして、あたしたちにその提督
襲撃翌用実弾が向けられているわけか。うん、理不尽な!

「ま、どこにでもある12.7mm弾だ。お前らの12.7cm砲とそう変わらん威力だし、艦娘が食らっ
ても死にはしないだろ。朝までドックでおねんねだけど」

 凶悪な微笑みとともに、巨大な重機関砲があたしに向けられる。

 まずいね、これは……。

 模擬弾なら何とかなるけど、実弾じゃマズいわ。
 あたしたちが使っている装備、15.5cm三連装砲や20.3cm連装砲。名前に付いている単位
はセンチだけど、実際は10分の1くらいの大きさで、威力も同口径の銃砲とほぼ同じ。もっと
も、あたしたちの装備の本質は他にあるんだけど。

 寮長の12.7mm砲を食らうことは、駆逐艦の12.7cm砲を食らうようなもの。大したダメージ
にははらない。――あくまで海の上なら。だけど、ここは陸上で艤装も無し。

「回避には自信あるんだったか――」

 寮長が銃口を那珂に向ける。

「夜更かしはお肌に悪いので、那珂ちゃんはお休みします!」

 高々と宣言しながら、那珂はマイクスタンドを掲げた。眉を内側に傾け、瞳を輝かせ、威風
堂々と。先端には白いハンカチが結びつけられている。
 びしっと那珂を指差し、あたしは全力で叫んだ。

「こら、那珂ッ! 路線変更しないとか大見得切っといて、あっさり白旗降るな!」
「だってえええ!」

 堂々とした表情を崩し、那珂は両目から滝のような涙を流した。

「お姉ちゃん! あれは無理でしょおおっ! どう考えても無理でしょおおお! 艤装付けた
海の上ならともかく、ここであんなの当たったら、痛いじゃすまないよおおお!」
「確かに……」

 那珂に向けていた指がしおれる。
 構造上、艦娘は海上でこそ、フルパワーを発揮できる。海上で艤装装備なら、12.7mm弾
を食らっても、さほど問題はない。十分痛いけど。

 だが、ここは陸である。

 しかも艤装も制服しかない。艦娘は人間よりもかなーり頑丈だけど、それでも限度っても
のがある。死にはしないだろうけど、身体に穴が空くくらいは覚悟しないといけないし、手足
が千切れる可能性もある。ま、それでも早々死なないんだけどね。
 ちなみに生身の人間が12.7mm弾なんて食らったら木っ端微塵です。
175進め、百里浜艦娘隊! 10話 :2014/11/07(金)21:59:06 ID:LoUSXEgJu
 目蓋を少し下ろし、あたしは寮長を睨め付けた。

「でも、ここで大口径実弾ぶっ放して寮壊すのはどうでしょうか、寮長……? 流れ弾が誰か
に当たったら、洒落になりませんよ? 艦娘ならケガで済みますけど、人間が食らったら挽
肉確実ですよ? 百里浜基地始まって以来の大不祥事じゃないですか」
「言うねぇ、小娘」

 ガシャン。

 上下に開いていた十字架の外装が閉じる。
 よし、交渉成功! 見た目も行動も危ない人だけど、寮長の根っこは常識人! こういう
脅しは通用する! だけどこれだけじゃ足りないわね。
 そして――あたしは腰のポーチに手を入れた。

「はあっ!」

 カン、カカン!

 寮長が素早く十字架を引き戻す。
 盾となった十字架に当たり、床に落ちる十字型の金属の刃。手裏剣。

「なんだそりゃ?」

 それを見つめ、寮長が思い切り怪訝な顔をする。手裏剣を知らないわけじゃないはずだけ
ど、いきなり投げつけられるとさすがに驚くよね。

「手裏剣アーンドくない!」

 あたしは右手に持ったクナイをかざしてみせた。刃渡り十五センチほどの短剣。全体に艶
消しの黒い塗料が塗られ、柄の部分には暗い赤色の布が巻いてある。

「どこで拾った、ンなもん」

 胡乱げな眼を向けてくる寮長に、あたしはウインクを返した。

「ふふん。あたしってばこう見えても友好関係は広いんですよ。これは前に知り合った忍者さ
んから貰ったものです。+激しくプレゼント+って一セット貰いました」

 街で知り合った忍者さん。忍者然とした少し小柄な人で、名前は知らない。時々鶏みたい
な人にマウントパンチ連打されて連れ去られたりする愉快な忍者さんです。友人というよりも、
気が合う親戚のおじさんみたいな感じかな?

「じゃ、頑張ってソレで防いでくれや」

 ゆらりと寮長が踏み出す。

 えっ?

「ふせ――ぐっ、て……!」
176進め、百里浜艦娘隊! 10話 :2014/11/07(金)22:00:09 ID:LoUSXEgJu
 喉を引きつらせ、あたしは眼を見開いた。

 アッ、コレムリカモ。

 寮長が十字架を横に構え、思い切り振り抜いてくる。轟音を立てて迫る巨大な塊。外装は
セラミックの複合装甲、中身は改造重火器と実弾がいっぱい! 総重量はおそらく数百キ
ロ! 鈍器としての機能は十分! 何でこんなもん振り回せるの、この人!

「ッ!」

 バオゥン!

 爆音が目の前を通りすぎた。

「えっと……」

 クナイを構えつつ、脂汗を流す。咄嗟に待避していたから助かったけど……助かったけど
――これは、防ぐとかそういう次元じゃないデスヨ……! 12.7mm弾よりはマシだけど、一
発大破は確実デース!

「お姉ちゃん、頑張って! 那珂ちゃんがしっかり見守ってるからね!」

 白旗構えた那珂が、固い笑顔で応援してくる。
 無茶言わないで!

 タッ。

 寮長がさらに踏み込んできた。重要も硬度も墓石そのものな十字架を振り上げ、それを
袈裟懸けに振り下ろしてくる。無茶苦茶な重量物だってのに、木の棒でも振り回すように軽
々と扱っていた。どういう原理かは分からないけど!

「無理無理無理ムリ、それ、絶対ムリ……!」

 泣きながら、あたしは首を振った。極限の緊張の中で、思考だけが加速していく。逃げら
れない。避けられない。このまま殴り倒されて、あたしの夜戦は終わる……!
 ごめんなさい忍者さん、あんなデカブツ相手にクナイも手裏剣も無力です……。

 ズンッ。

「!」

 あたしは息を呑む。
 十字架が止まった。
 脈絡無く。
 がっしりした腕が、十字架の脚を掴み止める。

 あたしの目の前に飛び出し、十字架を止めたのは、見慣れた人だった。
 白い帽子に白い制服。短く切った黒い髪の毛と、目の前にいるのに位置の定まらない存
在感の希薄さ。何故か制服の右半分がずたずたに破けれ、筋肉質の腕がむき出しになっ
ている。さながら、中破! って有様。
177進め、百里浜艦娘隊! 10話 :2014/11/07(金)22:00:40 ID:LoUSXEgJu
 ぺたり

 と、あたしはその場に腰を落とした。

 ヤバイ、腰抜けた……。

 肩越しにちらりと振り向いてくる。

「提督?」

 十字架を受け止めたのは、うちの提督だった。有名な野球選手とほとんど同じ名前の、ひ
たすらモブい人。でも真面目で仕事はきっちりこなす事で有名だったり。
 今は何か重要な書類の作成に追われてるって聞いたけど。

「も、もしかして、あたしのこと……た、助けに来てくれたの?」

 ちょっと頬を赤く染め、あたしは提督を見上げる。これは、あれですか! ヒロインの窮地
に現れるヒーローってヤツですか――!
 提督はいつもの落ち着いた口調で答えた。

「いや、別にそういうわけではない」

 ですよねー……。
178進め、百里浜艦娘隊! 11話 :2014/11/07(金)22:01:32 ID:LoUSXEgJu
第11話 流れ弾は突然に


 時は少しさかのぼる。
 本部棟二階の東にある提督執務室。
 落ち着いた雰囲気の大きな部屋だ。窓からは、夜の海が見える。執務机に着き、黙々と
書類を書き込んでいる鈴木提督。時折顔を上げ、傍らのキーボードを叩いていた。机の上
には大量の書類とファイルが山のようにそびえている。

「司令官、終わりました」

 吹雪は声を上げ、提督の前に移動した。白いセーラー服と紺色のスカートという普通の
中学生のような少女。吹雪型一番艦吹雪。艤装は付けていないが、ベルトを付けた12.7cm
連装砲を肩から提げている。

「ご苦労」

 提督は顔を上げ、吹雪の差し出した書類を受け取った。
 紙をめくり、書かれている内容を大雑把に確認してから、判子を押す。
 それから、机に積んであった書類の一束を吹雪に差し出した。

「次はこれを頼む」
「分かりました」

 ため息は呑み込み、吹雪は書類を受け取る。
 普段は提督と秘書艦一人から三人が仕事をしているのだが、今日は普段の二倍の艦娘
が集まっていた。執務室に置いてある机に加え、組み立て式の簡易机を置き、さながら締
め切り間際の漫画家のような修羅場が繰り広げられていた。

「こんな時こそ天龍の出番クマ……。何やってるクマ、事務処理の帝王……」
「天龍さんなら、一昨日から沖縄まで遠征に行っています。帰ってくるのは、明日のお昼過
ぎの予定ですね。援軍は見込めません」

 泣きそうな顔で書類にペンを走らせている大きなアホ毛の軽巡。隣では深緑の制服を着
た長い黒髪の重巡がパソコンのキーボードに指を走らせていた。
 軽巡球磨と、重巡利根。このような事務仕事になると呼ばれる二人だ。

(天龍さんがいれば助かるんですけど――)

 二人と同じ感想を心中で呟く。
 困った時の天龍――事務仕事だけでなく、料理洗濯裁縫、機械の故障から兵站の管理、
人生相談、その他諸々。何かしら困った時は、天龍に助けを求めればとりあえず何とか
してもらえる。百里浜基地の天龍はそんな万能薬だった。現在は遠征中だが。

「吹雪」

 声を掛けられ、いったん立ち止まる。
179進め、百里浜艦娘隊! 11話 :2014/11/07(金)22:02:30 ID:LoUSXEgJu
「何でしょう、霧島さん」

 背の高い女性。黒髪に眼鏡と、巫女服のような白衣と黒いスカート。金剛四番艦、霧島だ
った。他の艦娘同様、修羅場の時は引っ張り出される一人である。
 流れるように書類にデータを書き込みながら、視線で提督の机を示す。

「提督、ちゃんといるかしら? また行方不明になったりしてない?」
「大丈夫です」

 頷いて、吹雪は提督を見た。
 さきほどと変わらぬ姿で、机に向かっている。いつもと変わらぬ真面目に仕事をする姿だ
った。何も変わったところはない。今のところは。

「君たちは人を何だと思っているんだ。行方不明って……」

 顔を上げ、提督がぼやく。
 吹雪はジト目で提督を見つめた。

「いえ、本当の事を言っているまでです。仕事片付けていたはずなのに気がつくと気配もな
く居なくなってたり、姿を探したらやはり気配もなく戻ってたり。そういうのは非情に心臓に
悪いです。せめてドア開ける音くらい立てて下さい」

 百里浜基地の提督は、割とよく消える。執務室で仕事をしていたはずなのに、脈絡も無く、
前触れも無く、気配もなく、いなくなる。しばらくするとまた唐突に元の場所に戻っているの
だ。別に仕掛けなどはない。ただ普通に資料を探しに行っていたり、単純にトイレに行って
いたり、そんな理由である。
 元々存在感が薄い上に、足音も立てずに歩いたり、無音でドアを開けたりする癖があるた
め、居なくなる時も戻る時もまともに認識できないのだ。

 誰が言ったか、提督の不在証明〈パーフェクトプラン〉!

 一度目を閉じてから、提督が反論してくる。

「一応声は掛けているはずなの――」

 ガァン!

 突如、爆音が轟いた。
 鉄鋼を巨大なハンマーで殴りつけたような、轟音。

「!」

 吹雪は息を止める。あまりの事に何が起こったのか、すぐには理解できなかった。
 しかし、思考とは別に身体は速やかに動いている。腰に下げていた連装砲を構え、安全
装置を外した。周囲を見る。北側の壁に大きな穴が空き、壁やガラスの破片が部屋に散
乱していた。何かが北西側から飛び込んできたようだ。
 球磨も筑摩も厳しい顔を見せている。
 壁の穴から「何か」の機動を予想し、そちらに視線を移す。提督の席。
180進め、百里浜艦娘隊! 11話 :2014/11/07(金)22:03:07 ID:LoUSXEgJu
「司令官――?」

 椅子に座っていたはずの提督がいない。
 視線を移すと、穴が空いた壁と反対側の壁にめりこんでいた。制服の右半分が吹き込ん
で、壁にいくつもの亀裂が走っている。壁を貫通してものが直撃したのだろう。

「敵襲ですか……。誰かは知りませんけど、いい度胸ですねぇ」

 静かに囁き、霧島がどこからとなく巨大なリボルバーを取り出している。室内では大型の
艤装を使えないため、通常の武器を持っているらしい。

「いや、違うようだ……」

 霧島の言葉を否定しつつ、むくりと提督が起き上がる。
 身体に張り付いた木の破片や埃を手で払いながら、立ち上がる。その動きに淀みや遅
滞はない。まるでちょっと転んだだけとでもいうような気楽さだった。

「司令官、大丈夫――です、か?」

 何かが飛んできた穴へと警戒は解かぬまま、吹雪は提督に声をかける。壁を貫通して飛
んできたものが直撃したのだ。正体がなんであれ、生身の人間がそんなものを食らってら
無事であるはずがない。
 提督は破けた制服を眺め、ため息をつく。

「あまり大丈夫ではないな。一週間前に新調した制服が破れてしまった……。直すにしろ新
しく買うにしろ、痛い出費だ。この辺りは経費で落ちないからな」
「いえ、そちらではなくて――」

 脱力しそうになりつつも、気合いで緊張を維持しつつ、吹雪は提督を観察する。服は破け
ているものの、身体にケガらしいケガはない。
 普段から鍛えているおかげで頑丈――というのは提督の弁であるが。

「相変わらず頑丈ってレベルじゃねークマ……」

 あきれ顔で提督を眺め、球磨がぼやいている。
 提督が右手を持ち上げた。手を開く。
 潰れた弾丸が手の平に乗っていた。拳銃などに使われる小さなものではない。長さのあ
るライフル弾である。しかもかなり大口径の。

「.50口径弾だ。この辺りでこの弾を使う輩は、寮長しかないない。で、そこの壁を貫通して
私に命中したということは、撃ったのは――巡洋艦寮二階東の角部屋。つまり川内姉妹の
部屋だ」

 と、壁に空いた穴を見る。

「あらあら……」

 口元を押さえ、筑摩が冷や汗を流している。
 吹雪は無言で連装砲を下ろした。何が起こったのかは大体分かった。寮長が川内姉妹
の部屋でパニッシャーくんを発砲し、流れ弾が提督を直撃したようである。
181進め、百里浜艦娘隊! 11話 :2014/11/07(金)22:03:39 ID:LoUSXEgJu
「三十分で戻る。片付け頼む」

 言うなり、提督は壁に空いた穴から外へと飛び出した。


  ◆ ◇ ◆ ◇


 あたしはその場にへたりこんだまま、提督を見上げていた。
 白旗を持ったまま、那珂も呆然と提督を見つめている。
 いきなり現れた提督。あたしめがけて振り下ろされた十字架を受け止めた。内部の重火
器と外装、合わせて数百キロはある十字架を、無造作に素手で掴んでいる。
 常日頃から鍛えてるって言ってたけど、こうして見ると凄いね、うちの提督……。

「どういうつもりだ。提督ゥ?」

 凶暴な笑みを見せつつ、寮長が提督を睨み付けている。でも、頬には薄く冷や汗が浮か
んでいた。さすがの寮長でも提督と対峙するのは分が悪いみたい。
 提督が十字架を横に払いのける。

「重要な仕事を片付けていたら、流れ弾が飛んできて私に直撃した。何があったかは大体
想像が付くが――ここで実弾をぶっ放すのはさすがに感心できないな。始末書はきっちり
出して貰うから、一緒に来なさい。今すぐに」

 淡泊な眼差しで寮長に最後通牒を突きつけた。

「うぅ」

 顔を引きつらせて、寮長が一歩後退る。
 アレだね。一番最初に那珂めがけてぶっ放したアレ。壁貫通した後のことは気にしてな
かったけど、よりによって提督に直撃していたみたい。ま、どこかの人間なり艦娘なりに当
たるよりは、提督で良かったと思うよ。あたしは。あの人凄く頑丈だから、12.7mm弾くらいじ
ゃびくともしないしね。

 ……提督って人間かな? かなり本気で人間じゃないと思うんだけど。

「しゃあねぇ」

 寮長は十字架を下ろし、左手でがしがしと頭を掻いた。

 ドゥ。

 提督の腹に、十字架が押しつけられた。

 え?

 唐突な行動に、あたしは瞬きをする。寮長が口にした台詞、そして居合いよろしく下ろし
ていた十字架を提督に突きつけたという現実。それらが導くのは――
182進め、百里浜艦娘隊! 11話 :2014/11/07(金)22:04:50 ID:LoUSXEgJu
「35mmパイルバンカァァァッ!」

 ドゴォゥ!

 躊躇無く攻撃仕掛けたッ!
 爆音と爆炎が部屋を埋め、提督の姿がかき消える。壁の砕ける破壊音。一瞬だけ見え
た光景を信じるなら、十字架の脚の先端から撃ち出された白い杭が、提督に突き刺さり、
そのまま外へと吹き飛ばした。壊れかけた壁をさらに破壊して。
 十字架の先端下側には、丸い穴が空いている。そこが射出口らしい。こういう武器も仕
込んであるんだ……。あたしも初めて知ったわ。

「せっかくだ! ここでくたばれええええええっ!」

 うわっ、もの凄く嬉しそうに叫んでるよ! この人!

 前へと突き出していた十字架を、寮著は引き戻しざまに振り上げた。縦に一回転させて
から、肩に担ぐ。ロケットランチャーのように。銃握を操作すると、頭部分の外装が上下に
分かれ、40mmの砲口が現れた。全ては流れるように速やかに行われる。

「40mmグレネェェド!」

 引き金を引くと同時、爆音とともに撃ち出される榴弾。十字架の頭部分は、榴弾砲をかな
りコンパクトに収めているみたい。こういう兵器って誰が作ってるんだろう? あたし気にな
ります。……工廠のエロ博士かな?
 あたしがちょっぴり現実逃避している間に。
 榴弾は空を裂いて突き進み、空中を舞う提督を直撃する。

 ゴガァァン!
 轟音とともに赤い炎の花が咲いた。月明かりとライトが照らす基地が、爆炎に赤く照らさ
れる。昼間のように明るく染まる第三広場。もう無茶苦茶――。
 赤い炎を巻かれて地面に落ちていく人影。
 寮長は肩に構えていた十字架を下ろした、前後を入れ替え、銃握を掴む。

 ガシャリ。

 十字架の脚の外装が上下に開き、重機関砲が姿を現した。弾数は知らないが、コンクリ
ートの壁くらいならたやすく貫く12.7mm弾である。
 見ると、地面に降り立つ白い人影。提督。静かに寮長を見上げている。あれだけ食らっ
て普通に着地する余裕あるみたい。

「まぁ、死なねぇわなぁ? これくらいじゃあ」

 壊れた壁の縁に脚をかけ、寮長は銃口を提督に向けた。吹き抜ける風に、濃い灰色の
髪の毛が跳ねる。猛獣のような凶暴な笑みを口元に貼り付け、声なき哄笑を上げながら。
火の付いてない葉巻が揺れている。
 明らかに殺意全開だよね……。
183進め、百里浜艦娘隊! 11話 :2014/11/07(金)22:05:24 ID:LoUSXEgJu
 そして、迷わず引き金を引く。

 ドガガガガゴゴゴゴゴゴ!

 爆裂音とともに、大量の銃弾が撃ち出される。提督めがけて。
 提督に降り注ぐ大量の重機関砲弾。着弾したコンクリートの地面が砕け、土煙が巻き上
がり、弾ける衝撃派に空気が渦を巻く。身体全体を叩く爆音。薬莢が床にこぼれる。
 生身の人間がこんな攻撃食らったら、挽肉どころか肉片すらのこらない。

「いやー、これはやり過ぎってレベルじゃないですよ」

 床に伏せ、近くに落ちていたクッションで頭を守りながら、あたしは寮長を見上げる。絶対
に殺す気で攻撃を仕掛けている寮長。普通に考えれば、銃刀法違反に殺人罪、器物破損
にその他諸々で逮捕だよね。
 でもねぇ、あたしもそれなりに長くここにいるから分かっちゃうんだよねぇ。
 うちの提督はこれくらいで死ぬような常識人じゃないって。

「全然足りないねェ!」

 高々と言い切り、寮長は半壊した壁から外へと身を躍らせていた。



登場人物
吹雪改
吹雪型 1番艦 駆逐艦
かなり前から百里浜基地にいる駆逐艦。レベルは50くらい。
実戦に出ることは少なく、普段は提督の秘書のような事をしている。連装砲は室内でも持
ち運びできる大きさであるため、ベルトで肩から提げていることが多い。
時々唐突に姿をくらます提督が悩みの種。

筑摩改
利根型 2番艦 重巡洋艦
中堅の重巡洋艦。レベルは50くらい。事務仕事の修羅場になるとよく呼ばれる。

霧島改
金剛型 4番艦 戦艦
艦隊の頭脳を自称する眼鏡戦艦。レベルは65くらい。筑摩同様事務仕事の修羅場によく
呼ばれる。艤装が大型であるため、秘書艦の仕事をする時などは外している。その代わり、
護身用にスミス&ウェッソンM500を携帯している。
184進め、百里浜艦娘隊! 12話 :2014/11/07(金)22:06:35 ID:LoUSXEgJu
第12話 ヤセンカッコ――


 あーあ、どうしようこれ?
 東側の壁が半分無くなっちゃった。修理代いくらになるんだろう。でも一応、壁を壊したの
は寮長と提督なのであたしは一切悪くありません。
 あたしはもぞもぞと起き上がり、壊れた壁の外を見る。
 艦娘寮横の第三広場で繰り広げられる決闘。

 バババッ!
 ドッ、ゴォーン!

 巨大な十字架を構え、提督めがけて重機関砲を乱射している寮長。一発でコンクリート
の壁を貫き、並の防御物すら無視し、人間を文字取り粉砕する大口径銃弾。
 しかし、提督は飛来する弾丸を見切り、避け、手で弾いている。
 うーん、こんなの絶対におかしいよね。おかしいよね! おかしいよねェ!

 ――!

 足音もなく。
 提督が一気に間合いを詰める。

 ガァンッ!

 小細工なしの正拳突きを、寮長は引き戻した十字架で受け止めた。それでも威力を殺し
きれず、寮長の足がアスファルトを一メートル近く削っている。
 やっぱり、この人たちそこらの艦娘より強いわ!

 ガッガッ、ガァン!

 続けて放たれる拳打を十字架で受け止め、

「こん、クソ司令官ンッ! 人間辞めるのも大概にしろやァァァッ!」

 ドゥ!

 寮長の蹴りが、提督を吹っ飛ばした。つま先がみぞおちに突き刺さり、そのまま大人一
人を空中へと蹴り上げる。提督ほどじゃないけど、こっちも非常識な馬鹿力!
 宙を舞う提督に、寮長は十字架を担ぎ。

 ゴッ、ガァンッ!

 榴弾が爆裂する。赤い炎が燃え上がり、熱風が吹き抜ける。
 騒ぎを聞きつけた人が、遠巻きに寮長と提督の私闘を眺めていた。

「いいなぁ、夜戦……」

 ため息とともに、呟く。
185進め、百里浜艦娘隊! 12話 :2014/11/07(金)22:07:32 ID:LoUSXEgJu
 夜戦いいよねぇ。夜戦。夜の闇に紛れて、大火力で殴り合い。砲撃翌力の弱い駆逐艦や軽
巡でも、戦艦や空母を一撃で沈める、あたしたち軽巡の最大の見せ場! あー、重巡の方
が夜戦強くない? とか言っちゃダメだよ。
 あたし、現実逃避中。

 ん?

 そういえば、あたしたちを止めるって言ってた寮長は今、外で提督とケンカ中。

「これは、チャンスかも!」

 寮長は提督に全意識を向けている。今なら、好きなだけ夜戦タイムを満喫できるよね!
 生真面目な神通はいないし、寮長もあたしたちを完全に忘れ去ってるし。この機を逃しち
ゃ川内の名が廃る!

「那珂、一緒に夜戦行こう!」

 部屋の隅で丸くなってる那珂に声を掛ける。
 しかし、那珂は白旗マイクスタンドを持ったまま、気の抜けた笑みを浮かべた。

「那珂ちゃんはとーっても嫌な予感がするので、このままお休みします」
「ま、ムリには誘わないけどね」

 12.7mm弾で撃たれかけたり、目の前で寮長が十字架振り回して暴れたり、壁ぶち抜いた
り、提督と寮長が決闘始めたりしちゃ、夜戦する気力も無くなるかもね。
 しかーし、あたしは川内。川内と書いてヤセンと読むくらいに夜戦大好きです。

「というわけで、レッツ夜――」

 ばたん。

 入り口のドアが開く。

「ッ!」

 あたしは慌てて後ろに飛び退いた。

「て、提督……」

 提督が入り口に立っている。きれいな白い制服は見る影もなく破れ、焦げ、まさに大破状
態。帽子も半分焼け切れている。むき出しの皮膚からはあちこち出血してるみたいだけど、
本人は気にしていないみたい。右肩には気絶した寮長を担ぎ、どこからか持ってきたロ
ープで寮長の十字架を背中に縛り付けている。
 提督が勝ったみたい。

 あれ……?

 もしかして――
186進め、百里浜艦娘隊! 12話 :2014/11/07(金)22:08:14 ID:LoUSXEgJu
 寮長に足止め食らった時より状況悪化してない、コレ!?

 落ち着いた提督の瞳が、あたしに向けられる。

「ちょうど人手が足りなかったところだ。これから朝まで夜戦をするから、川内も私と一緒に
来てくれないか? 元気が有り余っているなら丁度いい」
「え、えと……その夜戦って――」

 夜戦という響きは魅力的だけど、それ絶対あたしの好きな夜戦じゃないよね!

「ヤセンカッコショルイ」

 無情に提督が告げてくる。
 つまり、現在執務室で修羅場しているみんなのお手伝いデスカ……。

 コレハ、ニゲナイト――

「って!」

 逃げようとした時は既に手遅れだった。あたしの身体は、提督の左脇に抱え上げられて
いる。さながらバックか何かの荷物のように。身体に腕を回してるだけだっていうのに、ま
るで鋼鉄製の高速具をはめ込まれたみたい。提督の腕を引っ張っても身体を叩いてもびく
ともしない。

「いやああああ! カッコショルイはイヤああああ! 那珂、助けてええ!」

 あたしの助けを求める悲鳴に。

 しかし。
 那珂の姿は無くなっていた、
 寝室のドアに『那珂ちゃんお休みCHU』と書かれた札が掛けられている。下手に起きてる
と巻き込まれると思って、さっさと寝ちゃったみたいだ。さすが、回避には自信のある那珂
ちゃん。我が妹ながら、できる!
 提督が歩き出す。

「この裏切り者おおおおぉ……」

 あたしは泣きながら寝室のドアを見つめていた。


  ◆ ◇ ◆ ◇
187進め、百里浜艦娘隊! 12話 :2014/11/07(金)22:08:45 ID:LoUSXEgJu
「朝……か……」

 時計を見ると午前六時。
 提督執務室では、提督に吹雪、球磨に筑摩さん、霧島さんが書類相手に修羅場してた。
逃げることもできず、あたしはその一員に加わった。というよりも強制参加です。
 艦娘が作れる書類はあらかた作り終わり、今はみんな片付けをしている。

「もう限界、クマ……」
「ふぁ、眠いです……」

 眠そうにしている吹雪や球磨。意識は半分夢の世界に行っちゃってるみたい。
 一方、筑摩さんや霧島さんは、まだ目に意識と気合いの光を灯している。うーん、大型艦
は強いねぇ。でも、一番最初参加していた金剛さんは、途中で思いっ切り居眠りして、また
どこかに吊されているらしい。
 さすが、百里浜基地の面白い担当……。
 寮長はアタシの隣ですんすんと泣きながら始末書を書いていた。始末書に加えて大量の
修理養成書類……。自業自得とはいえ、ご愁傷様です。

 ふと――

 提督を見る。
 予備の制服に着替え、執務机に向かい、書類にペンを走らせ、パソコンのキーボードに
指を走らせている。あたしが見る限り、六時間以上ぶっ続けて事務処理をしているというの
に、全く勢いは衰えていない。こういう所は素直に感心できるよね。

「ふぁ……」

 眠い。凄く眠い。ヤセンカッコショルイは予想以上の強敵だったわ、うん。もう二度とやり
たくないね。普通の夜戦なら大歓迎なんだけど。
 あたしは目を擦り、書類の一枚を眺める。

『百里浜基地、戦艦武蔵建造指令書』

 どうやら、近々うちで武蔵建造するみたいだね。
188名無しさん@おーぷん :2014/11/07(金)22:09:11 ID:LoUSXEgJu
以上です
続きはそのうち。
189名無しさん@おーぷん :2014/11/09(日)00:53:46 ID:oLChysyMu
乙ですー
嫁キタ━(゚∀゚)━!!
と思ったけど、提督いったい何者なんだろうか……
190進め、百里浜艦娘隊! 13話 :2014/11/10(月)23:08:49 ID:qxDfsQDEQ
投下します
191進め、百里浜艦娘隊! 13話 :2014/11/10(月)23:09:19 ID:qxDfsQDEQ
第13話 卯月遠征中だぴょん!


 青い空。白い雲。
 吹き抜ける潮風。

 海面を滑るように進みながら、天龍は静かに目を閉じていた。腰に差した剣の柄に右手
を起き、頭に装備された電探艤装に左手を触れさせている。大きな獣耳のような電探。電
探を用いて周囲の状況を探っていた。
 遠くを走る貨物船、漁船が一集団。
 水平線近くを移動する、余所の基地の艦娘たち。遠征だろう。
 ごく普通の海である。深海棲艦発生海域ではないので、敵影はない。

「異常無し、と」

 目を開き、息をつく。電探による広範囲の探査は意外に疲れるのだ。性能控えめな基本
艤装による探査ならば、なおさらである。
 しかし、安全海域でも定期的に広範囲の探索は必要である。
 天龍は輸送用ドラム缶の紐を握り直した。

「天龍さぁん」

 声を掛けられ視線を移す。
 ピンク色の髪の駆逐艦が天龍を見上げていた。小柄な身体を濃紺の制服で包み、三日
月と兎の髪留めを付けている。輸送用ドラム缶のロープを艤装に結びつけていた。

「どうした、卯月?」

 天龍とともに遠征に出ている睦月型四番艦、卯月である。
 両手を持ち上げ、卯月が元気な声で言ってくる。

「ちょーっと訊きたいことがあるぴょん」

 天龍が視線で続きを促すと、引っ張っているドラム缶を指差した。輸送用ドラム缶。見た
目はただのドラム缶だが、非常に頑丈に作られている。

「このドラム缶って、中に何が入ってるのぉ? ずーっと前から気になってるぴょん。こうや
ってうーちゃんたちが運ぶ意味あるのかなぁ?」
「確かに……不思議だ」

 卯月の言葉に続いたのは、白い髪の駆逐艦だ。卯月とよく似た濃紺色の制服で、表情
が硬い睦月型三番艦、弥生。睦月同様、ドラム缶を引っ張っている。

「これくらいの大きさの荷物なら、陸路でも十分運べるし。海を使うなら普通の輸送船を使
った方が効率もいい」

 と、ドラム缶を見る。
 沖縄の国防海軍工廠から百里浜基地まで。ドラム缶程度の荷物を運ぶのなら、陸路で
十分だ。荷物が多ければ海路でもいい。主要海路の安全は完全に保証されているため、
荷物を運ぶには陸路も海路も普通に使用できる。
192進め、百里浜艦娘隊! 13話 :2014/11/10(月)23:09:55 ID:qxDfsQDEQ
「私たち艦娘が運ぶ必要性は薄いということか。それでも運んでいるということは何かしら
の意味があるということだな」

 腕組みをしながら、呟く少女。黒い制服に身を包んだ、銀髪の駆逐艦。睦月型九番艦、
菊月である。重々しい口調を使う事が多い。

「一艦娘である私たちが、任務の内容をあれこれ詮索する必要はないが……言われてみ
れば気になるな……」

 黒い制服に身を包んだ、緑色の髪の駆逐艦がドラム缶を見る。睦月型八番艦、長月。菊
月と似ているが、こちらが堅苦しい言い方を好む。
 天龍を旗艦とした、合計五人が今回の遠征メンバーだった。

「天龍さんなら何か知ってるはずぴょん!」

 元気よく挙手しながら、卯月は赤い目を輝かせている。
 ドラム缶の中身。工廠では密閉した状態で渡されるため、輸送している艦娘は中身を見
ることもなく、中身を知らされることもない。基地に戻って開封する所も見ることはないので
、中身が何なのか知らない者は多い。

「うーん、俺は全部知ってるけど、コレどこまで言っていいものかな? 機密情報ってわけ
でもないけど、そうべらべら喋るのもよくないぞ……」

 首を捻りつつ、天龍は呻く。ドラム缶の中身は機密とされているわけではない。が、あま
りおおっぴらにするようなものでもない。喋るべきか否か、少し考える。
 潮風が頬を撫でた。山や森、建物など遮るもののない海上は、風が強い。卯月と弥生の
の髪の毛が踊っている。長月や菊月の髪の毛は毛質が固いのか、あまりなびかない。
 じっと見つめてくる四対の瞳。

「そうだな――」

 天龍は手元に引き寄せたドラム缶をぺしぺしと叩いた。
 百里浜基地にて建造されそれなりに時間が経ち、練度も経験も積んでいる四人。半分く
らい話しても問題無いと、天龍は判断した。

「こいつはちょっと特殊な『資材』が入ってるんだよ。俺たち用の燃料や弾薬みたいな、燃
料だけど燃料じゃない、弾薬だけど弾薬じゃない、そんな資材の一種だ」

 四人の目が好奇心の輝きを帯びる。
 燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト――と名前は付いているが、実際の石油や鋼鉄、弾丸
ではない。艦娘という存在を動かすための、特殊な材料。ドラム缶の中身もそのような資
材だった。

「で、俺たちがこうして海上輸送している理由なんだが、至って単純だ。こいつは特にナマ
モノで品質維持が面倒臭い」

 天龍はため息ひとつ吐き出す。
193進め、百里浜艦娘隊! 13話 :2014/11/10(月)23:10:41 ID:qxDfsQDEQ
 卯月が首を傾げた。

「ナマモノ、ぴょん?」
「例えば、連続で十五分、海面から二メートル以上離すと『効果』が無くなる。さらに同質の
もの――ようするに俺たちが半径十メートル以内に存在しないと、これまた約三十分で効
果が無くなる。他にもいくつか品質維持条件がある。つまり、陸路輸送は無理、普通の貨
物船でも無理」
「それは、奇っ怪な性質だな」

 菊月が顎に手を当て、ドラム缶を見る。海から離れることを極端に拒むような特性。奇っ
怪と言いたくなる気持ちも理解できた。
 普通の資材は陸路でも海路でも輸送できるし、実際に輸送しているが、このドラム缶の
中身は艦娘でないと移動させることができない。面倒くさい性質だと思う。しかし、そういう
ものなのだから仕方がない。

「名前は一応言うのは止めておくわ。知りたきゃ提督に訊け。答えるかどうかは、俺は保証
しないけどな。用途は、そうだな――主に特殊な装備作る時にも使われる資材だ」

 天龍は腰に差した剣の柄を撫で、

「こいつの材料も今輸送してるドラム缶の中身なんだぜ」
「え?」

 それは誰の呟きか。
 四人は眉をひそめ、引っ張っているドラム缶を見る。好奇心の度合いが一段下がった。
そんな、そこはかとなく冷めた眼差しである。

「……他にも、神通の刀もな」

 天龍は付け足す。神通が持っている白樫拵えの刀。標準艤装とは別に作られたもので、
侍じみた出で立ちの神通によく似合う。また、かなりの業物で切れ味も高い。

「おお……」

 四人の瞳に驚きの光が灯った。
 天龍はジト目で四人を見る。

「その反応はかなーり腑に落ちないのだが……。開けるなよ、くれぐれも」
「わっかりましたぁ! ぴょん!」

 びしっと敬礼をする卯月。
 色々はっちゃけた性格の多い艦娘たちだが、根は真面目である。開けるなと言われてい
るものを開けることはない。それでも一応釘を刺しておく。
 ふと、脳裏に弾ける何か。

「おっと。定時連絡の時間だ」
194進め、百里浜艦娘隊! 13話 :2014/11/10(月)23:11:14 ID:qxDfsQDEQ
 太陽の位置を見上げてから、天龍はポケットから時計を取り出した。短針は九を差して
いる。艦娘としての特性なのか、時間はかなりはっきりと分かるものだ。
 随伴艦の四人を順番に眺め、

「そういえば、通信機持ってるのは――」
「うーちゃんですぴょん!」

 勢いよく挙手する卯月。遠征や出撃に必要なものは、それぞれが分担して持つことにな
っている。鞄などに入れることもあるが、艤装に組み込めるものは、組み込んでしまうこと
が多い。通信機は卯月の担当だった。

「え……っと。大丈夫か?」

 頬に一筋汗を流しつつ、天龍は卯月を見る。自分の記憶が確かなら、卯月が通信機を
持って定時連絡を行うのは、これが初めてだった。
 他の三人も不安そうな顔で卯月を見ている。

「お任せ下さいっぴょん!」

 自信満々に言い切ってから、卯月は艤装から通信機を取り出した。見た目はゴツイ電話
の受話器である。ボタンを操作し、卯月は軽く咳払いをした。
 それから通信機を起動させる。

「司令官。第八艦隊の卯月です。サンキュウマルマル時の定時連絡を行います」

 普段とはまるで違う、固い口調で話し始める卯月。
 独特の喋り方の多い艦娘だが、その気になれば普通に話すこともできる。通信などの場
合は、普通に喋る事が決まりとなっている。素の口調で話されたら、何を言っているのか
分からない事があるからだ。

「はい。通信係は卯月です」

 卯月は提督との会話を続ける。

「現在、紀伊半島潮岬を越えました。安全海域ということもあり、深海棲艦との交戦はあり
ません。また天候も良好であるため、特筆すべき事故も起こっていません」
「…………」

 無言のままじっと卯月の様子を眺める天龍。その顔に浮かぶのは不安だった。普段は
弾けた喋り方をしている卯月も、普通に喋ることができる。それは天龍も知っている。知っ
ているが、その先の事も知っているのだ。

「はい。分かりました」

 提督と話している卯月。頬に汗が滲んでいる。

「お、おい……」
「大丈夫か、卯月――?」
195進め、百里浜艦娘隊! 13話 :2014/11/10(月)23:11:53 ID:qxDfsQDEQ
 菊月と長月が心配そうに声を掛けている。

「はい。気をつけます」

 通信機に向かい報告を続けている卯月。普段とは違う真面目な顔付きである。しかし、
それだけではない。空いた左手の指がわきわきと蠢いている。ぴょこぴょこと、髪の毛が逆
立つように跳ねていた。


「いえ、大丈夫です」

 あくまで落ち着いた口調で会話を続けている。しかし、声と身体があっていない。額や頬
に汗が滲み、視線も不規則に泳いでいた。嫌いな食べ物を無理に食べたら、このような反
応をするかもしれない。卯月の頭から薄く白い湯気が立ち上っていた。

「それでは引き続き輸送任務を続けます」

 無線を切り、受信を艤装にしまい込む卯月。

「………」

 何も言わぬまま、天龍たちは卯月を見つめていた。

 はぁぁぁ……。

 と、卯月が息を吐き出す。薄い白煙の混じった吐息を。
 笑っているような怒っているような奇っ怪な表情で、手足や指など身体のあちこちが不規
則に蠢いている。普段とはまるで別人のようだった。ピンク色の髪は逆立つように跳ね上
がり、全身から薄い白煙を立ち上らせている。
 数秒して。

「ぷぅっぷくぷー!」

 糸が切れたように、卯月が叫んだ。両目をきつく閉じ、思い切り声を吐き出す。
 海面を思い切り蹴って、空中で一回転。見た目は少女でも、海上ならば宙返りくらいは造
作もない。着水と同時に、両手を頭の上にかざした。兎の耳のように。

「ぴょんぴょんぴょぉん! うーっちゃんはぁ、うっうー、うーぴょんぴょん!」

 騒ぎながら、跳ね回る卯月。

「これは、一体――何が……」
「う、卯月……大丈夫か?」
「天龍さん、司令官に連絡した方が――」

 明らかに異常な様子に、弥生たちはおののいている。このような艦娘の姿は始めて目に
するだろう。そう見るものではない。何か壊れてしまったと不安になるのも当然だ。

「でぇっす、でえっす! ぴょんぴょん、ぷっぷくぷっぷっぷー!」
196進め、百里浜艦娘隊! 13話 :2014/11/10(月)23:12:28 ID:qxDfsQDEQ
「いや、安心しろ。卯月は大丈夫だ。でも、落ち着くまでそっとしておいてやれ……」

 三人を少し離れた場所に移しながら、天龍は跳ね回る卯月を眺める。今は混乱状態だ
が、数分すれば元に戻るだろう。

「変わった喋り方の艦娘が普通に喋るのって、凄く疲れるらしいんだ。俺たちが思ってる以
上にな。球磨も多摩も愚痴ってたし」
「…………」

 説明する天龍に、弥生たちが何とも言えない眼差しを向けてきた。
 艦娘の癖のある喋り方は、根本的な気質である。変わっていても本人はその喋り方が一
番落ち着くのだ。無理に普通に喋るのは、大きな負担となる。比較的普通の喋り方をする
天龍などは負担が少ない。逆に、元々かなり弾けた卯月は、人一倍負担が大きい。
 結果が、この大騒ぎである。

「金剛は――」

 顎に手を添え、天龍が続ける。独り言のように。

「デースデース鳴きながら、ブリッジしてかさかさ虫みたいに動き回ってたし。正直あれは怖
かったぞ。比叡のやつ、ちょっと泣いてたし」

 その呟きに答える者はいなかった。



登場人物など

卯月
睦月型 4番艦 駆逐艦
レベルは20くらい。はっちゃけた性格と喋り方の元気な少女。普通の喋り方をすることもで
きるが、かなりの負担になる様子。

弥生
睦月型 3番艦 駆逐艦
レベルは20くらい。表情と口調が固い。

菊月改
睦月型 9番艦 駆逐艦
レベルは25くらい。重々しい口調で話すことが多い。

長月改
睦月型 10番艦 駆逐艦
レベルは25くらい。堅苦しい口調で話すことが多い。

ドラム缶(オリジナル設定)
資源輸送用のドラム缶。高品質の鋼鉄を使ったり、二重構造になっていたりと、強度を優
先して作られている。中身は基本四種の資源とは別の特殊な資材らしい。天龍の剣や神
通の刀は、この資材で作られている。詳細は提督に訊くように。
197名無しさん@おーぷん :2014/11/10(月)23:12:47 ID:qxDfsQDEQ
以上です。
続きはそのうち
198名無しさん@おーぷん :2014/11/11(火)15:30:19 ID:Hz17v3DB0

続き待ってます
199名無しさん@おーぷん :2014/11/11(火)18:40:17 ID:ld7yFzicQ
モチベーションが降りてこないので追い込むために途中まで投下させてもらいます
200妖精さんのある一日 :2014/11/11(火)18:41:10 ID:ld7yFzicQ
 今日もいい天気です。新しい一日が始まりました。まだ、執務室には誰もやって来ません。今日の秘書さんは誰だったっけ。

「おはよー、あれ?今日はまだ誰もいないのか?じゃあ気合入れる一発やっとくか」

 提督が入ってきましたが影になっているのか私の存在には気づかず何やら腕をクネクネとくねらせ始めました。

「イヤォ!!」

 提督が体を最大限にくねらせ、その反動を利用し反り返った所で奇声を発しました。そして私と目が合いました。

「あ……妖精さん……早いね……えーっとその今日も宜しく!!」

 少し顔を赤らめた提督に敬礼を返し、私も持ち場に付きます。提督さんとは意思疎通が難しいのが少し悲しいです。さっきのは見なかったことにしましょう。

「えーっと今日の秘書はっと……望月か……アイツまた寝坊か?まぁいいや、仕事しよう」
201妖精さんのある一日 :2014/11/11(火)18:41:48 ID:ld7yFzicQ
 今日の秘書さんは睦月型駆逐艦の末っ子、望月さんのようです。やるときはやる方ですが基本的にどこか抜けています。提督の奥さんの皐月さんや、比叡さんが秘書の時は私も気を抜けるのですが、望月さんや、初雪さん、北上さんが秘書をやられる時は気が抜けません。というか秘書を選ぶ基準が謎すぎます。もし言葉が通じれば一度聞いてみたいものです。そんなことを思いながら作業を始めると望月さんが執務室へと入ってきました。

「ふわぁーあ、うぃーっす司令官、それに妖精さんおはよーざいまーす」
「望月……遅刻だぞ、後で皐月に言っておくからな」
「えー、じゃあ司令官が駆逐艦に手を出しまくってるっていう7割の真実と3割の脚色を皐月に伝えるけどいい?」
「よーし!今日も元気に仕事しような!望月に妖精さん!」
「にしし、ちょろいちょろい……ってどうしたの妖精さん溜息ついて?」

 二人のやりとりに思わず溜息をついてしまったところを望月さんに目撃されてしまいました。とりあえず、大丈夫ですと言うジェスチャーを返します。本当なんでこの提督が少将なのかこの部分だけを見ると疑問を感じます。
202妖精さんのある一日 :2014/11/11(火)18:42:39 ID:ld7yFzicQ
「じゃぁ、私はDSやってるから仕事はよろしくー」
「いや、望月さん流石にそれは勘弁してくれ。それにお前計算は得意だろ?数字に弱い俺を助けろ」
「えー、苦手じゃないんだけどさ……めんどい」
「俺だってめんどいよ!!第一望月さんのお仕事月初めの対潜哨戒と二週間に一回の秘書だけじゃん!!少しはやってくださいお願いします」
「はぁ……司令官の頼みだしねー、しょうがないなぁ」

 望月さんも少しばかりチョロいと思います。ここの提督さんは変わり者ですが不思議な人望があるようで、艦娘の皆さん、それに私を含めた鎮守府勤務の妖精からも信頼が厚いです。でも計算ミスと誤字が多いのは少し治してもらいたいです。ですがその事を秘書艦の方を通して伝えてもらうと――

「ごめんなさい……でも、この世界でぐらい許してください……」

 と、少し涙目になられた過去があるのでそれ以上追求するのは止めました。この世界を崩壊させかねません。
203妖精さんのある一日 :2014/11/11(火)18:43:30 ID:ld7yFzicQ
「んー、終わったああああああああ」
「こっちも終わったよー、じゃあ昼休みに入るねー」
「おぅ、ゆっくりしっかり休んでこい。でもお前、昼休憩5時間とかは無しだぞ。最高でも一時間半ぐらいで帰ってきてくださいお願いします」
「あいあい、分かったよ」

 そんなことを考えながら仕事を進めているといつの間にかお昼のようです。時間の流れは早いものです。というか、お昼の休憩って一時間だったような……。

「あ、妖精さんも休憩してね。ブラック鎮守府とか言われたくないしねー。てか、この世界でブラックとか何考えてんだか……」

 提督さんがまた危ない発言をしています。とりあえずスルーして私もお昼休憩に入るとします。

「あ、そうだ妖精さん。今日は午前中珍しく望月がやる気出してくれたおかげで書類仕事終わったからさ、なんだったらゆっくり休んでいいよ。お昼は遠征やら作戦に出た艦隊のお迎えだけだし、まぁ気が向いたら仕事しにきてくれればいいよ。それじゃあ俺も昼休憩はいるね」

 提督さんが執務室を出ようとする私にそんなふうに声をかけます。なんというか緩いです。以前他の鎮守府の妖精さんとお話したことがあるのですが、この鎮守府はダントツで緩いみたいです。提督さんが言う『この世界』と何か関わりがあるのでしょうか?せっかくなのでお言葉に甘えてゆっくりしたいと思います。お昼は何をしようかそんなことを考えながら提督さんと同じタイミングで執務室を出ます。
204妖精さんのある一日 :2014/11/11(火)18:44:03 ID:ld7yFzicQ
「お、曙元気か?」

 執務室から少し進むと曙さんと出会いました。当然提督さんは声をかけます。

「は?何よこのクソ提督。どう見ても元気でしょ?ったくたまには出撃させなさいよ」

 いつものように口が悪いです。曙さんの装備の妖精さんのお話を聞くと、どうやら
6割本気で4割照れ隠しだそうです。

「クソって……会って2秒でクソって……」

 そして提督さんはいつものようにメンタルが弱いです。OTZみたいな形になってます。ちょっとめんどくさいです。

「はははは、提督よ、まだまだのようだな!どうだ曙一緒に昼食でも?」

 どこからとも無く長門さんが現れました。この方はあの連合艦隊旗艦……のはずなんですがなんというか残念です。他の鎮守府の長門さんとは一味も二味も違います。

「今食べてきたところよ、このクソ戦艦!」

 やっぱり口が悪いです。というかこの鎮守府での長門さんの扱いは一体何なんでしょう。

「いいぞもっとだ!もっとこい曙!」
「意味分かんないし……もう行くわ」

 曙さんに全面的に同意します。意味がわかりません。私の目の前には何故か悦に入った表情をしている長門さんと、先ほどと変わらずOTZの体勢の提督さん。放っておいてお昼を食べに行きましょう。

「提督よ、これがビックセブンの姿だ!」
「うるせえ、ながもん。後で陸奥に言いつけておくからな」
「それは勘弁してもらいたいんだが……ん?」

 長門さんと目が合いました。一応敬礼で応えます。

「妖精さんか……流石に私も守備範囲外だな……うむ」
「守備範囲だったらお前の艤装全部没収だよ……」

 何やらブツブツ言っているので聞こえなかったことにして、早足で食堂に向かうことにしました。
205妖精さんのある一日 :2014/11/11(火)18:45:00 ID:ld7yFzicQ
とりあえず以上です。
駆逐艦ながもんやら書いてたものです。
だいたい同じ世界観で提督は恐らく自己投影しております。
後は後編を早いうちに……
206名無しさん@おーぷん :2014/11/12(水)18:05:45 ID:TpZ61QQb0
妖精さんメインというのは珍しい
装備妖精から見た艦娘とか提督とか
もっと書いてほしいですね
続き待まってます
207進め、百里浜艦娘隊! :2014/11/14(金)20:27:15 ID:2sRLRwhHt
投下します
208進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:27:58 ID:2sRLRwhHt
第14話 深海棲艦を討伐せよ

 深海棲艦はどれくらい強いか?
 単純な火力だけを言うなら、大口径銃を持った人間くらいかしら。実はそれほど強くはない。
いや、十分に強いけど、実物の艦ほどの攻撃能力はない。ただ、無茶苦茶固い。幽霊みたい
なものだから、物理攻撃がまともに通じないし、レーダーにもほとんど映らない。
 護衛艦あちこち走らせて、目視で深海棲艦探して、対艦ミサイル撃ち込む――というのは
あまりにも効率が悪いので、私たち艦娘が深海棲艦と戦っているのよね。そもそも私たちも、
私たちの装備も、深海棲艦を止めるために存在しているようなものだし。
 大きな時代の変化の後に現れる怨念の具現と、それを止めるために現れる意志の具現。
この国でも、余所の国でも、過去何度も繰り返されたこと。ここまで大規模なのは初めてみた
いだけどね。



 犬吠埼から東に八十海里。
 深海棲艦出没海域として進入禁止海域として指定されている場所である。その海域に出る
深海棲艦を撃沈し、海域を安全化させるのが、艦娘の仕事だ。
 瑞鶴旗艦の百里浜基地第一艦隊は、海域鎮圧に向かっていた。



「海域危険度4……ね」

 私は周囲を眺めながら、海域を進む。危険海域として指定されているので、他の船の影も
ない。静かな海ね。天気は晴れ。雲は多いけど、雨が降るという予報はない。雨が降ると艦
載機飛ばしにくくなるから、晴天はありがたいわ。
 それはともかく――。

「って割には、静かよね? いつもなら深海棲艦の一隊くらいは出会ってるはずなのに。羅針
盤の調子が悪いのかしら?」

 ポケットから取り出した羅針盤を見る。
 ふっと空中から現れた魔法使いっぽい妖精さんが、びしっと前方を指差した。
 こっちに進めって事ね。
 深海棲艦の出現する海域は決まっている。深海棲艦は地縛霊みたいなものだから、海域
から動くことが出来ないみたい。そして、出現海域は防衛省の特殊なレーダーか探知機か何
かで、かなり正確に把握されてる。そこの仕組みはよく分からないんだけど。
 さらに正確な深海棲艦探知機がこの羅針盤。有効範囲はそんなに広くないんだけど。海域
内で深海棲艦の艦隊を探すには、この羅針盤と妖精の力が必要になる。……回すのは使い
方としておかしいと思うけど。

「そういう事もありマース」

 インチキ外国人みたいな声。
 かき消えるように、羅針盤の妖精が消えた。
 羅針盤をしまい、眼を移した先にいたのは、白衣に黒いスカートの戦艦金剛だった。百里
浜基地の面白い担当とか言われてたりする。余所の金剛よりも少し背が低くて、アホ毛が二
本あるのが特徴。艦娘の個体差ってものね。
209進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:28:30 ID:2sRLRwhHt
「もしかしたら海域が変化してしまったのかもしれないネー。そういう事は時々あるようデース。
危険海域の再調査と情報の書き換えが必要になるので、帰ったら提督に報告しておく必要
がありマス」

 人差し指を動かし片目を瞑る。
 人差し指に嵌められた指輪が、薄く光った。飾り気のない銀色の輪。昔提督に貰ったものみ
たい。何か特殊な指輪みたいだけど、何の指輪かは聞いたことがない。ケッコンの契約指輪
じゃないみたいだけど。
 かなり長く百里浜基地にいるから、この人も色々秘密や謎が多いのよね……。

「何もないのに越したことはないねぇ。さって、帰ったら何飲もうかな?」

 大きな巻物を指の上で回しながら、隼鷹がにやけている。少年漫画みたいな紫色のツンツ
ンヘアーと、洋服と巫女服を混ぜたような白赤緑の服装。隼鷹改二。
 ノリは軽いけど、軽空母で一番の実力者と言われているわ。焼き鳥空母の突貫鍛錬で強く
なった私とは対照的に、地道な実戦で練度を上げていったタイプね。

「何は無くとも、紅茶は大事ネー!」

 ばっと右腕を上げ、金剛が騒ぐ。
 金剛は紅茶好きって言うけど、紅茶中毒って言わないかしら……?

「任務中に帰った後の食事の話をするな。気を引き締めろ」
「そうよ。何も無い場所から潜水艦でドーン!なんてこともあるからね。今のところそういう気
配は無いけど、油断は禁物よ」

 二人に声を掛けたのは、長門と五十鈴だった。
 SF風な露出多めの白い上着とスカート。大型の砲を装備した戦艦ね。正攻法な戦い方で
は百里浜基地で最強の戦闘力を誇る実力者。
 そして大きなツインテールに白い上着と赤いスカートの五十鈴改二。三式ソナー二機に三
式爆雷という完全対潜装備で固めている。私たち空母、戦艦は潜水艦苦手だしね。対潜要
員は大事よ。

「我が輩の索敵機が、何か発見したぞ!」

 大きな声が上がった。
 少し離れた所に立っている、深緑色のワンピースを纏った小柄な重巡。利根だった。さっき
から水上機を飛ばして周囲を偵察していたようだけど、何か見つけたみたい。



◆ ◇ ◆ ◇
210進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:29:02 ID:2sRLRwhHt
「木製コンテナかしら?」

 利根が見つけたモノを見上げ、私は首を傾げる。
 ゆらゆらと海面を流れる大きな箱だった。かなり古ぼけた木箱で、あちこち欠けたり変色し
たりしている。元々何に使われていたのかは分からないし、興味も無い。

「こういうの不法投棄する人いるのよね……。まったく迷惑な話よね」

 腰に手を当て、私は愚痴った。
 海を移動しているとこういう投棄物を見かけることがある。捨てられたものか落ちたものか
は知らないけど、迷惑な話よね。私は体験したことないけど……水死体見かける事もあるみ
たい。
 どうしようかしら? このゴミ。持って帰るわけにもいかないし、ここで解体するわけにもい
かないし、放置なんだろうけど。まったく――

 パンパン。

 と手で叩いてみる。
 木箱は少し揺れて。

 バシャン。

 何かが水面に落ちる音がした。木箱の向こう側。

「ん?」

 多分、木箱の上に乗ってたものか、横に引っかかってたものか。何かが落っこちたんだと
思うけど、一応確認しておかないとね。
 そう考えて木箱の横に回り込んで。

「………!」

 私は動きを止めた。

 これは……!

 すっと背筋が冷える。
 そこにあったのは小柄な少女――のようなモノ。
 灰色の肌と黒いフード付きコート、首には縞模様のストールを巻いている。コートは前を開
いて、控えめな胸とビキニトップが露わになっていた。背中から伸びた尻尾には、装甲で覆
われた獣のような頭がついている。

「――?」

 それは目を開け、私を見た。眠そうな青い瞳。

「戦艦レ級……!」

 その名を鋭く囁き、私は後ろに跳び退る。
211進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:29:39 ID:2sRLRwhHt
 艤装内で妖精たちに戦闘準備を命じながら、私はレ級から距離を取った。
 さすがにこの距離は戦闘するには近すぎるわ。航空戦にも砲雷撃戦にも適切な間合いと
いうものがある。最低でも数十メートルの距離は欲しいところ。
 他のみんなも気付いたようで、距離を取りつつ陣形を組み直す。

「ビンゴ! オオモノが来ましたネェ!」
「こんなバケモノが。何故この海域に……?」

 私と一緒に距離を取りながら、金剛と長門が緊張した言葉を口にしている。
 危険度5の海域深部で本当に稀に見かける、規格外の深海棲艦。危険度4のこの場所で
見かけるのはおかしいけど、いるんだから仕方ない!

「我が輩の索敵機も、えらいものを見つけてしまったの! これは帰ったら筑摩に自慢してや
らねばいかんな!」

 連装砲を構えながら、微かに震えた声で利根が叫ぶ。
 利根が見つけたのは木箱だけみたいだけど、レ級が一緒に出てきたのは予想外ね。

「どうすんだい? 瑞鶴。逃げる? 戦う? 相手は一匹、こっちは無傷で六人。燃料も弾も
十分。相手がレ級でも、さすがに負けるとは思わないけどね――」

 飛行甲板の巻物を広げながら、隼鷹が訊いてくる。深海棲艦は大抵隊を組んでるけど、こ
のレ級は一人みたい。六対一。普通に考えれば、私たちが圧倒的に有利……

「眼が青くなければ……ね? あれ、フラグシップ改よ……おそらく」

 五十鈴が指差すレ級の目。
 もぞもぞと寝ぼけたように身体を起こしているレ級。私たちに向けられた瞳は鮮やかな青
色。あれはフラグシップ改の特徴ね。現在レ級はエリートまでしか確認されていないけど、そ
れ以上がいたって何もおかしくはないわ。

 グガァァァァォォォ!

 私たちに向かって威嚇するように吼える尻尾。

「――。―――? ――?」

 一方身体の方は眠そうに目を擦りながら、何かを呟いている。
 何を言っているかは分からない。深海棲艦は思考も言葉もあるけど、私たちとはかなり違う
構造をしている。意味を聞き取るのは無理だし、翻訳も極めて困難。
 こいつ寝ぼけてる? というか、そこの木箱の影で寝てた? 深海棲艦が海上で昼寝なん
て聞いたことないけど、現実は目の前にある!
 私たちに牙を剥いていた尻尾が、おもむろに頭に向き直り。

 がぶっ!

 あ。噛んだ。
212進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:30:20 ID:2sRLRwhHt
「――、――! ……?」

 いきなり頭を噛まれ、レ級が尻尾に文句を言っている。頭と尻尾で別々の意識があるみた
いね。ひとつの身体に複数の意識を持つ深海棲艦はいるみたい。

「――――!」
「……。―――!」

 二言、三言言い合ってから、レ級はその場に跳ね起き私たちに向き直った。にまりと壊れ
たような笑みを浮かべながら、身構える。
 ただ、すぐには攻撃してこない。艦娘であれ深海棲艦であれ、戦闘準備には若干の時間が
かかるもの。普通は戦闘態勢を整えながら双方接触なんだけど、今回は急過ぎた。
 矢立から屋を抜き、私は弓につがえる。威嚇の意味を込めて。まだ艤装の妖精たちの準
備は終わっていないけどね。無理矢理艦載機飛ばすことは、可能だけどしたくはない。

「ここで沈めるわよ。あいつは危険な気配がするわ」
「了解……」

 静かに答える長門。
 レ級は不吉な笑みとともに、私たちを順番に眺めてから――

「――?」

 不意に笑みを消した。
 横の空に目を向けたまま、ぴたりと動きを止めてしまっている。ぱちぱちと瞬きをしながら、
惚けたような表情を見せていた。何、これ?

「うん?」

 一瞬、意識を逸らす振りをするフェイクかとも思ったけど、多分違う。レ級は本気でそっちに
意識を向けていた。攻撃するべきか否か?
 私は長門にハンドサインを出して、レ級の視線を追った。

「何?」

 思わず声が漏れる。
 遙か空の向こうから、何かが飛んでくる。レ級が見ていたものもこれだ。
 重力に引かれて落ちてくる何か。最初は白い点だったその物体も、こちらに落ちてくるに従
い、はっきりと見えるようになっていた。

「どうした、瑞鶴?」

 困惑した長門の声に、私は正直に答えた。多分レ級と同じような顔をしたまま、

「人が……飛んでくる……」
213進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:30:51 ID:2sRLRwhHt
「はい?」

 気の抜けた長門の声。

 だって事実だもん! しょうがないじゃない!

 その姿はもうはっきりと見えていた。白い詰め襟と白いズボン。いわゆる提督の制服を纏っ
た男が一人。くるくると周りながら落ちてくる。ただし、その提督の頭はTだった。首に黄色い
Tの字が刺さったような頭――

 ドッバアァンッ!

「―――!」

 爆音を立て、提督が海面に激突する。
 ちょうどレ級が立っていた場所だが、レ級は素早く横に飛んで避けていた。

「いやいやいや……」

 私は冷や汗を流しながら、否定の言葉を口にする。
 周囲に雨のように降り注ぐ、無数の水しぶき。

 いや、どうしろってよ、これ……!

 落下の衝撃で、提督は再び空中に舞い上がっていた。高速で移動する物体に対し、水面
はコンクリートの堅さを発揮する。跳ね返るのは当然だ。両手両足を明後日の方向に投げ
出した、壊れた人形のような体勢で飛んでいく。

 バッ、バシャッ!

 何度か海面を跳ねてから、

 ばしゃん。

 止まった。

「あれって……」

 私はおずおずと左手を上げる。突然すぎて色々と意味不明だけど、分かる部分から解決し
ていかないといけないわね。
 人差し指を向けた前、五百メートルほど前にうつぶせに浮かんでいるT頭の提督。

「目立基地のTノ字提督――よね?」
「あんな不思議な頭は、そうそういるものではないぞ」

 長門が、頷きながら、視線を動かす。

「―――……」
214進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:32:03 ID:2sRLRwhHt
 私たちと同じように呆然と、Tノ字提督を見つめているレ級。
 百里浜基地の北隣にある目立基地。そこの提督さんね。Tノ字提督と呼ばれているけど、
本名かどうかは不明。昔はアイドルのプロデュースをやってたみたい。そのプロデューサー
が何で国防海軍で提督を務めているのかは知らないけど、人生紆余曲折というし。
 あと、変態大人。スケベ大魔王、歩くセクハラ野郎、憲兵隊ブラックリスト最筆頭、少年誌の
エロ漫画の主人公、などなど。悪い噂が絶えない人でもあったり……。平たく言ってしまえば
ただのスケベ野郎なんだけど。
 金剛がアホ毛を指で弄りながら、浮かんでいるTノ字提督を眺めている。ジト目で。

「そもそもお隣の提督が、どうしてこんな所に降ってくるんデスカ? ファフロツキーズの一種、
ってわけじゃないよネェ? まぁ、提督は空を飛ぶものだけどサー」

 蛙や魚が降る怪雨現象。提督が振るのも、怪雨に含まれるのかしら? でも提督は空を飛
ぶものって認識はどうなのよ? うちの鈴木一郎提督も、時々空飛んでるけどね。主に爆発
に巻き込まれて。

 ばしゃっ。

「あ。起きた」

 五十鈴が声を上げる。
 うつぶせの体勢から、Tノ字提督が上半身を持ち上げた。目も鼻も口も無いけど、この人ど
ういう構造してるのかしら? 仮面じゃないわよね。
 ゆっくりと周囲に視線を動かし。

「!」

 びくっ。

 レ級の肩が跳ねた。
 目があったみたい……。
 そして、Tノ字提督が動いた。
 近くに落ちていた帽子を掴み、頭に乗せてから。

 バンッ!

 爆裂するような音を立て、海面を叩き空中へと飛び上がる。身体を丸めて空中で一回転し
てから、両足を海面につき――そのまま間髪容れず海面を走り始めた。両手両足を凄まじ
い勢いで動かし、レ級めがけて海面を突き進む。

「ふおおおおおおおお! レ級ちゃん、お腹ぺろぺろさせろおおおお!」

 欲望駄々漏れの台詞を叫びながら。
 うわぁ、キモい……。
215進め、百里浜艦娘隊! 14話 :2014/11/14(金)20:34:02 ID:2sRLRwhHt
登場人物

瑞鶴改
深海棲艦討伐部隊旗艦。レベル95くらい。
装備 烈風/紫電改二/彗星一二甲/流星改

金剛改
レベル85くらい。
装備 41cm連装砲/試製36.6cm三連装砲/水上観測機/三式弾
提督に貰った銀色の指輪を右手人差し指に付けている。その指輪がどのようなものなのか
は不明。百里浜基地にかなり昔からいるから秘密や謎が多いとは瑞鶴の弁。

隼鷹改二
飛鷹型 2番艦 軽空母
レベルは85くらい。酒好きでノリも軽いが、堅実な仕事をすることに定評がある。軽空母一番の実
力者。無茶苦茶な訓練で鍛えた瑞鶴とは対照的に、地道な実戦と鍛錬で鍛えたタイプ。結構古参。
装備 烈風/紫電改二/彗星一二甲/彩雲

利根改
利根型 1番艦 重巡洋艦
百里浜基地では中堅。レベルは60くらいで、妹の筑摩よりいくらか練度が高い。索敵と得意
としており、よく索敵機を飛ばしている。
装備 20.3cm連装砲/20.3cm連装砲/水上偵察機/水上観測機

長門改
長門型 1番艦 戦艦
レベルは90くらい。
正攻法では百里浜基地で最強と言われる戦艦。性格は真面目。砲撃の威力、精度ともに非
常に高い。危険度の高い海域の調査や深海棲艦討伐によく駆り出される。
装備 46cm三連装砲/試製41cm三連装砲/水上観測機/91式徹甲弾

五十鈴改二
長良型 2番艦 軽巡洋艦
レベルは55くらい。百里浜基地の対潜番長。潜水艦が出そうな場所には、対潜装備を持って随
伴することが多い。やや皮肉屋。
装備 三式水中探信儀/三式水中探信儀/三式爆雷投射機

戦艦レ級
縦横無尽に多数の大火力攻撃をばらまく、規格外深海棲艦。本来なら危険度5の海域の深
部にしか現れない。
大きな木箱の影で寝ていたらしく、偶然瑞鶴たちと接触し戦闘に入る。瞳は鮮やかな青であ
り、確認されていないフラグシップ改ではないかと瑞鶴たちは予想する。
身体と尻尾は個別の人格を持っている。尻尾の方がしっかり者らしい。

Tノ字提督
百里浜基地の北にある目立基地の提督。頭が黄色いTの字になっている。原理や構造は不
明。難しく考えてはいけない。以前はアイドルのプロデューサーをやっていたが、色々あって
現在は国防海軍の提督を務めている。
変態だのセクハラ野郎だの、かなり酷い噂が立っている。なお、大体事実。
216進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:35:50 ID:2sRLRwhHt
第15話 変態という名の紳士です!

 海面を突き進む、黄色いTの字頭の提督。
 水しぶきを上げながら、両手両足を動かす全力疾走。生身の人間が水面走れるわけない
じゃない! とか今さら言っても意味はないと思うわ。
 現実に走ってるんだし。

「――!」

 標的となったレ級は、半歩退いた。言葉は分からないけど、Tノ字提督の雰囲気と自分に
向けられる気迫に、身の危険ははっきりと認識したみたい。
 私たちの事は意識の外に放り出し、完全にTノ字提督に向き直る。
 レ級が勢いよく右腕を前に突き出す。

「―――。――!」

 パッ!

 と同時に尻尾の飛行甲板から撃ち出される艦載機。形は猫型のアレじゃないけど、普通
の艦載機とも違う。おそらく深海の新型艦載機ね――。
 それに、あの寝ぼけた状態からもう戦闘準備が完了してる。私たちも大急ぎで七割くらい
だっていうのに、やっぱり普通のレ級じゃないわ……。
 数十の艦爆がTノ字提督目がけて飛んでいった。

 ボッ、ドォン!

「ひゃっほぉい! はっはー!」

 飛来する爆弾を、バレエのような動きで回避していく。手足をまっすぐに伸ばし、無駄に華
麗に跳躍していた。艦載機の攻撃って砲撃よりも一見避けやすそうに見えるけど、実際避け
るのは大変なのに――。

 ドゴーン!

「らんらん、るー!」

 くるくると踊りながら、恐ろしく軽いノリでいともたやすく回避している。

 ドバァーン!

 水面下で起こる爆発。特殊潜水艇による雷撃! やっぱりこっちも装備していたみたい。
しかもいつ動かしたか全く分からない――! 厄介ね。
 しかし、Tノ字提督は海面を蹴って空中に飛び上がっていた。

「ふんっ。当たらなければ――」

 上下逆さまのまま腕組みをし、勝ち誇った顔を見せる。目とか口とかは無いんだけど、どう
やって喋ったりしてるのかは……考えちゃいけないんだと思う。
217進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:36:25 ID:2sRLRwhHt
 空中で一回転してから海面に下り、変わらぬ速度で走り出した。

 ドォーンッ!

 真後ろから飛んできた爆撃を、見もせずに回避!
 左手で顔の半分を隠し、右手人差し指をレ級へと向ける。

「どうということも、なァ――」

 ドッ!

 ゴガァアンッ!

 爆音とともにTノ字提督が水しぶきの中に消える。文句なしのクリティカルヒット。尻尾に搭
載された主砲と副砲の砲撃が完全に直撃していた。

 ………。

 尻尾の砲身からたなびく硝煙。

 これは、やった?

「………。――……!」

 腕を振り上げ、レ級が騒いでいる。何言ってるかは分からないけど、勝利の雄叫びよね。
実際、それに相応しい事をやっている。爆撃と雷撃で相手を誘導して、そこに砲撃を叩き込
む。単純な事だけど、容易に実行できる事じゃない。

 ごくり、と。

 長門が息と飲む音が聞こえた。実力があるからこそ相手の凄まじさが分かってしまう。こ
のレ級、練度が異常よ。普通じゃないわ。さっきは六対一で勝てると思っていたけど、今は
もう勝つ自信はない。私たち六人で挑んでも、よくて引き分けかしら。

「フーハッハハハー! さすが着弾観測射撃! 効くねぇ! 痺れるねぇ!」

 はい。知ってました。

 私はため息とともに、肩を落とす。
 水しぶきを切り裂き、再び突っ込んでくるTノ字提督。両手両足を水面についた、トカゲの
ような体勢で。何コレ! キモい! 凄くキモい! 主に全身がキモい!

「――――!」

 一瞬固まってから。
 くるりとレ級が身体の前後を入れ替える。
218進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:37:00 ID:2sRLRwhHt
 私たちと対峙した時の余裕たっぷりの笑みは消えて、その顔は恐怖に引きつっていた。顔
を強張らせ、冷や汗を流し、目元には少し涙も滲んでいる。うん、確かに怖いよね。気持ち
はよく分かるわ……。だってキモいもん。

 ダッ!

 全速力で逃げ出すレ級。

「みんな、下がって! 巻き込まれるわよ!」

 私の声に、みんながその場から待避する。

「はっはっはー。レ級ちゃん、お待ちになってー♪」

 四つ足体勢で海面を突っ走り、レ級を追いかけていくTノ字提督。軽やかな口調とは対照
的に、クリーチャーじみた動きで、しかもやたら速い。

 グァァァオオォォォッ!

 Tノ字提督に背を向け走るレ級だが、尻尾は威嚇の咆哮とともに砲を向ける。

 ドォーン!
 ドゴォァン!
 ズゥゥンッ!

「るんだばだー!」

 主砲と副砲が火を噴くが、Tノ字提督はことごとく躱していた。逃げながらの砲撃で狙いが
不十分というのもあるけど……。それでもそれなりに正確な砲撃を、砲身の向きとタイミング
から見切って躱している。

「ハッ、くしゅん……。うーん、爆風は鼻に来るネー……」

 鼻を押さえてぼやいている金剛。
 他人の起こした爆風を受けるとくしゃみが出る。そういう体質らしい。撃ち合い上等の戦艦
としては難儀な体質だけど、戦闘中は我慢しているから平気みたい。
 でも、くしゃみしてるって事は、今の状況は戦闘中じゃないって認識かしら。
 否定する要素が無いけれど!

「どうしようかしら、アレ――」

 ひとまず冷静に、私は人差し指をレ級とTノ字提督に向ける。
 レ級は迫り来る変質者から逃げるのに必死だった。顔を恐怖に引きつらせ、涙目で背後
を見る。何とか振り切ろうと走る向きを変えたりしているけど、意味はないみたい。
 そしてレ級を追いかける変質者……もといTノ字提督。でも変質者でいいかも。

「イエッス、ロリータッ! ゴー、タッチ! ただし二次元に限るッ! てなわけで、思う存分ぺ
ろぺろなでなでもみもみさせてもらうぞおおお! レェ級ゥちゃァんッ!」
219進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:37:31 ID:2sRLRwhHt
「……――! ―――!」

 ボンッ!

 艦爆の爆撃。しかし当たらない。

 ドーン!

 特殊潜行艇の雷撃。やっぱり当たらない。

 ズガァン!

 主砲の砲撃が命中した。顔面にクリティカルヒット。さっきと同じ爆撃と魚雷で相手を誘導し
て、主砲を当てる。一回目の誘導砲撃に比べるとかなり雑だったけど、上手く行ったみたいね。

「ふぉおおおお! ありがとうございます! ありがとうございますっ!」

 全然効いてないけど!
 制服はちょっと焦げているみたい。だから何と言われても私は困るけど。

「――、――!」
「―――……。……」
「……――! ――!」

 レ級と尻尾が何か言い合ってる。ケンカしてるのか、必死に次の策を考えてるのかは分か
らない。身体の方は泣きながらTノ字提督を何度も指差し、尻尾の方も表情は分からないけ
どかなり焦っているのが見て取れる。
 私は肩を落としたまま人差し指を持ち上げた。

「ねぇ、今のうちに攻撃していいかしら? もう戦闘態勢も整ってるし」
「どっちをだ?」

 長門が真面目な口調で訊き返してくる。

「それは……難問ね」

 眉根を寄せ、私は本気で悩んだ。深海棲艦を攻撃するのが普通なんだけど……。普通じ
ゃない状況の場合はどうしたらいいのかしら? 哲学的な疑問ね。

「この際両方とも沈めてしまって構わないのではないか?」

 利根が引きつった口調で指摘する。

「このままじゃと、レ級捕まるぞ?」

 火事場のバカ力で逃げてるレ級だけど、それでもTノ字提督の方が速い。あのトカゲみた
いな四つ足で、どうしてあんな速度が出るかは謎なんだけど、もうそのあたりは気にしちゃい
けないわね。
220進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:38:29 ID:2sRLRwhHt
 距離はおよそ二十メートル。尻尾が必死に砲撃してるけど、完全に弾道を見切られている。
時々当たってるけど、効いてない。
 ほどなく追いつかれるのは確実ね。

「かわいそうだけど、これ戦争なのよね……」

 眉間を押さえ、五十鈴が首を振っていた。
 レ級捕まえたらどうする気かしら? 自分でも言ってる通り、なでなでもみもみぺろぺろす
るつもりでしょうけど。そうなったら、さすがに止めないとマズいわよね。
 どうやって止めようかしら?

「おい、何か向こうから来るぞ!」

 長門の声に、視線を転じる。

「あれは――」

 やっぱり来た!
 深緑の制服を纏った男が、これまた海面を突っ走っている。巨大な岩のような、もしくは巨
木のような、異様なまでに鍛え上げられた巨躯。しかし、顔は気の抜けた猫のような白い仮
面で隠している。身体と顔のギャップがとってもシュール。

「憲兵さん……」

 私は呆れ顔で、その単語を口にした。
 それは艦娘の平穏を守る、謎の軍人集団――。一応国防陸軍所属のはずなんだけど、
色々と謎の部分が多い。陸海空と縦横無尽に、しかもかなーりマイペースに好き勝手に行
動してるって話だし。

 シタタタタタッ!

 憲兵さんは無言で海上を進む。疾風のように。
 丸太のような腕を組み、まるで下半身が消えたかのような速度で足を動かし、上半身を微
動だにせず海面を疾駆する。不思議で、奇妙なまでに説得力のある走法。Tノ字提督よりも
遙かに速い。
 もう生身の人間が普通に海上を移動できる事に疑問を持っちゃいけない。

「――……!」

 マジ泣きしながらレ級が振り返る。
 Tノ字提督はもう背後まで迫っていた。

「レ級ちゅああん! 捕まァ――」

 完全に距離を詰め、レ級に飛びかかる――
 直前に、横を向く。

「くわっ!」
221進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:39:02 ID:2sRLRwhHt
 擦れた声が漏れた。

「ふんっ」

 真横まで迫っていた憲兵さんが腕組みを解く。そのまま流れるような動きで右腕を振りか
ぶった。固く握り込まれたハンマーのような拳。みしみしと筋肉が軋むような音を立てている。
それらは全て一瞬。

「壁・パンチ」

 ドッ、バァァァンッ――!

 轟音とともに天を衝く白い水柱。憲兵さんの振り下ろした拳が、海面を撃った。大口径の
砲弾が着弾したかのような爆音と衝撃。吹き抜ける爆風と、飛び散る水しぶき。人間って凄
いわねぇ……。
 でも、Tノ字提督は間一髪のところで逃げ出していた。

「くそっ! 貴様は、壁殴り! こんな所まで追って来やがったか――」
「うん。Tノ字さん、憲兵隊のものですが、ちょっと詰め所までご同行願います。深海棲艦とは
いえ少女に不埒な行為を行おうとした事は見過ごせません」

 Tノ字提督と併走しながら、憲兵手帳を見せている憲兵さん。厳つい身体とは対照的に、
大人しそうな声である。

「うおおおおお! 三十六計逃げるにしかァず! ――トランザァム!」

 ドンッ!

 Tノ字提督が加速する。
 全身に赤いオーラを纏いながら、今までの三倍以上の速度で水平線の彼方へと突っ走る。
レ級を追いかけていた時とは比べものにならない速度だった。
 あっという間に二人の距離が開く。
 が。

「ふぅ」

 憲兵さんは帽子を軽く動かし、吐息ひとつ吐いて。

 ドゴォン!

 加速する。

「…………」
「………」

 私たちは呆然とそれを見送る。
 二人が遙か水平線の向こうに消え――
222進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:39:47 ID:2sRLRwhHt
 ――!

「ッ!」

 呼吸が止まった。
 周囲から音が消える。
 空間が軋んだ。
 水平線の向こうで、巨大な水柱が上がる。白い塔が、推定数百メートルの高さまで衝き上
がっていた。もしかしたら一千メートル超えてるかもしれない。正確な大きさが分からないほ
どの規模。圧倒的な衝撃が海中に突き刺さり、その反動として莫大な海水を空中と跳ね上
げる。その規模はもはやちょっとした戦略兵器並。
 恐ろしくもあり、美しくもある、非現実的な光景。

 でも、これって憲兵さんがTノ字提督ぶん殴っただけなのよね……。
 人間って一体――。

 ドォォォォ……ン……!

 遅れて吹き抜ける爆風、そして引き起こされる高波。跳び取る水しぶき。激しく上下する海
面の上で、私たちは慌ててバランスを取る。空は晴れてるけど、まるで台風の海。人の身体
を持ってるから重心変えて転倒防げるけど、普通の小型船だったら風と波に呑まれて転覆
してるかも……。ここが進入禁止海域でよかった……。

「全く、ムチャしすぎでショウ! 少しは慎みってものを覚えなサーイ!」

 右手を振り上げ、金剛が抗議するように叫んでいた。
 ほどなくして。

 タタタタタタ――。

 Tノ字提督を肩に担いだ憲兵さんが走ってくる。Tノ字提督は捕まっちゃったみたいね。ぴく
りとも動いてないけど、死んではいないでしょう。死ぬとも思えないし。
 私たちに向かって敬礼をしなながら、落ち着いた声で言ってきた。

「どうもお騒がせしました」
「いえいえ……」

 愛想笑いをしながら私は返事をする。
 憲兵さんはそのまま反対側の水平線へと消えていく。
 小さくなりそうでならない大きな背中を見送ってから、

「! レ級!」

 その存在を思い出し、私は慌てて周囲に視線を走らせた。
 案外あっさりと、レ級は見つかった。
223進め、百里浜艦娘隊! 15話 :2014/11/14(金)20:40:23 ID:2sRLRwhHt
 三百メートルくらい離れた場所に立っている。両手で口を引っ張り、舌を出し、何度か飛び
跳ねていた。一方尻尾ははっきりとため息をついている。

「―――! ……――! ―――!」

 何を言っているかは分からないけど、多分安っぽい罵声ね。バーカとかアホーとか、そうい
うの。ついでに震えながら涙目で罵倒されても説得力がないんだけど。
 ……私たちが何もしてないという意見は置いておいて。

「―――!」

 私たちに向かって親指を真下に向けてから。

 ボチャン。

 と海面下に消えた。


 およそ二十分警戒態勢を取ってみたけど、レ級は深海に逃げ込んだらしく、再び現れるこ
とはなかった。でもこのレ級フラグシップ改カッコカリについては、きちっと提督に報告してお
いた。



憲兵さん
国防陸軍所属の軍事警察組織。犯罪を犯した軍人を取り締まるのが主任務だが、艦娘に
不埒なことをする提督の元に現れることが多い。所属は陸軍だが、陸に海に空に、縦横無
尽かつとことんマイペースに活動する謎多き組織。

Tノ字提督を追いかけてきた憲兵は、岩のような巨木のような巨大な体躯を持ち、一方で気
の抜けた猫の仮面を被っている。Tノ字提督には「壁殴り」と呼ばれる。極限まで鍛え抜かれ
た超筋肉から撃ち出される拳は、ちょっとした戦略兵器レベル。
224名無しさん@おーぷん :2014/11/14(金)20:40:54 ID:2sRLRwhHt
以上です。
続きはそのうち
225名無しさん@おーぷん :2014/11/14(金)22:33:04 ID:XGzI2LRr3
おつですー
もう提督と憲兵で十分なんじゃないかな……と思いました、まる
226名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)00:13:21 ID:3pmUMVJ3w
艦これ専用の小説サイト作ろうぜ
ガッツリ目のやつがたくさん読めるサイトを
227名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)12:30:27 ID:eGR8H8EkU
>>226
頼んだ!

シリアス系の昔一本書いたけど日常系のほうが書いてて楽しいなやっぱ
228名無しさん@おーぷん :2014/11/16(日)17:14:34 ID:wCBWKHAp3
前にあったんだけど更新止まっちゃってる
229名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)12:09:13 ID:GmO3E5QhV
まとめサイトで本スレの利根の体操着ネタを見てしまったので思わず投下
230名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)12:12:33 ID:GmO3E5QhV
- PVの真実 なぜに利根は体操着で走ることに至ったか? -

筑摩「あら、姉さま、ジャージ姿になどなって、どちらへ?」
利根「うむ。駆逐艦たちの指導へな。
   やはり、よき指導者たるもの率先垂範こそが務めであろう。我輩も彼女らと共に走ってやらねば。」
筑摩「あ、姉さま。ならばこちらへお着替えを」
利根「なんじゃ?適当にジャージでよいであろう」
筑摩「いえ、まずは形から入られることも大事かと。
   あの娘達と同じ姿で走れば、なおさら心通じるものもありましょう」
利根「おお、さすがは筑摩、よく気がついたの。我輩も鼻が高いぞ」(にぱっ)
筑摩「はい、姉様」(にっこり)


こうして利根は駆逐艦娘と同じ体操着で走ることになったのであった。
231名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)18:49:34 ID:h6wd9wRZF
利根は幼い衣装が似合うよな
232名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)22:28:07 ID:6rk11IHu4
ティンと来たので投下します
233由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:28:54 ID:6rk11IHu4
由良「今日はいい天気」

由良「こんな日はお外でお日様に当たりながら、読書するのもいいよね」

由良「でも、残念。今日は鎮守府近海の哨戒任務があるの」

由良「由良、瑞鳳、日向、夕立ちゃんの四人でね」

由良「最近は敵潜水艦の活動が活発になってきているから、念入りにやらないとね」

由良「ん。時間だから行くね」

由良「さあ、由良のいいとこ、見せちゃおうかな?」

由良「ね、提督さん?」
234由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:29:19 ID:6rk11IHu4
由良「今日のMVPは夕立ちゃん」

由良「由良も頑張ったんだけど、やっぱり最初の魚雷を避けられなかったのが失敗だったかな」

由良「そうそう、今日の瑞鳳と日向さんも凄かったんだよ」

由良「日向さんのカ号が潜水艦を発見したと思ったら、瑞雲が一斉に襲いかかってね」

由良「そして次に瑞鳳の対潜部隊が襲いかかって敵を沈めちゃうんだ」

由良「でももっと凄かったのは夕立ちゃん」

由良「改二になってから急に敵が何処にいるのか手に取るように分かるんだって」

由良「適当に爆雷投げ込んだと思ったら、そこに敵の潜水艦がいたの」

由良「由良も頑張ったんだけど、残念だけどいいとこ見せられなかったなぁ」

由良「ん。それじゃ、入渠してくるね」

由良「整備や修理も大切よね」

由良「ね、提督さん?」
235由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:29:50 ID:6rk11IHu4
由良「提督さん、ご連絡ですよ」

由良「新しい艦ができたんですって」

由良「なんとびっくり、大和と武蔵」

由良「これで鎮守府の戦力も大幅に強化されたね」

由良「由良もそろそろ強くならないとね、ねっ」

由良「強化してくれるの、ホント?やったー」

由良「やっぱり単装砲じゃ頼りないかな」

由良「そうそう、火力を強化してね。ねっ!」

由良「ね、提督さん?」
236由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:30:15 ID:6rk11IHu4
由良「…提督さん、私の単装砲そんなに好き?」

由良「…個人的には外したいんだけどな」

由良「古くなって使えなくなったの、欲しい?」

由良「え、そ、そこまで言われると困るんだけど」

由良「うぅ…わかった」

由良「はい。何に使うか知らないけど、どうぞ」

由良「へっ?いい匂いがする?」

由良「もう…バカ」
237由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:30:36 ID:6rk11IHu4
由良「今日はちょっとした遠征」

由良「村雨ちゃん、夕立ちゃん、春雨ちゃん、五月雨ちゃんと一緒に海上護衛任務」

由良「鎮守府にちゃんと物資が届くように頑張るから」

由良「五月雨ちゃんだけが『白露型なのに制服が違う』ってゴネそうだけど」

由良「白露型はみんな良い子で仲が良いから大丈夫かな」

由良「さあ、由良のいいとこ、見せちゃおうかな?」

由良「ね、提督さん」
238由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:30:57 ID:6rk11IHu4
由良「大事な話ってなに、提督さん」

由良「渡したいものがあるの?」

由良「これって、水偵?」

由良「軽巡では初めて、だよね」

由良「提督さん、由良の水偵…どうかな? 軽巡では一応初めて、なんだけど…」

由良「おかしくない?」

由良「よかったぁ」

由良「もう一つ渡したいのがあるの?」

由良「…指輪?」

由良「これを由良に?うそ…」
239由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:31:24 ID:6rk11IHu4
由良「えへへっ」

由良「でもこれ、どうしたの?」

由良「え、軍刀を潰してつくったの?明石さんが?」

由良「もう…どうなっても知らないんだから」

由良「提督さん、その指にはめてるのって」

由良「前に渡した装備を潰してつくったの?明石さんが?」

由良「もう…本当にどうなっても知らないんだから」

由良「ちょっと照れくさいけど、これをはめてる時は提督さんが傍にいてくれる気がする」

由良「提督さんも、それをはめてる時は由良が傍にいるって思っておいてね」

由良「ね、提督さん」
240由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:31:56 ID:6rk11IHu4
由良「…おかしいな」

由良「どうして私、空を見上げているんだろう」

由良「ああ、そっか」

由良「敵の航空機の爆弾が直撃したんだった」

由良「身体も動かないし」

由良「気のせいかな、視界が欠けて見える」

由良「夕立ちゃん、危ないよ。いつ誘爆するか分からないから」

由良「無理だよ、もう艤装も、身体も動かないんだよ」

由良「何で泣いてるの夕立ちゃん」

由良「由良より強いんだから、泣いたらダメ」
241由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:32:23 ID:6rk11IHu4
由良「今まで海面ばっかり見てきたけど」

由良「空ってこーんなに、大きかったんだね」

由良「なんてちっぽけな存在なんだろうね」

由良「夕立ちゃん、もういいの」

由良「由良はもう動けない」

由良「だから、お願い」

由良「由良を沈めて…」
242由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:32:42 ID:6rk11IHu4
由良「…妖精さん?」

由良「どうしたの、ラッパなんか取り出して」

由良「あぁ、君が代だね」

由良「私、音痴だから、上手く歌えなかったな」

由良「ありがとう、妖精さん」
243由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:33:07 ID:6rk11IHu4
由良「村雨ちゃん、夕立ちゃん、春雨ちゃん、五月雨ちゃん」

由良「ありがとうね。一緒に戦えて、嬉しかった」

由良「秋月」

由良「第四水雷戦隊の指揮権を貴方に預けます」

由良「この子たちを、鎮守府に帰すこと」

由良「これが私の、軽巡洋艦由良の、最後の命令」

由良「お願いね」
244由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:33:42 ID:6rk11IHu4
由良「夕立ちゃん」

由良「提督さんと、皆によろしくね」

由良「それと、これだけ提督さんに伝えてね」

由良「由良はずっと貴方とともにある。貴方が私を忘れない限り、永遠に貴方の心に由良は在り続ける」

由良「…恥ずかしいね、これ」

由良「ほら泣かないの夕立ちゃん」

由良「そうそう。ちゃんと砲弾を装填して、狙いを定めて」

由良「てー」
245由良「提督さん?」 :2014/11/17(月)22:34:38 ID:6rk11IHu4
由良「……」

由良「提督さん、どうしたの」

由良「由良が沈む夢を見た?」

由良「大丈夫。由良はどこにもいかないから」

由良「それにね、もう沈まなくなったんだよ」

由良「だって由良はすでに提督さんに撃沈されちゃってるんだから」

由良「ね、提督さん」
246名無しさん@おーぷん :2014/11/17(月)22:37:03 ID:6rk11IHu4
以上
由良さん嫁提督の由良さん嫁提督による由良さん嫁提督のための妄想でした
短くてゴメンね
そして由良さんの時報&放置ボイスかもぉおおおおおおおおん!
247名無しさん@おーぷん :2014/11/18(火)22:13:16 ID:RgXx8XkPm
なんだろう
奇妙な怖さがある
248名無しさん@おーぷん :2014/11/21(金)17:46:09 ID:cZCcVb3HV
後半で由良さん沈んだかと思った……は、ハッピーエンドなんだよね……ね?
249名無しさん@おーぷん :2014/11/24(月)04:22:02 ID:iOp
どのくらいのエロなら投稿しても大丈夫なんだろうか……?
エロありのイチャラブ系を書いているんですが、直接がっつり描写しなければオッケーなのかな…。
250名無しさん@おーぷん :2014/11/24(月)04:42:04 ID:iOp
連投申し訳ない。
自分で書いた、ケッコン狂想曲(>>14>>22)をpixivの方に転載しました。
ほとんどいじくってません。
改行減らしたくらいです。
ttp://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4590474
251名無しさん@おーぷん :2014/11/29(土)13:15:44 ID:660
一つ初めてのSSってことで考えてるのがあるんだけど、ここに投下でOKなんかな?
252名無しさん@おーぷん :2014/11/29(土)16:06:05 ID:OkY
>>251
おーぷん内ならここでおk
おーぷん以外はあんまり詳しくないけど渋とかSS速報とか探すといろいろある
253名無しさん@おーぷん :2014/11/29(土)19:11:58 ID:pn9
>>251
ここに乗せながら良い場所探すってのもありだぜ
254名無しさん@おーぷん :2014/12/01(月)21:32:24 ID:X94
燃料投下、昔書いて渋に載せた奴でも
自分で読んでて分かるシリアス下手くそ
255疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:36:17 ID:X94
 うちの鎮守府には変なコンビがいる。

「ほらほら、早く行くよ急いで!」
「うへぇー、まじめんどい。ちょっと引きづらないでよ~」

 対面の通路を歩くそのコンビを眺めながら俺は執務室へ足を運ぶ。

「おはよう、司令官!あれ?どうかしたの?」

 自分でも不思議そうな顔をしていたのか分からないが現秘書官の皐月にそんなことを聞かれる。

「おはよう皐月、いやちょっとな……」

 先ほどの二人、確か現在どの艦隊にも所属していないはずだが何かあったのかな?いやでも艦娘の士気に関わってくるといけないさてどうしたものか。

「ちょっと司令官!」
「あ、悪い悪い」

 皐月が少しむくれた顔で抗議してくる。金剛にでも教わったのだろうか皐月の淹れてくれた紅茶に舌鼓を打つ。

「何かあったのなら言ってよね。僕だって力になりたいんだから」

 書類を整理しながらそんなことを言ってくる。睦月型駆逐艦であるところの皐月にはなにか心あたりがあるのかもしれない。
そう思い今朝の情景を語って聞かせると、

「あー、あの二人ね……」

 皐月が珍しく少し困った顔をしながら苦笑する。

「なんだ?何か問題でもあったのか?」

「いや問題ってわけでもないんだけど、最近出撃も少ない望月のだらけ方が半端じゃなくて、たまたま睦月型部屋に遊びに来た島風がそれを見て『そんな早さじゃ何も出来ないわよ!』って何か怒り始めて最近毎朝望月を連れ回してるってわけ。
まぁ僕達としても望月のだらけ癖が少しでもいいかなぁって思ってるんだけどね」

 なるほど……確かに問題ではないが、ここ最近皐月、響を除く駆逐艦達には主に待機か哨戒任務しか行わせていない。理由は敵の戦力が余りにも強大すぎるからだ。そんな中であの島風のフラストレーションが俺ではなく望月に向かったのは幸運だったのかもしれないが……
これは少し考えたほうが良さそうだな……
256疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:37:04 ID:X94
「皐月、今時点で第一艦隊から四番艦隊までは何をしている?」
「えーっとちょっとまってね」

 皐月が書類の山から一枚の紙を取り出す。

「第一艦隊、えーっとボク旗艦の艦隊だけど今現在山城さんが入居中で後4時間はかかるよ」
「山城さん……どうしてあぁも被弾するんだろう……」

「さ……さぁ……この前帰ってきたらトドメに最上さんに足踏まれてたよ……」
「どんだけ不幸なんだよあいつは……」

 二人で同時にため息を付く。

「えーっと気を取り直して二番艦隊は響……じゃなかったヴェーヌルイを旗艦に現在北方で作戦展開中帰還予定は6時間後かな。
次いで第三艦隊時雨を旗艦に今演習中こっちは後三時間ぐらいかな、後第四艦隊は……一応旗艦は赤城さんだけどついさっき遠征から帰ってきたところだね、以上だよ司令官」
「ありがとな皐月」

 とりあえず、そこまで読み上げてくれた皐月の頭をなでてやる。

「ヒャッくすぐったいよ、司令官」

 顔を赤らめつつもこちらに身を寄せてくる皐月、やっぱかわいい。そんな皐月が上目遣いで俺を見上げる。

「で、どうするの件の二人は?」
「うーん、練度的には二人共問題なかったよな?」
「うん、流石に戦艦、空母相手は無茶だけど敵駆逐艦、軽巡洋艦にならよっぽどのことじゃない限り遅れは取らないと思うよ」
「ならこうだ」

 俺は片手で書類を一枚書き上げる。

「えーっと何々……四番艦隊を一時編成解除及び休暇、代わって四番艦隊旗艦に島風、随伴艦に望月を編成し鎮守府近海の哨戒任務を与える……か。まぁいいんじゃないの?望月もなんだかんだでストレス溜まってそうだし」
「じゃあそういうわけで発令頼んだ、俺はデスクワークに精を出すとするよ」
「りょーかい」

 そう言うと皐月は俺のサインが入った命令書を持って執務室から出て行った。
257疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:38:14 ID:X94
「お、いたいた島風ー、望月ー……って何やってんの」
「見て分からない?」

 鎮守府内を駆けまわってようやく見つけた二人は何かをしている。ボクには理解できない何かをしている。

「分からないから聞いてるんだよ……望月に至ってはなんかヘバッてるし……」
「反復横とびよ!早さをあげるにはこれが一番なの!望月はさっき300回目辺りでダメになったから今連装砲ちゃんにマッサージさせてるの」

 よく見ると芝生の上でぐったりしている望月の上に島風の連装砲達が見える。まぁ、あのグータラな望月にここまでしてくれるのは姉妹艦として多少はありがたいけど…

「で、どうしたの皐月?何か用があったんじゃないの?」

 島風が反復横跳びを続けながら僕に聞いてくる。そうだ、完全に忘れるところだった。

「あぁ、そうそうこれ司令官から二人に指令書。ほら望月も」
「うー、何ー?」
「あれ?珍しいわね」

 僕から指令書を受け取った島風と、動こうとしない望月に無理やり命令書を渡すと各々目を通し始める。

「これは……私たちの時代が来たわね、行くわよ望月!」
「えー面倒くさいー」
「頑張ってねー」

 島風とその島風にに引きずられて遠くの方に去っていく望月の二人の背中に声をかける。これで望月が少しでも働く気が起きてくれればいいんだけどなぁ。

「さて、ボクは仕事に戻らなきゃ」

 二人のことは置いて置くとしてボクは秘書監としての仕事を思い出すと多少憂鬱な気分になりながらも司令官がいる執務室へと歩を進めた。
258疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:43:52 ID:X94
「哨戒任務なんだからさーもっとサボろーよー」

「何言ってるの!どこに敵がいるか分からないのよ」

「久々の出撃だからってはりきりすぎたっつーの 」

相変わらず望月にはやる気が無い。私にはそれがイライラしてくる。今日だけじゃない、いつだってそうだ。皐月を始めとして他の睦月型の娘達はなんやかんやでちゃんとしているのになんで望月だけこうなんだろう?
その疑問が私の中で生まれた瞬間にはもう望月を連れ回していた。速きこと島風の如し、それが私のモットーであり生き様だ。望月はそんな私と対局にいる。

「いいから!気を抜いちゃダメなんだからね!」
「へいへーい、って……ソナーに反応?三時の方向」

 望月の顔つきが変わる。私とは違い鎮守府でも貴重品の一つであるソナーを装備している。私にも話はあったが少しでも早さを追求するために装備は最低限のものしか積んでいない。

「何ぼーっとしてんのさ、島風。旗艦は島風なんだから指示を!速く!」

 いつもと違う望月の様子に戸惑いながらも私は頭を整理する。そうだ、私は今この艦隊の旗艦なんだ。状況を把握して切り抜けないといけない。

「6時方向に撤退、望月は出来る限り情報を渡しに頂戴!可能であれば二人で迎え撃つわよ!」
「りょーかい」

 鎮守府近海、ここを通せば司令官達がいる鎮守府に被害が及ぶ可能性がある。なんとしてもここで食い止めないといけない。

「って島風、ヤバイって。反応からの予測だけど戦艦級が1、重巡級が2、軽巡級が1向かってる」
「ここで、迎え撃つわよ……」
「ちょっ、何いってんの?無理無理無理無理」

 敵編成に望月は慌てふためき私を静止しようとするがそれでは相手の思うつぼだ。私達は私達が、皆が帰ってくる所を守らなきゃいけない。

「望月、鎮守府に応援要請と近海に味方がいる可能性もあるからそちらにも応援要請を」
「……何で?何で戦おうとするのさ?鎮守府には皐月達の第一艦隊もいるし私達が引いたって問題ないって」
「敵の狙いがそれだったらどうするの?」
「え?」

 涙目の望月が狼狽える。私だって分かってる無謀すぎるってことぐらいでも、

「ここで、食い止めておけばきっと援軍が来てくれる……だから」

 やらなきゃいけない、それも分かっている。
259疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:44:58 ID:X94
「あーもう!分かったよ!鎮守府と近海には救難信号送ったし、接敵まで後30秒、やればいいんでしょやれば」
「それでいいよ、戦艦級は相手にせずになるべく小回り小回りで重巡級、軽巡級を相手にするキーワードは速さよ!」
「りょーかい……」

 観念したのか覚悟を決めたのか望月は戦闘態勢に入る。そうそれでいい。私達駆逐艦は素早さが命。そして夜戦でも無ければ戦艦クラスを相手にすることなんて出来ない。

「行くよ望月!」
「はいはいっと、皐月達が来るまで粘りますかね」

 私達が動き始めると射程の長い戦艦級が砲撃を始めてくる。それを交わし軽巡級の背後に回りこむ。

「行くよ!連装砲ちゃん!」
「射線は……まぁいっかテキトーで」

 私と望月の砲撃が敵軽巡に直撃する。まずは一隻。私達の練度を舐めてもらっては困る。戦艦級は射線合わせのために回頭を初めている。
もう一発が来る前に轟沈とは行かないまでも重巡級に一発をお見舞いしておきたい。私は速力をそのままに体を無理やり重巡級に照準を合わせ、連装砲を向ける-

「私の速さについてこれる?」

 私は敵重巡級機関部に向けて連装砲を撃ち離脱しようとする-

「島風!危ない!」
「え?」

 私の体を望月が突き飛ばす。その直後、望月の背中に敵の砲弾が直撃する。

「ったく……マジで痛いっつーの……島風早く逃げて……」

 望月の体に更に着弾、望月はどうにか回頭して一発の魚雷を放つとその場に崩れ落ちる。なんで気づかなかったんだろう、敵が5隻であることに違和感に。
恐らく望月は途中で気づいていたのだろう潜水艦の存在に。私はそんなことにも気づかずに目の前の敵だけを見て望月の声なんて聞いていなかった。

「モッチー!モッチー!」

 私は望月に駆け寄る。敵戦艦級の回頭、そして重巡級が姿勢を立て直そうとしている。

「モッチー言うな……ったく……人の声ぐらい聞いててよ……ほらさっさと逃げる……」
「そんなこと言わないで!ねぇモッチー!目開けてよ!」
「最後まで……むちゃくちゃだよ……あー面倒くさい……それにもう大丈夫だ……から……」

 望月がそれだけ言うと体から力が抜け落ちていく。嫌だ、こんなのは嫌だ。速くなくてもいいいつもダルそうに、それでも私に付き合ってくれた友達をこんなところで無くしたくない。
私は望月を背中に背負う。そして回頭が終わった戦艦級と目が合う。
260疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:45:55 ID:X94
「あんたになんか負けないんだからね!」

 見栄を切ってはみるもののどうやってこの場を切り抜けるか。状況ははっきりって絶望的。正直お手上げだ。敵の主砲が私に向けられる、私も片手で連装砲を構え動き出す-

「間に合ったぁ!いっけぇ!」

 そんな声と共に戦艦級に魚雷が着弾し体が揺らぐ。この声は…皐月だ。

「皐月……モッチーが!モッチーが!」
「島風、落ち着いて。状況はなんとなく分かったここは僕達第一艦隊それに-」
「一斉射!撃てぇ!」

 後方からの声。この声は…長門さんだ。

「我ら第二艦隊に任せてもらおう。全く遠征から戻って来たと思えばまさかこんな状況になっているとはな……行け島風!」

 望月が出していた救難信号が届いていたらしい。第一艦隊、それに第二艦隊が敵を囲んでいる。

「そういうわけだよ島風、後方に第六駆逐艦隊の四人が待機してる。四人と合流して速く鎮守府へ!」
「う……うん。ありがとう」

 私は未だに目を閉じたままの望月を背負い皐月達第一艦隊の横を通り過ぎる。

「ボクの妹を頼むよ島風」

 皐月はそれだけ言うと敵に向き直る。

「さぁ行くよ皆!ボクの妹と仲間にあんな事しておいてタダで済むと思わないでよ!」
「我らも行くぞ!こんな近郊まで進出してきたことを後悔するんだな!」
261疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:47:58 ID:X94
 激しい爆撃音が聞こえる。敵の増援があっても第一、第二艦隊が揃い踏んだこちらに勝てる要素は万に一つはないだろう。私はなんとか暁達のもとにたどり着く。

「……大丈夫?」

「私は大丈夫……それよりモッチーが……」

 苦しそうに呻き声をあげる望月を背中から下ろし四人が運んできた救護船に乘せる。

「これはひどいのです」
「速く戻らないと」
「うん……」
「ほら、島風もさっさと乗って」

 雷が私にそう促す。

「私は大丈夫だから、速く行こう」
「何言ってるの、あなたもボロボロじゃないの」

 暁が無理やり私を救護船に乗せる。

「……ありがろう、皆」
「何言ってるの?仲間じゃない」
「……急ぐよ」

 私の瞼は自然に閉じた。そこから先の記憶はない。
262疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:48:47 ID:X94
「ったく……だから慣れないことなんてするもんじゃないっつうの」

 自分の体のあちこちがまだ痛む。鎮守府の救護室で目を覚ました私は助かったんだなと思うと同時に、
島風を探し私の横のベッドで寝せられているのを確認すると少し安心する。

「あー……まじめんどくさい……起きろー島風ー」

 とりあえず突っついてみる、勝手に私を連れ回して、挙句の果てに勝手に先行してこっちの話聞かずに被弾しそうになるし……
全く速ければいいってもんじゃないっつーの。

「……ん?モッチー……?」
「モッチー言うな、おはよう島風」
「モッチー!良かった!モッチー!」
「わわわわわわ、くっつくなって!何そのテンション!」

 起きたと思えばすぐコレだ。気づけばモッチー呼ばわりだし全く忙しい奴だ。とりあえず-

「だから痛いっつーの、まだ全快じゃないんだからさー」

 全身が痛い状態で抱きつかれてはたまらない。島風をどうにか私の体から引き剥がす。その顔を見ると何か涙目だ、何でだろう?

「あ、ごめんね」
「てかさ、島風。何で涙目なの?」
「……モッチーが元気だから、それが嬉しくて」

 こんどはなんか顔を赤らめてモジモジし始めた。本当コロコロ表情を変える忙しい奴だ。てか、私が生きてるのは当たり前だっつーの。

「当たり前っしょ。てか、先走らないでちゃんと人の話ぐらい聞いてよね」
「うん……ごめんね……」

 珍しくしょげた顔をする島風。あーもうこういう空気が一番面倒くさい。

「ほらもっといつもみたいに元気だしなよ、私は大丈夫なんだからさ。まぁ、今回のことは次回に活かすってことで」

 私はそれだけ言って自分のベッドに横になる。すると今度は島風が私の方に近寄ってくる。
263疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:51:44 ID:X94
「ねぇモッチー……」

 もうモッチー呼ばわりについては諦めよう。

「何?」
「ありがとうね、その……助けてくれて、それと-」

 なんだろうまだ何かあるのだろうか?正直ちょっと寝たい。

「また、今までどおり私と遊んでくれる。モッチーって呼んでもいい?」

 なんだそんなことかぁ。何を勘違いしてるんだろう、私が今まで本気で嫌がっていたとでも思ってるんだろうか?

「そんなの当たり前っしょ。ったく一々面倒くさいなぁ島風は。あ、でもあんまり速さ!速さ!は勘弁ね。たまには私とごろごろしよ~」
「うん!ありがとう!じゃあ、私は提督の所に報告行ってくるね!」
「へいへーい、頼んだよ。私は寝るから」

 島風が素早く部屋から出て行った。だからあんまり速く速くはいいっていうのに……まぁ、悪い奴じゃないしこれはコレでありかな。

「とりあえず、あちこち痛い……てか、なんで睦月達はもっとこうお見舞いセットとか持ってこないのさ!寝よ……」

 その後治療が完了するまで、睦月達姉妹が来ては、だらけすぎだとかそんなことを言われたがこれは私の性格だからしょうがない。しょうがないよね?島風?
264疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:52:15 ID:X94
---三日後

「しかし、誤算だった…ここまで敵が進行してくるとは……」
「司令官、過ぎたことを言ってもしょうがないって。対策は立ててあるんでしょ?」

 島風からの報告を受けた俺は、その報告をまとめながら呟く。皐月も厳しい表情でそのフォローに入ってくる。

「対策と言っても、今まで長期遠征に出していた艦隊を再編成して警備に当たらせて、近郊の他鎮守府と司令本部に報告をあげるぐらいしか出来ない。
対策というよりは対処に近いな……」

 敵の出方がますます分からなくなった以上このような事後対処しか取る方法がなかった。

「しかし……ごめんな皐月……望月をあんな目に合わせる結果になってしまって……」

 望月の姉に当たる皐月に今回の作戦結果について詫びを入れる。

「うーん……それなんだけどね……本人にもいい刺激になったんじゃないかって睦月達が……」

 ヘヘヘとバツの悪そうにそうやって笑う皐月。

「それにね、司令官。僕達姉妹だけじゃない、この鎮守府にいる艦娘は皆覚悟はしているし、司令官のことを信頼してるんだ。だから――」

 それ以上を皐月に言わせる訳にはいかない。

「俺は皐月……いやこの鎮守府にいるみんなを信頼している。これから先誰も失うつもりはない、だから信頼してくれ」
「もちろんだよ、司令官!」

 皐月の言葉を遮り自分の意志を伝える。これまでもこれからも変わらない決意だ。今回みたいなことがないように俺は努めなければならない。

「本当は……俺も皐月達と前線に出て戦うべきなんだろうけどな……そんな力は無いのが悔しいよ」

 自嘲気味に本心を吐露する。皆が戦っている中のうのうとこの椅子に座っているのはどうも心地が悪い。

「そんなこと言わないで司令官、司令官に何かあったら皆心配しちゃうよ。もちろんボクもね」

 皐月が優しいながらも決意を秘めた眼で俺の目を覗きこむ。

「ありがとうな。皐月、それに皆にもだな……ちょっと散歩してくるよ」

 皐月の頭を少し撫でて俺は部屋を出る。

「書類仕事はいっぱいあるから早く戻ってきてねー」
「了解」
265疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:52:47 ID:X94
 後方からの皐月の声にヒラヒラと手を振り返す。書類仕事……うん望月じゃないけど面倒くさい。
 鎮守府内をブラブラ歩き、今日はどの艦隊も出撃はないので色んな艦娘達に会う。その度に少し会話を交わしてのんびり歩く。

「そろそろ戻らないと皐月にどやされるな……ん?」

 以外に経過していた時間を確認し、中庭を抜け執務室に戻ろうとすると木漏れ日の中ごろごろしている島風と望月の姿があった。望月はともかく島風にしては珍しい。

「島風、望月」
「あ、司令官」
「うぃーっす」

 声をかけるとボーっとしている二人から返事が返ってくる。

「この前はお疲れ様。で、何やってるんだ?望月はともかく島風がボーッとしてるなんて珍しいな」
「ちょっと私はともかくってなんなのさー、まぁいいけど」
「えっとね、モッチーと色々話して一日ずつ速い日と、のんびりする日を決めたの。で、今日はのんびりする日だからこうしてるの。司令官もどう?」

 なるほど、たまにはのんびりするものいいもんだ。

「悪いな、そろそろ戻らないと皐月にどやされる」
「そっか、じゃあ頑張ってね司令官」
「皐月は怒ると怖いからねー、じゃあねー」

 それだけ告げて俺は執務室へと急いだ。中庭からは島風と望月の何の変哲もないのんびりとした会話が聞こえてくる。そうだな……俺はやっぱり皆を俺のやり方で守ろうと思う。
それが司令官の、提督の役割だな。そんなことを思いながら執務室のドアを開けると不機嫌そうな顔の皐月が書類の整理をしていた。全く……書類整理は面倒くさい……。



「で、モッチーこの後どうするー」

「モッチー言うな……まぁいいけど。そうだねぇ島風の部屋でなんかゲームでもやろうか」
「いいわよ-」

 中庭ではまだ二人の声が響いていた。


 うちの鎮守府には妙だけど仲の良いコンビがいる。



艦!
266疾きことめんどくさい :2014/12/01(月)21:53:18 ID:X94
以上です
スレ汚し申し訳ない

望月は隠れダメ司令官製造機だと思うんだ
267名無しさん@おーぷん :2014/12/02(火)22:28:05 ID:0G8



本スレがスレチだったということに気づくの遅し。
というわけでこっちへ。

溶鉱炉であの子が来ない提督向け。
俺のことですがorz

画像で貼るけどその1とその2あります。
268名無しさん@おーぷん :2014/12/02(火)22:28:24 ID:0G8
その2
269名無しさん@おーぷん :2014/12/02(火)22:28:54 ID:0G8



貼り忘れたごめん。
270名無しさん@おーぷん :2014/12/03(水)00:52:23 ID:4WI
あきつ丸SS投下します
271あきつ丸SS :2014/12/03(水)00:56:20 ID:4WI
どこかのあきつ丸嫁提督。
***
「将校殿、あきつ丸であります。よろしくお願いするのであります。」

陸軍式の敬礼をした肌の白い少女は、あきつ丸と名乗った。

「陸とはなにかと都合が違うと思うが、あまり気張らずいてくれ」
「了解したのであります。」

相も変わらず、びしりと敬礼する。
白粉越しにかすかに見える頬の紅潮と、背伸びにも見える敬礼は、あどけない少女が踵を浮かせ、大人であると主張しているようであった。
私は、あきつ丸の前に立つ。

「し、将校、殿……?」
「ここでは提督と呼んでくれたまえよ」
帽子の上から頭を撫でる。
「な、え、そ、そういう訳には、いかないので、あります……。」
「君が呼びたくなった時からでいい」
「りょ、了解、いたしました……。」
帽子のつばを下げ、目元を隠す。

「君にはしばらく秘書艦をやってもらおうか。鎮守府全体を把握するにはそれが丁度いい」
「い、今からでありますか……了解したのであります……。」
居づらいのか、そわそわし始めるあきつ丸。
「ここが秘書艦の机だ。書類整理とか、それなりにやることはあるはずだ」
肩を掴み、半ば無理矢理に彼女を座らせる。
「仕事がなければ鎮守府内なら自由に散策して構わない」
「は、はぁ……。」

その時、軽やかに扉がノックされる。
「提督、赤城です。秘書艦交替……あら、新入りの方ですか?」
「は、はい、自分、特種船丙型あきつ丸であります!」
「ふふ、航空母艦赤城です。秘書艦の後継ぎに来ました。次はあきつ丸さんなんですか?」
「将校殿にその様に言われました。」
「来たばかりなのに、無茶だと思いますよね。でも、殆どの仕事は提督が自分でやってしまいますから、正直暇ですよ。」

「赤城、そんなことないぞ」
「この間の文月ちゃんなんて、暇だからって遊びに行っちゃったまま、戻ってこなかったじゃないですか。それでも業務に支障は出ていませんよ?」
「あ、あれは、書類に落書きをしそうだったからであって……」

赤城は私を無視してあきつ丸に向き直る。
「というわけで、そこまで気張ることはありませんからね?さっさと引き継ぎ終わらせてしまいましょう!私、今日は外で遊んできますから」
「遅くなるなよ」
「分かってます。」
終始ご機嫌な様子で赤城はあきつ丸に話しかけていた。
272あきつ丸SS :2014/12/03(水)00:57:49 ID:4WI

「では、失礼いたしました……あ、提督」
「なんだ、赤城」
赤城はこっそりと耳打ちをした。
「提督、あきつ丸さんと、上手くいくといいですね♪」
じわりと頬が熱くなる。
赤城は身体を離すとひらひらと手を振り退室した。

「……っ、くそっ」
「ど、どうしたでありますか?」
「何でもない。ほれ、業務開始だ」

何となく意識してしまって、その日はあきつ丸の顔を見ることはできなかった。


「おはよう、糞提督」
「おはよう、曙。彼女はあきつ丸だ。よろしくしてやってくれ」
「よろしくであります、曙殿。」
「ふんっ、まぁ、手間かけさせないでよね……」

そんなことを言いつつも握手を交わす曙。

「あたしは朧。この子と同じ綾波型。よろしくね」
「漣です、よろしくねん!曙ちゃんは素直じゃないんだからぁ」
「う、潮、です……よろしくお願いします」
「よろしくであります。自分、頑張るのであります!」

そのあとも沢山の艦娘に揉まれつつ、食堂に着いた。

「あら、いらっしゃい。今日は何になさいます?」
間宮さんがこちらに微笑みかける。
「うーん、そうだな、焼き魚定食ひとつで」
「はぁい、そちらの方は?」
「あ、あきつ丸であります。えっと、その……」

あきつ丸はメニューを見ながら少し困惑していた。

「金曜日だし、カレーにしてみたらどうだ?」
「は、はい、ではカレーライスをお願いするのであります。」
「分かりました。脇に避けて待ってて下さいね」
273あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:02:03 ID:4WI
トレーを受け取り、空いている席に座る。
今日の焼き魚は秋刀魚のようだ。
小鉢には私が好む、ぽん酢のかかった大根おろしが盛られていた。
あきつ丸のカレーは、一口サイズではあるが存在感のある肉と野菜がごろごろ乗っていた。

「いただきます。」

味噌汁に口をつける。
ふわりと味噌の香りが立つ。
わかめと豆腐と油揚げのシンプルな味噌汁。
ほっとする美味しさだ。

「美味しいのであります……!」

あきつ丸は顔をほころばせ、実に美味しそうにカレー食べていた。
そんな顔を見ると、作った人間でないのに嬉しくなってしまう。
輝くような笑顔に思わず見とれてしまう。
「……将校殿、そんなに呆けてどうしたのでありますか?」
「あ、いや、あきつ丸が美味しそうに食べるから、ついな」
「こ、これは、このカレーライスが美味しいから……で、あります。」

せっせとスプーンの中に小さいカレーを作ると、私の方に差し出した。
「将校殿も食べてみるといいであります!」
「いいのか?」
「このあきつ丸に二言はありません。さぁ、どうぞ。」
差し出されたカレーを食べる。
少しスパイシーだけどこくのあるルゥと少し固めに炊いてあるご飯が調和していて実にうまい。
「うん、美味しいな」
「でしょう!こんなに美味しいカレーライスを食べて無表情ではいられないのであります!」
「そうだな……秋刀魚少し食べるか?」

背側の身を少し大きめにとって大根おろしを盛り、あきつ丸に差し出す。

「いいのでありますか?」
「カレーのお返しだ、遠慮なく食べてくれ」
「いただきます、であります。」

ぱくりと一口。

幸せそうな顔で、彼女はもぐもぐと咀嚼する。
「ぽん酢も合うのでありますね……美味しいのであります。」
可愛らしい少女の笑みに胸の奥が熱くなる。
274あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:04:04 ID:4WI

「あ、司令官!ここ座ってもいいかしらん?」
目の前にはトレーを持った陽炎。
「どうぞ、今日は何頼んだんだ?」
「金曜日って言ったらカレーライスよ!」
ふふんと自慢げに語りながら陽炎は座った。

「あら、新入りさん、お名前は?それにしても、あなた大胆ね!」
「えと、あ、あきつ丸であります。大胆とは?」
スプーンをびしりと突き付ける。
「さっき食べさせあいっこしてたじゃない、司令官と!なぁに、一目惚れだったりするの?」
「え、いや、自分、そんな、つもりじゃ……」
「ふふふん、いいのよん、隠さなくってもー」
「か、陽炎!」
「司令官分かってたんじゃないのー?」

陽炎は意地の悪い笑みを向ける。

「こーら、からかうのはその辺にしとき」
「すみません、司令。」
ぺこりと頭を下げるのは不知火と黒潮。
「いや、気にしてないよ」
「ほんま堪忍なー」
一言謝罪を入れた黒潮だったが、こちらが食べ終わるまでこちらを生暖かい目で見ていたのは気のせいではないはずだ。
275あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:04:34 ID:4WI
執務室で書類と睨み合っていると、ことりと湯飲みが置かれた。
「提督殿、少し休憩されては如何かな?お茶請けも用意しているのであります。」
優しく微笑むあきつ丸であった。
改造した彼女の羽織る黒の学ランは、威風堂々とした雰囲気を漂わせていた。

「おぉ、ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて」
大きなどら焼きを差し出される。
「間宮印のどら焼きであります。」
「こういうのも作ってたのか……どれどれ」
しっとりとした皮と、甘さ控えめのつぶ餡が程よくほぐれ、幸せな味が広がる。
「ん、旨いな」
「間宮殿の料理はどれも暖かい味がするであります……。」
着任してから色々な料理を食べてきたが、彼女はいつだって幸せそうな顔をしていた。

「あきつ丸、あんこ付いてるよ」
「え、ど、どこにですか?」
「取ってあげるからこっちおいで」
「は、はい……っ。」
半ば強引に引き寄せ、あきつ丸の唇を奪う。
甘い、味がした。
「ん、うっ……て、提督、どのっ、何をするで、あります、か……っ」
白粉では隠しきれないほど、頬を赤く染めたあきつ丸がか細い声で問う。

「こんなこと、じ、自分でなくて、よその娘に、すれば、いいではないですか……っ。」
「君以外には、しないよ」
「っ、も、申し訳ないっ、自分、す、少しっ、頭を冷やしてくるであります!」
私を強く押し退け、彼女はそのまま執務室を出ていってしまった。

衝動的とはいえ、とんでもないことをしてしまった。
あきつ丸の涙で潤んだ瞳が頭をよぎる。
276あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:05:26 ID:4WI
「た、たいちょー、まるゆです」
「どうした、まるゆ?」
室内用のポンチョを被ったまるゆが執務室を訪れた。
てるてる坊主みたいだ。
「あの、あきつ丸さんの代わりで来ました」
「……あきつ丸がどうかしたのか?」
「顔がまっかで、どうきがするって言ってました」
「医務室に行ったのか?」
「……寝て治すからだいじょうぶだーって言ってました。一日だけ、まるゆに任せるって言ってました。」
「……すまん、まるゆ。少し席を外す。」
「は、はい。隊長、いってらっしゃい、です」


廊下を早足で渡る。
一直線にあきつ丸の部屋へと向かう。
その途中でイクに呼び止められた。
「てーとく、そんなに急いでどこ行くのねー?」
「あきつ丸が急病らしいから様子を見に行く」
「……大丈夫なのね?」
「聞いた話だが、顔が真っ赤で動悸がするそうだ」
「ふぅん……てーとく、知らない間に風邪移しちゃったかもなのねー」
「私のせい、か……」
「つきっきりで看病してあげるといいのね。業務は空いている子探して来てあげるのね」
「ありがとうイク。あとで礼はする」
「ふふ、提督のご褒美期待しちゃうのね♪」
277あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:06:57 ID:4WI
あきつ丸の寮室の扉をノックする。

「……どちら様でありますか…………て、提督殿?!」
「あきつ丸、大丈夫か?」
「あ、ぅ……、じ、自分は、大丈夫であります、からっ、そのっ、提督殿には業務に戻っていただきたいっ!」
「そんなに顔真っ赤で大丈夫な訳ないだろう。私が風邪を移してしまったかもしれない、だから看病させてくれないだろうか?」
「ち、違うのでありますっ!て、提督殿のせいでは…………ありますけど……で、でも、自分は、一人で治……そ、蒼龍殿と飛龍殿?!」

あきつ丸の声に後ろを振り向こうとした瞬間、腰と背中に鈍い衝撃が走る。

「ぐぉっ……う、わっ」
「ひゃ、あぁっ」
咄嗟にあきつ丸を抱きしめ、自分の身体が下になるようにする。
倒れ行く時、なんとも意地の悪い笑みを浮かべた二航戦コンビと那智、足柄が親指を立てていたのが見えた。


「……自分、いま、とても恥ずかしいのであります」
「すっぴんがか?」
「それもありますが、その、こんな汗まみれの寝巻き姿、見られたくなかったのであります。」
紅潮しきった顔に、汗で濡れた髪がへばりついていた。
恥ずかしげに伏せた瞳が、どことなく扇情的な雰囲気を醸し出していた。
「私……いや、俺は好きだよ」
「……あ、ぅ……そんな近くで言わないで欲しいのであります」
「俺の顔が近いことで何か不具合でもあるのかね?」
「き、昨日のことを思い出してしまうから、であります……」
わざと意地悪な質問を投げ掛ける。
「……昨日のこと、とは?」
耳元で囁いたせいか、彼女は吐息から逃げるように身をよじらせた。
「んっ……ふ、くぅ……い、意地の悪い質問は止めていただきたい……っ」
くい、と顎を上げる。
「言わないとずーっとこのままだぞ」
「い、や、では、ないので、ありますが、その……自分、は、恥ずかしくて……」
腰に手を回し身体を引き寄せる。
「……」
あきつ丸の甘い体臭がますます濃く感じられた。
278あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:13:10 ID:4WI
お互いが見つめ合ってしばらく時間が経ったように感じられた時。
あきつ丸が口を開く。
「き、昨日、提督殿から口づけを交わしてきた、こと、を思い出してしまうであります……。」
「……嫌だったか?」
「いえ、そうではなく……その、ん、こんな気持ちは、初めてでありますから、どうしたら良いのか、分からないのであります。」
「君が、したいようにしていいんだよ、あきつ丸」
「自分が、したいようにであります、か。」
「あぁ、俺はあきつ丸とキスがしたい」
あきつ丸は腰のあたりをきゅっと握り締める。
「自分も、て、提督殿と、き、キス、したいのであります……。」
そっと、静かに、唇を押し当てる。
そのまま、二人共しばらく、動けずにいた。
ふるふるとあきつ丸の身体が震える。
ぐぅっと押しのけられる。
「っ、はぁっ、はーっ、すぅっ、はーっ……い、息が……」
「あ、あきつ丸……キスの最中でも息していいんだぞ……」
「提督殿も息を止めてたではないですか!」
「う、お、俺だって、き、緊張してたんだってば!」
「ほほぅ……緊張していたんでありますか?」
あきつ丸が少しだけ余裕のある笑みを浮かべる。
「提督殿にも可愛らしい一面があるのでありますね。」
「あきつ丸にしか見せないよ」
そう言いながら抱き締める。
腕の中で彼女の身体が硬直するのが感じられた。
薄い寝間着の下の豊かな感触に、どきりとする。
279あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:13:55 ID:4WI

「それにしても、汗かいてるぞ、寒くないか?」
「そ、そうであります、ね……このままだと、身体に悪いのであります。」
「着替えるか……ちょっと後ろ向いてるぞ。」
裾を掴まれる。
「少し脱ぎにくいのであります……手伝っていただけると、助かるのであります……。」
あきつ丸は耳まで真っ赤にして俯く。

後ろから抱き締めるようにして、寝間着のボタンを一つづつ外していく。
手元を見ないように、できるだけ身体に触れないようにしていたため、覚束ない動作となってしまった。
「て、提督殿、その……焦らさないで欲しいであります。」
「別に焦らしているわけじゃない……っと、外れた……服、脱がすぞ」
うなじから肩、背骨の曲線、すべすべとした白い肌に思わず生唾を飲み込んでしまう。
いかん、煩悩が湧き上がって仕方ない。
頭を振り、煩悩を振り払うと、上の寝間着を完全に取り払う。
「あ、あの、提督殿、申し訳ないのですが、身体を拭う物が、欲しいであります……。」
「蒸しタオルでいいか?」
「あ、ありがたい……。」
適当にタオルを一枚手に取り、水で濡らして絞った後、使った形跡のない電子レンジで少し熱めに温める。
一分にも満たないほどの時間、レンジの音だけが部屋を支配する。

後ろで衣擦れの音がする。

そのせいか、勝手に色々な想像をしてしまう。
これは生理現象で心と身体は連動してるわけじゃないし問題ないだからなんでもないなんでもないなんでもないんだ
自分でも訳の分からない言い訳を無意味に脳内に繰り広げつつ、蒸しタオルをあきつ丸に渡す、が。
履いていたはずの下の寝間着が床に放り投げられていた。

「……っ」
「あ、の、提督殿、身体を拭って欲しいであります……。」
「は、えっと、つ、付き合っていない男女がそういうことするのはよくないとおもうんだ」
「看病してくれると言ったではないでありますか……お、おなごにここまでさせておいてそれはないのであります……」

ほんの僅かに残っている理性をかき集め、あきつ丸の肩を掴み、話しかける。

「あきつ丸。俺だって、男だ。こ、これ以上は我慢出来ないぞ。傷物にはしたくない。」
「…………自分は、提督殿のことをお慕い申し上げているのであります……ですから、その、貴方の手で、自分を、貴方の物にして頂きたいと思っているのであります……っ」
「本当に、俺でいいのか?」
「提督殿のことを想うと、心の臓が締め付けられるように痛くなるのであります。触れたいと、触れられたいと、渇望するのであります。」
つかえながらも、彼女は続けて語る。
「こ、この気持ちが、恋慕でなく、何でありましょうか。自分だって、知識では、分かっているのであります。経験したことがないだけで……でも、どうすればいいか、分からなくて……っ!」
半ばしがみつくように、瞳から大きな涙をぼろぼろと零しながら、彼女は話す。
「俺が悪かった。ここまでさせて申し訳なかった。あきつ丸、俺も、君のことが好きだ。初めて着任した時から、ずっと」
細腕が俺を抱き締める。
280あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:15:34 ID:4WI
「……あ、あの提督がこんなこと言うなんてねぇ」
「……ぬ、盗み聞きは、その、良くないと思うのだが……」
「ちょっと、飛龍、いいとこなんだからもっと詰めて」
「そんなこと言ったって、これ以上無理だよ……胸が邪魔で詰めらんないって」
那智、足柄、蒼龍、飛龍が扉の前で押し合いをしていた。

端から見れば異常なのだが、幸か不幸か、彼女らを咎めるものはいなかった。

「那智もノリノリだったクセに何言ってんのよ。ここまで来たら徹底的に丸め込まれなさいってーの」
「お、押し込むまでだと思ってたからだ……っ」
「二人とも静かにしてくださいよ、いいトコなんですから」
「向こうに聞こえちゃうって……」

扉に聞き耳を立てる四つの尻にかかる二つの人影。
夢中で四人は気が付いていないが……。

「皆さん、何をしていらっしゃるのかしら?」
「こんなところで無様な格好を晒して。貴女達それでも二航戦?」

密やかではあるもののかしましい四人の会話はぴたりと止んだ。
皆で後ろに振り替えると、笑顔の妙高と無表情の加賀が立っていた。

「えっとー、そのー、ね、うん、あきつ丸ちゃんが心配だったってーいうか、そのー」
「なら、今からお見舞いしましょ?」
「い、いや、それはっ、それは駄目だっ!」
「ノックしたのですか?」
「い、やっ、そー、そー!うん!今は出られないって!」
「ふぅん……飛龍、何か言い分は?」

「……………………」

空気が固まる。
飛龍は何か言葉を出そうと酸欠した金魚のごとく口をぱくぱくと動かしている。

「……時間切れね。」
「はぁ……貴女達、そういう野暮なことはするものじゃありませんよ?大まかな事情は伊19さんから聞いていますから。」

四人の顔から血の気が引く。

「さて、妙高。この子達を曳航しましょうか。」
「はい……全くもう……。」
妙高は那智と足柄を、加賀は蒼龍と飛龍を、それぞれの首根っこを掴み引き摺る。
「ああああああああぁぁぁ…………いいところだったのにいいぃ…………」
最後まで小声だったが、四人の嘆きは鎮守府の空気に溶けていった。
281あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:28:11 ID:4WI
蒸しタオルで身体を拭う。

初めは顔、首筋と下っていくように拭いていく。
腕から腋を拭いたとき、あきつ丸が少し震えた。

「くすぐったいで、あります……!」
「すぐ、終わるからな……胸、手退けてくれないと拭けないぞ」
「こ、これだけは勘弁して欲しいのであります。」
「一番汗かくところじゃないか」
「うぅ……こ、これでいいでありますか?」

手のひらで乳房を持ち上げるような隠し方に変えたが何となくいやらしさが増している気がする。
「はっ、早く、して欲しいであります……。」

胸の谷間や下など汗が溜まりやすいところを中央に拭う。
むにゅりと柔軟に姿を歪ませる豊かな乳房はどうしようもなく劣情を煽った。
「つ、次は脚をお願いするのであります……。」
白くむっちりとした太ももを、ふくらはぎを、広げたタオルで拭う。
「あ、ありがとう、でありますっ、も、もう大丈夫で、きゃあっ?!」
俺は無言であきつ丸を布団に押し倒す。

『て、提督、殿……っ、そ、そこはっ、駄目であります!』
『でも、汗で濡れてるぞ?』
『やっ、だ、めっ……ひゃあっ!』

青葉はラジカセのようなものを弄りながら、一人ほくそ笑む。
「感度良好、二人はまだこちらに気づいてないよっ…と…」
『ここも綺麗にしないと駄目じゃないか』
「おぉう、大胆ですねぇ」
『提督殿、見ちゃ、だm……ザザッ……ザザザ……』
「あれ、おかしーなー…どこも不調はないn……っ」
『駄目ですよ、青葉さん?』
「あっれー……ま、間宮さん、店屋物は頼んでないですよぉ……?」
通信にノイズが走った次の瞬間、ラジオ越しから間宮の声が聞こえてきた。
いつも通りに穏やかな分、青葉は底知れぬ恐怖を感じた。
冷や汗が一筋、頬を伝う。
『この回線、使えなくしましたから。他に仕込んでいるようですけれど……同じく封じさせてもらいました』
「あ、あはは、お、お手数おかけしましたぁ……」
『あまりやり過ぎると……どうなるか分かってますよね?』
「き、肝に銘じておきますぅ……」

ラジオの電源を切った後、青葉は鎮守府中を走り回ったが、彼女の好む成果は得られなかったようだった。
282あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:30:05 ID:4WI
翌日。

「恐縮です!司令官、昨日はお楽しみでしたね!」
執務室に青葉が飛び込んできた。

「な、なな、なんのことだ?」
「しらばっくれちゃってー、昨日、あきつ丸さんと甘い時間をすg」
「青葉さん、ここにいらっしゃったんですね。」
「みょ、妙高さんっ?!」

青葉の首根っこを掴んで逃がすまいとしている。
「あ、青葉はただ真実を知りたいだけですよぉ!」
「貴女、前にもそうして謹慎処分されたでしょう!」
「妙高、連れていけ」
「はい。」
「ああぁっ、そんなっ!ご無体な!待って!妙高さん!首絞まります!せめて自分で歩かせてええええええぇ!」

はぁ、と溜め息を一つ吐く。
「騒がしかったな……」
「はい……お茶を用意したのであります、どうぞ。」
「ありがとう。あ、あきつ丸、ちょっとこっち」
「どうしたでありま……んむっ?!」
身体を引き寄せ、軽く口づけをする。

「青葉ぁ!見ちゃいましたああぁ!!!」
顔を真っ赤にして、息を切らした青葉が、カメラを掲げ、叫んでいた。
「駄目ですよ、逃げちゃ。」
凄みのある笑顔の妙高が青葉の頭を掴み、引きずっていった。

「妙高、そのネガ、後で私に寄越してくれないか?」
「はい、カメラごと差し上げます!」
「あっ、やめっ、い、いやあぁ!青葉!乱暴さ……わ、分かりました!もーなにもしません!あがあああぁ!!!」
283あきつ丸SS :2014/12/03(水)01:31:25 ID:4WI
「てーとく、看病上手くいったのね?」
「あぁ、イク、ありがとう」
「んふふー、イクのアレお役だちしたのねん」
「アレはイクが仕込んだのか」
「正解、なのねー」
「本当に助かったよ」
「ふふふ、今度からはてーとく自身が用意しなきゃだめなのねー」
「だな……うん、ご褒美だ」
「えっへへ、間宮アイスごちなのねー!」
食べずともキラキラ状態になったイクは近くにいたまるゆとアイスを分けあっていた。



あれから暫く経って。
今日もあきつ丸と食堂で食事をとる。
食堂の騒がしさも何もいつもと変わらない。
だけど唯一変わったのは、俺と彼女の左薬指に光る指環だけ。

ただこれも、日常となっていくのだろう。

あきつ丸が優しい笑みで今日も俺に問いかけてくる。
「提督殿、一口いかがですか?」

おしまい。
284進め、百里浜艦娘隊! :2014/12/03(水)21:02:51 ID:f8T
投下します
285進め、百里浜艦娘隊! 16話 :2014/12/03(水)21:04:12 ID:f8T
第16話 勝つためには手段選ばず!


 足下に散る水しぶき。頬を撫でる空気。
 茶色い髪の毛が揺れていた。

「神通……行きます――!」

 海面を蹴り、神通は前へと進む。進行ではない。一直線の突撃だ。
 オレンジを基調としたワンピース型の制服を纏い、額に鉢金を巻いた姿。右手に20.3cm
連装砲を持ち、腰に五連装魚雷、左足太股に探照灯を装備している。そして、腰の後ろに
一振りの日本刀を差していた。鍔の無い合口拵えで、柄も鞘も白樫である。

「――! ―――!」

 神通の真正面に立っている黒ずくめの深海棲艦が、叫び声を上げた。両腕に箱のような
艤装を構えた戦艦ル級フラグシップ。目を見開き神通を睨み何かを叫んでいるが、何を言
っているのかはわからない。

「いざ……!」

 神通は呼吸を止めた。
 既に距離は十メートルを切っている。
 雲が空の半分を覆っているが、風は弱く波の少ない海だった。
 緩やかに揺れる海面を、神通は速度を落とすこともなくル級へと向かっていた。砲雷撃戦
の常識を無視した距離へと。そのまま左手で逆手に柄を握り、鯉口を切る。
 ル級との間合いが消えた。

「――……!」

 何かを叫び、ル級が艤装を盾のように構える。
 神通は刀を抜いた。刃渡りは二尺一寸。反りの無い直刀だ。刀というよりは、仕込み杖と
呼んだ方がいいかもしれない。抜刀から身体を捻り、白刃を踊らせる。

 ズッ。

 一閃。
 振り抜かれた刃が、ル級を斜めに切り抜けた。右腕の艤装から、身体を通り、左腕の艤
装へと。その太刀筋にあるもの全てを容赦なく切断して。

「………。――……?」

 金色の目を神通に向け、ル級が斜めに崩れた。腕や身体の切断面は、まるでマネキンの
ように白い。血肉のある艦娘とは違う、無機質な構造。
 響いた水音は小さかった。
 信じられないと言いたげな表情で、ル級は海底へと沈んでいく。

「またつまらぬものを斬ってしまいました」
286進め、百里浜艦娘隊! 16話 :2014/12/03(水)21:05:14 ID:f8T
 海面下に消えたル級を見送り、神通は小さく呟いた。
 残心は怠らず、ちらりと視線を移す。

「にゃああああ!」

 小柄な軽巡が海面を走っていた。ショートカットの紫髪に、セーラー服とショートパンツとい
う容姿である。球磨型二番艦、多摩。
 そして多摩は両手両足をついて海面を疾走していた。まるで本物の猫のように。冗談のよ
うな走り方だというのに、しかし冗談のように速い。

「――!」

 対峙しているのは、マントとセーラー服姿の戦艦タ級フラグシップである。明らかに無茶な
距離まで接近してきた多摩に、困惑しているようだった。この近距離での戦闘というものを
考えた事がないのだろう。普通は考えないし、実行もしない。
 両手で水面を叩き、多摩の身体が跳躍する。

「首肉〈コリエ〉にゃ!」

 ドゴッ!

「!」

 振り上げられた右足が、タ級の首を打ち抜いた。真下から凄まじい勢いで突き出された
蹴りが、その身体を空中へと押し上げる。首はおかしな角度に曲がっていた。一撃でへし
折れたようである。だが、それだけでは終わらない。

「――肩肉〈エポール〉!  背肉〈コートレット〉!  鞍下肉〈セル〉!  胸肉〈ポワトリーヌ〉!
 もも肉〈ジゴー〉!」

 タ級の全身に蹴りが撃ち込まれる。あたりに響く岩を割るような重い音。小柄な体格とは
裏腹に、その蹴り技の威力は下手な砲撃を上回っていた。避ける間もない連撃に、タ級の
身体が破壊されいく。砕けた艤装や身体の破片が周囲に飛び散った。
 そして。

「羊肉〈ムートン〉ショットにゃ!」

 ドゴォンッ!

 強烈な後回し蹴りがタ級を吹っ飛ばす。
 三十メートルほど吹き飛び、海面で二度跳ねてから、海の底へと沈んでいった。
 タ級を蹴った反動で、反対側へと跳ぶ多摩。空中で軽やかに一回転してから、海面へと
着地する。今度はちゃんと二本足で立っていた。

「やったにゃ」
「やりましたね」

 手を上げる多摩に、神通は応えるように手を上げた。

    ◆ ◇ ◆ ◇
287進め、百里浜艦娘隊! 16話 :2014/12/03(水)21:06:03 ID:f8T
「完全勝利――と」

 深海棲艦の消えた海上を眺め、隼鷹は静かに宣言する。
 右手に紫色の炎を燃やし、左手に巻物飛行甲板を構えたまま。周囲を飛んでいた艦載機
が甲板に降り、式紙となって束ねられていく。

「……いいんかな? これ」

 戦闘後の哨戒活動に移る神通と多摩を眺めながら、隼鷹はジト目で呻いた。戦艦を斬り
捨てたり蹴り倒したりするのが、艦娘として正しい姿なのか。肯定する自信も否定する自信
もない。ただ言える事は、定石からかけ離れた戦い方であるということ。

「戦艦を白兵戦で倒すなんて……凄いわね。そうそう真似できることじゃないわ。噂には聞
いていたけど、やっぱり変わった子が多いのね、百里浜基地って」

 声を掛けられ、隼鷹は眉を持ち上げる。
 聞き慣れたような声でありながら、全く違う声。

「まー。うちは変なの多いとは思うけどさ――」

 視線を向けた前にいたのは、黒髪ツインテールの正規空母だった。藤色の上着と柿渋色
のスカートを纏い、左肩に迷彩模様の飛行甲板を装備している。

 瑞鶴。

 しかし、百里浜基地の瑞鶴ではない。

「横須賀ほど狂っちゃいないと思うよ……。何で正規空母が艦載機使わないで機銃振り回
して、しかも驚くくらいバシバシ落とすかね? ニュータイプ? イノベイダー?」

 両腕に構えた三連装機銃と、肩に乗せた30連装噴射砲。艦載機を操る空母が機銃を積
み込むというのは、本来あり得ないことだ。しかし、そのあり得ない装備で、ことごとく敵艦
載機を撃ち落としていく姿は圧巻である。
 横須賀鎮守府から派遣された瑞鶴。機銃マスターと呼ばれているらしい。

「いいんじゃない? 正攻法だろうと邪道だろうと、強いのは事実だし。アタシもこの装備は
空母としてどうかと思うけど、あれよ。勝てばよかろうなのだ! って事ね」

 右腕に装備した機銃を動かしながら、脳天気にそんな事を言ってくる。

「うーん――」

 目を閉じ眉間にしわを寄せる隼鷹。
 艦載機が全て戻ったのを確認してから、飛行甲板を巻き取り、それを腰の艤装に収める。
続いて、式紙を収めた小型巻物も収めた。
 瑞鶴が神通に指を向ける。敵を倒し終わり、多摩とともに哨戒活動をしていた。刀を左手
に持ったまま。戦闘が終わったからといって油断はできない。
 瑞鶴が示しているのは、その刀である。
288進め、百里浜艦娘隊! 16話 :2014/12/03(水)21:07:10 ID:f8T
「あの刀凄いわね。いわゆる特殊兵装ってヤツ?」
「………。そうらしいね」

 慎重に、隼鷹は頷いた。
 通常の装備とは別の方法で作られる、特殊兵装。何らかの適正があると判断されれば渡
されるらしい。百里浜基地には神通を始め数人、そのような装備を持つ者がいた。余所で
も基地内に数人はいるという。性能は高い反面、使い勝手は恐ろしく悪いらしい。例えば神
通の刀は文字通り刀の間合いでないと役に立たない。

「改二になってからしばらくして、提督から渡されたとか。流星……って銘らしい。艦攻じゃな
いけどね。鉄だろうが岩だろうが、ザクザク斬れるよ。誰が言ったか、斬鉄剣。あたしも本
気でアレ振り回してる姿見るのは初めてだけどね」

 と、苦笑してみせた。
 どのような仕組みなのか、刃物として異様なまでに斬れる。鉄でも岩でも、深海棲艦でも。
試し切りで鉄骨やコンクリートを斬っているのは見たことがあるが、実戦で深海棲艦を斬っ
ているのは、初めて見た。

「あっちの多摩ちゃんも凄いわね。動きも蹴りの破壊力も」

 瑞鶴が多摩に目をやる。
 特殊兵装は持っていないが、戦艦を蹴りで破壊する力と技は、非常識の一言だった。

「うちの料理長から直々に叩き込まれたみたいだからねぇ、変な足技。昔は普通の軽巡だ
ったんだけど、気がついたら素手の方が強いって言われるようになってたよ」

 隼鷹は空笑いとともに、ぱたぱたと手を振った。
 昔は猫っぽいだけの軽巡だった多摩。砲雷撃戦はあまり得意ではなく――有り体に言っ
て下手だった。本人はその事を気にしていて、提督に相談したら、何故か格闘術を教え込
まれる。元々素質があったようで、今では格闘戦なら百里浜基地でも右に出るものがいな
いレベルまで上達していた。師となった料理長の影響か、蹴り技を多様する。

「まぁ、普段は普通に砲雷撃やってるけどね。今回が特別だよ」
「援護無しであの戦闘方法は、危険すぎるわ」

 隼鷹の言葉に、瑞鶴が頷く。
 超接近戦。それは防御を無視した戦い方だ。単機で下手に敵陣に切り込めば、あっと言
う間に的にされて轟沈である。艦娘の装備には轟沈防止の最終防御機構があるが、限度
がある。近距離からの集中砲火を喰らってはひとたまりもない。

「危険ですけど、やらないといけません」

 静かに、決意のこもった声。

「まぁねぇ」

 隼鷹は消極的に肯定しつつ、そちらに向き直る。
 巫女装束を思わせる白衣と黒いスカート。ボブカットの黒髪と金色のカチューシャ。そして
眼鏡。金剛型の末っ子、霧島だった。
289進め、百里浜艦娘隊! 16話 :2014/12/03(水)21:08:25 ID:f8T
 背中に取り付けられたX型アームの艤装には、ベルトと布にくるまれた巨大な十字架が縛
り付けられている。そちらは普通の装備品ではない。

「正攻法で勝てるのなら、それに越したことはありません。しかし、今回の相手には手段を
選んではいられませんからね。使えるものは何でも使います」
「霧島……。本当にそれ使うのかい? というか、使えるんかい?」

 口元を引きつらせつつ、隼鷹は霧島の十字架を見つめる。
 寮長から借りているパニッシャーくん二号だった。元は人間用のトンデモ兵器だが、工廠
のエロ博士が艦娘でも使えるように一時的な改造を施したらしい。

「試し撃ちしてみましたが、かなり良い武器です。見た目はへんてこなのに、重心のバラン
スが取れていて、扱いやすいですし。可能なら同じものを作って欲しいですね」

 眼鏡をくいと持ち上げ、嬉しそうに言ってくる。
 隼鷹は苦笑いを霧島に向けた。

「それは無理だと思うぞ。あと、終わったら、ちゃんと返すんだぞ」
「分かってますって」

 からかうように片目を瞑り、霧島が隼鷹から離れていく。
 瑞鶴も哨戒活動に移っていた。海域危険度5の深部。敵を全滅させたからといって安全と
は限らない。倒した直後に、次の一隊が現れる事もあるのだ。

「なんだかなぁ?」

 隼鷹は肩を落として、艦隊の仲間を眺める。斬り込み隊長神通と格闘軽巡多摩、機銃マ
スター瑞鶴に、パニッシャーくん二号の霧島。

「どうかしましたか? 隼鷹さん」

 いつの間にか、背の高い女が近くに立っていた。
 身長百八十センチを越える長身。きれいな焦げ茶の髪と、落ち着いた顔立ち。紅白の制
服と、朱色のスカートという服装で、右手に三本マストの日傘を差している。艤装は巨大な
46cm三連装砲。

「大和……」

 静かにその名を呟く隼鷹。背筋を撫でる寒気。普通に立っているだけで気圧されるほど
の迫力だ。知らぬ者はいない、最強戦艦の一人。横浜鎮守府所属の大和だった。作戦遂
行のため、瑞鶴とともに百里浜基地に派遣されていた。
 肩の力を抜き、隼鷹は誤魔化すように笑う。

「いや、戦艦斬り捨てる軽巡とか、蹴り壊す軽巡とか、機銃マスターとか……トンデモ兵器
ぶっ放す予定の金剛型末っ子とか。あと、最強戦艦……。みんな凄い艦娘で、なんかあた
しだけ普通で……ちょっと気後れしちゃってさ」
290進め、百里浜艦娘隊! 16話 :2014/12/03(水)21:10:00 ID:f8T
「隼鷹さん」

 大和の手が隼鷹の肩に置かれる。
 見上げると、大和が頬笑んでいた。

「普通であるという事は、素晴らしいことです――!」
「………」

 無言を返す隼鷹。
 キラキラとした何かを纏いながら、どこかもの悲しげな顔の大和。落ち着いた普通の口調
だというのに、ただならぬ気迫を感じる。一体何を思って今の言葉を口にしたのかは分から
ない。分からないが、それでもそれでも理解できる。

「横須賀鎮守府って怖い所なんだな……!」

 おののくように隼鷹は声を絞り出した。
291進め、百里浜艦娘隊! 16話 :2014/12/03(水)21:11:59 ID:f8T
登場人物など

神通改二
百里浜基地の切り込み隊長。レベルは75くらい。
装備 20.3連装砲/四連装酸素魚雷/探照灯
通常装備の他に、流星という銘の刀を装備している。別名、斬鉄剣。特殊兵装のひとつで
あり、非常識な切れ味を持つ。鉄でも岩でも深海棲艦でも、たやすく切断する。ただし、あく
まで刀であるため、相手に肉薄しないと使えない。コンニャクは切れる。

多摩改
球磨型 2番艦 軽巡洋艦
猫っぽい軽巡。レベルは50くらい。
元々は普通の軽巡で砲雷撃戦も苦手だったが、提督に相談したら何故か体術を教え込ま
れた。直接指導したのは料理長であり、そのため足技を多用する。素質があったのか、現
在では格闘戦なら右に出るものがいないレベルまで上達している。その実力は、戦艦フラ
グシップを蹴り技で圧倒するほど。
普段は普通に砲雷撃戦をしている。神通とは同期で、気が合うらしい。
装備 15.2連装砲/三式爆雷投射機/新型高温高圧缶

隼鷹改二
深海棲艦討伐部隊旗艦。レベルは85くらい。
はっちゃけた性格とは対照的に、真面目に堅実に仕事をこなす軽空母。旗艦を務めるが、
随伴艦の非常識っぷりに頭を痛めている。
装備 烈風改/烈風/彗星一二甲/カ号観測機


霧島改
レベルは65くらい。
装備 試製35.6cm三連装砲/試製35.6cm三連装砲/三式弾/パニッシャーくん二号
寮長から借りたパニッシャーくん二号を装備している。元は人間用トンデモ兵器であるが、
工廠の敷嶋博士の手によって艦娘でも扱えるように一時的な改造が施された。

瑞鶴改
翔鶴型 2番艦 正規空母
レベルは85くらい。横浜鎮守府所属であり、今回は作戦のために百里浜基地に派遣された。
正規空母でありながら、機銃を振り回し、しかもことごとく敵艦載機を撃墜する、通称機銃マ
スター。自分の戦闘スタイルについては、開き直っている。
装備 25mm三連装機銃/25mm三連装機銃/12cm30連装噴進砲/彩雲

大和改
大和型 1番艦 戦艦
横須賀鎮守府所属。レベルは95くらい。
圧倒的な火力と耐久力を武器に戦う、最強の戦艦の一角。しかし、横須賀鎮守府は規格
外の人間や艦娘が多いため、色々と苦労している様子。自分だけ普通であることを気にす
る隼鷹に「普通であることはすばらしい」と漏らす。
装備 46cm三連装砲/46cm三連装砲/零式観測機/一式徹甲弾
292名無しさん@おーぷん :2014/12/03(水)21:12:30 ID:f8T
以上です
続きはそのうち
293名無しさん@おーぷん :2014/12/07(日)00:04:21 ID:BXI
投下します
294瑞鳳の鼻水吸うだけの話 :2014/12/07(日)00:04:43 ID:BXI

 僕は彼女の肩を優しく抱くき、鼻腔を口でふさいだ。
 むぐふぅ、と声が漏れる。
 まずはゆっくりと鼻腔の周りを舐める。
 垂れていた水っぽい鼻水はしょっぱく、抵抗もなく僕の口の中に溶けた。
 くすぐったいのか、腕の中の彼女は体を震わせている。
 しばらく舐めていると慣れてきたのか、その震えは小さくなる。
 一度口を離して「吸うよ」と言うと、短く「ん」と返事が返ってきた。
 
 再び彼女の鼻を口で覆う。この後の感覚に備えて体をこわばらせている。
 僕は鼻からゆっくり息を吐き、そして優しく吸い始めた。
 「ふぐぁ、がぁ」とうめく声が聞こえる。
 ちゅるちゅると、粘り気の強い液体が口の中に入ってくる。
 と、しばらく吸っているとちゅるり、と鼻水の塊が一気に流れた。
 たまらず彼女は「んむぅ」と声を上げて体をびくんとのけぞらせる。
 僕はその鼻水の塊を口の中で遊ばせながら吸うのを一時停止する。
 彼女は僕にしがみ付きながら息を荒くして、でもうっとりしていた。
 
 彼女の呼吸が整って、僕の背中に回した手に力をこめた。
 僕も思い切り彼女を抱きしめると、今度は強く鼻を吸い始める。
 さっきみたいな鼻水の塊が何度も流れて、そのたびにびくんびくんと彼女の体が震え、
 「ぎっ、がぁ、ぐぶぅ」なんてうめき声を上げている。

 ひとしきり吸った後、ゆっくりと口を離す。このあといつも命令される。
「おくちあーんして?」と命令されたので口をあけて吸い出した鼻水を見せる。
 それを見て嬉しそうに微笑んでいて可愛い。
「くちゅくちゅして味わって?」と命令されたので鼻水でうがいする。
 にゅるりとした感触が気持ちいい。
「その・・・ごっくんして?」最後の命令だ。何度かに分けて飲み込む。
 僕ののどが動くたびに彼女はこくこくうなずいてごっくんごっくんと言ってくれる。
 最後に口を空けて全部飲み込めたことを見せると、彼女は満足そうに微笑んだ。

おしまい
295名無しさん@おーぷん :2014/12/07(日)00:04:55 ID:BXI
以上です
296名無しさん@おーぷん :2014/12/07(日)01:00:54 ID:EHv
前も見せてもらったけど、改めてひどい(褒め言葉)
これからも瑞鳳と素敵な鼻水ライフを楽しんでください
297名無しさん@おーぷん :2014/12/07(日)08:37:53 ID:le0
は、鼻水提督っ!
298名無しさん@おーぷん :2014/12/07(日)20:15:31 ID:F9j
ず、瑞鳳の鼻水提督……!
まさかここで見るとは
299名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)20:33:01 ID:WYH
鼻水提督…恐ろしい子…

そしてどうも、相変わらず歯フェチのダメ提督です
小話を2つほど思いついたので(合計で8~10レス程度)
1分ほど待って特に問題なさそうなら投下させていただきます
300うち天ダラ語り改・1(前書き) :2014/12/14(日)20:34:30 ID:WYH
扶桑姉妹で書けるかもと言っていたな?あれは嘘d申し訳ありませんでした
山城サプライズに喜びつつも、いよいよガチの設計図不足で気持ちの整理ができていない模様
(扶桑姉さまは無事改造済)
というわけで、とりあえず今回は別のお話


うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・1 ~前書き~

――――――――

スレが新しくなったので一旦数字リセットして(改)つけてみました
前回までの話(前スレ>>874-895>>982-986)を知らなくても読めますが
知ってるとわかりやすいかもしれません

・あまり賢くないうちの艦娘たちによる秋イベント周辺の茶番劇+α
 (なお、一番賢くないのは提督)
・主な登場艦娘は天龍田(1・2)、球磨型(1)、プリケt…プリンツオイゲン(2)
・フェチの提督がムラっと来た勢いで書いてるので歯ネタが多いっぽい
・いろいろ不真面目なため、一般的なキャライメージの崩壊に注意
・実在の艦艇や兵器・軍、海外事情その他もろもろとは無関係です

では本編どうぞ↓
301うち天ダラ語り改・1(本編1) :2014/12/14(日)20:35:50 ID:WYH

うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・1 ~球磨型ナイトチェイサー~

――――――――

深夜の母港。
海沿いの通路を全力で疾走する影ふたつ…そして、それを少し離れた所から追いかける一団。
…まあ何かって言うと、今まさに目の前を走ってるヤツらとオレたちの事だ。

「くぉらああァーーー!!!待つクマ木曾ーーーーッ!!!」
「ヘン!お断りだねーーッ!!」

「できれば昼にしていただけると青葉、撮りやすくて助かったんですけどね~。夜のネタは川内さんでだいたい足りてますし。
 あと、まるゆちゃんも呼んできたほうが面白かったですかね?大和さんとお話してた(※1)んで呼びませんでしたけど」
まるゆなぁ。アイツ、悪いヤツじゃねーけど走るの遅せーしドンくせーからな…来たとしても途中で見つかると思うぜ。
「暗くてよく見えないな~。探照灯つけてもいい?」ぜってー見つかるからやめろ、秋雲。
しかもそれ、霧島か神通かのどっちかが外して置いてあったやつじゃねーか…バレねーうちに返しとけよ。
で、アイツらなんでこんな時間に鬼ごっこなんかやってんだよ?どうせ大した理由じゃねーんだろうけど。
「それがどうもですね~…」

「他のヤツに見つかるとイメージが崩れるからって、夜中にこっそり甘い菓子食ってそのまま寝た挙句に
 やっぱり誰かに見つかるのがイヤで治してなかった虫歯が悪化とか、どんだけアホクマー!?
 自然界での虫歯は下手をすれば即、命取りクマ…
 そんなもんをみすみす放置とは、球磨型姉妹の名折れも良い所だクマ!!
 いっその事、球磨がへし折ってやるから口開けろクマーーー!!!」

「…だ、そうです」想像以上にアホだった。つーか野生動物か何かか?球磨型は。
「クマ姉とタマ姉はだいたいそうかもねー」「木曾も似たようなもんよ…私たちは違うわよね、北上さん!」
「にゃー。大井も北上も、あんまり変わらないにゃ」って、姉妹勢揃いかよ!止めに行かなくていいのか?
「嫌よ、面倒くさい」「クマ姉強いし頑固だからねー。ああなったら放っとくのが一番だよ」
「一通り暴れたら収まるはずにゃ。心配いらにゃい」慣れてんのか、お前ら…
302うち天ダラ語り改・1(本編2) :2014/12/14(日)20:36:46 ID:WYH

「でも、ちょっと不思議だよね~?」?何がだよ、龍田。
「うちの木曾ちゃんが実は甘い物好きなのって、もうだいぶ前からバレちゃってて
 今じゃ、知らない子のほうが少ないぐらいだよ~?なのに、どうして今になって隠したのかな~?って」
ん、そう言われてみると…まるゆにもとっくにバレてるぐらいだし、今さら隠したい相手とかいるのか…?
「「「あ」」」何だよ、三人同時に?

「あの子ねー、実はそんなに体丈夫でもないんだよ」マジで!?
「本当よ。ちっちゃい時なんて、すぐ風邪引いて熱出したりして大変だったんだから」
「栄養あるもの食べさせなきゃってんでクマ姉、今でも気ぃ遣っててさー。
 駄菓子とかも部屋にあんまり置いてないんだよねー。
 さすがに鮭の兜煮とか謎のモツ煮とか、ゲテモノ系ばっかり夕飯に出すのはどーかなって思うけどねー」
そーなのか…献立がなんかヤバい気もするけど、意外とちゃんと姉ちゃんしてるんだな。アイツ。
でもま、そんだけ気遣ってんのに当の本人が無頓着じゃ、確かに怒りたくもなるかもな?
「怒ってるっていうか、心配してんだよねー」「そうそう。姉の心妹知らずだわ」

「木曾が多摩たちに隠してた理由は、多分それだけじゃないにゃ」
うお、ビックリした…なんでいつも猫みたいにニョキニョキ乗り出してくんだよ、お前は。
「猫じゃないにゃ。…今回の作戦、クマ姉やニャガラ(長良)は意外と優秀にゃから
 今ぐらいの練度でも割と活躍できたにゃ?
 残念にゃがら、多摩はそこまでじゃないにゃ。作戦に参加するには、もうちょっと練度が必要だにゃ」
お、おう…(なんか耳の痛い話になってきたな)それで?
「提督、今回の作戦に参加した子に間宮・伊良湖ブランドのちょっと特別なお菓子(※2)奢ってたにゃ…
 最初クマ姉が食べてた時、多摩がつい羨ましそうに見てたのを木曾は気付いてたにゃ」あー、なるほどね…
「なんだー。木曾ってば、水くさいなー」「つまり、提督がケチって全員に奢らなかったから悪いんじゃない」お前らな…
しっかし、そんなに欲しかったんなら一口分けてもらえばよかったじゃねーか?アイツら、断るほどケチじゃねーだろ。
「戦士のプライドってものがあるのにゃ。おこぼれのお菓子じゃ嬉しくないのにゃ!じゅる…」ヨダレ出てんぞ…

(ザバァーーーン!!)
!?何だ!?「海の方からにゃ!?」
303うち天ダラ語り改・1(本編3) :2014/12/14(日)20:37:56 ID:WYH

「敵艦クマ!?」「こんな近くにだと…!?チッ!クマ姉は下がってろ!
 深海棲艦…この雷巡木曾が相手だッ!!」
<<ナンカ、ミチニマヨッテタラボコウデタ…チョウドイイ、カンムス、タオス!>>

なっ…深海棲艦じゃねーか!迷い込んできたのか!?
「マズいですね…あの向きであの至近距離だと、球磨さんも木曾さんもちょーっと海の上に出れないです。
 足元が地面なんで砲撃の反動をうまく逃がすことができませんし、雷撃も使えません…
 できる事といえば、直接相手の懐に飛び込んでの近接攻撃ぐらいですかね?」
「木曾が抜刀して突っ込んでったわ!」「お!いい感じに斬りつけて…あー、ヤバい。派手にブッ飛ばされた」
「一撃必殺とはいかなかったみたいにゃ…ちょっとピンチだにゃ」
龍田、今武器使えるよな?オレ達も出るぞ!「言われなくても、ちゃ~んと準備出来て…えっ?」

「喰らうクマーーーッ!!」(ドゴォーーーン!!)「なにッ!?」
<<!!??ナンダト…!?>>
「ちょっと、クマ姉!?」「水の上じゃないのに撃ったのにゃ!?」「うわわ、大スクープです!」マジか…
<<バカナ…リクジョウカラ、ホウゲキダト…!?…グフッ、ムネン…ゴボゴボ…>>

「ふっふっふ、こんな事で驚いてるようじゃ球磨は倒せないクマー…ぐォう!?そこ痛いから触るなクマ、木曾ッ!」
「このバカ姉貴!無理に撃ったから肩外れてるじゃねぇか!
 こんな無茶しなくたって、俺に任せておけば…いでででッ、ちょ、顔掴むなッ!」
「お生憎様クマ。腕はもう片方あるし、ジューショー(※3)の妹に庇われるほどヤワじゃないクマ!
 …さっきアイツにやられた時に歯、欠けたクマね?球磨ががっつり折ってやる予定が台無しクマー」
「みすみす折られるつもりなんて最初っから無いね…とりあえず、背中乗れ。仕方ねーからドックまで連れてってやる」
「仕方ないクマね…ダダっ子な妹のために、姉ちゃんが付き添ってやるクマ」

「めでたし、って感じかなー?」「問題にゃい」「全く、人騒がせよね。…後で様子見に行ってやろうかしら」
「天龍ちゃん、私思ったんだけど~」言うな、龍田。
「ひょっとしてこのシリーズ、私たち毎回出てるだけで活躍できてない~?」言うなって!哀しくなるだろ!!
304うち天ダラ語り改・1(注釈) :2014/12/14(日)20:38:54 ID:WYH

――――――――

(※0)注釈とか、余談のコーナーだな。改になってちょっと少なくなったっぽいか?
 「まるっとお見通しだー!」おわ、まるゆじゃねーか!
 「木曾さんのお話だったみたいなので、まるゆ、来ちゃいました!どんなお話ですか?」「あら~」

(※1)なんか提督たちの集まる掲示板で、初大型でまるゆ出した奴がいたとかで
 祝いがてらにまるゆ秘書艦で回した時に出たんだったよな、ウチの大和。
 「しおいちゃんやあきつさんより先に大和さんを連れてきたのは予想外だったね~。提督もビックリしてたな~」
 「まるゆ、実は大和さんに敬礼して、お返事貰ったこともあるんですよ~。えっへん!」
 それ実際大和出るまで忘れてたらしいからな、ウチの提督…やっぱ物欲センサーってヤツかな?

(※2)菓子は購買(酒保)や外でも普通に買えるけど、出撃前の間宮・伊良湖ブランドっていうとやっぱ特別で
 どっちかっていうと、表彰とか贈答品に近い感じなんだよな。貰える事自体に価値があるっつーか。
 …勲章の話の時とちょっとノリが矛盾してるような気もするけど、そこはなんだ。展開上の都合だ。
 「作戦の追い込みとかで毎回呼んだりすると、いくら艦娘でもお腹いっぱいだしね~。
 最後の方は食べきれなくて、結局他の娘にもおすそ分けしてたって作戦で出撃した娘から聞いたよ~」
 これまで呼んだことなかったからって極端だよな、提督。普段からちょっとずつ呼んで練度上げておきゃいいのに。
 「天龍ちゃんの試験前の一夜漬けと一緒だね~。ウフフフ♪」うっせー!

(※3)秘書艦で放置された時の「ジュージツしてるクマ!」みてーな、拗ねてイヤミ言ってるっぽい口調だ。
 「球磨型の娘たちって荒っぽいけど、仲良しだよね~。私たちもマネしてみる~?」ちょっとオレの趣味には合わねーな…
 「まるゆ、ちょっとマネしてみたいです!」うん、諦めろ。
305うち天ダラ語り改・2(本編) :2014/12/14(日)20:39:44 ID:WYH

うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・2 ~司令部近辺某所にて~

――――――――

「あ~~ん。ろうれふか?」
Unglaublich(信じられない)…以前私が処置した箇所が、本当に『治って』いる…!?
噂には聞いていたが、艦娘の自己治癒能力というものは我々の常識の範囲を遙かに超えているんだな…!

「私たち本人っていうか、妖精さんがレシピを教えてくれた修復剤のほうがすごい気もするけど…
 この前資材を食べてたら、詰め物が取れちゃったんで修復剤で治したんです」
まあ、私も歯科医として腕にはそれなりに自信ある方だけど…資材食べてたらそりゃ、取れるよね。
それにしても、色々と興味深い話だ…もう少し、詳しく聞かせてもらってもいいかい?
「Hmm…一応機密だから、あんまり詳しい話はダメなんだけど…ein wenig、ちょっとだけね。
 私もよく知らないけど、妖精さんにしか作れない成分とかも入ってるみたいです。
 あと、普通のニンゲンに使ったらダメかもってAkashi(明石)が言ってたような」
そうなのか…それは残念だ。艦娘だけでなく一般人にも応用できるなら、救われる人も格段に増えるんだが…

あ。ところで、キミがここに居て、しかもそんなに楽しそうにしてるという事は…まさかとは思うけど、例の彼女も?
「えっへっへっへ~♪そうなんですよ~!実は幸運にも、私が配属された先にいらっしゃったのは
 なんと!私も先生もよ~く知ってるあの…あ!ちょうどいい所に姉さまが来ましたよ!ビスマルク姉さま~!
 …あれ?なんか、慌てて戻ってっちゃいました。さすが姉さま、演習にも攻略にも大活躍(※1)でお忙しいんですねっ!」
うん、今完全に私の事見るなり逃げてったよね?相変わらずの姉さま贔屓だね、キミは!(※2)
306うち天ダラ語り改・2(注釈1) :2014/12/14(日)20:41:29 ID:WYH

――――――――

(※0)Erläuterung(解説)や、abschweifung(余談)だね。時間があったら見ていってくれ。
 「って、アンタ誰だよ!?」あ、どうも。
 ドイツからたまたま用事でこの近くまで来たら、偶然にも買い出し中だった近所の娘と再会して
 当たり障りない程度に雑談を楽しんだモブ歯科医Aです。日本語話せます。
 「設定ガバガバ過ぎんだろ!名前すらねーのかよ!!」
 いや、この先特に出番もないと思うし名乗らなくてもいいかなって…ところで、キミたちは?
 「オレか?オレの名は天龍。フフフ、怖いk」「天龍ちゃん、見~つけた♪」
 「だー!名乗ってる最中に割り込むなっていつも言ってんだろ、龍田!」
 Tenryu(仮)さんにTatsuta(仮)さんだね、よろしく。
 「カッコカリ付けんな!艦の方の名前だから合ってるっちゃ合ってるけど!」
 「人の方の名前は別にあるんだよね~。ここでは使う機会ないけど~」

(※1)私は知らないんだけど、実際、大活躍なのかい?彼女。
 「あー…実は大和とか金剛姉妹・扶桑姉妹の育成優先してたら、いつの間にか追い抜かれてた上に
 E-3には例の件でオイゲン(艦)と一緒だった長門のほうが出たんで、秋の作戦はアイツ出番なかったんだけどな…
 レベリングの随伴は前からよくやってるし、最近はウチの最前線、5-3の攻略にも出始めてるぜ。
 夜戦は肌が荒れるからイヤとか言ってた割には結構乗り気っぽくて、
 随伴ばっかしてるせいか、提督曰く『旗艦にしないほうが良い仕事する気がする』らしい」
 「でも、オイゲンちゃんが来てすぐの時はちょっとバタバタしてたかな~。
 ビスマルクさん、知り合いの娘がオイゲンちゃんになってて同じ司令部に配属されるなんて思ってなかったし
 提督も提督で、あんなに慕ってくる娘だって知らなかったから
 『カッコいい所見せないと!』って二人して慣れない事しようとして、すっごく焦っちゃってたね~」
 「ヘンな編成で演習出て、オイゲンより先に大破とかやらかしてたな…あそこまでテンパらなくてもいいのにな」
307うち天ダラ語り改・2(注釈2) :2014/12/14(日)20:42:22 ID:WYH

(※2)「相変わらずって事は、本国でもあんな感じだったのか?プリケ…いや、オイゲン(仮)」
 そうなんだよ…実は彼女、小さい頃に野良犬に襲われかけた事があってね。
 お尻に噛み付かれそうになってる所を、たまたま通りがかった例のBismarck姉さま(仮)に助けられたと…
 それ以来、彼女の中で姉さまはすっかりHeldin der Gerechtigkeit…
 正義のヒロインになってしまったみたいなんだ。
 「(やっぱり昔からプリケツ…と、それは置いといて)それでずっと姉さま命なのか。オイゲン」
 Ja…それ自体は私は別に構わないんだけど、例の姉さま、昔から甘い物を食べ過ぎる上に歯医者が苦手でね…
 改善されるように家の方にも協力をお願いしてあるんだけど、仕事の関係でいない事が多くて
 留守中なんかは特に、彼女が頻繁に手作りのお菓子とかを持って逢いに行ってるみたいなんだよね。
 「あー…なんかダメなパターンだな」「文字通り、甘やかしちゃうんだね~。
 …そういえば、天龍ちゃんも昔近所の子にお菓子もらってた事あったよね~?
 虫歯で甘い物禁止の時もそうだし、ヤンチャし過ぎてご飯抜きになった時とか
 お小遣いムダ使いしちゃってピンチの時とかに、面倒見てあげてた小さい子がこっそり持ってきてくれて…」
 「だああッ!昔の話はすんな!」「っていうか、今もだよね~?ときどき駆逐艦の子たちが」「わー!わーッ!」
 あ、ちょっと違うけどこっちもなんかダメな感じだった。


おわり
308名無しさん@おーぷん :2014/12/14(日)20:43:23 ID:WYH
今回は以上です
大方書き終えてから今日が木曾(と榛名)の進水日だと知ってスライディング土下座
クリスマスには無事平和にケーキを食べてる事を祈ります

そしててっきりケーキとかチキンとかを要求してくると思ってたうちのビス子さんがプレゼントを要求してきた件
309名無しさん@おーぷん :2014/12/17(水)19:44:12 ID:1JL
乙!
310名無しさん@おーぷん :2014/12/21(日)17:37:07 ID:U28
投下させていただきます
分量が多くて投下に手こずりそうなのであぷろだの方に

http://fast-uploader.com/file/6974706356303/
(PASS:shouhou)
311名無しさん@おーぷん :2014/12/21(日)18:32:58 ID:2if
>>310
読みました
ええ話や…てっきりドスケベな話が読めるものだと思ってた自分を殴りたい
312名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:33:05 ID:AVM
お久しぶりです
以前連隊これくしょんでスレを当惑させた者です
可愛い曙ちゃんと年末のタイムリーネタを思いついたので投稿します
313名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:33:44 ID:AVM
『落語っぽい艦これ:曙ちゃんの芝浜』


―――――――――――――――――――――――――――

鎮守府の近くに或る提督が住んでいました。艦娘を率いて数多の戦果を挙げた歴戦の提督ではありました。が、今は呑んだくれて公務も休みがち。
というのも先程の作戦で、長らく秘書艦を勤めていた五月雨が、壊走する戦隊を逃がす為、独断で挺身し未帰還となったのを悔やんで、自分の采配の拙さが許せず酒に溺れる日々を送っていたのであります。
五月雨を止められなかったのを酒で忘れたい、俺なんてこのまま呑んだくれてくたばってしまえばいい、と思っていた所、
「大掃除に来てやったわよ、このクソ提督!」
歳末(くれ)も近づく頃、掃除道具を備え、着物の裾を捲り上げた曙が玄関に立っておりました。どうやら年始の晴れ着合わせの途中だったようです。
「…何だ曙か。別に呼んでねえけど。」
「何だ、じゃないわ。クソ提督が心配だから来…ってそんな訳無いでしょ!大淀さんに様子を見に行くよう頼まれただけよ。」
そう言うと曙は、「汚い部屋ね。男寡に蛆が湧くって正にこの事だわ。」とかぶつくさ言いながら勝手に掃除をし始めました。
そうこうしてるうちに日も暮れて、遅くなったので飯食って泊っていけと言う提督に曙は、
「ちょっ、それ本気!?…も、もし私にヘンなことしたら、あんたのどてっ腹に風穴空けるから!」
「安心しろ、ずっとそんな気分にすらなってねえよ。そもそもお前、俺のストライクゾーン外だしな。」
「ストライクゾーンって、まさか艦娘をそんな目で…この変態スケベクソ提督!」
いつもの様に罵倒しながらも、少しドキマギした曙と夕飯を食べた提督は今日も酒を飲んで寝てしまいました。
折角様子を見に来た曙はたまりかねて翌朝早起きし、
「起きなさいこのクソ提督!さっさと鎮守府に行くのよ!」
「おい。まだ少し薄暗いのに大声出すなよ。ったくいい気持ちで寝てたってのに。今日も酒かっ喰らって休むんだよ。」
「何言ってるの。仕事が沢山溜まってるのよ、いい加減にしなさい!」
「五月雨沈めちまった俺に出来る仕事なんてもうねえよ…眠む…い。」
「もう、歳末も近いっていうのに、出撃や遠征の指示やらなくてどうするのよ。五月雨の事で辛いのは皆同じなのに…いつまでも甘ったれてんじゃない、このクソ提督!」
「言われなくたってわかってるよ曙…そもそもうちだけが歳末が近いってわけじゃないや。」
「まったく何言ってるのよ。ぐずぐずしない、早く布団から出ろ!」
提督は寝ぼけ眼で回りをみまわし、
「わかったよ曙、行けばいいんだろ。シャツはどこだ?ほったらかしで全部くしゃくしゃだ。」
「ほら、いつでも着れるようにアイロンかけておいたわよ。」
「長刀は?これもサビてるよ。」
「どうぞ。ちゃんと紙ヤスリで錆は落としたわ。靴もそこに出してある。さあ、行きなさいこのクソ提督。」
(シャツにアイロンはありがたいが、ヤスリで錆落としってどうよ。曙にしては気が利いてるとしようか)
314名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:37:21 ID:AVM
提督は、半分うとうとしながら、しぶしぶ官舎を出ると、
「うー、やっと日が出てきたが外は寒いな。曙も俺が出かけて一安心だろう。俺にまた仕事…艦隊の指揮を執れなんてな。あんな目に遭わせた艦隊の皆にどの面下げれば良いんだか。しかし時間が早いな、浜にでも行って一服してくるか。」
提督、タバコをくわえて浜をぶらぶらしていると、海岸に何か落ちてます。
「何だ、こりゃ。おっ、これは…クリスマスイベントとかっていうので手に入るという、プレゼント箱だ…しかし汚ねえな…!おっと!重てえ…おや、これは大量の資源だ。やったぞ!これだけありゃ鎮守府も楽に年越しできる。これはもしや五月雨の…いや都合の良い解釈は止そうや。」
あわててプレゼント箱を持って官舎へとんでかえりました。
315名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:37:40 ID:AVM
「俺だ。曙まだ居るだろ?早くあけてくれ。」
「何よクソ提督。ちょっと待って。今あけるから…」
戸を開けて、提督を見て、
「どうしたの息を切らして。忘れ物?」
「そんなんじゃねえ。浜でこんなの拾っちまった。中を見ると資源がてんこ盛り入っているじゃねえか。驚いたのなんのって。見ろ、ほら…」
「資源?」曙は中を開けて確かめます。「油と弾とボーキが…ものすごい量。」
「これでしばらく遊んでも鎮守府には問題ねえよ。曙、酒と肴を買ってこい。それに近所の飲み仲間とオンナもよんでこい。祝い酒だ。」
提督、大喜びで、仲間をよんできて、飲めや唄えの大騒ぎ。
「かーっ、タダ酒はマジ美味いねぇ。提督ありがとさん。」
と、ちゃっかり混ざって呑んでいる隼鷹を尻目に、曙も仕方なく酒宴に付き合い一日が過ぎていきました。
316名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:38:30 ID:AVM
次の朝も、提督は布団の中、曙に起こされました。
「ねえ、起きなさいったら…」
「おい、何だよ。いい気持ちで寝ているときに起こすなよ。もうちょっと寝かせてくれ。」
「何を言ってるのよ。もう朝よ。鎮守府へ登庁しなさい。」
「鎮守府?昨日の資源があれば当分問題はねえだろう。別に俺が遠征の指示なんて出さなくていい。」
「ばかなこと言わないでよ。あんたが働かなくて、どうやって艦隊が成り立つの、このクソ提督!それに、ゆうべの飲み食いのお代だってどうするわけ?」
「そんなものは簡単さ。鎮守府の経費で落とせばいい。昨日の資源でおつりがくらぁ。」
「資源?なによそれ?」
「昨日、浜で俺が拾ってきたのがあるじゃねえか。」
「浜で拾った?なに言ってんのよ!昨日はどこにも行ってないわよ。一日中寝てたじゃない。」
「なんだと。浜に行かなかった?そんなことがあるものか。俺を起こして、無理やり鎮守府に行かせたじゃあねえか。でもな、まだ時間が早かったんで一服しに浜に行って、あの沢山資源のつまったプレゼント箱を拾って帰ったんだ。それがねえって言うのか?」
「成程ね。それであんなバカ騒ぎをしたの…全く情けないわ!いくら資源が尽きてたから、責務に耐えられないからって、資源を拾う夢を見るなんて!」
317名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:42:02 ID:AVM
「夢?」
「そう。夢に決まってるじゃない。昨日は何回も起こしたけど、起きなかった。
お昼ごろ、ようやく起きたと思ったら、風呂へ行って、帰りに隼鷹さん達引っ張ってきて、
あんた、『めでたい。うれしい。酒だ、うなぎだ、天ぷらだ…さあ買って来い。』って大声上げて、そして飲めや唄えの大騒ぎ、さすがの私でも気でも違ったのかと心配したわ。あげくの果てに、ぐてんぐてんに酔っぱらって眠ってしまった。
昨日はそんなありさまで浜なんか行く暇なかっんだから…分ってんのこのクソ提督!?」
318名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:43:12 ID:AVM
「…曙、本当に夢なのかい?」
「あたしの言うことがウソだっていうの?」
「いや、お前の言うとおりかもしれねえな。でも…本当に夢か?歳末も近いっていうのに変な夢みたもんだな…
ってえと何だ?プレゼント箱拾ったのは夢で、飲んだり食ったりしたのは現実?
…情けねえ!あんな夢見るなんて。部隊を守る為に散った五月雨の為にも何とか頑張らなきゃってのにさ、
一人ぐだぐだ悩んで酒に逃げてた俺が…全部悪いんだ。もう酒はやめる。これからは提督として皆を導くんだ。
もう二度と五月雨の様なのはごめんだ、絶対させねえよ!曙、やっと目が覚めたぜ。」
319名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:46:07 ID:AVM
それからというものは、提督、朝早くから夜遅くまで公務に精を出しました。 もともと優秀な提督、一時劣勢だった戦局をたちまち覆しどんどん進撃していきました。
一年が経ち、艦隊の規模もずいぶん大きくなり、一隻の損失も無く無事に新年を迎えられる事となりました。

そして再び歳末の近づいたある日…
「掃除が終わったら、ちょっとこっちに来て。」
と昨年の今頃と変わらず着物を着込んで大掃除を手伝っている曙が声をかけます。
「ふぅ片付いた。いま行くよ。深海棲艦共に優勢なまま正月を迎えられるとは有難いよ…五月雨も少しは許してくれるかな。
あいつの犠牲に報いる為にも、俺達は戦い抜いたんだ。曙にもいろいろ世話をかけた。
お前が俺の目を覚ましてくれたおかげだ、すまねえ。」
「何もあやまらなくたって…」曙、ほんの少しニコっとしたような。
「俺が言いていのは、『ありがとよ』ってことさ。今んとこ敵がどこからも攻めて来ねえ、
全員無事に年が越せるってのは気持ちがいいもんじゃねえか。」提督、ご機嫌です。
「あの…その…あんたに聞いてもらいたいことがあるの。 私の話が済むまで怒らないって約束してよ、クソ提督…」
提督、戸惑いつつも曙の真剣なまなざしに、
「なんのことだかわからねえが、約束するよ。」
「本当?」
「ああ、約束するよ。」
320名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:50:34 ID:AVM
「じゃ、この箱を見てもらいたいのよ。」
「汚ねえけど、クリスマスで手に入ったやつか。これがどうした?」
「中に資源が沢山入ってる、この資源と汚い箱に心当たりはない?」
「そう言われてみれば、ちょうど去年の今頃ひでえ夢みたな。夢ん中で、資源の一杯詰ったプレゼント箱を浜で拾ったな。」
「…あれは夢じゃなかった。あんたが本当に拾った…」
「何だと。本当か!曙、なぜこんなウソを!」
「私の話が済むまで怒らないって約束したでしょ、このクソ提督。」
「した。確かに。」
「あの時は、あんたのこと本当に心配したのよ。提督なんかやめて、毎日酒を飲んで暮らすって言ってた。
あんたが寝込んでいる間に、箱を持ってあんたの上官へ相談に行ったんだよ。 すると、上官殿は、
『出所不明のあの資源を使えば、遅かれ早かれ何か問題になり軍事裁判にかけられるやもしれん。
俺がかわりに大本営に掛け合うから、お前さんは夢だということにしてごまかしなさい。』って言われたのよ。
あんたは人がいいから、私の言うことを信じて、酒もやめて一生懸命軍務に勤める決心をしてくれたわ。
おかげで艦隊全員の士気と結束も高まって戦果も挙げた…でもあんたが仕事に精を出しているのを見るたびに、
私はいつも心苦しかった。この資源も解らず仕舞いで半年前に上からさがってきたんだけど、私は心を鬼にして隠してきた。
でもあんたはすっかり元の頑張る提督に戻ったようだし、この箱を見せることにしたのさ。
腹がたつのももっともだろうけど。配下の駆逐艦にだまされて。
さあ、気が済むまで、あたしを罰するなりなんでも好きにしなさいよ。この…クソ提督…」
「罰する、とんでもねえ。えれえ。お前はえれえ!あの時あの資源ありゃぁ、俺は、引篭もって呑んだくれて、
しまいにはアル中で野垂れ死にしていただろうな。 俺の上官の言うように、軍法で裁かれてきつい処罰されてたかもしれねえ…
こうして誰も欠けることなく正月を迎えられるのも、みんなお前のおかげだ。俺ぁ、あらためて心から礼を言うぜ。ありがとよ曙!」
「本当に許してくれるの?」
「許すもなにも、曙、お前に礼を言ってるじゃねえか。」
321名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:52:11 ID:AVM
「私…うれしい…ってあまり調子に乗らないでよね、このクソ提督。でも今日だけは…一年間頑張ったご褒美みたいなものよ。」
「お、酒か。燗をつけたのか?台所からいい匂いがしていると思っていたら、そういうことか。」
「べ、別にあんたの為ってわけじゃないんだから。飲みたきゃ飲みなさい!」
「曙お前、悪態つきながらもやっぱり俺を見守ってくれたんだな。随分と飲んでないからなぁ。ありがとうよ…ありがてぇ。じ

ゃあお言葉に甘えて、一杯やるか…おっとっと、久しぶりだな。匂いだけでも酔っぱらいそうだ。たまらねえな…でも。」
提督は酒を飲むのをやめます。
「止めとく。」
「どうしたのよ。クソ提督。」
「…また夢になるといけねえ…一緒に晴れ着姿のお前も消えちまうと困るぜ。」

―――――――――――――――――――――――――――

「……てなわけで皆様一席ご清聴、真にありがとうございやした!」
「中々のもんだねえ。涼風さんも素人ながらいい噺っぷりだ。しっかし温った酒蔵謹製瓶入り甘酒美味しいねえ。」

 涼風は年末の鎮守府で艦隊の新年会の出し物の練習をしていた。丁度ヒマだった谷風や五月雨、山城らが彼女の最初の観客となり噺に聞き入っている。

「まあかくし芸としてはいいんじゃない。尤も、姉さまと私のはさらにレベル高いけど。」
「涼風ちゃん、私を勝手に殺さないでよね。いくらフィクションでもあんまりです。」
「丁度秘書艦やってる五月雨が適役だと思ったけど、今度の噺でヒロインにするから勘弁してえなっと。」

 涼風と五月雨のやり取りを見ながら飲み物に手をつけた山城が突然立ち上がって、

「江戸落語もいいけど、ヒック、上方落語の方が素晴しいのよ。上方文化の中心地は京都よ、き・ょ・う・の・み・や・こよ、ヒック!」

 どう見ても酔っ払っている…五月雨が甘酒を注いだのに。

「山城どうした?なんかおかしいぜ。あれ?山城の飲んでるのってこれ…」
「ああっ、いけない!甘酒の瓶と間違えて、御屠蘇の方注いじゃった…」
「全くそそっかしいねえ。ま、いつも通りの五月雨姐さんらしいや。」
「そりゃいけねえな。っておい、皆で山城止めるんでい!酔っ払いを野放しにできっか!」


 その頃提督の執務室。提督と曙が大掃除をしていた。

「クシュン、クシュン…何よこれ?クシャミが止まらない、日ごろ掃除してないからよ。」
「まめに俺と五月雨で掃除してるんだがなあ。んん…ヴァックショイ!誰かが俺たちの噂でもしっ放しなのかも。浮いた噂をさ。」
「浮いた噂…!?そ、そんなの有るわけないでしょ!でも…あたしで良ければ…ってなに言わせんのよ、このクソ提督!」

 こうして或る鎮守府の、或る艦隊の、年の暮れは過ぎてゆく…

 提督も艦娘達も良い新年を迎えられますように。


[完]
322名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:54:49 ID:AVM
この場を借りれてどうもありがとうございました。
金曜日のアプデで年始曙を見て寄席に行く→芝浜を聞く→ムラムラしてやった後悔はしていない
それではスレの皆様良いお年を
323名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)09:56:31 ID:AVM
しかし年の瀬噺なので年末に間に合ってよかった…でも艦これで落語って需要無いだろうな
艦これ講談は実演されてますけど
324名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)12:01:47 ID:8Cx
>>323
乙、面白かったです
時期的にも良いしイイハナシダナーとちょっとほっこり
曙さんと提督は良い夫婦漫才ができそう
325名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)12:03:34 ID:8Cx
って、落語なのに漫才じゃいかんね…失礼しました
326名無しさん@おーぷん :2014/12/30(火)17:25:44 ID:hpq


またこうしてクソ提督が増えていく
327名無しさん@おーぷん :2015/01/01(木)07:05:33 ID:rES
あけましておめでとうございますー

落語面白かったです
あぁ、クソ提督になっていく……
328名無しさん@おーぷん :2015/01/03(土)05:55:35 ID:uHw
お目汚しかもしれませんが
川内のR-18ものです
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4743665
329名無しさん@おーぷん :2015/01/06(火)05:13:21 ID:J3M
ちくしょう! 完全にkomeに監視されてんじゃねえか!(ビクンビクン
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4754404
330名無しさん@おーぷん :2015/01/07(水)14:05:41 ID:tLE
はい R-18です にこーせんのお姉さんたちです
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4760977
331進め、百里浜艦娘隊! :2015/01/11(日)19:58:21 ID:EmG
投下します。

あらすじ。

百里浜基地隼鷹部隊。
その攻撃目標は、規格外の強さを持つ空母ヲ級だった。
高い戦闘能力と、なによりも桁違いの装甲値を持つ空母。
大和の砲撃すら通じないという異様な頑丈さ。

その装甲を斬り裂く兵器として、白羽の矢が立てられたのが神通の持つ刀だった。
332進め、百里浜艦娘隊! :2015/01/11(日)19:58:52 ID:EmG

第17話 それはイレギュラー

 隼鷹は右手に持った羅針盤を眺めていた。
 羅針盤の形をした深海棲艦探知機。どちらに深海棲艦がいるかを示すものだが、羅針盤
妖精は何故か派手に羅針盤をぶん回す。
 くいと眼鏡を動かし、霧島が羅針盤を見やった。

「いつも思うのですけど、この羅針盤――本当にアテになるのかしら?」
「それは言わない約束さ」

 苦笑いをしながら隼鷹は答える。頼りになるのかならないのか分かりにくい羅針盤。針の
示した方に行けば深海棲艦を発見できることが多い。何も無かったという事も、微妙に多か
ったりする。そして、羅針盤を無視して進めば、まず深海棲艦とは出会えない。
 完璧ではないが、現状もっとも有効な探知機と言えるだろう。
 ちらと隼鷹は後ろに眼をやった。
 神通が刀の柄に手を添え、静かに口を開く。

「空母ヲ級……イレギュラー。それが今回の討伐目標ですね?」
「はい」

 頷いたのは大和だった。神妙な面持ちで視線を僅かに落とす。
 無印、エリート、フラグシップ、フラグシップ改。深海棲艦の区分けはこの四種類だが、その
系列から外れたイレギュラーという呼称がある。表向きにはされていないが、完全な規格外
の深海棲艦は数は少ないながらも実在していた。先日見かけた変なレ級も、イレギュラーか
もしれない。隼鷹はそう考えている。
 大和は静かに続ける。

「私も以前対峙したことがあります。艦載機を操る力はかなりのものです。フラグシップ改を
上回るレベルでしょう。加えて何よりも厄介なのが――異様な装甲値です。この大和の46cm
連装砲の連撃を余裕で耐えるほどの堅さです」

 と、艤装の46cm三連装を見つめる。
 現在の艦娘で最大の攻撃力を誇る46cm三連装。それが通じないのなら、残る正攻法の手
段は非常に少ない。重巡か雷巡が、夜戦にて至近距離から全弾撃ち込むなど。
 だが、正攻法でない手段ならいくつもある。

「その装甲を斬り裂くために、私が呼ばれたのですね?」

 神通が腰の刀に手を添えた。
 斬鉄剣・流星――刃渡り二尺一寸の直刀。白樫の合口拵えで、見た目は仕込み杖のよう
な刀である。非常識な切れ味を持ち、丸太や岩から鋼鉄、深海棲艦まで問答無用で斬り裂
いていく特殊兵装だった。通常兵装とは桁の違う力を持つ兵器である。

「そういうこと」

 隼鷹は神通と大和に笑いかけた。
333進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)19:59:26 ID:EmG
「作戦は単純明快さ。瑞鶴と霧島とアタシで敵艦載機を全部撃ち落とす。で、制空権取って
から、大和と多摩で露払い。そして、神通がヲ級を斬る、ってな具合」
「……」

 神通と大和、揃って目蓋を下げる。
 かなり適当で無茶苦茶な作戦だ。神通や大和も、その自覚はあるのだろう。それでも、相
手は正攻法の通じないイレギュラー。非常識な攻め方をしないと倒せないのだ。

「援護はこの隼鷹様に任せなさい」

 そう宣言して、隼鷹は自分の胸を叩いた。





「十時の方向に敵影発見!」

 瑞鶴が声を上げた。
 機銃による撃墜専門だが、一応彩雲も持っているため、索敵も行っている。艦載機は索敵
するもの、と言い切る機銃至上主義者であるが。

「例のヲ級旗艦、軽空母二体、戦艦二体、重巡一体、軽巡一体、駆逐四体」
「って連合艦隊編成かい!」

 思い切り隼鷹は声を上げた。
 水上部隊もしくは機動部隊に、水雷戦隊を加えた、大型艦隊である。様々な制約から艦娘
も深海棲艦も、一隊六人編成が限界だが、連合艦隊編成を用いれば十二人まで艦隊に組
み込むことが出来る。その戦闘力は推して知るべし。

「敵の出方に注文は付けられませんから」
「今回は好きにやらせてもらうにゃ」

 微苦笑を見せる神通と、肩をすくめる多摩。相手が連合艦隊編成であるというのに、怯ん
でいる様子もない。艦娘というものはかつての大戦で沈んだ船の意志であり、勇気である。
見た名よりも遙かに肝は据わっているのだ。

「来るわよ――」

 瑞鶴が左腕を振り上げた。
 空の向こうから飛んでくる数十の艦載機。SFっぽい見た目の深海艦載機に、白いたこ焼
きのような艦載機。

「ではみなさん」

 神通が海面を蹴り、走り出す。

「神通――突撃します……!」
334進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)20:00:10 ID:EmG
「お先に失礼するにゃ」

 同じく多摩も走り出した。
 このまま何も考えずに直進すれば、飛来する艦載機の爆撃に晒されることになる。
 が――

「航空戦開始ね」

 瑞鶴が駆け出した。右腕と左腕に装備した25mm三連装機銃。さらに肩に乗せた12cm30
連装噴進砲。艦載機を使わず、全て銃撃で撃ち落とす装備だった。

「来なさい、カトンボたち。全部撃ち落としてあげるわ!」

 瑞鶴が舞う。

 ドバババババババッ!

 踊るような滑らかな動きから、火を噴く銃口。銃口は正確に艦載機を捉え、撃ち出された
銃弾は、一撃で艦載機を粉砕する。思考よりも速い本能で艦載機の位置を把握し、条件反
射で機銃を構え、そして撃ち落とす。
 空母の常識を無視するような神業。まさに機銃マスターだった。
 飛来する敵艦載機が次々と撃ち落とされていく。

「それでは私も始めますか――」

 霧島が背中のアーム型艤装に縛り付けていた十字架を取り外した。重さ数百キロの代物
だが、艤装を装備した海上なら、そう苦労する事無く振り回せる。
 霧島は十字架を頭上に振り上げた。足を真上に向けた上下逆さまの状態へ。

「問答無用調停装置パニッシャーくん二号改、解放!」

 バンッ!

 十字架に巻き付いていたベルトが弾け、布が吹き飛び、中身が露わになる。
 白い装甲に包まれた巨大な十字架。

 ガシャン!

 十字架が中心から左右に分かれた。さらに足部分の外装が横にずれ、内部の機関砲が
現れる。口径12.7mmの重機関砲。そして内部に格納されていたトリガーとグリップが飛び出
した。十字架が一瞬で二丁の大型機関砲へと姿を変える。
 落ちてきた二丁の重機関砲を、霧島は両脇に抱え込んだ。両手でグリップを掴み、指をト
リガーにかける。水上機母艦の千歳千代田がカタパルトを構えるように。それだけでは終わ
らない。アーム型艤装から飛び出したコードが数本、機関砲に接続される。

「艤装との接続確認! 三式弾生成確認――そしてェ!」

 凶暴な笑みを口元に貼り付け、霧島は銃口を敵艦載機に向けた。機関砲だけでなく、アー
ム型艤装の砲塔も空へと向けられている。
335進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)20:00:43 ID:EmG
 トリガーを引き、霧島は咆えた。

「弾幕はァ、パワーだ! 火力だ! 速度だ! 手数だ! 密度だ! 猛れ砲身! 爆ぜろ
爆薬! 咲け三式弾! 燃え上がれ焼夷弾! 堕ちろ艦載機! 銃身燃え上がるまで、撃
ちまくれェェェェ! オラオラオラオラオラオラァァッ!」

 ドゴゴゴゴゴガガガガガガ!

 轟音とともに爆裂する火花。二丁の機関砲から撃ち出される無数の弾丸。艦娘用弾丸生
成機構によって作り出された三式弾の弾幕だった。三式弾は空中で爆裂し、さらに無数の
焼夷弾となって飛び散る。
 文字通りの弾幕が、敵艦載機をなぎ払っていた。
 正確無比な瑞鶴の射撃と、霧島の作り出す無数の弾幕が、飛来する艦載機を次々と撃ち
落としていく。戦闘機を使わず、機銃と砲火だけで敵艦載機を圧倒していた。
 撃墜される艦載機を無視し、神通と多摩は前進する。

「ぅゎぁ………」

 隼鷹は何も言えず、瑞鶴と霧島の猛攻を眺めていた。
 覚悟はしていたが、非常識極まりない光景である。

「気をしっかり持ってください。隼鷹さん」
「!」

 声を掛けられ、我に返る。
 振り向いた先には大和が立っていた。どこか投げやりな笑みを浮かべているが、それでも
瞳には静かな闘志を燃やしている。
 一度息を吸い込み、隼鷹はにやりと口を笑みの形に変えた。

「よーし、改装強化済みの隼鷹さん攻撃しちゃうよー!」

 巻物型の飛行甲板を広げ、式紙を収めた巻物を広げる。まだ非正攻法の戦い方には慣
れていないが、自分のやるべき事はしっかりとやらなければならない。瑞鶴と霧島の対空放
火で艦載機はことごとく落ちているが、全滅とは言い難い。
 式紙が飛行甲板を走り、艦載機へと姿を変える。

「さあ、ぱーっと行こうぜ、烈風、彗星一二甲! 者どもかかれえええ! くれぐれも巻き込ま
れるなよー! フレンドリーファイア、駄目、絶対。なー!」

 緑色の艦載機が、撃ち漏らした敵艦載機目がけて飛んでいく。
 そして大和も主砲を構えた。

「戦艦大和、砲雷撃戦始めます――」
336進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)20:01:17 ID:EmG
 飛来する砲弾を避けながら、神通と多摩は敵艦隊の奥へと突き進む。通常ならば相手の
位置や自分の位置を考え移動するのだが、今回はひたすら直進していた。
 前方に見える敵駆逐艦と敵軽巡洋艦。

 ドッグォン!

「――!」

 右前方から接近していた駆逐ニ級後期型が、消し飛んだ。大和の砲撃である。直撃すれ
ばほとんどの深海棲艦を一撃で粉砕する46cm砲の威力。

「さすがは大和さんです」

 立ち上る水柱を一瞥し、速度を緩めることなく神通は進む。
 左前方に見える軽巡ト級。両肩の主砲を神通たちへと向けた。

 ドッ!

 近くに着弾する砲弾。水しぶきが舞い上がり。

「こっちは任せるにゃ」

 多摩が海面を蹴った。両手両足を使った猫走法によって、ト級との間合いを詰め、跳び上
がる。舞うように踊るように空中で体勢を切り替え。

「二級挽き肉〈ドゥジェム・アッシ〉にゃ!」

 ドドド、ドガッ!

「――!」

 連続蹴りがト級を容赦なく粉砕した。提督と料理長によって教え込まれた体術と、猫のよう
に柔軟に強靱に鍛え上げられた体躯。繰り出される蹴りは、下手な砲撃を軽く上回る。軽巡
程度なら一撃で粉砕できるほどだ。

「では、征きます」

 神通は息を吸い、人差し指をこめかみに押しつけた。指先でねじ込むように、こめかみを
強く押す。特定の動作を引き金として、集中力を極限まで高める精神制御方法。提督から教
えられた技術のひとつだった。

 ィィィィ――!

 軋むような音が耳の奥に響く。
 意識が、凄まじい速度で加速を始めた。
 脳が、神経が、筋肉が完全にリミッターを外された。敵の位置、波の動き、飛び回る艦載
機、流れる風。飛び交う砲弾。五感全てが世界へと広がっていく。
337進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)20:01:54 ID:EmG
「脳が焼けるようです。持って十五分でしょう――」

 極限集中。神通の切り札のひとつだった。
 多摩が艤装から爆雷を掴み取った。小さなドラム缶のような三式爆雷。本来なら潜水艦目
がけて射出するものだが、多摩は爆雷を右手で握りしめ、大きく振りかぶった。

「提督直伝! レーザービームにゃあ!」

 筋肉をバネのように跳ねさせ、爆雷を投げる。
 一直線に空を裂いた爆雷が――

 ズドォン!

 重巡リ級を直撃した。衝撃と爆発に、リ級の身体が砕ける。しかし、完全破壊には至らず
中破程度のダメージだった。

「もう一発にゃ!」

 ドゴォン!

「………」

 二発目の爆雷が直撃し、リ級は海面下へと沈んでいった。解せぬといった面持ちで。
 投げやすい大きさと重さのものを、敵目がけて思い切り投げつける。誰が言い出したかレ
ーザービームと呼ばれる投擲攻撃だった。

「爆雷は投げるものではないですよ、多摩さん」
「問題にゃい」

 神通の指摘に、多摩は言い切る。
 それから額の上に手を翳した。遙か先に見えるヲ級の影を眺める。敵連合艦隊旗艦空母
ヲ級イレギュラー。ここからの距離は七百メートルほど。ヲ級の前には戦艦二体と軽空母二
体が立ちはだかっている。

「旗艦は遠いにゃぁ」

 吐息する多摩に、神通は口を開いた。

「多摩さん」
「何にゃ?」

 首を傾げる多摩に、告げる。

「アレをやりましょう」
「アレにゃ?」
「アレです」

 きっぱりと告げる神通。
338進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)20:02:43 ID:EmG
 そして。

「分かったにゃ!」

 大きく頷き、多摩が右足を持ち上げた。
 神通はその足の上に飛び乗る。

「空軍〈アルメ・ド・レール〉――」

 遙か先のヲ級を睨み付け、多摩が吼えた。
 左足を一度曲げ、海面を蹴って全身のバネを爆発させる。筋肉の伸縮、重心の移動、身
体の回転。それらの勢いを全身で利用し、右足を全力で振り抜いた。
 足に乗せた神通ごと。

「軽巡〈ライト・クルーザー〉シュートにゃ!」

 ドゥ!

 神通が飛んだ。
 振り抜かれた多摩の足。まるでカタパルトのように、神通を空へと撃ち出していた。
 淡茶色の髪の毛をなびかせ、神通は空中を突き進む。

「………」
「――……!」

 呆然と見上げる戦艦タ級、ル級。軽母ヌ級は艦載機を飛ばすこともできない。あまりに非
常識な事態に、思考が追いついていないようだった。実際、艦娘が空を飛ぶことなど、ありえ
ないのだ。普通は。
 前方の障害を飛び越え――

 ドバァン!

 神通は海面へと着地した。
 勢いは落とすことなく、海面を走り、目標へと一気に肉薄する。戦艦や軽空母は、多摩が
片付けてくれるだろう。自分の獲物はひとつ。空母ヲ級。

「あれが……空母ヲ級イレギュラー」
339進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)20:03:20 ID:EmG
 神通の正面に佇む、空母ヲ級。
 黒いクラゲのような帽子を頭に乗せ、白いボディスーツとマントを身に纏った少女のような
深海棲艦。しかし、他のヲ級とは明らかに違う。帽子を斜めに走り、みぞおちから左腰まで
抜ける創傷跡。巨大な刃物で斬られたような跡だ。そして、顔から右腰まで走る、四本の傷
跡。巨大な獣が引っ掻いたような生々しい爪痕だった。左目には眼帯を付けている。二種類
の傷跡は肌だけでなくボディスーツにも残っている。深海棲艦の服は皮膚に近いものらしい。
 右手には自身の身長ほどもある、長い杖を持っていた。

(一体何と戦ったら、こんな傷を負うのでしょうか……)

 資料で姿は知っていたが、実物は写真とはまるで違う迫力がある。誰が呼んだか、疵面
〈スカーフェイス〉ヲ級。身体に刻まれた傷跡を一体誰が付けたのか、それは神通の知るとこ
ろではなかった。

「………」

 ヲ級は神通の姿を見据え、杖を持ち上げる。口元には薄い笑みが浮かんでいた。その笑
みが何を意味するかは分からない。
 ただ、神通も同じように笑みを浮かべる。腰の刀に手を添え、鯉口を切る。

「いざ、尋常に勝負!」



空母ヲ級イレギュラー
非常に高い戦闘能力を持ったヲ級。単純な能力だけでもフラグシップ改以上、そして大和の
46cm砲すら通じない異様な装甲値を誇る。
身体には大きな傷跡があるが、何と戦って出来た傷なのかは不明。
所持する杖は自身の身長と同じくらいの長さ。
340進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/11(日)20:04:20 ID:EmG
以上です
続きはそのうち
341名無しさん@おーぷん :2015/01/16(金)12:37:59 ID:chq
くっ……いいところで……!
百里浜のか艦娘は規格外過ぎる……

久々に来たら川内ちゃんのお話が上がってて流石に気分が高揚しました
342名無しさん@おーぷん :2015/01/30(金)03:32:48 ID:bDc
なんか随分停滞してるっぽいからスレ汚しだけど冬コミの感想を替え歌に。

『企業じゃないと何にも する事なんて無いと
 西屋展に行ったけど 最後尾の在処が分からない
 ほらチケットで入れたもんね だけど既に列出来てる
 これが徹夜組なら文句も 思いきり言えるのに

 壁目当ての時は 行列に呆れたけど
 遂に企業に行き着いた 僕はもっと並ぶようになった

 KADOKAWAを頼む君の 気持ちは分からないけど
 いつも通り人が多い 艦これの看板を探しているよ
 もし君に一つだけ 強がりを言えるのなら
 もう企業は行かないなんて 言わないよ絶対


 二つ並んだ大手列も 一つは捨ててしまおう
 君の趣味のあの列も とてもじゃないけど買えないだろう
 「完売です」と叫ぶ売り子に 立ちすくむ僕らは
 世界中の誰より一番 センチメンタルだろう

 こんなにいっぱいの 痛い紙袋抱えて
 ずっと他人に指差され 帰るのも幸せと知った

 買い出しの催促が メールで届いてる内は
 並ぶかどうか悩んでいる 『限定販売』は入手したいから
 コミケで買えなかった グッズは今夜調べる
 宿に備え付けのネットで 見付けてみせるから

 本当に 本当に グッズ大好きなんだから
 もう企業は行かないなんて 言わないよ絶対』
343名無しさん@おーぷん :2015/01/30(金)03:34:30 ID:bDc
ところでこのスレでSS書いてる人たちって同人活動したたりするのかな?
344名無しさん@おーぷん :2015/01/30(金)04:55:12 ID:Wze
>>342
マッキーだったか!
最後で分かったです

>>343
自分は同人活動はしてないですね……
そこまで上手いわけでもないですし(´・ω・`)
345名無しさん@おーぷん :2015/01/30(金)05:08:50 ID:s5S
>>342
マッキーだったか!
最後で分かった!

>>343
自分は同人活動はしてないですね……
遅筆で気まぐれなので、なかなか(´・ω・`)
あと、そこまで上手いわけでもないですし
346名無しさん@おーぷん :2015/01/30(金)05:10:06 ID:Wze
>>345 >>346
うへ、ダブってる
申し訳ない……
347進め、百里浜艦娘隊! 17話 :2015/01/30(金)23:25:09 ID:BdO
投下します。
348進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:26:08 ID:BdO
第18話 斬り込め、最強の軽巡!



 水面を蹴り、神通は進む。
 目の前に佇むヲ級めがけ、さらに加速しながら。
 猛獣に裂かれたような傷跡を持つヲ級。左目に眼帯を付け、自身の身長ほどもある長い
杖を携えていた。高い艦載機運用能力に加え、異様な装甲値を持つイレギュラー。資料に
よると、値推定九百。その非常識なヲ級を斬ることが、今作戦における神通の任務だった。
 ヲ級は杖を持ち上げたまま、神通を見つめる。自然体の構え。

「百里浜一刀流――」

 声には出さず、しかし神通は咆哮した。

「流し斬り!」

 白刃が舞う。
 逆手で鞘から抜き放たれた刀が、横薙ぎにヲ級へと襲いかかる。突進から抜刀の勢いを
利用し、初手で相手を両断する、神通の得意技であり必殺技だった。

 ギィン!

 ヲ級の杖が、刀を受け止めた。
 岩でも鉄でも斬り裂く、無垢の刃。今まで斬れなかったものはない。重巡も空母も戦艦も
斬ってきた。だが、その刃を、ヲ級は杖で受け止めた。

「やはり簡単にはいきませんか……」

 神通はさらに踏み込み、右腕を突き出した。右手に装備された20.3cm連装砲。腰に装備
された五連装酸素魚雷。それらを即座に発射する。
 世界から一瞬、音が消え。

 ドグオォン! ゴッ、ガォァン!

 鼓膜を撃ち抜くような爆音とともに、ヲ級が吹き飛んだ。
 反動で神通も後ろへと跳ぶ。いや、吹き飛ぶ。夜戦でもまず行わない、超至近距離から
の接射だった。相手に与えるダメージも莫大だが、一歩間違えば自爆である。
 素早く体勢を立て直し、神通は左手の刀を逆手から順手に持ち替えた。

「密着距離からの接射。この破壊力を以てすれば、大抵の深海棲艦は沈みます――が、こ
の程度で沈むとは思えません」

 柄頭に右手を添え、前へと走る。結果は既に分かっていた。この程度で沈むならば、既に
誰かが沈めている。

「――。………!」

 爆煙を引き裂き、ヲ級が飛び出してきた。当然のごとく無傷のまま。
349進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:29:04 ID:BdO
 だが、神通の方が一拍速い。一度伏せるほどに身を沈め、全身のバネを爆発させる。水
面から生まれた力の奔流を、体内で加速させながら、刀の切先へと。

 ギッ!

 諸手突きがヲ級の胸へと突き刺さる。

「むっ」

 だが、返って来たのは硬い手応えだった。切先が一センチほど刺さっているが、それだけ
である。深海棲艦の構造上、かすり傷に等しい。
 考えるよりも速く、真横に跳ぶ神通。

 ゴゥッ!

 振り抜かれた杖が、一秒前まで居た空間を切り裂いていた。辛うじて残像だけが視界に
映る。明らかに接近戦の心得がある。しかも、達人級の。
 神通は改めて前へと出る。

 ギィン!

 斜め下からの切り上げを、ヲ級は掌底で受け止めた。

「硬い……」

 刀を引き、振り下ろされた杖を、鎬で受け逸らす。
 びりびりと腕が痺れていた。振り抜かれる杖の一撃は凄まじく重い。受け流すだけでも、
筋肉が、骨が悲鳴を上げていた。しかし、退く理由にはならない。

「―――!」

 ヲ級は杖を引き、一気に踏み込んできた。杖の間合いよりも内側に、刀の間合いよりも内
側に。握りしめられた左拳。全身が爆発する。

 ガァン!

 突き出された右拳を、神通は20.3連装砲で受け止めた。本来はこのような使い方をするも
のではないが、細かい事は言っていられない。あまりの重さに装甲が凹んでいた。

「逆風の太刀――!」

 左手の刀を順手から逆手に持ち替え、切り上げる。

 ギ、ギ……ッ!

 擦れた音を立て、切先がヲ級の腹から胸、さらに顔まで走り抜けた。普通のヲ級なら、戦
艦ル級やタ級なら、たとえ鬼や姫でも、縦に両断されていただろう。
 しかし、浅い傷ができただけである。
350進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:31:56 ID:BdO
 神通は後ろに跳び、一度距離を取った。

「…………」
「………」

 無言のまま神通とヲ級はにらみ合い。
 同時に踏み込んだ。

 ガッ。キンッ。

 硬い音を響かせ、杖と刀が激突する。
 杖を捌き、刀を振るう神通。神通とヲ級は、技術的にほぼ互角だろう。しかし、精神制御
術で限界まで集中力を引き出した神通は、ヲ級の攻撃を見切り、その身体に白刃を打ち込
んでいた。打ち込んでいたが。
 しかし、どの傷も浅く、致命傷にはほど遠い。

「噂に違わぬ、異様な装甲値です……。覚悟はしていましたけど、これは予想以上です。一体
何をしたらこれほどの硬さを得られるのでしょうか。――ッ!」

 神通は息を止める。
 振り下ろされる杖が見えた。意識と呼吸の間隙を突いた攻撃。見えているのに、思考が
追いつかない。身体が動かない。避けられない!

 ゴッ。

「!」

 視界が白く染まり、全ての音が消えた。
 脳まで突き抜ける衝撃。全感覚が遮断され――順番に復帰していく。機械の緊急停止と
再起動が頭の片隅に浮かんで消えた。
 耳の奥にノイズのような音が満ちている。
 ヲ級の振り下ろした杖が、神通の額を直撃していた。いや、咄嗟に鉢金で受けた。
 割れた鉢金が、海面へと落ちる。

「あ……」

 蹌踉けるように神通は一歩下がった。
 ヲ級が踏み込んでくる。踏み込みの勢いから、まっすぐに杖を突き出してきた。

 ドッ。

 左手に返って来る手応え。

「………!」

 ヲ級が顔を強張らせる。
 神通が握った刀が、ヲ級の腹に突き刺さっていた。切先だけではない。かなり深く――切
先が背中側から飛び出すほどに。つまり刀がヲ級を貫通していた。杖を躱し、カウンターで
突きを打ち込んだのである。
351進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:32:44 ID:BdO
「少し――固さに慣れてきました」

 薄く微笑みながら、神通は刀を引いた。
 間髪容れず一閃!

 パッ。

 首元の留め具を砕かれ、ヲ級のマントが千切れ跳ぶ。
 神通の振り下ろした刃が、袈裟懸けにヲ級に斬り込んでいた。首元から入り、鎖骨を切り、
胸元へと。表面だけではない。生身の生物なら確実に致命傷になる深さを以て。異様な強度
の肉体を斬り裂いていた。
 しかし、胸元で刃は止まっていた。
 ヲ級が杖で刃を止めている。

「やはり、核の位置はそこなのですね?」

 艦娘にも深海棲艦にも、肉体を形作るための核がある。極端な話、脳よりも重要な部分
であり、弱点だ。どこにあるかは個人差が大きく、外見からでは分からない。
 しかし、幾多の戦いから、ヲ級の核の位置はほぼ特定されていた。
 心臓部分のやや左側。
 深海棲艦は沈んでも復活してくるが、核を破壊されれば最低数年は復活できない。あくま
で肉体の核なので、完全消滅はさせられないが。

「―――。………!」

 ヲ級が後ろへと跳び、間合いを取る
 神通は左手の刀を指の間に握り込んだ。握った五指の人差し指と中指とで柄を挟む奇妙
な構え。さらに、切先を右手で掴む。握った人差し指の腹と、親指で。
 筋肉が軋むような異音。
 両目を見開き、神通は踏み込む。

「百里浜一刀流・流れ星――」

 刹那の閃き。
 限界まで溜められた筋肉のバネが爆発する。残像すら残らぬほどの速度で、白刃が横薙
ぎに繰り出される。ヲ級の首目がけて。

 ―――!

「!」

 しかし、神通の刀は空を斬っていた。
 ヲ級は海面を蹴り空中へと跳び上がっている。
352進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:33:43 ID:BdO
 そして。
 杖を、抜く。
 中程を左手で掴み、鈎状の部分を右手で持ち、右手を横に振り抜いた。大きな剣を鞘か
ら抜くように。事実、それは仕込み杖だった。
 銀色の液体が、杖の鞘から鈎状の柄に引き出される。それも一瞬。次の瞬間には長大な
刃へと姿を変えていた。刃渡り百二十センチはあるだろう、片刃の大剣。身幅は十センチ
以上もあり、巨大な包丁にも見える。

「これ、はっ――!」

 自身と相手の動きを計算し、神通は即座に決断する。
 両手で柄を持ち、ヲ級が大剣を振り抜いた。神通を縦に両断する軌道で。

 ドォンッ!

 火を噴く20.3cm連装砲。
 巨大な刃が身体の真横を通り過ぎる。
 砲撃の反動で無理矢理斬撃を避け、神通はさらに無理矢理体勢を立て直していた。視線
を上げ、空中のヲ級へと狙いを定める。柄頭を握り、身体を沈め、

「百里浜一刀流・牙突三式――!」

 ガギッ!

 一直線に突き出された直刃が、ヲ級の左腕を貫き、右肩に突き刺さった。回避のできない
空中。核を狙ったのだが、腕を盾に防がれてしまっている。あえて腕を貫かせ、腕を動かし、
突きの軌道を変えたのだ。
 刀を素早く引き抜き、神通は体勢を立て直す。

「残念です……」
「………。―――」

 ヲ級が海面に降り、振り向いた。

 ギィン!

 長大な片刃の大剣と、反りのない直刃が激突する。
 一拍遅れて。

 ばしゃっ。

 吹き飛んだ20.3cm連装砲が海面に落ちた。神通の右腕とともに。
 神通の右腕は二の腕の中程から切断されている。砲撃の反動を利用して辛うじて避けた
のだが、完全に逃げ切ることはできなかった。

 ガキッ!

 横薙ぎの一撃を、逆手に持った刀の鎬で受ける。
353進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:34:55 ID:BdO
「さすがに片腕だけだと、戦いにくいですね……」

 少し弱音を吐きながら、しかし瞳に灼け付くような闘志を燃やし、神通は刀を振るう。腕一
本失っているが、引く気は微塵もない。

 ギンッ。

「―――。――!」

 ヲ級は右手だけで大剣を盾のように構え、刀を防ぐ。
 本来は両手で構える武器だが、左手がまとも動かないようだ。神通の刀を受けた左腕は、
傷口を中心に数本の亀裂が走っている。芯を絶たれたのだろう。骨も筋肉も無い深海棲艦
だが、一応神経のような部分はあるらしい。

「まだ、まだ……まだッ!」

 振り下ろされる大剣を躱し、神通は刀を振るった。
 斬られた腕がゆっくりと海流に流されていく。重い20,3cm連装砲を持っているが、艦娘の
身体や装備は、水に浮く性質があった。

 閃く刃と、唸る風切り音。
 お互いに避け、防ぎ、攻撃を繰り出す。
 一手一手確実に相手の手札を読み、詰みへと進んでいく。

 そして、動いたのは神通だった。

「百里浜一刀流――」

 腰を深く落とし、半身の構えから左手を大きく後ろに引く。弓を引き絞るように。柄頭を握
り、刀を水平に構え、切先をヲ級へと向けた。本来なら右手を前に突き出し、照準兼反動の
重りとするのだが、今は無いので省く。

「牙突一式ッ!」

 爆発するような突進から、神通は刀を突き出した。

 ザギィッ。

 衝撃。異音。

「………」

 ヲ級の身体が傾いた。
 胸に、神通の刀が突き刺さっている。強烈な突きから、そのまま刀を投げ放ち、ヲ級の胸
に撃ち込んだのだ。核があるだろう心臓のやや左側へと。

「…………」
354進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:35:42 ID:BdO
 刺さった刀の傷口から、青黒い液体が一筋流れる。一拍後れて、口元からも青黒い液体
が流れた。深海棲艦に血液はないが、核を損傷した時のみ血のような液体を流す。身体が
崩れ溶けているのだ。
 ただ、浅い。擦った程度である。

「ぅ……」

 神通の口元から赤い血が流れ落ちた。
 視線を落とす。

「セラミック複合装甲では、力不足でしたか……」

 左胸の下に突き刺さっている銀色の刃。ヲ級の大剣だった。
 神通の突きと同時に繰り出されたヲ級の突きは、神通の身体を容赦なく貫いていた。制
服の下に仕込んでいた、セラミックと超硬金属の複合装甲ごと。工廠の博士が作ったもの
である。戦車の主装甲を小さくしたようなものだが、あまり効果は無かったようだ。

「がは……ぁ……」

 口から吐き出される大量の血。
 神通は片目を閉じた。身体から力が抜ける。
 艤装ではなく、肉体への致命傷。腕と胸から流れ落ちる赤い血。生命力がこぼれ落ちて
いく。轟沈ではない。生物としての死が目の前にあった。
 それでも神通はヲ級の右手首を握りしめる。逃がさないように。

「お待たせにゃああああ!」
「多摩さん!」

 視線を転じると、ぼろぼろになった多摩が宙を舞っていた。ヲ級の前にいた深海棲艦を倒
して、やってきたのだろう。大破状態だが、動きは衰えていない。
 どのような仕組みか、その右足は燃えるように白熱していた。

「蹴ってください!」
「わかったにゃ!」

 神通の叫びを、多摩は即座に理解する。

「悪魔風脚〈ディアブル・ジャンブ〉――」

 空中で身体を丸めて二回転。

「ネコキックにゃア!」

 ドガォンッ!

 多摩の右足が、刀の柄を蹴り抜いた。突進の速度に全体重を乗せた砲撃並の一撃。さな
がら杭打ち機のように、浅く刺さっていた刀を深々とヲ級の身体に打ち込む。

「―――!」
355進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:36:15 ID:BdO
 ヲ級の口から青黒い血が吐き出される。
 だが、同時にヲ級の隻眼が多摩を捉えていた。

 ザリッ……

 セラミック複合装甲が斬られる音。
 神通の胸を横に斬り裂きながら、ヲ級は大剣を引き戻した。赤い血に塗れた包丁のような
刃。艤装の防御を貫通し、肉体を直接損傷たらしめる、深海の特殊兵装。

「それは……!」
「――――!」

 神通の手を払いのけ、ヲ級は多摩へと大剣を振り上げた。
 多摩の赤紫の瞳が、刃を捉える。空中では斬撃を躱すことはできない。大剣を受け止め
るほどの力を、多摩は持っていない。受ければ受けた部分ごと斬られてしまう。

「駄目です……!」

 神通は叫んだ。

 ドッ。

「に゙あ゙っ!」

 鈍い悲鳴とともに、多摩が吹き飛ぶ。
 神通の左脚とともに。
 海面を蹴り跳び上がり、神通は力任せに多摩を蹴り飛ばしていた。多摩のいた場所を大
剣が斬り裂き、結果――その場所にあった神通の左太股が斬り裂かれた。
 探照灯の破片が散る。
 そのまま。
 空中で一回転し、神通は左手を伸ばす。

「―――!」

 ヲ級の目が見開かれる。
 神通はヲ級の胸に刺さった刀を掴んだ。
 白と黒の音のない世界。残った力が、意識が、刀へと流れ込んでいく。錯覚なのか事実な
のかは分からない。それでも身体が、刀が、知らせる。超装甲値の斬り方を。

 ズッ!

 刃が空中へと抜けた。
 ヲ級の胸から左脇腹まで斬り裂いて。
 崩れるように後退るヲ級。

「少し、やりすぎてしまいました、ね……」

 片足のまま水面に降り立ち、水面に刀の切先を刺し、平衡を取る。
356進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:36:57 ID:BdO
 消えそうな意識を気合いだけでつなぎ止め、神通はヲ級を見据えた。裂けた身体と口から、
ひび割れた左腕から、体中の傷から、青黒い血を流し、ほどなく崩壊するだろう状態で、しか
しまっすぐに神通を睨み付けている。
 口元にどこか満足げな、声なき哄笑を貼り付け。

「―――。……! ――」

 ヲ級が叫んだ。右手と、壊れた左手で柄を握り締め、大剣を大きく振りかぶる。今までの
ような滑らかさは、もはや無い。必要もない。
 燃え尽きる前の蝋燭が激しく燃えるように、力任せに斬りつけてくる。

「あなたと戦えて、この神通……」

 薄れ逝く意識の中、神通は振り下ろされる刃を見つめ。
 倒れる。

「光栄でした……」

 ドバァン!

 ヲ級の大剣が海面を吹き飛ばした。
 周囲に飛び散る白い水しぶき。
 そして、斜めに身体を切断されたヲ級が崩れ落ちる。
 神通が無心で放った一太刀。身体を捻りながら倒れ込み、刀を跳ね上げる。結果、ヲ級
の刃は空を裂き海を斬り裂き、神通の刃はヲ級を捕らえていた。
 その時には既に、神通の意識は途切れていた。


  ◆ ◇ ◆ ◇
357進め、百里浜艦娘隊! 18話 :2015/01/30(金)23:37:38 ID:BdO
「あのさ、あのさ。あたしの飛行甲板は担架じゃないんだけど……」

 隼鷹は冷や汗を流しながら声を掛けた。
 広げられた巻物飛行甲板の上に寝かされた神通。ヲ級との戦いで致命傷を負い、意識も
失っている。勝てないと感じたら別の手段を使うと提督は言っていたのだが、神通は死ぬ寸
前まで斬り合っていた。

「いや、ま……それはいいんだけどさ。何それ?」

 飛行甲板の横に立ち、黙々と手を動かしている大和に訊く。

「高密度に固めた高速修復材のようなものです」
「うんうん。それは……一応納得するとして」

 一度頷いてから。
 眉根を寄せ、続けて訊く。

「縫って治るの? これ。かなりざっくり斬れてるよ?」

 右腕と左脚と胸を切られ、意識を失っている神通。大和は曲がった針と太い糸を使って、
千切れた足を縫い合わせていた。ちくちく、と。胸と右腕は既に縫い終わっている。凧糸で
縫っているようにしか見えないのだが。

「はい。真っ二つくらいまでならさほど問題無く」

 顔を上げず、大和はきっぱりと答える。

「解せぬ」

 半眼で隼鷹は呻いた。
358名無しさん@おーぷん :2015/01/30(金)23:49:29 ID:BdO
以上です。

艦娘と深海棲艦が白兵戦したっていいじゃない!
武器のイメージは斬鉄剣(石川五ェ門)vs斬鉄剣(FFオーディン)です。

続きはそのうち。
359名無しさん@おーぷん :2015/01/31(土)22:25:02 ID:icM
前におーぷんでSSのお題の安価を取った作品が完成したので一応ご報告を
あと続編も投下予定です

(吹雪×パンツがお題でした)

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422274453/
360名無しさん@おーぷん :2015/02/01(日)15:47:53 ID:w9f
>>358
毎回すごいバトル乙
高速修復剤を糸に…そういうのもあるのか(白目)
>>359
面白かった
あのお題がこんな大作になるとは
361名無しさん@おーぷん :2015/02/03(火)00:23:54 ID:8BB
>>359の吹雪×パンツSSの作者です
突発性の黒潮病に精神を犯されたため急遽黒潮SS書きました
吹雪×パンツSSの続編はもうちょい待ってね

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422881410/
362名無しさん@おーぷん :2015/02/03(火)00:26:46 ID:8BB
>>359の吹雪×パンツの作者です
突発性の黒潮病に精神を犯されたため急遽黒潮SS書きました
吹雪×パンツの続編はもうちょい待ってね

http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422881410/
363妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:43:35 ID:27W
放置してたのがやっとできたので投下します
364妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:48:44 ID:27W
放置していたものが完成したので投下させてもらいます
365妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:50:04 ID:27W
 食堂は艦娘の皆さんと同じ場所ですが体のサイズが違うので、妖精用のスペースが有ります。調理を担当しているのは明石さんと鳳翔さんの妖精さんです。
お二人共出撃数が多い艦娘さんではないので開いた時間を利用してそれぞれの妖精さんに調理を教えたそうです。私もおいしい食事が取れるのでお二人には感謝しています。今日のお昼はカツ丼(妖精サイズ)のようです。

「お、久しぶり」
「お久しぶりです、工房妖精さん」

 私の前の席に工房で開発を担当されている妖精が座りました。お互いそれなりに忙しい場所に配属されているのでこういった場所でお会いするのは久しぶりです。

「最近どう?」
「いつも通りですよ、もし提督さんに言葉が通じたらツッコミで一日が終わるぐらいには」
「ははっ、相変わらずみたいだなあの提督さんは」
「そちらこそどうです?何週間かに一回大型建造するたびに提督さん半泣きで帰ってくるんですけど?」
「なんというか、色々しっくり来なくてな。まぁ、努力はしてるがうまいこといかないもんだ」

 しょうがないといえばしょうがないです。建造……といっても必要とされている資材を元に依り代のない付喪神になっている艦娘さんの魂を定着させる……言葉にすると簡単ですが実際は余り仕組みがわかっていないことをやっている……と資料で読んだのでどうしようもないです。
提督さんの運が悪いってのもあるかもしれませんが。

「の割にはあの提督さん、駆逐艦の皆さんとはよく出会いますね。絶対数が多いとはいえ着任報告もほぼ駆逐艦の方ですし」
「そういう星の下に生まれたんだなきっと……まぁ悪い人ではないのは確かだな」
「ですね」

 私と工房妖精さんはお互いの見解の一致に少しだけ笑いました。決して悪い人ではないんです。変ですけど。こうして話題に上がるだけ、少しおかしくてでも良い人なんだと実感します。そんなとりとめのない談笑をしているうちに二人共食事が終わりました。
366妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:51:11 ID:dJE
「ごちそうさまっと……そういやお前、今日は艦隊が帰還するんだったな」
「ええ、確か作戦に出ていた第一艦隊が」

 急に工房妖精さんが神妙な面持ちになります。

「被害はどうだったんだ?」
「赤城さん、龍驤さんが少破、その他の皆さんは損害軽微で帰還です」
「艦娘さんにはほぼ被害がなかったか……だけどな――」

 工房妖精さんがここまで言いかけて何が言いたいかを理解しました。艦娘のみなさんの装備には私達のような妖精がそれぞれ担当となってその運用を任されます。主砲の妖精ならばその発射や観測を、機銃の妖精ならば対空迎撃を、そして艦載機の妖精であればその艦載機の運用を……。

「別に、だからどうってことは言わない。あいつらもそれが仕事だ。それに装備を積むなとは言えない。ましてや出撃するな、なんて今の時代言えやしない。でもなんていうかこう……やるせないよな……」
「ええ、ですから私は覚えていようと思います。本当の名前なんて知りもしませんがそれが、執務室担当の私の責務だと思うので」
「悪い、湿っぽい話になっちまったな。お前昼も仕事か?」

 少しバツの悪そうな顔をした工房妖精さんが話題を変えてくれました。忘れてはいないことですがやはり気が重いものです。

「お昼はゆっくり休んでいいよ。って言われたのでどうしようかなと。あ、一応定時前には戻るつもりですが……」
「それならどうだ?工房にでも遊びに来るか?今日は建造開発の予定はもうないし、それに明石さん、夕張さん、霧島さんがなにやら愉快なことするそうだぞ」

「そうですね、特に予定もないですし、お邪魔させて頂きます」

 なし崩し的に午後の予定が決まりました。いくらあの提督さんと望月さんとはいえ大丈夫ですよね……多分。というか頭脳派のお三方が集まって何をされるんでしょうか?特に会議申請等はなかったように思いますが……。
367妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:51:31 ID:dJE
 昼食の食器を片付け、工房妖精さんに連れられ建造ドックや明石さんの工房が並ぶ工房へとやってきました。久々に来ましたがやはり大きいです。

「あら、こんにちわ」
「こんにちわ妖精さん」
「おや、執務室の妖精さんもお久しぶりです」

 霧島さん、夕張さん、明石さんにそれぞれ挨拶を返します。お三方は制服とはいえ艤装を外しラフな感じで一つの机を囲み椅子に座っています。机の上には大量のメモ用紙とペンが散乱しています。

「お三方、アレを貸してくれないかアレ」

 工房妖精さんがその机の上で、艦娘さん達に意思疎通を測ります。私達妖精と艦娘の皆さんはある程度の意思疎通はできますが、言語的には完璧ではないのでこういった身振り手振りも必要になってきます。

「はい、妖精さん。執務室の妖精さんもどうぞ」

 霧島さんから私達のサイズに合ったペンダントを受け取ります。工房の妖精さんが、それを着けるのを真似して私も着けます。

「あの、これは一体?」
「それはですね、私達艦娘と妖精さん達の意思疎通を完璧にするアイテムです」
「え?じゃあ私の声も皆さんに?」
「ええ」
「完璧よ」
「この前、ここの皆さんと開発したんだ。どうだい?すごいだろ?」
「ええ、凄いです!」

 私が素直に驚きの声を上げると、四人が嬉しそうに笑っている姿が目に入りました。技術畑の皆さんの新鮮な一面を見られた気がします
368妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:51:52 ID:dJE
「ただ、一個だけ問題があって……」
「なんです?」
「開発難しくて、今のところその2つしか無いのよねー」
「多分烈風開発するより難しいんじゃない?」
「だな」

 少しだけ残念です。このペンダントがいっぱいあれば執務室でのも捗りそうですし、色んな艦娘さんとの意思疎通が図れて楽しそうなんですが……

「あ、そうだ!」
「どうしたんです?」
「これを応用して、提督さんと意思疎通を図ることはできないでしょうか?執務も捗ると思いますしそれに――」
「それに?」
「言いたいことが色々と……いや別に悪い意味では無いんですけど」
『あー……』

 三人が同時に何かを汲み取ってくれたのか苦笑いをします。

「わかる、わかるよ妖精さん」
「あの提督ですもんね……」
「別に悪い人じゃないし、こうやって自由にやらせてもらってることもあるし不満もないんだけど、言いたいことはある……そんな感じだよね?」
「それです!!」

 私の言いたいことを全て汲み取っていただけたようです。

「で、いつも執務室にいる妖精さんから見て言いたいことって例えばどんなの?」

 夕張さんが突っ込んできます。色々とあるんですが、言葉にするのはなかなか難しいので少し考えます。
369妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:52:12 ID:dJE
「まずメンタルが弱いです」
『あー……』
「次に何言ってるかわからない時があります。『俺は世界の破壊者だからな』とか『これが世界の……運命石の扉の選択だ……分かれ……』とか、分かれって言われても困ります……でも何故か天龍さんや木曾さんはキラキラしながらその会話について行ってます。何なんでしょうか……」
「妖精さん結構辛辣ね……」

 いざ考えてみると色々ありました。いや決して悪い人ではないんですけど。

「後は……そうですね……えーっと……あ、そういえば去年のバレンタインデーに皐月さんに渡されたチョコ……あれ額に入れて飾ってあるんですよ……流石にアレはどうかと……」
「提督らしいといえば提督らしいけど、あの人の皐月ちゃんに対する愛情凄いですね……」
「うちの鎮守府で唯一の限界突破してる子ですしね……そういえばその関係だと、ほら他の鎮守府だと練度とかの関係でジュウコンしてる提督さん結構いるらしいじゃない?」

 確か本部からもらったデータにもそんなようなことが書いてあった気がします。

「あーはいはい、その噂聞いた物好きな娘達が提督にアプローチしてるって聞きますね」
「でもそれには練度が必要じゃない?この鎮守府で練度がその粋に達してるのは皐月ちゃんを除いて比叡お姉様だけなのよ。それで、流石にどうかなと思って榛名姉様、比叡姉様を伴って提督のところに行ったんだけど……」
「だけど?」

 霧島さんがどこか諦めたような表情をして溜息をつきます。

「提督は事もあろうに『戦力とか考えるとそうなんだけど、比叡はなんというか親友ポジションだし……指輪渡すとその辺の関係がなんかめんどくさくなりそうじゃん?なぁ比叡?』って……」
370妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:52:29 ID:dJE
 何言ってるんでしょうかあの提督さん。本当ダメですね。

「あちゃー……本当一回頭を修理したほうがいいかもしれませんね」
「まぁ、あの人長門さんとか比叡さんと飲んでる時ものすごいリラックスしてますし、言いたいことはわかりますけど、それで比叡さんは?」
「その言葉を聞いて『……ですね!』と一言だけ。金剛お姉さま一筋だった比叡姉様が、あんなに分かりやすくテンション下がるとは思いませんでした。ちなみにこの後、比叡お姉様と提督、飲みに行ってましたけど特に何もなく日付が変わる前に帰ってきました」
「本当、変な人だなこの鎮守府の提督さん……」

 工房妖精さんもどこか遠くを見ています。あれ?でも今の話で一箇所だけ気になることが、

「あの、霧島さん?」
「何?」
「何で金剛さんは一緒に行かなかったんですか?」
「金剛お姉さま連れて比叡お姉さまのケッコンカッコカリの話なんてしたら更に荒れる光景しか想像出来なかったんですよ……」
『あー……』

 全員が納得しました。私も納得です。この鎮守府においても金剛さんはめげずに提督にアプローチをかけています。あまりの空回りっぷりにたまに泣きそうになります。

「あ、私はそろそろ。適当でいいとは言われましたけど流石に後一時間ぐらいは執務室に戻ります、皆さんありがとうございました」

 夕暮れがかってる空を見て私は一応執務室に戻ることにしました。工房の妖精さんと艦娘の皆さんに今日の御礼を告げて工房を出ます。

「お仕事がんばってねー」
「提督用の意思疎通アイテム頑張ってみますね」
「提督のことよろしくね」
「あんまり働きすぎんなよ―」

 扉を出る前にもう一度だけお辞儀をして、工房を後にしました。たまにはこんなのも悪く無いです。
371妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:52:46 ID:dJE
「何でボクが怒ってるか分かるよね二人共?」
「えーっと……」
「うぇー…」

 私が執務室に戻ると正座させられた提督さんと望月さんが、皐月さんに怒られています。手には日本刀が見えます。何なんでしょうかこの状況。とりあえず皐月さんに近づきます。

「あ、妖精さんお疲れ様ー、あ、いいよ妖精さんは気にしなくても、いつも頑張ってくれてるからね」

 気にするなと言われても、この状況を気にしないことなんて私には無理です。とりあえず身振り手振りで皐月さんに状況説明を求めます。

「えーっと、ボクが遠征から帰ってきてこの部屋に来たら二人共コタツでゲームしてたから流石にね……あ、いいよ妖精さんは気にしなくて、本当だらけ始めたらキリ無いんだからこの二人は」
「皐月さん……あの……」
「皐月ちょっと落ち着いたほうが……」

 提督さんと望月さんが事態の沈静化を図りますが完全に火に油です。顔は笑ってますが目が笑ってません。

「だーかーらー二人共ー」
「ちょっと待ってその日本刀仕舞おう、な?―」
「話せば分かるって、ね?皐月―」

 騒がしいですが、いつもの事と頭を切り替えて締めの作業に入ります。仕事の終わりはちゃんと纏めないと何か落ち着きません。執務室内は全然落ち着いていませんが、多分大丈夫でしょう。

「あーもうしょうがないなぁ……今回だけだよ」
「やっぱり皐月は可愛いな」
「姉さんやっぱ可愛いよ」
「あんまりかわいいって言わないでよ、恥ずかしいよ」

 皐月さんも最終的にはチョロイみたいです。やっぱり姉妹は似るみたいです。そんなことを思いながら仕事も終わりました。今日の晩御飯はどうしましょうか。
372妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:53:10 ID:dJE
「さーて終わった終わった、皐月、晩飯どうする?」
「うーん、今日は鳳翔さんに頼もっか?望月も食べてく?」
「あー……わたしゃやめとくよ。弥生と約束もあるし。それに、若い二人を邪魔しちゃ駄目だしね、じゃーねー。司令官また神狩り手伝ってねー」
「遠慮することないのに、まぁいいや、次はマガツなー」
「あいよー」

 望月さんが業務が終わった執務室を退出しました。二人の邪魔、たしかにそれはいけません。私も自室に戻りましょうか。

「あ、妖精さんたまには一緒に飯食べてかない?」
「そうだね、いつもお世話になってるし」

 突然のお誘いに私はあたふたしてしまいます。

「あれ?何か予定あった?」

 皐月さんが私の目の前で予定を確認してくれます。特に予定はないので首を横に振ります。

「じゃあ決まりだね!」
「じゃぁサクッと鳳翔さんの所行ってくるから皐月、机の準備頼んだ」
「了解!」

 提督さんが早足で執務室を後にすると、皐月さんは散らかったコタツの上を片付け始めます。しかし、提督の一声でコタツやらお風呂が出てくるこの執務室、一体なんなんでしょう。

「戻ったぞおおおおおおお」
「いや司令官、何そのテンション」
「いや、そこ歩いてた隼鷹に焼酎、響にウォッカもらってな」
「……今更言うのもなんだけど、この鎮守府自由すぎない?」

 冷静にツッコミを入れる皐月さんに私も概ね同意です。しかし―

「えー丁度いいだろ?特に仲悪い奴らもいないし、このぐらいが一番だって」
「まぁ……そうだね」

 提督さんの意見にも同意です。
373妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:53:32 ID:dJE
「皐月はビールか?」
「そうだねー、やっぱこれでしょ」
「いまいち俺にはビールの旨さが分からん……」
「いや、ウォッカをグビグビ飲む提督提督もよく分かんないよ」

 料理の準備も疎らに、二人は早速飲み始めます。私も妖精用に用意された食事に手を付けます。お酒は苦手です。

「でも、司令官さー―」
「いやいやいや、それは―」

 楽しそうな二人を見ているだけで楽しいです。というかいつの間にか皐月さんが提督さんの膝の上に移動しています。何でしょうこの空間。

「そういえば妖精さん」

 不意に提督さんが声をかけてきます。

「何か不満とかあったら言ってね。できるだけ頑張るから」
「そうやって一人で無理するのはなしだよ司令官。少しはボクにも頼ってよね」
「分かってるって、で、妖精さん何かない?なんでも良いよ、物理的に可能なことならね」

 せっかくなのでなにかないか考えてみます。考えてみましたが―

「どうしたの?え?うんうん」

 考えた結果を皐月さんに身振り手振りを含めて伝えます。ちょっぴりお酒臭いです。

「司令官、妖精さんね。この鎮守府が好きだから、いつか静かな海になるその日までここを守ってほしいってさ」
「なんだそんなことか、当たり前だろ。それが俺のこの世界での役目だ」
「まーた司令官酔っ払ってよく分かんないこと言ってる、あ~あと」
「ん?」
「もうちょっとメンタル鍛えて欲しいってさ」
「……努力します」

 その言葉とともに今度は違うお酒を煽り始めます。これは明日の執務はダメですね。明日の秘書艦の方は……誰でしたっけ?
 そんなことを思いながら、お二方との食事を済ませ食後の一服まで終わらせました。提督さんは色んな話をしてくれました。もし、意志が伝わるようになればもっと色々聞いてみたいです。お酒は大分減って二人共かなり酔っています。
 夜も更けてきたので私は皐月さんに退室の旨を告げます。

「うん、妖精さんまた明日ね。お疲れ様ー」
「ん?帰るのか、明日もよろしくね」

 最後に一言だけ皐月さんに伝えてもらいます。

「うん、分かった伝えておくよ。こちらこそありがとうね。帰り気をつけて」
374妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:53:46 ID:dJE
 私は執務室を退室して寮に戻ります。
 明日の支度等々を済ませ、日が変わる少し前に布団に入ります。
 明日もきっと色んな事があります。戦いに行く艦むすさん、妖精さん、鎮守府の中でお仕事をする皆さん。
 何があるか分かりませんが私の気持ちは変わりません。提督さんには皐月さんを通して、

「今までもこれからもありがとうございます」

 そう伝えてもらいました。私はこの鎮守府の妖精でいることがとても幸せです。いつか静かな海になって私の役割が終わるとしてもそれはとても幸せなこと、そう思います。

 私のちょっとあわただしい一日は終わり、また新しい一日が始まります。
 でもその前にちょっとだけ寝ます。
 おやすみなさい。



艦!!
375妖精さんのある一日 :2015/02/05(木)22:54:39 ID:dJE
以上です
専ブラで書き込むと謎空間に飲み込まれまくるからもう\(^o^)/

次はアニメ鎮守府の提督を長門と殴りに行く話をポチポチしてます
376名無しさん@おーぷん :2015/02/06(金)22:28:23 ID:nSg


続き待ってるよ
377名無しさん@おーぷん :2015/02/06(金)22:30:13 ID:DYM
>>362
ぐわあぁぁ黒潮病が、黒潮病がああぁ
…男くん、このままお別れしてしまうん?
>>375
妖精さんには本当にお世話になってるなぁ…仲が良さそうな鎮守府で何より
アニ鎮提督を殴りに行く話期待w

お久しぶりです、うち天ダラ語りの筆者の変態提督です
今回、ケッコン関連やアルペジオネタが入った話があるため2/6メンテ明けまでに間に合わせたかったけど
アニメ艦これ見たり、電ちゃんの歯を磨きたいなぁとか思ってるうちにいつの間にか過ぎてしまった件…
なので、ログインしたりネタバレを見たりしないうちに上げてしまうという暴挙にチャレンジ
メンテ前に書いたため、矛盾が生じていたら申し訳ありません

特に問題なければ1分ぐらい後に投下始めます、合計12レス程度になると思います
378うち天ダラ語り改・3(前書き) :2015/02/06(金)22:32:15 ID:DYM
うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・3 ~前書き~

――――――――

前回までの話(前スレ>>874-895>>982-986、このスレ>>300-307あたり)を知らなくても読めますが
知ってるとわかりやすいかもしれません

・あまりパッとしないうちの艦娘たちによる近況報告を兼ねた茶番劇+α (例によって一番パッとしないのは提督)
・今回『ケッコンカッコカリ』に関して、かなり夢の無い話が含まれているので注意 (あくまでうちの提督と艦娘に限った話です)
・主な登場艦娘…天龍・電・神通・利根・ビス子・ヴェールヌイ(3)、
 金剛型(4)、天龍・龍田・山城・ビス子(5)、川内・神通(6)、電・雷(7)
・相変わらず歯フェチの提督が勢いだけで書いてるけど
 アニメとか見たりしてるうちにちょくちょく真面目モードに引っ張られたっぽい
・とは言ってもいろいろ不真面目ギャグなため、一般的なカッコいいキャライメージの崩壊に注意
・実在の艦艇や兵器・軍、海外事情その他もろもろとは無関係です

では本編どうぞ↓
379うち天ダラ語り改・3(本編1) :2015/02/06(金)22:33:34 ID:DYM

うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・3 ~『ケッコン』と『結婚』~

――――――――


天龍だ。
今回の話は、ウチの提督と艦娘たちの『ケッコンカッコカリ』詳細事情っていう、かなり個人的な話だ。
それも、一部の提督にとっちゃかなり面白くねぇ、夢の無ぇ話が結構含まれてると思う。
そういうのが嫌なヤツは、ここは飛ばしちまって次の話から読んでくれ。具体的にはもう3レスくらい後だな。
…大丈夫か?んじゃ、本編に移るぜ。


ある日ウチの艦隊は、いつになく真面目な顔をした提督に召集されて、ちょっとした改まった話をされた。
話の内容は『ケッコンカッコカリ』について…簡単に言っちまうと、

「近いうちに何隻かに『ケッコンカッコカリ指輪』を渡すつもりだが、それは『婚約指輪』や『結婚指輪』としてではない」

という話だった。
…そもそも異世界からの通信(※1)な時点で『結婚』も何もねー気もするが、その後も次のように話が続いた。

1.提督が一方的に決定権を持ち、レベル解放も兼ねている『ケッコン』を『結婚』とイコールで扱うのは
 自分のイメージではちょっと違う気がする。

2.艦娘と『結婚』するには、少なくとも現在の自分は色々な意味で力不足だと思うし、心構えもできていない。

3.それに加えて、実は将来的に自分の世界の誰かと自分が『結婚』する事もなくはないと考えており
 そうなると色々と不器用な自分には、両立できない可能性もある。
 ならば艦娘は艦娘で、そちらの世界での良い相手と『結婚』してもらえた方が幸せなのではないかと思うようになってきた。

4.以上の理由から少なくとも今は『結婚』はできないが、自分にとって艦娘は紛れも無く大切な存在であり
 『ケッコン』相手であれば尚更であるので、それは信じて欲しい。

5.そうは言ったものの、掲示板等では引き続き完全に嫁キャラとしてのノリで
 妄想を膨らませたり話題に乗ったりしてしまうと思うので、大目に見てくれると嬉しい。
380うち天ダラ語り改・3(本編2) :2015/02/06(金)22:34:33 ID:DYM

そう長くもない話が終わって「なんかよくわかんない話だったねー」とか口々に言いながら、各自解散していく中
どこに向かうでもなく、自然と並んで同じ方向に歩いていく5隻がいた。
日頃から提督にやたらとちょっかい出されたり、時々思い出したようにまとめて出撃させられたりする上に
クリスマスの後あたりから露骨に育成速度が上がってる(※2)んで
「これはもう間違いないだろう」と周囲から噂されている、通称『嫁候補5』…
電、神通、利根、ビス子、そしてまさかのオレの5隻だ。
…しっかしアイツ、オレのどこがそんなに気に入ったんだ?いや、別に知りたくねぇけど。

「さっきの話、随分と情けない本音が漏れてた気がするわね…」「誠意があるのか無いのか、判りにくいですね…」
バカ正直っていうかなんて言うか…色々とヘタクソだよな、アイツ。
「『結婚』とは違うって、わかってたけど…改まって言われると、ちょっと寂しいのです…」
まあな…特に初期艦のお前は、アイツと最初っからの付き合いだしな。
けど、下手なウソつかれて後でこじれるよりはマシかもしれねーぜ?

「うむ…それにな、よく考えてみろ電よ」「えっ…?」
「おぬし、仮に今あやつと『結婚』できたとして、真に心の底から『結婚』したいと思えるか?」ちょ、そりゃお前…
「はわわっ!?それは、もちろん…、………………」なんか黙っちまったし…
「無理もないです。私たちと提督、通信でしか接触したことが無いですし
 お互いに知らない事が、まだまだ沢山あって…急に『結婚』なんて言われても、困っちゃいます」まあ、そうだけどよ…
「あなたはどうなの?Tenryu。今の提督と『wahre Ehe』、本当にしたい?…私はまだ、Jaとは言えないわ」
………実はオレも、分かんねぇ。アイツの事、悪いヤツだとは思わねー(※3)けど…
「吾輩も、正直わからん。…司令官としては、それなりに信頼しておるのじゃがな」

「今はまだ、お互いに『カッコカリ』がЛучший ответ…最良の答え、って事なのかもしれないね」
お、別府…すぐ後ろにいたのか。
「Верный(ヴェールヌイ)。司令官が、6個目の指輪(※4)は私に渡すことになりそうだからって」
なりそうって…なんか、なし崩しじゃねーか?
「『結婚』とは違っても、『ケッコンカッコカリ』は信頼の証…悪くない判断だと思う。電の側にもいられるし、ね」
うーん、そういうモンかな…?納得できるまで、もうちょっと時間がかかりそうだ。
381うち天ダラ語り改・3(注釈) :2015/02/06(金)22:35:33 ID:DYM

――――――――

(※0)注釈とかのコーナーだ。今回は茶化す雰囲気でもねーし、ちゃっちゃと行くぜ。
 「龍田だよ~。今回もよろしくね~」なんだ、お前もいたのかよ。
 「うん、さっきからずっとだよ~。筑摩さんやプリンツちゃんも一緒に後ろにいたんだけど、気付かなかった~?」!?

(※1)最初っから読んでくれてるヤツは知ってると思うが、ウチの提督は偶然通信が繋がった別の世界に住んでる。
 だから、普通に考えたらそもそもマジもんの『結婚』なんて、言い出す方がバカげてるし
 艦娘のほうだって、んな事わざわざ言うまでもなく別物だって分かってるヤツがほとんどなんだ。
 …けど、アイツはその辺ハッキリさせないまま『ケッコンカッコカリ』しちまうのは
 どうしても嫌になったんだと…バカだよな、ホントに。
 「本当、おバカさんだよね~。…でも、提督がそういう人で、ちょっと安心したかな~」

(※2)掲示板で他所の提督たちの「キュウコンカッコカリ」ラッシュを見て
 「超羨ましい!ウチもやればよかった!」って思ったらしい。
 これまでその手の結婚系イベントに縁や関心がなかったから気付かなかったっていう、ウチの提督らしい話だな。

(※3)時々無茶言うこともあるし、アホでバカでド変態なウチの提督だけど
 基本的に艦娘たちの安全面での扱いは悪くねぇ方だと思う。

(※4)今更言う事でもねーけど、艦隊は6隻編成が基本だ。
 提督曰く「5隻目までは特に気に入ってる艦を入れてくだけで割とすぐ決まったが、6隻目は悩んだ。
 つーか、どの娘も可愛すぎる。7隻目以降も順次増やしていく予定」との事だ。
 最初の指輪もまだ渡せてねぇってのに、気が早えー話だよな。
382うち天ダラ語り改・4(本編1) :2015/02/06(金)22:36:29 ID:DYM

うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・4 ~金剛の暴走~

――――――――

英国で生まれた帰国子女の金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!
…なんて、今日は悠長に言ってる場合じゃアリマセーン!
Hey、テェートクゥー?今ドコですカー?手が空いた時でいいので、チョットこっちにツラ、貸すネー?
「いきなりキャラが壊れてますよ、金剛お姉さま!?」
コレが黙ってられますかっテンダー!いいですカー、比叡、榛名、霧島ー?
ココにあるテートクのヨメカン候補list、よーく見てクダサーイ!
「電、天龍、神通、利根、Bismarck…次点でВерныйですね」
「あんまり統一感がないメンバーですね…強いて言えば、水上部隊っぽいでしょうか」
Yes…駆逐 is angelとか軽巡 is sexyとか言いながら、結局重巡・航巡や戦艦までもがstrike zone…
ソレだけじゃアリマセン…6隻目のВерныйを合わせるとoversea…海外枠が2隻も入ってマース…
「あ、そう言われると確かに…多分、そこまで優先的に海外を意識してるわけじゃないと思いますけど…」
「ヴェールヌイちゃんについては、本妻が電ちゃんだから入れたって感じもありますしね…」

テートク、過去にいくつかハマった別の作品でも海外要素のあるcharacterがお気に入りデシタ…
今現在も、nic○nicoやpi×ivでヘタなんとかと艦これのコラボタグとかを定期的にcheckしてるみたいデース…
だったら、ワタシが候補に入ってても何もオカシクないハズなのに…「今度はメタ発言がダダ漏れになってる!?」
…ソレなのに、Love勢のワタシを外して…改が付く前のseriesでは、あんなshamefulなネタにまで付き合った(※1)のに…
一体どういう事デスカ、テートクー!!
Ladyのpureなheart、モテアソビマシタカー!?F××k'n!!「ヒエエー!いつものお姉さまじゃないー!」
「マズいわね、飲んでもいないのに昼間から物凄い荒れっぷりだわ…
 あっ、金剛お姉さま!そういえば、提督からご伝言を預かってきました!これを読んで落ち着いてください!」

『金剛さんの事、優先的に嫁艦にしたいタイプとはやっぱりちょっと違うかなーと思いました。
 でも素敵な娘だなとは思ってるので、今はちょっと手が回らないけど
 将来的にレベルが達した暁には是非指輪を貰ってもらいたいなーと思ってます。
 ワガママ言ってすみませんが、今後ともよろしくお願いします。提督より(土下座のイラスト付き)』

○※△Φ∴♨!!??
「ダメだわ、ますます暴走してる…!?」
「この内容じゃ榛名だって暴走します!どうして見せようと思ったんですか、霧島!」
「だってまさか、ここまで身も蓋もない事が書いてあるとは思わないじゃない!
 こ、金剛お姉さま!ここには書いてませんけど、提督、こんな事もおっしゃってました!
 『金剛さんたちは強いし社交的なマナーも心得てるし華やかだし、すごく素敵なレディだと思う。
 式典とか対外的な場面で出すなら、彼女たち四姉妹を選べば全方位で間違いないはず』って!」
383うち天ダラ語り改・4(本編2/注 :2015/02/06(金)22:39:09 ID:DYM

…なら、尚の事デス…どうして、ワタシたちが候補から外れてしまったんデスか…?
ワタシだけじゃアリマセン…比叡も、榛名も、霧島も、トテモ素敵なladyなのに…!

「金剛お姉さま…あ、そういえば提督、前にこんな事もおっしゃってたと思います。
 『なんとなく、あの仲良し四姉妹をバラバラにするのは忍びない。なるべく一緒にいさせたい』って。
 戦艦が複数入れないような海域に出さないのも、榛名たちの事を気遣ってくださってるのかもしれません」
ソレはドッチかと言うとunsolicited、余計なお世話デース…気を遣ってクレテるのは、嬉しい気もしますケド…
ワタシたち姉妹の絆はそんなfragileなモノじゃないって、目を離さないでクレテるなら分かってるハズなのに…
それに、最近はチョット方針が変わったみたいで
姉妹がいる艦でも、集中leveling(※2)とかでしばらくsoloで運用してる娘も結構いるみたいデース…

「え、えーっと、それは、その…あ、そうだ!
 それにですねお姉さま!その…候補に入ってる娘たちには悪いんですけど、司令は、正直
 『リア充っぽくない娘のほうが好み』みたいなんです!」…What?『リアジュー』…?
「えーっとですね、司令はご自分の世界で、中心的な立場…
 『リア充』って言うらしいんですけど、それからは長いこと離れてらっしゃる関係で
 いかにもお喋り上手とか、オシャレな感じで人気者っぽい娘には、ちょっとだけ気後れしてしまってて
 どっちかと言うと流行に乗らない・もしくは乗れないような、ちょっと変わってる娘が好きみたいなんです!
 金剛お姉さまが優先候補に入らないのは、なんだかんだで
 『デキる艦・王道・人気者』っぽいイメージだからっていうのもあるみたいですよ!」
そういえばそういう話、前にもチラッと聞いた気がしマース…どう反応していいのかdifficultデース…

「難しいですよねー…私なんて、話の内容すらよく分かってなくて…あ、いえ!何でもないです!
 と、とにかく、落ち着いていただけましたか?お姉さま?」Hm…ン!?
Wait!チョット待つネ、比叡ー!自分で分かってない事を軽々しく喋るのはladyとしてnoデスヨ?Troubleの元デース!
「ヒエッ!?す、すみません!お姉さまが落ち込んでたから私も何か言わなくちゃって思って、つい…」
普段言い慣れない事を無理して言おうとするからボロが出るんデース!
…比叡はテートクや他の娘の悪口なんて、滅多に言いマセンもんネ?ワタシの為に、無理して慰めてくれたんデショー?
「あ、それは、あの…その…」
No worries…ワタシとした事が、チョット取り乱しすぎマシタ。榛名も霧島も、皆、心配かけてsorryネ。
…とりあえず小腹も空きマシタし、Tea timeにしましょうかネー?休憩してから、またゆっくり考えマショウ!
「「「…!はい、お姉さま!」」」

――――――――

(※0)Explanatory note(注釈)や、digression(余談)のcornerデース!
 ヨメカン候補の連中に口を挟まれるとシャクなので、今回はspeedyにやりマース!

(※1)改が付く前のEXデース!具体的には前スレの>>894辺りデース!
 …でも、shamefulなので、できれば見ないでくれると嬉しいデース…

(※2)levelingやlevel upは和製英語で本来の意味とは違いマスが、gamerの間に限っては
 日本と同じ意味で使われてるらしいデスネー。
 『ケッコンカッコカリ』の細かいnuanceをenglishで説明するのは、チョット難しい気がしマース。
384うち天ダラ語り改・5(本編/注釈 :2015/02/06(金)22:40:47 ID:DYM

うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・5 ~設計図事情・近況報告~

――――――――

天龍だ。「龍田だよ~」「扶桑型戦艦、妹のほう、山城です」山城?なんか急に出てきたな。
「しばらく前に、提督が『扶桑姉妹書けるかも』って思わせぶりな事言ったにも関わらず
 一向に出番がないから、この際無理矢理にでも出てくることにしたのよ。ハァ…」お、おう…そりゃ大変(?)だったな。

「でも、逆に出番がなくてよかったかも~?提督が最初考えてた話だと
 『山城さんが虫歯になったかと思ったら、実はストレスによる歯軋りで磨り減ってました』
 みたいな、笑えないギャグだったみたいだから~」「ハァ!?」
あー、そうらしいな。流石に自分のヘボ戦略で待たせまくってるのを茶化すのは申し訳なさすぎるんでボツになったらしい。
「あの提督…前々からアホで変態で悪趣味だとは思ってたけどそこまでだったなんて…不幸だわ…」

「Yamashiro…ごめんなさい。あなたが先に十分な練度で待ってたのに、私が設計図を貰ってしまって」(※1)
あ、ビス子。なんか今日は腰が低いな?
「他所の姉妹とはいえ、お揃いの服まで着てるような仲良し姉妹が
 姉だけ改二の状態で待ちっぱなしって結構気が引けるのよ…Yamashiroだけじゃなくて、Chikumaも設計図待ちだし」

「フン…私の姉さまは扶桑姉さまだけだし…
 っていうか、夏には『練度順で適当に決められた』って拗ねてたようなでかい暁のアンタまでそんな事言いだすなんて…
 明日はきっと雪の代わりにジャガイモでも降る(※2)んだわ。それで私の頭に直撃するのよ…」
「なんかよくわからないけど、酷い事言われてる気がするわね!?」
「冗談よ…勲章集めの近道にもなりそうだし、今回は譲るわ。姉さまの艦橋の美しさ、少しはわかってる(※3)みたいだし…」
「あ、ええ…あなたの艦橋もなかなか素敵だと思うわよ、Yamashiro」

――――――――

(※0)注釈とか余談のコーナーだ。今回も少なめだな。
 「私にレスを割くのは惜しいって事なんでしょ…?
 提督、艦のほうの私と昔演習でチキンレースしたあの軽巡娘の事は気に入ってるくせに…」
 い、いやそういう訳じゃねーと思うけど…多分、メンテ明けに間に合わせたくて後から書いた部分は少ねーんだと思うぜ。
 「提督遅筆だから、アップした直後に新要素実装で話の賞味期限が切れましたっていう事が結構多いんだよね~。」

(※1)ってな訳で、扶桑の次はビス子に2枚目の設計図が渡ったみたいだな。
 「嫁候補ですものね…」えーと、まあソレもあるっちゃあるらしいけど…
 一応、新海域に備えていろんな艦を強化しておきたいとか
 山城も言ってる通り、勲章集めを効率良くできるようにっていう戦略的な思惑もあるみたいだぜ。
 (提督が夜戦カットイン大好きで、どうしても戦艦で魚雷カットインさせたくなった事は黙っといた方が良さそうだな)

(※2)冗談でも流石にジャガイモは降らねーと思うけどな…あ、でも
 動画サイトの替え歌でそういう感じのあった気がするな。トラックの運転手がどうとか。「なんとかデイズだっけ~?」

(※3)そういや、時報で扶桑姉妹の艦橋のこと凄いって褒めて(?)たな。ビス子。
 「先を越されたのは癪だけど…扶桑姉さまの良さがわかる娘に基本、悪い娘はいないと思うの」お、おう。
 「私も、天龍ちゃんの事ステキだって言われたら嬉しいかな~」
385うち天ダラ語り改・6(本編1) :2015/02/06(金)22:41:47 ID:DYM

うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・6 ~Sleeping dirty beauty~

――――――――

やせん、やっせん~♪夜戦がしたい~♪っと!ただいまー!川内、参上ー!(バターン!ぷぎゅる)
ん、ぷぎゅる?…あ。「…すやすや…」

稀によくある通り、有志の艦娘たちと一緒に夜戦という名の自主練、兼ストレス発散を一晩中こなして
静かに過ごしたい勢から、またもや稀によくあるド顰蹙とケンカを買いながらも満足して帰ってきた夜明け前。
寮の部屋の扉を開けてすぐの床に、これまた稀によくある感じで私の妹、神通が転がって眠っていた。
うっかり踏まれた事にも気付かない様子で、スヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てている。

あーあ、こんな所で寝ちゃって…この様子だと、また今夜もかなー…?
そう独り言を呟くと、明かりも点けずに私は眠る妹の傍らに座り込み、そっと肌に触れてみた。
そのまま腕、髪、顔…這うように指を沿わせていき、顔を近づけ、その身に纏われた空気を吸い込んでみる。
何かを確かめるような一連の動きが済んだ後、私は納得したように頷き、そして………
………顔を背け、思い切り咳き込んだ。(※1)

もー!やっぱりだよ、この娘は!
体力の続くギリギリまで自主練に明け暮れてた(※2)のか、部屋着に着替えてないのはおろか
海水や排煙、こぼれた弾薬に油、それから本人の汗…全部が合わさって、全身はベタベタのドロドロ。
ダメ押しとばかりに、口の中には食べかけの栄養菓子(※3)が入ったまま。
おそらく、食べてる途中で力尽きて眠ってしまったのだろう。
本人がそんな状態なのに、側にはきちんと手入れされた装備一式が置かれているあたり
これまた毎度の確信犯ぶりが伺える。私はガックリとうなだれた。
残念だ残念だと言われながらも仮にも美少女で名が通ってる、そうでなくても大事な可愛い妹が
こんな汚れまみれで寝てていいんだろうか?いーや、良くない!
自他ともに認めるニンジャの私ですら、夜戦が終わった後にはしっかり食べて、キチンとお風呂に入って
十分身だしなみを整えてから、次の夜戦に備えて気持ちよく朝寝に就く(※4)というのに。

コラー!起きなよ、神通ー?練習熱心なのはいいけど、ちゃんと自分の体も整備しないとダメじゃん!「…くぅくぅ…」
ねぇってばー。そんなんじゃまた、那珂が遠征から帰ってきた時に怒られちゃう(※5)よー?「…むにゃ…すぅすぅ…」
この前みたいに、出撃前になってから歯が痛いって焦っても今度は助けない(※6)からねー?「…ん…うぅん…」
むう、起きないか…仕方ない…
わかった。そんな事ばっかりしてるんだったら、こっちにも考えがあるからね!「…?」
…駆逐艦の娘たちに言っちゃおーっと。「!?」
誰に言おっかなー。雪風ちゃんがいいかなー?二水戦の縁(※7)で神通の事、結構尊敬してるよねー?
実はオフの神通さんはお風呂も入らず歯も磨かず床で寝てるんですーなんて知ったら、ビックリするだろうなー。フフ。
「…だ、ダメ…」おっ?「それだけは…絶対に、ダメ~!」おっ、よしよし。起きたね。
はいはい、じゃあちゃんとしなよねー。疲れてんなら洗うの手伝ってあげるから、一緒にお風呂入りに行こ!(※8)
386うち天ダラ語り改・6(注釈) :2015/02/06(金)22:42:45 ID:DYM

――――――――

(※0)注釈とか、余談のコーナーだよ!夜は長いし、ゆっくり読んでってね!
 「もう明け方だろ…ふわぁ…眠ぃ」
 「水雷の娘って、夜戦が勝負みたいな所があるから生活が夜型になりがちなんだよね~。
  アニメ鎮守府さんだと、出撃しない日は規則正しい生活してるっぽいけど~」
 そういえば、アニ鎮の神通ちゃんは朝練派っぽい感じだったね。「朝昼晩と、見事に三姉妹で分担してたな」

(※1)ホントは部屋に入った時点で相当アレなニオイだったから、やらなくても良かったんだけどね。
 「じゃあ何でわざわざやったんだよ?」何となく?サービスシーン的な。「いやいやいや、サービスになってねーから!」

(※2)私の夜戦とは違って、納得できるまで一人でトコトンやるのが好きみたい。
 どうも巷の噂とか妖精さんの話によると、『軽巡洋艦・神通』に選ばれる娘の一例として
 静かだけどブレないというか、諦めが悪いというか…ちょっと悪い言い方すると、地味にしつこいみたいな?
 ウチの妹の場合それが自分自身に向いてて、満足できる結果が出せるまで止められないみたいなんだよね。
 あと、本来の性格が表に出てくるのか艦のほうの記憶に引っ張られるのかはわかんないけど
 限界の向こう側、自分の身を捨ててでも戦い続けたいって方向に行く娘も少なくないとか。

 「だからって、ウチのはどうでもいい事で身を削りすぎだろ…戦闘の前に体壊してたら元も子もねーんだしさ」
 「ここまでダメな方向で発動してる例もちょっと珍しいよね~。ダメな神通ちゃん自体、他所だとあんまり見ないし~」
 「このシリーズがギャグだからって、提督に付き合って体張ってるとかじゃねーのか?」
 うーん、まあ確かにいつもより、ちょっと汚さマシマシでお送りしてるけど…「マジで話盛ってんのかよ!」
 サービスサービス。ちなみにウチの神通の衣装は、私服も含めてほとんど那珂がプロデュースしてるよ!「あらあら~」
 
(※3)要するにカ□リーメイトなんだけど、使われ方的にあんまり良いイメージにならないと思ったから伏せてみたよ。
 「ウチの艦隊、他にも甘いもん食い過ぎなビス子とかいるけど
 名前的に某菓子メーカーさんの間接的なネガキャンになってねーかな?って提督が心配してたな…
 あと、他のネタも含めそろそろリアル海外提督や間宮さんあたりから怒られるんじゃねーかなとか」
 「他の提督さんの所には健全でカッコいい艦娘さんも沢山いるから大丈夫、って事にしてもらえると嬉しいな~」

(※4)そういえばアニ鎮の私って、いつ寝てるんだろ?「さーな。授業中じゃねーの?」
 なんだー、じゃあ私が学校行ってた時とおんなじじゃん!「オイオイ…」「実際はどうなのかな~?気になるね~」

(※5)(※6)改になる前のシリーズの、3とか4…の、注釈あたりの話だね。
 具体的に言うと、前スレの>>882-888あたりに断片的に載ってる感じ。
 「その影響が回りまわって、なんでかオレが被害担当艦みたいな感じになってんだけどな…あの辺の話」
 「あの時の提督、他の提督さんたちが描いてる弄られ天龍ちゃんにハマってたっぽいね~」

(※7)某いつ静の二水戦回的なチョイスで雪風ちゃんにしてみたけど
 ウチには天津風ちゃんも時津風ちゃんも初風ちゃんもまだいないんだよねー。
 あの娘たちが来たら、ウチの神通ももうちょっとしっかりしてくれるかな?
 「そういや自分の名前に風の字が入ってる割には、陽炎型とか島風とかあんまり使ってねーよな?ウチの提督」
 「提督になる前から使ってた名前みたいだからね~。該当の娘たちには『紛らわしくてゴメン』って思ってるみたいだよ~」
 
(※8)入渠ドックとは別に、普通のお湯が使えるお風呂もあるんだよ。
 掃除とかで使えない時もあるけど、明け方はほとんど貸し切りみたいになってて便利なんだー。
 「薄い本が捗りそうな設定だね~」「お、おう…(分かるような、分かりたくねーような…)」
387うち天ダラ語り改・7(本編) :2015/02/06(金)22:44:14 ID:DYM

うちの天龍ちゃんとかが日常とか設定とかダラダラ語る話(改)・7 ~夢と現の間で~

――――――――

電です。今日は雷ちゃんと暁ちゃんがお留守番当番(※1)で、私やヴェールヌイちゃんの出撃も終わりなので
執務室の隣にある仮眠室で、4人でお泊りすることにしたのです。(※2)
…だけど…
夜中、誰かの声が聞こえた気がして、電は目が覚めました。
誰かが…泣いてるのです?

執務室や仮眠室は、他の施設からは少し離れた所にあるので(※3)
夜中になるとお留守番の娘以外は、ほとんど誰もいなくなります。
暁ちゃんも、ヴェールヌイちゃんも、雷ちゃんも電の横で静かに寝ています。
だったら、誰が泣いてるのでしょうか…?なんだか、隣の執務室のほうから聞こえるような気もします。
…はわわっ!?
執務室につながっている方のドアを開けたら、タンスの上のピンクのクマさん(※4)と目が合ってしまいました。
真っ暗な中で見るクマさんはちょっと怖いのです。明かりを点けるのです。

声が聞こえてきた方を見てみると、そこには誰もいなくて…
…ただ、通信機と、電源が入っていない画面(※5)だけがいつもみたいに置いてありました。
通信機の向こうは、司令官さんの世界…じゃあ、この声って…?

「電?」はわわわっ!?…あ、雷ちゃん。
「どうしたの?こんな夜中に。何かおかしな事でもあった?」あ、えっと、実は…

「泣き声…?今は聞こえないみたいけど…誰かしら?見回り、行ってくる?」
ううん…電も、聞こえないのです。このお部屋のほうから聞こえた気がしたから、きっと、寝ぼけてたのです。
「ここは隠れられそうな場所もないし、廊下につながってる方の扉は
 お留守番当番の私が鍵をかけたものね…うん、タンスの中にも誰も入ってないわ」
わかったのです。…あの、雷ちゃん?「?なぁに?」
いつもありがとうなのです。雷ちゃんたちが一緒だから、電は寂しくないのです。
「どうしたの?急にそんな事言って。
 でも、私も電や暁ちゃんたちがいるから寂しくないわ!さっ、朝までしっかり寝ましょ!」ハイ、なのです!
388うち天ダラ語り改・7(注釈) :2015/02/06(金)22:45:25 ID:DYM

――――――――

(※0)解説とか、余談のコーナーなのです。
 「電、夜中に誰か居たみたいな話聞いたけど大丈夫か?」
 「何かあったら、すぐに提督や他の娘に知らせるのよ~」
 あ、天龍さん!龍田さん!ちょっと怖かったけど、もう大丈夫なのです。ありがとうなのです!

(※1)うちの第一艦隊は、聯合艦隊の時以外はお留守番になっている事が多いので
 艦隊名はお留守番支部、艦隊内の娘はお留守番当番って呼ばれてたりします。
 「今度のイベントは聯合艦隊の出番みたいだから、留守番支部はまたしばらく休みになるかもな」

(※2)執務室の隣には少し広めの仮眠室があって、艦隊に編成された娘や仲良しの娘が
 お泊りできるようになっています。執務室にお布団を敷かない理由は、次の(※3)を見てもらえると嬉しいのです。

(※3)「執務室にもカウンターバーとかお風呂とか、色々あるんじゃないの?」って思うかもしれませんが
 うちの世界の本当の執務室には、普通のテーブルや椅子しか置いていなくて
 いつも司令官さんが見ているようないろんな家具は、ほとんど画面の中のバーチャル執務室にあるのです。
 「ウチの執務室の詳しい仕様については、前シリーズの1…前スレの>>874-879あたりを見てくれると助かる」
 お酒が飲みたい艦娘さんは、夜の食堂や寮で飲んでいることが多いみたいです。

(※4) アニメの夕立ちゃんが持ってる黄色いクマさんや、軽巡の球磨さんの事じゃなくて
 クリスマスの時に七面鳥のテーブルの近くにいる、あのピンクのクマさんの事なのです。
 どうしてかわからないけど、あのクマさんはいつの間にか画面の外にもいて
 いつも大体、イオナさん達が置いていってくれたタンスの上や、引き出しの中にいるのです。
 「誰かが動かしてんのか、時々別の場所に置いてあったりもするんだけどな」
 「自分で動いてたりしてね~?ウフフ♪」はわわっ!?
 「オイオイ、脅かすなよ…(マジで動いてたりしねーよな…?)」

(※5)司令官さんが通信をオンにすると、こっちの世界でも自然に画面のスイッチが入って
 秘書艦の娘が持ってるアラームが鳴るようになってるのです。
 画面はついていなかったし、秘書艦の雷ちゃんのアラームは鳴らなかったので…
 ………………
 「どうかしたか、電?」あ、何でもないのです!「夜中の事、やっぱり怖かった~?」大丈夫なのです!

 (…通信が入っていなかったのに、私は…司令官さんの声を聞いて…?)
389名無しさん@おーぷん :2015/02/06(金)22:46:31 ID:DYM
今回は以上です
ケッコン関連の話で気分を害された方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんでした
(他の話についてはもはや謝りようがない模様)

電ちゃんが聞いた声については、特に深い意味は無いのですが提督もたまには泣きたい夜があるって事で…
あと、キリクマは前回のシリーズの執務室紹介の時に書き忘れてたという

余談ですが川内・神通のお風呂回(語弊)を書き上げた後、ふと思い立って
久しぶりに丁寧に背中を洗ってみたら、自分でもドン引きするぐらい垢が出た後にえらく体が軽くなって驚愕
お風呂って大事ですね
ではでは
390名無しさん@おーぷん :2015/02/07(土)13:30:52 ID:2j2
乙っ!
391名無しさん@おーぷん :2015/02/11(水)20:31:14 ID:RJO
age
392叢雲さんちのクソ提督 :2015/02/14(土)19:28:05 ID:fRx
一発モノでツマンナイけどティンときたので投下
------------------------------------------------------------------------------------
提督「2月14日か。とうとうこの日が来たか…」
叢雲「いきなり何よ」

提督「いや、バレンタインデーだなと思ってな」

叢雲「ッ! ふ、ふぅん」

提督「去年、一昨年ともこの時期は激戦でそれどころじゃなかったな」

叢雲「そうね。帰ってきたと思ったら、またすぐ出撃の繰り返しだったわね」

提督「今でも深海棲艦との戦いは終わっていないが、それでも当初に比べれば状況は良くなっている」

提督「お前たち艦娘のおかげだな。お前たちが頑張ってくれたおかげで、今日という日がある」

叢雲「そっ、そうね!指揮するだけのあんたと違って、私たちは常に前線に立ってたし当然よね!感謝なさい」

提督「本当に頭が下がる」

叢雲「分かればいいのよ」フンス
393叢雲さんちのクソ提督 :2015/02/14(土)19:28:31 ID:fRx
提督「ところで、さっきから手に持ってるソレは何だ?」

叢雲「へっ?!」ビクッ

叢雲「こ、こここここれは… そ、その… これっ!」ポイッ

提督「うおっ!いきなり投げるなよ」

叢雲「あんたのじゃないのっ?あ"っ、私が買ってきたもんじゃないからっ!」アタフタ

提督「お、おう」

叢雲「執務室の前に落ちてたわよっ! ま、まったく!何で私が届けないといけないのかしらっ!」

叢雲「恥ずかしいわよホントッ!…はやく、持って行ってよ!」

提督「ボッシュート」ごみ箱にポイッ

叢雲「……何で捨てるのよ」

提督「何でってお前、危険極まりないだろ。」

叢雲「ほ、包装してあるから衛生的に大丈夫でしょ…」

提督「包装してあるから安全、という訳ではない」

提督「これが爆弾だったらどうする?開封した瞬間に吹っ飛んだとしたら、俺とお前はお陀仏だ」

提督「叢雲、お前は危機管理意識が甘すぎではないか?俺はそんな無能を秘書にした覚えはないが」

叢雲「…………ぃわよ」プルプル
394叢雲さんちのクソ提督 :2015/02/14(土)19:28:51 ID:fRx
提督「何だ」

叢雲「もういいわよッ!いらないんでしょソレっ!返しなさいよ!」

提督「待て待て、何をそんなに怒っているんだ」

叢雲「怒ってない!責任持って処分してきてやるわよ!」

提督「落ち着け叢雲!」

叢雲「うるさい!どきなさいっ!」ドンッ(提督を突き飛ばす)

提督「グハッ!」バタン(後頭部が壁に直撃して倒れる)

叢雲「えっ!ちょ、ちょっと…」

叢雲「や、やだ…ありえない…」

叢雲「お、起きなさいよ大袈裟ね」

提督「」

叢雲「ねえ、起きなさいってば」ツンツン

提督「」

叢雲「ねえ…」

提督「」

叢雲「……」

提督「」
395叢雲さんちのクソ提督 :2015/02/14(土)19:29:07 ID:fRx
叢雲「……ぅえ」ポロポロ

叢雲「何でよぉ…何でこうなるのよ…」ポロポロ

叢雲「ひっぐ…ぐすっ」ポロポロ

叢雲「うぁあああ…ふぐっ」ズビビッ

提督「よいしょっと」ムクリ

叢雲「ッ?!」

提督「さってと、この箱の中身は何かな?かなー?」ガサゴソ

叢雲「……」

提督「おっ!クッキーか。俺チョコレート食べられないから助かる~」

叢雲「」

提督「うん美味い。特にこの、イチゴの味の奴はクセが無くて食べやすいな」ポリポリ

叢雲「こ…の…」

提督「どうした?叢雲。目も腫れてるし、せっかくの可愛い顔が涙と鼻水で台無しだぞ」

叢雲「クソ提督ゥー!」パシーン

提督「モルサァ!」

以降、10日ほど叢雲の機嫌は直らず提督が叢雲に土下座する光景が鎮守府の彼方此方で見られたとか。

~fin.~
396名無しさん@おーぷん :2015/02/14(土)20:29:41 ID:mcs
乙バレンタイン
叢雲かわいいw
397名無しさん@おーぷん :2015/02/24(火)21:46:52 ID:vSQ
ネタはあるんだよー
時間と気力が無いんだよー
398名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:21:59 ID:ujS
別スレから誘導されてきたんですが
1年前ぐらいに書いた駄作の推敲したものを貼っても大丈夫ですかね?
テスト投稿&意見欲しい的なもので
続編書ききるかどうかわかりませんが
399名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:22:53 ID:xSb
>>1のルールに則りさえすればおK
400名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:25:35 ID:ujS
では失礼して投稿させて頂きます
原稿用紙からの書き直しのため、現在推敲中の作品です
多分2レスに分けることになります。
批評意見ドンと来いです
401名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:26:48 ID:ujS
?「あ”~、今日の晩飯何にすっかー・・・」

時計も19時を回り、いい加減腹も減ってきた
親父は海自の海上演習のため長期出張
お袋は親父の乗ってる船の給餌係として乗船
そのため朝から夜のメニューも自分で考えないといけない
これが非常に面倒である

?「カップ麺とか買い置き残ってたっけか?」

俺の名前、堤 徳三(つつみ のりみつ)
親しい友人からは名前をもじって「提督さん」「提督」と呼ばれている。
自室で寝転びながら漫画を読んでいたが、空腹に耐え切れず立ち上がり台所のある一階に降りようとした

ピンポーン

そんな時、家のインターホンが鳴った

提督「ん?こんな時間に誰・・・あ、もしかして」

ふと湧いた期待を胸に階段を降りて玄関を開けた

提督「はーい、どちらさまー?」ガチャリ
??「こんばんは、提督」ニコッ

たおやかな笑顔と暖かそうな鍋を携えた女性が玄関前にいた
お隣に住む美人四姉妹長女、妙高さんである
両親が長期の海上演習に出てからと言うもの、度々こうやって晩飯などの差し入れをしてくれるのだ
402名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:27:53 ID:ujS
提督「ドモ、こんばんわっす。どしたんすか?今日は」
妙高「ええ、足柄がぶり大根を作ったんだけど・・・気合が入ってたせいか作りすぎちゃって」

ちょっと困った笑顔の妙高さん。マジ美人である。
今名前が出てきたのは四姉妹の三女足柄さん、嫁入り修行の一環だとかで最近料理に力が入っている
修行開始当初は豪快な性格が悪い方向に働き、俺の胃袋をよく大破させたものだ。
最近では普通に美味しいレベルにまで上達、なんだかんだで両親不在な俺の助けになってくれている。

提督「わざわざありがとうございます。うほっ、いい匂い」
妙高「時間があれば家でとも思ったんだけど・・・羽黒が試験間近なもので・・・」
提督「あー、教員試験っすか」

四姉妹末っ子の羽黒さん。内気な性格で何かと謝る癖がある。
だが、その芯の強さは四姉妹筆頭。腹を決めたら物凄い勢いで押してくる人だ。
実は大学で結構な回数で告白されてるそうだが、その度「ごめんなさいぃぃぃぃ」と言いながら逃げているとか

妙高「那智も指導に加わっているからちょっと空気が張り詰めてるのよ」
提督「いや、仕方ないっすよ。俺も羽黒さんの邪魔する気ないですし、那智さんも一生懸命でしょうから」

四姉妹次女那智さん。長い黒髪が特徴で、その凛とした立ち振舞は同性からも人気がある
・・・が、この人見た目からは想像できないレベルの酒豪、しかも絡み酒
何度酔っ払った那智さんにヘッドロックをかけられたか・・・いや、柔らかかったけどさ

妙高「鍋は明日でもいいので持ってきて下さい。足柄も感想を聞きたいでしょうから」
提督「ウッス、しっかり吟味させて頂きます!」

うちの両親が長期不在の俺に何かと世話を焼いてくれているお隣の美人四姉妹。
あちらの両親は海外に赴任中だとか
親父達が海上演習に出る前に「うちのバカ息子を頼むw」とか言うくらいには仲の良い関係だ。

それが何で・・・・あんなことになったのか・・・


『お隣の妙高型美人四姉妹』
続編未定
403名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:30:27 ID:ujS
以上です
現在推敲中
まとまって自分で納得が行く内容になれば完結作品を投稿したいと思います
404名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:33:54 ID:H3d
>>403
乙です!

文章は読みやすいよー。
今は導入で説明調の文章だから、キャラが今後どう動いていくかなんとも言えんけど、
艦これスレで気にしてた地の文の比率については全然問題ないんでないの?
続き期待してます。


…ホントどうでもいいことだけど「うほっ、いい匂い」で一瞬アレを連想してしまったw
405名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:34:46 ID:xSb
>>403
乙です、文章自体は割と読みやすいかな
主人公にもうちょっとハッキリとしたキャラ付けがあれば面白いと思いました(小波感)
406名無しさん@おーぷん :2015/02/25(水)03:41:55 ID:ujS
>>404
>>405
ご意見ありがとうございます
主人公のキャラ付けのイメージは『生意気なとこはあるがどこか憎めないやつ』といったイメージです
想像としては妙高さんに「仕方ないですね・・・」って言ってもらえる的な

「うほっ、いい匂い」に関してはそっち方面想像してなかったですw

今後の構想としてはルート分岐も含めたギャルゲーテイストなものになるかと
可能であれば外の艦娘も出していきたいと思っています

短い文章ですがご意見ありがとうございました。失礼いたします
407名無しさん@おーぷん :2015/02/26(木)18:53:58 ID:eRv
次も待ってますよ!
408名無しさん@おーぷん :2015/02/26(木)19:24:07 ID:GCC
いつぞやの「不良型駆逐艦卯月」をここにチラ裏していた者です
大幅にリメイクして、主人公を卯月から熊野に変更し
設定も変えました
もう一度ここでチラ裏させていただきます
台本形式なので、苦手な方はスルーしてください
409ガンスリンガー熊野(仮題)◆4MuKzYcRH6 :2015/02/26(木)19:26:41 ID:GCC
※学校屋上
不良少女「艦娘適合試験?」
子分1「はい! リーダーかわいいからこんなのよゆーっすよね!」
不良少女「あー、キョーミねぇよパスパス」
子分1「そんなー、リーダーならぜってぇー合格ですって!」
子分2「そうですよ!リーダーが合格しようとしまいと、ウチら『KUMA-GARI』にはなーんにも影響ありませんって」
不良少女「だーかーらキョーミねぇよ。なんでお前らアタシをそんなに応募させよーとしてんだよ」
子分1&2「可愛いからです」
不良少女「…っ! 調子こいてんじゃねぇ!」スパーン
子分1&2「痛い!」
不良少女「ったく。おまえらなぁ、アタシがかわいいとかぜってーありえねぇから」
不良少女「それにこの『艦娘適合試験』ってのに合格したらあの化け物…『しんかいせいかん』っつったか?アイツラどもと戦わねーといけねーんだろ?」
不良少女「アタシはまだ死にたくねーからごめんだね」
子分1「リーダー…」
不良少女「第一まだ『KUMA-GARI』は始まったばかりだろ?これからメンバー増やして、チームを大きくして、いずれは全国を制覇する…… それがアタシの夢なんだよ」
子分2「だったらなおさら応募して合格した方がいいじゃないっすか?」
不良少女「あ~ん?」
410ガンスリンガー熊野(仮題)◆4MuKzYcRH6 :2015/02/26(木)19:27:08 ID:GCC
子分2「だって艦娘ってあの化け物と互角に戦えるんでしょ?一応軍隊ってことになるから、そこで鍛えて適当にやって、やめちゃえば『元軍人』って箔がつくじゃないっすか」
子分1「そうか!そうしたらリーダーが今よりもっと強くなって、人が集まってくる!」
不良少女「いや、でもなぁおまえら」
子分2「そうしたら湘南制覇なんて一瞬!楽勝!そして天下統一ですよリーダー!」
不良少女「話をきけぇえええ!」

ガチャン

不良少女「誰だこらぁ!」
子分1&2「?!」
軍人「ん?先客がいたか」
子分1「ぐ、軍人?」
軍人「自分はここのOBでね。今日は艦娘募集中のポスターを配りに来たついでに、屋上で昼飯を食おうと思ったんだが… 取り込み中だったかな?」
不良少女「で? そのOB軍人さんが何の用だ」
子分1「いやー、実はウチらのリーダーが艦娘になりたいってうるさいんでね」
子分2「あたしらで説得してたんすよ。リーダーには無理だって」
軍人「ほう」
不良少女「てめぇら、ふざけたことヌかしてんじゃねー!」
子分1&2「いやーんこわーい。軍人さんタスケテー」
不良少女「お、お~ま~え~ら~…!」
411ガンスリンガー熊野(仮題)◆4MuKzYcRH6 :2015/02/26(木)19:27:33 ID:GCC
軍人「確かに君は艦娘には向いていないな」
不良少女「はぁ?」
軍人「そのような横暴な態度では『深海棲艦』… 分かりやすく言えば、世間を賑わせている海の化け物だな」
軍人「奴らと戦っても返り討ちにあって、海の底に沈むだけだ」
軍人「君のような社会のはみ出し者が艦娘になろうなんて言語道断。こちらからも願い下げだ」
軍人「そんな奴に人のため、国の為に戦えると思っているのか?」
不良少女「な、あ…」
軍人「だが今はそうも言ってられない。圧倒的に戦力が足りない。艦娘が足りないんだ」
軍人「艦娘になろうと決心してくれたのは嬉しい。しかし、今のままでは合格はできないと思っていてくれ」
子分1「リーダー…」
子分2「リーダー…」
軍人「これが海軍の連絡先だ。来月の艦娘適合試験を受けたいなら、一週間以内に連絡をしてくれ」
不良少女「あ、ああ」
軍人「……それに君は可愛いんだから、こんなところで燻ってないで真面目に生きたらどうだ」
不良少女「んなぁ?!」シュボボボボボ!
子分1「おやおや」
子分2「あらあら」
軍人「ん?もうこんな時間か。昼を食べそこなってしまったな」
不良処女「んな…ななっななななななななな!!」
軍人「では失礼する」

ガチャ バタン

子分1&2「……」
子分1&2「かっけぇええええええええええええええ!」
子分1「すげー!すげー!なにあのイケメン!」
子分2「鼻血が!鼻血がぁああああ!メディィイイイイイック!」
不良少女(かわいいって言われた!かわいいっていわれた!ど、どどどどどうしようどうしよう!)
教師「コラァ貴様らぁ!今日という今日は逃がさんぞ!」
不良少女「…まずい!生活指導のハゲだ逃げろ!」
子分1「やーい!ハーゲ、ハーゲ!」
ハゲ「ハゲてねーし!待てこの不良どもがぁあああああああ!」
412ガンスリンガー熊野(仮題)◆4MuKzYcRH6 :2015/02/26(木)19:27:56 ID:GCC
※不良少女自宅
不良少女「ただいま戻りました」
父親「ああ、おかえり」
手下「お帰りなさいませお嬢!」
不良少女「ただいまノギさん」
父親「お弁当、どうだった?」
不良少女「…味が薄かったです」
父親「そうか。ごめんな。父さん、あまり料理得意じゃないから」
不良少女「台所代わって。今日は私が作ります」
父親「あ、ごめん。今日…夜勤入っててな……その……」
不良少女「そうですか。ではサイゼで食べてきます」
父親「本当にごめんな。じゃあ、父さん夜勤行ってくるな」
不良少女「あ、ちょっと待ってください」
父親「?」
不良少女「艦娘適合試験、受けるみようと、って思います」
父親「……その話は帰ってきてからゆっくりしよう」
不良少女「うん。ごめん急にこんな話して」
父親「行ってきます。おいノギ、車出せ」
手下「うっす!」
不良少女「行ってらっしゃい」
ガチャ バタン
不良少女「……」
不良少女「何言ってんだよアタシ…」
413ガンスリンガー熊野(仮題)◆4MuKzYcRH6 :2015/02/26(木)19:28:20 ID:GCC
※海軍本部
軍人「私が鎮守府の提督に?」
参謀総長「机上演習大会で落伍艦0かつ、丁字不利の状況で敵機動部隊を返り討ちにするような君を鎮守府提督に抜擢しないでどうする」
軍人「あれは相手がこちらの戦力を軽巡と駆逐艦主体の水雷戦隊と侮り、索敵を怠ったから勝てたのであって自分の実力ではありません」
参謀総長「それ以上謙遜するな。嫌味にしか聞こえなくなるぞ」
軍人「申し訳ありません」
参謀総長「で、だ。手始めに君の戦隊に空母1、巡洋艦3、駆逐艦2を配備することに決定した」
参謀総長「これがそのリストだ」
[第4戦隊 戦力リスト]
空母…飛鷹
重巡…青葉
重巡…熊野
軽巡…那珂
駆逐艦…初風
駆逐艦…綾波
414ガンスリンガー熊野(仮題)◆4MuKzYcRH6 :2015/02/26(木)19:28:41 ID:GCC
参謀総長「そこに表記されている艦娘たちはまだ戦力化されていない。正確にいえば適合者がまだ見つかっていないのだ」
参謀総長「戦力が整うまでは広報活動に従事してくれたまえ」
軍人「了解しました。では失礼します」
バタン
参謀総長「さて、あやつをどう見る三笠?」
三笠「お前様と同じ考えじゃ。猛禽のような眼をしておる。いい男じゃ」
参謀総長「…浮気は許さんぞ」
三笠「なに案ずるな。妾の身も心も、お前様のものじゃて」
参謀総長「さて。状況はどうなっておる?」
三笠「あまり芳しくないのう。むしろ悪化する一方じゃ」
三笠「このままでは硫黄島、沖縄、小笠原が孤立してしまうのう。何か手を打たんと」
参謀総長「もはや猶予はない、か」
参謀総長「軍令部に顔を出してくる。ついてこい」
三笠「喜んでお伴をさせてもらうぞ、お前様」
【志願編へ続く】
415ガンスリンガー熊野(仮題)◆4MuKzYcRH6 :2015/02/26(木)19:30:00 ID:GCC
【艦娘紹介】
[三笠]
第一世代型艦娘の一人。第二期艦娘増員計画で計画された
『敷島』、『朝日』、『初瀬』と『三笠』は基本的に同型艦娘として
計画された。
日本海における深海棲艦掃討作戦では第一艦隊の旗艦として、
ロシア極東艦娘部隊と共闘し日本海解放の大きな原動力となった。
しかし、凱旋直後の佐世保鎮守府沖にて艤装の弾倉入れが原因不明の爆発を起こし
利き腕である右腕を欠損する重症を負う。
一命は取り留めたものの艤装は修復が不可能と判断され解体、三笠は予備役に編入された。
予備役に編入された後、実家にて自宅療養していたが同期や後輩の艦娘たちが見舞いや助言を
求めに押しかけるため、参謀総長の計らいにより現役に復帰し艦娘訓練学校にて教鞭を執る傍ら、
参謀総長の秘書を務めている。
416名無しさん@おーぷん :2015/02/26(木)19:31:56 ID:GCC
とりまこんな感じでもう一度奨めていきます
不定期更新なのです
過度な期待をされると轟沈します
ではではノシ
417名無しさん@おーぷん :2015/03/01(日)13:06:38 ID:B0v
うさぎからくまにリメイクっぴょんね
乙です
418名無しさん@おーぷん :2015/03/08(日)23:01:01 ID:Ui4
夕張「できました赤城さん、加賀さんを射精させるスイッチです」
赤城「上々ね、さすがわ夕張さん」
夕張「くれぐれも、悪用しないでくださいね」
赤城「はい、もちろんです」



赤城「加賀さんはいま演習の打ち合わせ中ね・・・」


        会議室
加賀「今回の演習では空母と航空巡洋艦との連携に重点を置きます。私は監督役を勤めるので演習艦隊の旗艦は翔鶴、貴女に任せます」
翔鶴「はい」
加賀「最上さんには翔鶴の補佐をお願いするわ」
最上「はい!」
加賀「それから瑞鶴」
瑞鶴「え、なんですか・・・」
加賀「あなたは先日の演習で―――」

赤城(いまだ!)ポチッ

加賀「被弾がめだっぽっぁ!」ドピュッ
瑞鶴「っ!?」ビクッ

赤城(やりました)ポチポチポチ

加賀「無茶をしすぎてぃぃいぁぁああ」どぴゅっどぴゅっ
翔鶴「加賀さん!」
加賀「な・・・なんでもなぃわぁあああ」どぴゅっどぴゅっどっぴゅ!
ひざを額つかせ崩れ落ちる加賀
419名無しさん@おーぷん :2015/03/08(日)23:14:25 ID:Ui4
翔鶴「大変、今すぐ医務室に」加賀に肩を貸し
加賀「すまないわね・・・演習の監督は・・・赤城さんに代役をおねがいしておくわ・・・」

瑞鶴「行っちゃった…どうしよう」
鈴谷「ねぇ~それよりなんかクサくなぃ~?」すんすん
最上「そうだね、僕も臭うよ。なんの匂いだろう」すんすん
瑞鳳「この匂いは精子よ!精子だわ!精子!」
鈴谷「え、ぁマジだ、これ精子の臭じゃん!きっも~い」
最上「でもどうして急に精子の匂いが・・・まさか加賀さん?」
瑞鶴「それは絶対にないわ!加賀さんにはオチンチンどころか産毛すら生えてないつるんつるんよ!」机をバーン
瑞鳳「瑞鶴ちゃんがそう言うならホントなんでしょうね…でもだとすると…」
鈴谷「誰が精子を出したか。て感じぃ?」
瑞鶴「翔鶴姉は別におかしな様子もなかったし、きっとこの中の誰かよ」チラッ
鈴谷「そっかー加賀さんも精子の匂いで体調を悪くした感じ?」チラッ
瑞鳳「だとすると、このなかでいちばん射精しそうなのは…」チラッ



最上「なんでみんな僕を見るんだよ!ぼくは女の子だよ!」
瑞鶴「だって怪しいのアンタしかいないじゃないよ!」
瑞鳳「そうですよ!じゃないとこの匂いの説明がつかないじゃないですか!」
鈴谷「最上…お兄ちゃんだったとしても鈴谷は全然おっけーだから」
最上「もう、みんなして何を言い出すんだよ!」
420名無しさん@おーぷん :2015/03/08(日)23:20:31 ID:Ui4
この件をきっかけに男の子になることを決意した最上は
工廠で改装を受けて立派な物を装着し、はれて一人の艦息子となったのであった。
421名無しさん@おーぷん :2015/03/11(水)07:10:03 ID:RIq
生やすなし!
422名無しさん@おーぷん :2015/03/14(土)18:20:59 ID:foC
弥生「ちょっと...布団に潜り込むのはやめて」

卯月「固い事言わないぴょん♪もしかして怒ってるぴょーん?」

弥生「怒ってない...よ。分かってる...くせに...」

卯月「だよねぇ~。弥生は優しいもんねぇ。すりすりぃ♪」

弥生「でも..暑苦しいから離れて」

卯月「むぅ。こうなったらうーちゃんの温もりで弥生の心を溶かしてあげるぴょん!」ギュウウゥ

弥生「や、やめ(暖かい)」

卯月「弥生柔らかぁい♪」

弥生「.......(卯月も柔らかい)」

卯月「朝までこーしてるぴょん!弥生......あれ?寝ちゃった?」

弥生「.........(このまま時間が止まればいいのに)」 

~~~~~~~~~~~

カタカタカタカタカタカタ

弥生「ふぅ...今日はここまで」


423名無しさん@おーぷん :2015/03/24(火)00:21:29 ID:0h2
はじめましてです
どこかで聞いたようなネタですが投下させていただきます

なお最後はマルチエンドになっていますので
お好きなエンディングでお楽しみください
424引退提督・最後の一日 :2015/03/24(火)00:22:08 ID:0h2
「突然だが、提督の職を退くことになった」

 提督の口から発せられた言葉は、その場に集められた艦娘の誰が予想したよりも悪い報告だった。

 長きにわたって、ここを空けざるを得ない。
 いつまでになるかもわからなければ、そもそも戻ってこられる保証もない。
 そういった諸々の事情を考慮した末、彼は「退役」という道を選んだのだという。

「でも……提督、待たせていただくわけにはいかないのですか?」
「そうデース! 私たちなら、いつまでだって提督のことを」
「いや、それはしてほしくないんだ」

 榛名の問いに続く金剛の言葉を、提督が遮る。
 彼とて、別れるのが辛くないわけではない。
 だが、彼女たちと別れることよりも、彼女たちをずっと待たせておくことの方が、彼には辛かったのだ。

「では、今後私たちはどうしたらいいのでしょうか」
 努めて冷静を装う加賀の言葉に、提督は一度頷いた。
「それだ。今日は皆に最後の指示をしにきた」
「最後の指示、とは?」
 緊張した様子の艦娘たち。
 提督は寂しげに笑うと、近くにいた日向の艤装に軽く触れながらこう言った。
「皆にだけ戦い続けろと言うわけにもいかないだろう。
 今日限りでその艤装を下ろし、艦娘ではなく普通の女性として生きてほしい」
「それって、つまり……」
「ああ……解体、ということになるな。すでに工廠の方には話を通してある」
 その宣告に、ほとんどの艦娘が少なからず動揺した様子を見せたが、結局、提督の考えは変わることはなかった。





「あの、提督……今まで、ありがとうございました」

 礼を言う者。

「私は、もうそばにいてあげられないけど……これからもちゃんと頑張るのよ?」

 心配する者。

「最後までクソ提督だったわね。もう二度と会わなくて済むと思うと清々するわ!」

 あえて強がり、罵倒する者。

 その誰もが、等しく、辛かった。

 そして、その全員と一度に別れなければならない提督も、また、辛かった。
425引退提督・最後の一日 :2015/03/24(火)00:22:42 ID:0h2
「……ふう」
 その日の夕暮れ。
 家具等も引き払われ、すっかり空になった執務室で、提督は一つ息をついた。
「片付けは、皆がいるうちにやっておくんだったかな」
 思ってもいない言葉が、口をついて出る。
 これから別れを、それも自分の都合で告げなければならない相手に平然と手伝わせることができるような人物であれば、今回だってこんな決断は下さなかっただろう。
 彼は彼なりに、艦娘たちを愛していた。
 それは不器用で、残酷で、自分勝手な方法だったのかもしれないが。

「お疲れみたいですね。お茶を入れましたから、一休みしてください」
「ああ、ありがとう……って」
 差し出された湯呑を受け取ってから、提督はあることに気づいて苦笑いした。
「気を遣ってくれるのはありがたいが、また片づけるものが増えてしまったな」
「あっ……すみません、最後の最後でまたドジっ子しちゃいました」
「いや、いいさ。ありがとう」
 鎮守府が存在する以上、第一艦隊だけは存続させねばならず、第一艦隊の旗艦、つまり秘書艦のみは空席にすることはできない。
 そのしきたり故に、たった一人残った五月雨。
 彼女はこの鎮守府で最後の艦娘であり、またこの鎮守府で最初の艦娘でもあった。

「しかし、思い出すな」
 がらんとした鎮守府に、殺風景な執務室、そして目の前の五月雨。
「何をですか?」
「初めてここに来て、五月雨と会った日のことを」
 そう、その日も今と同じような夕暮れだった。
 差し込む西日に照らされた彼女の笑顔を、提督は今もはっきり覚えていた。
「言われてみれば、そうですね……鎮守府に二人きりなんて、あの時以来でしょうか」
「それもそうだな」
 窓の外の夕日に視線をやると、五月雨も隣に立って外を眺め始めた。
「思い出しますね」
「ああ」

 初めての出撃。

 初めての勝利。

 そして、初めての仲間。

 だが、その「仲間」は、今は、もういない。

「ずいぶん、いろんなことがあったな」
「はい」

 第一艦隊旗艦として、何度も出撃を重ね、戦功を立てた日。

 多数の大型艦の着任に伴い、第一艦隊を離れて遠征組に回った日。

 第一艦隊に呼び戻され、何度もボロボロになりながらキス島撤退作戦を成功させた日。

 気づけばいつも秘書艦としてここにいるのが当たり前になり、そして。
426引退提督・最後の一日 :2015/03/24(火)00:23:36 ID:0h2
 お茶を飲み終え、提督はもう一度五月雨を見た。
 今目の前にある光景は、あの日と似ていて、しかしいくつか違っていた。

 あの時はまだ着任したての艦娘だった五月雨も、今はすっかり歴戦の艦娘・五月雨改になった。
 それに伴い、武装もずいぶんと強化されていた。

 そして、彼女の左手の薬指には、提督が贈った指輪があった。

 だが、何よりも違うのは、彼女の表情だった。
 あの日、初めて会う提督に緊張しながらも微笑んでくれていた五月雨。
 いま彼女が浮かべている笑みは、明らかに、無理をして作ったもので。
「自分がここで泣いたら提督が安心して出立できない」
 そんな彼女の想いが、誰の目にも明らかなほどににじみ出ていた。

 提督の視線に気づいて、五月雨が彼の方に向き直る。
 そんな彼女に、提督がかけた言葉は――。

(マルチエンドになります。お好きなセリフの後ろのアンカーをどうぞ)

1.「ありがとう」>>427
2.「待っていてくれるか」>>428
3.「一緒に来てくれるか」>>429








.
427引退提督・最後の一日 :2015/03/24(火)00:24:28 ID:0h2

「ありがとう。本当に感謝している」
 そう言って、提督は五月雨を抱きしめた。
 五月雨も、それに応えるように提督の胸に顔をうずめ……やがて、二人はどちらからともなく離れた。
「もう行ってください、提督。私が、向こうを向いている間に」
 泣き顔を見せたくない、という五月雨の最後の気遣いは、しかし、その涙声が無駄にしてしまっていた。

 それでも、提督は彼女の言葉通り、振り返ることなく執務室を出た。

「提督」でなくなることを選んだ自分には、彼女の涙を拭ってやる資格はない。
 そのことを、彼は十二分に理解していたからだ。





 その日、一つの鎮守府が閉鎖された。

 そこに最後まで残っていた艦娘がその後どうしたのか、知る者はいない。





 ~ Sad End ~
428引退提督・最後の一日 :2015/03/24(火)00:24:56 ID:0h2
「待っていてくれるか」
 提督のその言葉に、五月雨は弾かれたように顔を上げた。
「いつ帰ってくる、とも、いつか帰ってくる、とも言えない」
 今さら、取り繕うような嘘など無意味だ。だから提督は真実だけを話す。
「それでも、俺はここに帰ってきたい。五月雨にまた会いたい」
 男は泣くものではないと教えられてきた。だから涙は流さない。
 ただ、涙の代わりに、言葉が次々と流れ出していく。
「その時はもう一度、五月雨と一緒に全てを始めたい。だから待っていてくれるか」

 ひときわ明るく輝く星であったとしても、無数の星々の中に埋もれてしまえば、それ自体の輝きがどれほどのものかを知るのは難しい。
 多くの星々を吹き消して、大切なものを手放して、やっと、最後に残った「一番大切なもの」の価値に気がつけたのは、遅いかもしれないが、遅すぎることはなかったのかもしれない。

 もちろん、五月雨の返事は決まっていた。





 その日を境に、鎮守府から提督の姿は消えた。
 誰もいなくなった鎮守府で、五月雨は一人待ち続けている。
 いつ提督が戻ってきてもいいように、執務室をしっかりと掃除して。
 いつ抜錨の声がかかってもいいように、兵装を完璧に手入れして。

 そんな彼女のもとに、提督が戻る日が訪れるかどうかは、提督本人を含め、まだ誰も知らない。





 ~ Normal End ~
429引退提督・最後の一日 :2015/03/24(火)00:25:44 ID:0h2
「一緒に来てくれるか」
 提督の言葉を理解するには、少しの時間がかかった。
「でも、私はここの秘書艦ですから……」
「だからどうした? そんなしきたりは、もう関係ない」
 どのみち、この後すぐに閉鎖される鎮守府だ。
 しきたりに反した状態が最後にほんの少しあったとして、誰がそれを目ざとく見つけて咎め立てようか?
「で、ですが提督……」
 慌てる五月雨を、提督は不意に強く抱きしめた。
「て、提督っ!?」
 しばし、無言のままの時が流れ。
 やがて、提督はぽつりとこう言った。
「それでも、俺は五月雨に傍にいてほしい。これから先も、ずっと」





 その日、一つの鎮守府が閉鎖された。
 鎮守府はすっかりもぬけの殻になっており、これは極めて異例の事態であった。

 その直前、一組の男女が連れだって鎮守府を離れたのを知る者は少ない。





 隣を歩く少女の名を呼ぼうとして、男が戸惑う。
「五月雨……いや、もう『五月雨』じゃないのか? 何て呼んだらいいんだ」
「『五月雨』のままでいいですよ、提督。それが一番しっくりきます」
 少女のその答えに、男は軽く苦笑した。
「それじゃ、そうさせてもらうが……俺はもう『提督』じゃないからな」
 そのことに気づいて、少女ははっとした顔をする。
「あ、そうでしたね。それじゃ……」
 一体何と呼ぶべきか。
 考えようとした少女の瞳に、男の薬指の指輪が映る。
 自分の薬指にあるものと、揃いの指輪が。

「それじゃ、こう呼んでいいですか?」
 満面の笑みを浮かべて、少女は男の手を取った。
「『あなた』、って」





 ~ Another End ~
430名無しさん@おーぷん :2015/03/24(火)00:27:32 ID:0h2
以上になります
スレ汚し失礼いたしました
431名無しさん@おーぷん :2015/03/28(土)11:41:17 ID:XSA
超短編を一つ
432大井さんの疑問 :2015/03/28(土)11:41:49 ID:XSA
「提督、球磨型の中で誰が一番好きですか?」
「そうだな――」

 本日の秘書艦である大井にそんな質問をされた。
 それして俺は気づいた、逃げ場がないことに。

―パターン1
「やっぱり大井かな」
「は?気持ち悪いんで死んでください」

―パターン2
「そうだな、北上かな」
「私の北上さんを何いやらしい目で見てるんですが。魚雷うちますねいいですよね?
抗う権利なんてありませんよ」

パターン3
「(北上・大井)以外かな」
「北上さんを選ばないとか目腐ってるんですか?生まれてきたことを公開させてあげますね


 3パターンの想定終了。
 ごめん皐月俺の命はここで終わるようだ。皐月のカレー食べたかったな。

「何泣きそうになってるんですか?そんなに嫌ですか?主砲ぶち込みますね」
「逃げ場ねえ!!」



433名無しさん@おーぷん :2015/03/28(土)17:34:58 ID:h1I
初めましてになります
ひとまず投稿テストを兼ねてpixivに投稿した短編をひとつ

駄文かつ人を選ぶネタですがよろしければお付き合いください
434心の中のビーズ :2015/03/28(土)17:35:23 ID:h1I
第七戦隊の部屋は、いつもの青葉たちの部屋と違って煌びやかな装飾で彩られていた。

「鈴谷はあまりこういうのを好みませんの。私の趣味ですわ」

心の中に浮かんだ疑問に答えるように、熊野さんが答える。
成程、神戸生まれの彼女であるなら、このような豪華な家具が合うのだろう。青葉の座っているソファーも、どこか格式の高いブランドのものなのだろうか。

「それで、何の用ですの?青葉」
「あ、いきなりその話しちゃいます?いや、なんと言いますかね」

掲示板に毎週張り出される鎮守府通信。その発行は基本的に青葉の役目だが、
着任以降ずっと続けてきているだけに、そろそろネタが尽きてきていたのだった。多少のニュースならいくらでもあるが、ただそれだけを伝えるのも物足りない。

「だから、何か面白い話でもないかなー、って思いまして」
「面白い話…流石にいきなりそのようなことを言われましても、何も思い浮かびませんわ」
「別になんでもいいんですよぉ。地元のこととか」

神戸生まれの熊野さんなら、新聞のネタになる話題でもあるのではないか、という狙いだ。
加古さんと衣笠も神戸の出身だが、あの二人は今日、またタイミングの悪いことに出撃中だった。……まあ、まともなインタビューだし、僚艦じゃない方がよかったかもしれない。

「地元のこと、ですの?」
「皆は殆どずっと横須賀ですし、旅行雑誌みたいなことが書きたいなー、と。グルメとかなら読者の食いつきもいいかもしれないですねぇ。皆が知らないようなネタとかあればそれでもいいですよ」
「あら、それなら丁度いいのがありますわ」
435心の中のビーズ :2015/03/28(土)17:36:09 ID:h1I
そういうと、熊野さんはソファーから立ち上がって、後ろの棚から何かを取り出した。
装飾がなされた細長い筒がTの字のように直角に交差していて、上の部分にはビーズが詰まっている。

「万華鏡ですわ。私の地元に、この手の博物館がありますの」
「へー…これはいいですね。簡単なのなら普通に作れそうですが、本格的なのは初めて見ました」

横にも伸びた筒にも沢山のビーズが詰まっているから、簡易的なものより色々な絵を楽しめそうだ。
軽く振って、何度かに分けて覗いてみると、ステンドグラスのような綺麗な景色が見える。殺風景な鎮守府の中では、とても新鮮な気持ちになれた。

「いいですね、これ。何度見ても飽きる気がしません」
「でしょう?元はただのビーズの集まりなのに、何度も鏡に反射されて、目に映る時には素敵な色合いを見せてくれるのですわ」
「青葉も欲しいなぁこれ。通販とかやってないんですかね?」
「さぁ、どうでしょう……しかし、万華鏡はそれゆえにすこし、悲しくもありますわね」

熊野さんが呟く。窓の方を見つめる彼女の表情は、笑みを浮かべながらも、少し悲しげに見えた。

「どういうことですか?」
「万華鏡から見える景色は、所詮は幻想ですわ。鏡を通して見えるものですから、本体のビーズそのものに目が行くことは殆どありません……表面しか見えないというのが、勿体ないですわね」
「成程、そういう考え方もあるわけですか」
「人だって同じですわ。皆表面を取り繕っていても、心の中には明かせない何かを抱えていますの。無論、艦娘も」
436心の中のビーズ :2015/03/28(土)17:36:25 ID:h1I
なんだか、その話を聞いていると、万華鏡という道具自体が、

「まるで青葉、貴女みたいでしょう?」
「え?」

さっきと同じく、心を見透かされたような言葉が返って来た。

「表では明るく振舞っていて、心の中に抱える闇を周りにばれないようにしている。少なくとも私には、そういう風に感じましたわ」
「ははは……熊野さんには敵わないですね。新聞の記事を探しに来たはずが、いつの間にか説教されちゃいましたよ」
「腐れ縁、みたいなものですからね。貴女の考えくらいなら、第六戦隊のお仲間と同じ程度にはわかるつもりですわ」

そうなると、衣笠や、加古さん、古鷹さんにもとっくにバレているということだろうか……それはなんというか、かなり恥ずかしいのだけれど。

「たまにはちゃんと、自分から向き合ってみたらどうですの?少なくとも私は、あの時のことはもう気にしてはいませんわよ」
「ホントですか?」
「そもそも、誰が悪いとか、そういう問題ですらないと思っていますわ。大丈夫、貴女のビーズも、十分美しいですわよ」

青葉の中の闇を覗き見て、それでもこれでいいと言ってもらえた。それだけで、なんというか、少し救われたような気もする。

「まぁ。ゆっくりやってきますよ。それでも青葉はまだ、自分を許すことは出来ないので」
437心の中のビーズ :2015/03/28(土)17:36:43 ID:h1I
「それでいいでしょう。ハナから貴女程度の人には、そう容易く乗り越えられるものではありませんわ」
「言ってくれますね……」
「ああ、それから、それ、持って行ってもいいですわよ」

そう言って目の前の彼女が、テーブルの上の万華鏡を指差す。

「いいんですか?本格的なものですし、高いんでしょう?」
「現物がなければ記事も書きにくいのではなくて?気にしなくても、数なら沢山ありますの」
「そうですか……なら、遠慮なく頂戴いたします」

熊野さんに礼を言ってから、万華鏡を受け取って第六戦隊の部屋に戻ってくる。

「只今帰りましたよー」
「お帰り青葉。って、それ何?どうしたの?」
「あ、古鷹さん。いえこれ、熊野さんから貰ったんですよ。万華鏡だそうで。覗いてみますか?」

そういって古鷹さんに手の中の万華鏡を渡した。

「わー……凄い綺麗!いいもの貰っちゃったね、青葉」
「ええ。後でお礼考えなきゃですね」

果たして、青葉の中のビーズを見ても、彼女は綺麗だと言ってくれるだろうか。

「じゃあ、今から何か買い物でも行く?」
「お、いいですね行きましょう!」

それは分からないが、まだしばらくは、このままでいようと、そう決めた。
438名無しさん@おーぷん :2015/03/28(土)17:37:17 ID:h1I
以上ですー、ありがとうございました
…いつか長編も書いてみたいなあ
439名無しさん@おーぷん :2015/03/31(火)00:42:13 ID:apD
おお、しばらく見ないうちにいろいろ増えてる
まとめて乙です、とりあえず最近のから感想
>>422
本人かい!それはそれでちょっと可愛い
>>430
仲の良い夫婦のロマンごちそうさまです
もし自分がうちの娘と離れる場合にはどんな風になるだろう…としばし思いをはせる
>>432
全部詰みワロタwアニメの大井っちも見事なサイコぶりでしたね
>>438
小道具が綺麗だなぁ…情景を想像するとなかなか素敵
440名無しさん@おーぷん :2015/03/31(火)20:34:51 ID:2Wp
曙を1割でいいからデレさせたいと思って書いたら
いつものメンバーが暴れてた、おめでとう響はキス魔の特性を覚えた
いつもの鎮守の話です
441ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:36:15 ID:2Wp
「はぁ……暇ね」

 誰もいない食堂でぼやく。人がいない時間に来る方がのんびりできるので私は好きだ。

「えーっと朧は遠征、潮は羽黒とお買い物、漣は漫画の新刊が出たからネカフェ行くって言ってたかしら……はぁ」

 他の第七駆逐の面々はそれぞれの予定を消化しているんだなとふと思い、今日は出撃も予定もない私はその場に突っ伏す。頭のなかに出てくるのはあのクソ提督のことばかりだ。

「何で私があんな奴のこと考えなくちゃいけないのよ!!」

 思わず叫ぶ。食堂の妖精さんが少しびっくりしている。悪いことしちゃった。
 少しだけ自己嫌悪を覚えてもう吸うものがないストローを加えてボーっとする。

「あ、いたいた。おーい曙ー!」

 入口の方から声をかけられる。声をかけた主が私に近づいてくる。正直私はこの娘が苦手だ。

「何よ皐月」

 『睦月型駆逐艦五番艦皐月』この鎮守府の古参にして、この鎮守府唯一のケッコン艦。

「そんな警戒しないでよ、同じ駆逐艦なんだからさ」

 同じ駆逐艦?どの口がそれを言うんだろう。この鎮守府には明確な贔屓がある。
但し一定ラインを超えた上でだ。あのクソ提督が言っていた。
皐月に与えられた装備は最新鋭の魚雷と電探、戦艦すらも破壊できるそんな装備。
だけど私に与えられた装備も高角砲に、電探と通常の戦闘ではまず負けることのないそんな装備だ。
どうせやるならもっと明確に、装備なしで戦闘海域に放り込むぐらいして欲しかった。ふと皐月の左手の薬指に嵌められている指輪が目に入り私は思わず舌打ちをする。

「うーん、どうやら嫌われているみたいだけど、横いいかな?」
「ええ、どうぞ」

 困った顔をしながらも私の横に皐月が座る。
442ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:36:54 ID:2Wp
「うーん、どうやら嫌われているみたいだけど、横いいかな?」
「ええ、どうぞ」

 困った顔をしながらも私の横に皐月が座る。

「で、何の用?わざわざ私を探してたみたいだけど?あのクソ提督の差金?」
「うーん、今回はボク個人の意志かな」
 
 皐月が苦笑いしながら答える。こういう所も気に入らない。アイツそっくりだ。

「ふーん、で何よ?私も忙しいのよ」

 嘘だ。でもこの場を早く去りたいのでとっさに嘘をつく。

「じゃあ簡単に言うね。曙はさ司令官の何が気に入らないの?」

 皐月の顔が変わった。先ほどのやわらかな表情など無い真剣な顔だ。

「気に入らないのよ……」

 私は思わず顔を背けながら答える。

「何が?」
「全部よ!!全部!!アイツの甘っちょろい所!!私みたいなのにもちゃんと装備をくれるところとか!!
甘すぎて反吐が出るのよ!!」

 私は立ち上がり叫んだ。力いっぱい思っていることを皐月にぶつけた。

「甘いことは悪いことかな?」

 皐月が涼しい表情でそんなことをいう。
443ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:38:48 ID:2Wp
「皐月あんただって知ってるでしょ、アイツが右も左も分からない時期に叢雲、扶桑、金剛を轟沈させたこと」
「うん」
「あの後アイツは三日間姿を表さなかった。でも、帰ってきた……それも笑顔で。私達は兵器よ!!そんなことにも耐えられないならそのまま帰ってこければよかったのよ」
「でも、曙。あの後司令官は、もう一度、少しだけ前の記憶を持って現れた三人に――」

 皐月が何を言おうとしているかは私も分かる。私も、この鎮守府では古参に入る駆逐艦の一人だ。

「知ってるわよ!!泣いて謝って、いつ殺してくれても構わないとか言っていたのを。それが甘すぎるのよ!!
私達は兵器よ、兵器に感情なんていらないし、その兵器に愛情とかそういった感情なんて持つなんてどうかしてるのよ。
兵器は兵器らしく使い潰してくれるそれだけでいいのよ!!」
「そうだね、司令官はたしかに甘いよ甘すぎる。それこそ糖尿になちゃうぐらいにね。でも――」

 皐月が笑いながらそういった後私に顔を近づける。

「な……何よ……」
「司令官は甘くてもボクは甘くないよ。覚えておいてね。それにボクは感情をもって生まれたこと、司令官が愛情を注いでくれることに感謝してるんだ。しがない物言わぬ兵器だったボクにいみをくれたことを」
「……ッ!!」

 皐月から発せられた冷たい殺気に思わず後ずさる。旧型の駆逐艦?嘘でしょ。こんなの戦艦……いやそれよりもっと恐ろしい何かじゃないの。
444ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:39:05 ID:2Wp
「それも、クソ提督のため?ずいぶんとゾッコ――」

 私の右頬を皐月の拳が掠める。

「言ったよね、ボクは甘くないって」
「ッうわあああああああああああああああ」

 私は皐月に体をぶつけてそのまま馬乗りになる。勝てるわけもないのに。勝てないのであればこのまま処分して欲しい、少しそんな風に思いながら私は拳を振り上げる。

「あんたに!!何が分かるのよ!!」

 私は泣いていた。今まで姉妹にもぶつけたことのない、思いが爆発してしまいそうだった。

「あぁ、ボクには分からないよ!!分かりたくもないね!!どうせそうやって、悲劇のヒロインぶって、自分の中に閉じこもって!!優しくされることから逃げてるんでしょ!!卑屈になるのは勝手だけど、その感情を表に……司令官にぶつけないでよ!!」

 皐月が体を入れ変えて立ち上がる。

「うるさい!!うるさい!!うるさい!!この旧型の駆逐艦が!!」
「睦月型の力、なめないでよ!!何?図星を指されたから言葉と暴力?お里が知れるね」
「うわあああああああああああああ」

 私は泣きながら拳を握り皐月に向かった。その拳が届く前に誰かに羽交い締めにされた。
445ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:39:51 ID:2Wp
「ちょ、ストップストップ。私闘は禁止ですよ。皐月ちゃんまで何やってるの」
「……皐月落ち着いて。いったい何があったんだ?」

 目を上げると皐月はひび……いやヴェーヌルイに、私は比叡に取り押さえられていた。いずれも練度が高く秘書艦を勤める事が多い二人だ。

「……フン、クソ提督のお気に入りが揃いも揃って何よ?いよいよ態度が悪い私を処分しにきたわけ?」
「あちゃー、嫌われちゃってますね。とりあえずこれで涙と鼻水吹いちゃってください」
「……ありがと」
「曙、あまり皐月を挑発しないでやってくれ」
「響、離してよもう大丈夫だから、ねえ?」
「……だめだよ」
「ん、むうううううう」

 私は比叡から貰ったハンカチで涙と鼻水と少しの血を拭う。ちょっとだけスッキリした。
 皐月達に目を向けるとヴェーヌルイが皐月の唇を奪っている。正直何が起こっているのかわからない。

「えっと……あんた達そういう関係だったの……」

 私は思わず後ずさりしながら聞く。

「あーあ、響ちゃんまたお酒飲んでますね。今日は会議あるから会議始まるまで飲んじゃダメって言ったじゃないですか。
あ、曙ちゃん一応解説しますとね、響ちゃんお酒飲むと顔にも出ないし、テンションにも出ないんですけどキス魔になっちゃいまして。秘書が多いメンバーで集まると大体誰かが唇奪われてるんですよ」
「あぁ……そう……」

 私にできる返答はそれだけだった。私と違って、皆仲がいいらしい。私が困った顔をしていると比叡が咳払いをして口を開ける。

「とりあえず二人共機嫌直して仲直りしてください。ね?」

 私は冷静になった頭で皐月に言ってしまったことと、逆上してしまった理由を頭の中で整理して

「……ごめん。さっきはひどいこと言って。ちょっとだけ図星だったってのもあるけど」
「ボクの方こそごめんね。司令官の事になるとどうしても」

 私は思わずため息をつく。どうせアイツは皐月の尻に敷かれているんだろうと思うと少しだけ笑えてくる。
446ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:40:15 ID:2Wp
「皐月、司令官を独占するのそろそろ――」
「だーめ、司令官はボクのものだからね」
「うーん、ちょっとだけでいいから」
「だから駄目だって」

 三人が楽しそうに盛大にのろけ会話を始める。私はもう溜息しか出なかった。

「で、ノロケ三人衆が集まって私に何の用よ?」
「あ、いや別に用ってわけじゃないんですけどね。大丈夫です、曙ちゃんはちゃんと評価されてますから。それにあの提督が解体なんてするわけないじゃないですか」
「そうだよ、司令官は優しいからね……今日はさっき言ってた秘書艦がよく回ってくるメンバーで会議なんだ。で、皐月が来ないから探しに来たらたまたま」
「たまたま……ね。じゃあ私は行くわね」

 少しだけ気持ちの整理を付けたかった。今日涙と一緒に吐き出した色んな事を整理したかった。だけど私の腕は皐月とヴェーヌルイに拘束される。

「……何よ?」
「会議ってほとんどなくて懇親会みたいなものだから曙もおいでよ、響ももう飲んでるし」
「いや、私は」
「大丈夫、ウォッカもある」

 ヴェーヌルイがいい笑顔でそう告げてくる。

「何が大丈夫なのよ……むしろ大丈夫じゃない部類よそれ……」
「問題ない」
「一個気になるんだけどあんた達筆頭に秘書艦メンバーいないってことは今日は誰が秘書艦やってんのよ?」
「年度末で忙しいからね、ちょっとスケジュール調整して、大井さんと龍田さん、霧島さんの三人に――」
「皐月……あんた鬼?」
「言ったでしょボクは甘くないって。この時期にだらけられると困るからね」

 あの三人に囲まれて仕事、それもデスクワークなんてゾッとする。ほんの少し、マイクロ単位でだけどアイツに同情した。

「ほら、皆待ってますから、気合!!入れて!!行きましょう」
「うん!!」「了解」
「えちょっと、私はいくって言って……きゃあああああああああああああ」

 私は文字通り引きずられ貸し切りの鳳翔さんの店まで連れられていった。
447ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:40:42 ID:2Wp

 名ばかりの会議という飲み会から開放されたのは日が完全に沈みきってからだった。最
初の三人に加え望月、レーベ、あきつ丸と言った秘書艦が多い面々にそれぞぞれが連れて
きた初雪やマックス、夕張、そしてお酒とご飯の臭いを嗅ぎつけた隼鷹、那智、大鳳と言
う何もかもがバラバラの、この鎮守府に所属しているというだけのつながりのメンバーが
集まった。
 
「楽し……かったな」

 途中ヴェーヌルイに唇を奪われそうになったり、笑い上戸のあきつ丸に絡まれたり、比
叡が泣き始めたり、レーベが脱ぎだしたりと色々と疲れたけど、それでも楽しかった。こ
の鎮守府に来て……いや私が艦娘の曙としてこの世にもう一度生まれて初めてかもしれな
いあんなに笑ったのは。もちろん朧達と一緒にいる時も楽しいけど、それとは違った楽し
さだった。

『曙、今度一緒に買い物行こうよ。響も一緒にさ』
『いい考えだ皐月、たまにはいい』
『……別にいいけど、あんたは嫌じゃないの?』
『一緒に飲んで楽しく過ごせたらそれだけで十分だ……って司令官が。正直ボクも響もあ
んまりセンス無くてさ、望月に至っては基本ジャージだし』
『んあ?皐月なんか言った?』
『はぁ……しょうがないわね……望月と初雪も来ること。少しぐらいお洒落しなさいよっ
たく……一応潮も連れて行くわあの娘も私と違ったセンス持ってるから』
『……とばっちりだ』
『うん、お願いするよ!!あ、スケジュールの調整は任せて、ちょっといじっておくか
ら』
『ハラショー』
『本当、あんたの底が見えなくて怖いわ。後ヴェーヌルイって響って呼んで大丈夫な
の?』
『私はどちらでも構わない、呼びやすい方で。どちらも私だ、どちらも私の魂だ。そう信
頼出来る不死鳥』
『何よそのドヤ顔……てか近い!!近いから!!唇を狙うな!!』
『ヒャッハー飲みに行くなら私達も連れて行けー!!』
『そうだぞ、私達も行こうではないか』
『あーもう、うるさい!!ちょっと落ち着きなさいよこのクソ……艦種が多すぎる……』

 今日あった出来事を思い出しながら部屋へと足を進める。なにか悟られないように顔は
ちゃんとしてっと。

「ただいま」
「キタコレ、あれ?曙なんかいいことあったんですか?」
「本当だ、いい笑顔だ」
「どうしたの?」

 私としことが顔が完全に緩みきっていたようだ。失敗。でも、今日はいろいろあった。
色々あって私の中の色んな物を吐き出して、最後には楽しくて。多分これは嘘じゃないと
思う。だからちょっとだけ皆にも聞いてもらおうと思う。

「――あのね」」
448ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:41:23 ID:2Wp

「で、何の用よクソ提督」
「司令官今日ボクお休みだよ?」

 翌日、アイツから呼び出され執務室に来ると皐月が既に部屋の中で立っていた。

「いや、妖精さんから昨日お前らが喧嘩してたって報告があってな、一応真偽を確かめた
所本当らしいから、あんま好きじゃないけど一応罰則をだな」
「何?解体でもする気?」
「バカ、何処の新撰組だよ。そんなコトするわけ無いだろ。てか、曙たとえ思っても二度
とそんなこと言うんじゃないぞ」
「……はい」

 やっぱり甘い。本当に甘すぎるぐらい甘い。皐月の顔もあるので私はとりあえず返事を
する。

「で、司令官バツって?」
「今日の休暇取り消しと、鎮守府近海哨戒任務」
「は?それだけ?」
「何か不満でも?」

 あまりにも簡単な処分に思わず声を上げてしまった。鎮守府近海で私達が遅れを取るこ
とはまずない。

「まぁそう言だろううと思って、スペシャルゲストを用意した」
「スペシャル?」「ゲスト?」

 私と皐月が思わず顔を見合す。

「カモンながもん!!」
「駆逐艦のアイドル長門参上!!今日はお前たちと艦隊を組むぞ!!なんなら夜戦もしち
ゃうか?」
「夜戦と聞いて!!」
「川内呼んだ覚え無い……まぁいいや一緒に行って来い」
「やったー!!」

 ポカーンと口を開ける私と皐月は長門の小脇にそれぞれ抱えられる。

「ちょ、自分で歩くから放しなさいよ、このクソ戦艦!!」
「フフフ、私は提督とは違うぞ。むしろご褒美だ!!」

 ダメだ話が通じない。
449ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:41:35 ID:2Wp
「ちょっと、司令官なんでもするから許してよ」
「今何でもって……いやいや、これは罰則だから仕方ない仕方ないからな!!ながもんも
あんまり張り切りすぎるなよ。鎮守府の近海なんてそうそう敵も出ないけど鎮守府に帰る
までが出撃だからな」
「うむ分かっている、この長門に任せるがいい。さぁ行くぞ!!」
「おー!!」
「川内、ながもんが暴走しないようにみといてくれ」
「了解!!」
「はぁ……仕方ないか……行ってくるよ司令官。ちゃんと仕事してね」

 私の反対側に抱えられた皐月が諦めたようにそう告げる。

「ったく、行ってくるわよ提督」
「おう、気をつけてな……ってあれ?」

 100回に一回ぐらいはクソをとってやってもいいかなと思った。今のはその一回だ。ア
イツには少しだけ感謝してる。この鎮守府に来てくれたこと、この鎮守府をこんな感じに
してくれたこと。

「大淀さん、今、曙クソって言わなかったよな?な?」
「え……ええ」
「何があったの?レ級でも攻めてくるフラグ?それとも俺謀殺される感じの?」
「いや落ち着いてください提督、何で全てネガティブに向かうんですか。少しは前向きに
――」
「いやだって――」

 長門に抱えられながら進む廊下でアイツの声が聞こえる。うん、やっぱりクソ提督には
変わりない。とりあえず今日の任務が終わったらまたクソ提督って言ってやろう。

「皐月……あんたも苦労してるわね……」
「へへ……」

 皐月が少し困ったような顔で笑う。とりあえず私は少しだけ変わったかもしれないけど
この鎮守府は変わらないで欲しいそう思った。



艦!!
450ホントの気持ち :2015/03/31(火)20:43:21 ID:2Wp
以上です

楽しい鎮守府に行きたい……
451名無しさん@おーぷん :2015/04/01(水)21:15:30 ID:Vdz
乙!
452名無しさん@おーぷん :2015/04/11(土)07:34:10 ID:P3X
二次小説を書いたんだけど、なかなか見てもらえるところがなくて困ってるんだ
SSといえるか微妙だけど、ここに掲載してるサイトのURLのっけてもいいかな?
453名無しさん@おーぷん :2015/04/12(日)00:25:11 ID:CBT
おk
454名無しさん@おーぷん :2015/04/12(日)01:49:16 ID:eFq
やったぜ
艤装の解釈とか、資材に関して色々定石を外してみたんだ。史実とかほぼさっぱり無視だけど
短編にするつもりが進みが遅すぎて無理っぽいんで、連載長編って形にしてる

http://novel.syosetu.org/48868/

よかったら見てってちょうだい
455名無しさん@おーぷん :2015/04/18(土)12:16:13 ID:A5U
描写が長くて目が疲れたけど良かったですよ。
うちは主人公の艦娘まだだけどイメージできて
その子の着任が楽しみです。
456名無しさん@おーぷん :2015/04/18(土)22:29:29 ID:2QG
>>454
ハードボイルドな感じでおもしろかったです
続き楽しみにしてます
457名無しさん@おーぷん :2015/05/04(月)16:19:57 ID:kAy
外道発言が有名な某人形劇(?)を久々に見たので
改変して書いてみた
何が言いたいかというと暁のタイツで濾したエスプレッソ飲みたい
458オー!暁 :2015/05/04(月)16:22:25 ID:kAy
提督「暁、今日はお買い物にいくぞ」
暁「うん司令官、暁はお買い物にいくわ」
大淀「一人で遠征(お買い物)にいくのはとても偉いことです」

暁「えー!暁一人でいくの?」
提督「そうだ暁、遠征(お買い物)はお前一人でいきなさい」
暁「わかったわよ、暁の出番ね!じゃあ何を持って帰ってこればいいの?」

大淀「きゅうりと洗濯バサミとサンマとお米5キロとカメラのフィルム・・・」
暁「そんなの一度に覚えられないわよ!ぷんすか!」
大淀「ダメです暁。これくらい覚えなさい」

暁「紙に書いてよ!」
大淀「だーめ!覚えなさい」
暁「じゃあもう一回だけ言ってよ」

大淀「きゅうりと洗濯バサミとさんまとお米5キロとカメラのフィルム24枚撮りとビール6缶パックと提督がいつも読んでる週刊少年ジャンプを買ってくるのです。わかりましたね?」(提督が品物を取り出して見せる)
暁「全部あるじゃない!」
提督「あるからって買わなくていいってことはないんだぞ」

暁「そうか!じゃあ覚えてるうちにいってくるわね」
大淀「いってらっしゃい」
提督「ちゃんと買い物にいけるんだろうか?様子を見てこよう」
459オー!暁 :2015/05/04(月)16:24:33 ID:kAy
暁「まずきゅうりよね!八百屋さんは近くにあるから簡単だわ」
暁「あったわ!八百屋さんだ!きゅうりを買うわ!」
暁「きゅうりをちょうだい!」

明石「毎度ありがとうございます!」

暁「きゅうりを買ったわ!」
提督「偉いぞ暁!」

暁「次は何だったかしら?思い出せないわ」
提督「どうした暁?!」

暁「大淀さんに聞いてみようかしら」
提督「それじゃダメだぞ暁!」

大淀「あら暁早かったですね。あら、何も買ってないじゃないですか!
暁「きゅうりを買ったわ!」フンス

大淀「きゅうりを買ったからっていちいち戻ってくるんじゃありません!」
暁「他のが思い出せないのよ」

大淀「ダメです、思い出しなさい」
暁「うーんと…わかったわ洗濯機ね!」

大淀「洗濯機なんて持てるはずないでしょ!洗濯バサミです」
暁「そうか!」
460オー!暁 :2015/05/04(月)16:27:18 ID:kAy
暁「洗濯バサミってどこに売ってるのかしら?うーん、わからないわ」
提督「スーパーに行けばいいんだ暁!」

暁「タバコ屋には売ってなかったわ?」
提督「当たり前だぞ暁!」

暁「お風呂屋さんにもないわね?」
提督「何やってるんだ暁!」

暁「間違って京都にまできてしまったわ!」
提督「俺も京都まできてしまったぞ!」

暁「ねえ大淀さん、洗濯バサミってどこに売ってるの?」
大淀「自分で探すのです、暁」

暁「難しいわよ大淀さん」
提督「しっかりしろ暁!…チッ!イライラするぞ!」

暁「ねえ、教えてよ大淀さん」
大淀「自分で考えなさい、でないと貴女はいつまでたっても成長しないですよ」
暁「ねーえぇ、教えてよ教えてよー!」
大淀「ダメです暁」

暁「ねーえお願いだからー!」
提督「暁!こんな簡単なこともできないのか!これらはみんなスーパーで売ってるんだ!」
暁「やっぱり提督ついてきてたのね?」

提督「何…知っていたのか」
暁「おかげで安心して旅行ができて楽しかったわ」
提督「暁…おまえも一人前のレディになったな」

提督「ヌアッハッハハハ!ヌアッハッハハハ!ヌアッハッハハハ!ヌアッハッハハハ!ヌアッハッハハハ!」
暁「アハハハハハハ!アハハハハハハ!アハハハハハハ!アハハハハハハ!アハハハハハハ!」

大淀「暁!いまどこにいるんですか?暁?!」
461オー!暁 :2015/05/04(月)16:30:11 ID:kAy
本当はオー!フブキーかオー!ノワキーにしようか悩んだのです
でもこういうのは暁がよく似合うと思ったのでオー!暁にしますた
素晴らしい元ネタであるオー!マイキーは久々に見るととても面白い
以上です
お目汚し失礼
462名無しさん@おーぷん :2015/05/06(水)18:21:46 ID:Gl4

463名無しさん@おーぷん :2015/05/06(水)20:05:19 ID:0hf
乙ですな!(>w<)
464名無しさん@おーぷん :2015/05/11(月)22:12:22 ID:7k1
投稿していいですか?
465名無しさん@おーぷん :2015/05/11(月)22:26:07 ID:7k1
初投稿です。
おーぷんでネタ振られたので3時間ほどで急いで作ってみました。
お目汚し失礼いたします。
466題名未定 :2015/05/11(月)22:33:09 ID:7k1
 彼女は一昨日沈んだ。海域攻略最後の夜戦で敵戦艦の直撃弾を喰らったのだ。艤装が剥がれ軽くなった体が宙に舞うと水中に没していった。水中で何かにぐいと引きずり込まれるような感触の後眩いばかりの光に包み込まれたところまでは覚えている。
彼女は気が付くと鎮守府の医務室で寝ていた。軽かった体が鉛のように重かった。寝返りを打つと寝台が音を立てた。その音で気づいたのか明石がやって来た。
「体調はどう?」
「あの・・・不知火は?・・・確か戦艦に撃たれたところまでは覚えているのですが」
早口になった不知火を遮って明石は言うと、寝台の縁に腰掛けた。
「まあまあ。落ち着いて」
明石はお茶を出し、勧めた。不知火も起き上がると明石の横に座った。明石が続ける。
「気分はどう?」
「あぁ・・・はい。大丈夫です」
「さすがの聡明で冷徹な高練度駆逐艦も轟沈ともなれば慌てるか・・・」
明石は頷きながらそう言うと、湯呑に手を付けた。
「あの・・・不知火はどうしたのでしょうか?」
「沈んだんだよ」
明石は思ったより物事をはっきりと言いきるタイプらしい。明石は続ける。
「一応応急修理要員はいたから助かったんだけどね。前の鎮守府とかでも何人か見てきたけどやっぱり轟沈するとどんな子も慌てちゃうんだよね」
「そうなんですか」
「それが普通だよ」
「でも・・・・」
「どうしたの」
明石が訝しげに聞いてくる
「なんか変なんです・・・自分が自分じゃないというか・・・一度沈んだんですよね?だったらこれは自分なのかなって思うんですよね」
 明石は腕を組むと唸った。
 「ううん・・・なるほどねぇ・・自分が自分じゃない・・・か」
 明石は黙り込むと考えこんでしまったようであった。それはどういう言葉をかければよいのかを考えているようでもあった。
「ごめんなさい。変なことを聞いてしまって」
それは本心であった。不知火は軽く頭を下げた。
「いや、そんなことはないよ。ところで不知火ちゃんは艦娘ってどういうものだと思う」
「艦娘ですか・・・。敵たる深海棲艦を駆逐し海に安寧秩序をもたらす、言わば兵器だと思います」
「兵器か・・・不知火ちゃんらしいね」
「じゃあ沈んだ敵について今まで考えたことってあった?」
「ないですね」
不知火は即答した。
「やっぱりいつもの不知火ちゃんだ。きっと大丈夫だね」
明石は微笑した。
「いえ・・・ところで不知火は身体的には問題はないのでしょうか?」
「それはないみたい。大丈夫」
「そうですか・・・ではそろそろ失礼します」  不知火は明石にそういうと立ち上がった。
「ごめんね。参考にはなってなかったね」
明石は申し訳ないと言った感じだった。
「いえ・・・そんなことないです。ありがとうございました」
不知火はそう言うと、医務室を出た。
467題名未定 :2015/05/11(月)22:33:44 ID:7k1


一棟から二棟への渡り廊下は夏の熱気に包みこまれていた。駆け足で二棟へ駆け込んでいく。足は大丈夫らしい。二棟の扉を開けると再び冷房の冷気に包み込まれる。
「あぁ涼しい」
そんなことを呟きながら不知火は講義室の前を通り過ぎる。講義室からの視線を感じる。それはいつものことだった。鎮守府で最高練度の駆逐艦である彼女に向けられた視線は少なくとも羨望や憧れといったいわば尊敬の視線だった。
でも今は違う。
それは興味や不思議という類の好奇的な視線だった。
好奇の視線が矢のように突き刺さってくるように感じた。それを刺さった矢を振り払うかのように腕を払うと足早に去っていった。
―一度沈んだ艦は元の艦なのか―
頭がそのことで悶々としていた。誰に相談すればよいのか分からなかった。姉の陽炎、妹の黒潮、二水戦でお世話になっている神通さん。相手は何人でも思いつくが解決してくれそうな相手は誰も思いつかなかった。
気が付くと二棟の端まで来ていた。旧三棟のへつながる扉が残っている。そして二棟と三棟の間には小さな庭がある。
海が見える小さな庭だ。普段は四棟のほうにある大きな庭を使うのであまりくる機会はなかった。
「たまには行ってみるか」
 彼女は踵を返すと靴を取りに行った。
 
 
 庭は相変わらず小さい庭のままであった。三棟に沿うようにL字型になっている。三棟は海に面しているので庭は海と三棟とを挟むようにあった。
庭のL字型の道を沿うように様々な花や木が植えられている。パンジー、バラ、よく分からない中ぶりの木、そして百葉箱。柵の向こうには海が見える。建物の影の方は見ないが思い出せる。蔓の木に小さいベンチ、それに慰霊塔。
体中に電流のようなものが走る。それとともに夢中で駆け出した自分の考えを理解してくれる人・・・。
468題名未定 :2015/05/11(月)22:33:56 ID:7k1
道の突き当りには黒い石碑があった。先の大戦で未だ還ってこない艦たちの名が刻まれている。石碑を指でなぞっていくとその艦の名はあった。駆逐艦「早霜」。大戦で沈んだのち、彼女は未だ戻ってこない。
あのとき救えていたら今一緒にいれるのだろうか。深海棲艦と艦娘は表裏一体と聞くので彼女もどこかに居るのかもしれない。
提督も特別攻略作戦のときなどに探してはいるものの未だ目撃情報すらない。
不知火は考えた。
私は艦として再びの生命を受け、沈み、そしてまたこうして蘇った。だが彼女は未だに生命さえ受けられていない。
この差はなんなのだろうか。彼女はどこにいるのだろうか?二度も生を受けることのできた自分。その一度を譲りたかった・・・
前世でも、そして今も―彼女を助けること、目の前の一つの命を助けることさえ出来ない自分とは何なのだろうか?
敵を倒すためだけに生まれた。ついさっきまではそう思っていた。敵なんてただ沈めるだけの的の様なもの。ついさっきまでそう思っていた。冷徹で聡明と言われた私。仲間と衝突することも多くその度に「冷たい」と言われていた私。
他人を深く思いやる。以前では考え付かなかった私がそこには確かにいた。

気が付けば彼女は冷静な判断が出来ない。彼女がどこにいるのかが気になった。踵を返し走り出す。すれ違った誰が何か声を掛けてくるが   何を言っているか耳に入らない。
倉庫で艤装を回収すると無我夢中で埠頭へ、大海原駆けていった
469題名未定 :2015/05/11(月)22:35:56 ID:7k1
水平線は既に夕陽で真っ赤に染まりきっていた。潮風を切りながら行く。艤装からガタガタと変な音がしてきた。最高速度はとうに越えているはずだ。艤装が壊れたら沈むのは知っていた。でもそれでも構わなかった。
どこまでも行こう。そう思っていたときだった。
斉射音が響き渡る。
「うそ・・・電探には何も・・・」
 弾は大きく外れて不知火の頭上を大きく越えて飛んでいった。
 斉射されたのは信号弾だった。はっと後ろを見ると黒潮がいた。黒潮も不知火の姿を認めると音も立てずに近づくと不知火の前に立った。「どうしたん?無段の単艦出撃なんて。不知火らしくもないなぁ」
「いや・・・これは・・・」
「何するつもりやったん?」
 いつになく低く厳しい声だった。
 「これは・・・これは・・・」
 不知火は海面へへたり込んだ。黒潮が近づいてくる。
 「うわっ・・・機関ボロボロやん。どうしたん?」
 「・・・・探してた」
 「えっ?何て?」
 「早霜を探してた」
 「早霜?夕雲型の十七番の?」
 不知火は静かに頷いた。
 「なんでそんな・・・」
 不知火は泣き崩れた。涙交じりに言った。
「う・・ううっ・・・私この前沈んでから・・・あれから考えたの。私は何で二度も生きてるんだろうって・・・まだ再びの生すら受けてない子もいるのに。そうしたら急に探さなきゃって思って。もう自分なんてどうでもいいから探さないとって思って・・・」
 黒潮はうんうんと頷くと言った。
「なあ不知火」
不知火は黒潮の方を向いた。
「アホかっ!」
黒潮は不知火を殴った。不知火は倒れこみ怯えた目つきで不知火を見た。
「お前が沈んだら早霜が戻って来た時にどないする気や。早霜のためにお前が死んだ聞いたら早霜もまた悲しむやろが。そんなん歴史と変わらんやろが。それに・・・そっ・・それに残されたウチらはどないするんや。まっ・・・また悲しませる気かこのドアホが」
 黒潮は大声で泣いていた。不知火は目を見開いた。すでに怯えの色は消え、正気に戻っていた。
「私は・・・私は・・・どうすればいいの」
「もらった生命粗末にするな。もう今の不知火なら分かるやろ」
不知火は小さく頷いた。
「ほな、帰ろか」
 黒潮は不知火にそっと手を差し出した。不知火はその手を固く握り返した。
 夕陽はいつまでも二人を照らし続けていた。

(完)

題名は何にすればいいですかねぇ・・・
あと最後不知火の一人称が私なのはわざとです。


お目汚し失礼しました。
470名無しさん@おーぷん :2015/05/16(土)17:47:29 ID:l7z

471名無しさん@おーぷん :2015/05/17(日)01:57:09 ID:n58
俺も書いてみてるんだけど思ったよりしんどいなw
472名無しさん@西村艦隊 :2015/05/18(月)15:51:53 ID:p7W
よし西村艦隊のssをがんばって書く
473名無しさん@西村艦隊 :2015/05/18(月)17:24:39 ID:p7W

......

t「今日もいい日だねぇ...」ぼけー...
今日はいつも通り朝おきて朝食を食べた
それから鎮守府を散歩して執務して昼食べてきた
だが午後になると仲間であり士官学校の友が鎮守府に来た
友「提督ひさしぶりだな!」
T「おまえか!げんきだったか?」
友「おう!げんきだぞ!だが今日来たのはお前に頼み事があってきたんだ」
T「頼み事か?俺でいいならいいぞ^^」
友「ありがたい!では紹介しよう」
時雨改二「僕は白露型駆逐艦時雨だよ,,,君か提督かい?」ニコッ
T「時雨じゃないか!この子がどうしたんだい?」
友「おれは昇進して本国に帰還命令が出たんだ」ドヤッ
T「そうか..いつの間にか上に立ってたんだな」
友「そこでだ上からによると艦娘は転属になることらしいんだ」
T「それでこの子をここにおいてほしいと...」
友「あぁだがこのこだけではなくてだな...ええっと...」もじもじ
時雨「西村艦隊...僕たちをここのおいてほしいんだ」
T「あぁいいぞ!」ニコニコ
友「ありがたい!では時雨はここにとめてもらえ私は他の子に伝えるためと
時雨の荷物をもってまた後日くる!」超笑顔
T「そうかまた後日あおう」
夜...
時雨「提督!ちょっといいかい?」ドアバーン!
T「ファ!?」ビク
T「しぐっぐっぐぐれれえ?」ドキドキ
時雨「ここには夕立がいるって聞いたけどどこだい?」
T「夕立は今遠征に出でいるもうそろそろ戻るはずだ...」ふぅ〜
時雨「あっ..そうなんだ」(´・ω・`)しょぼーん
夕立「呼ばれたみたいでじゃじゃじゃじゃーん!」│。+.ドア。+.|ミヘ(`・ω・)ノ┌┛タダイマン!!
T&時雨ェエェェエΣ(´д`ノ)ノェェエエエェ
そんな感じで1日目が終わった
474名無しさん@西村艦隊 :2015/05/18(月)17:26:19 ID:p7W
うん疲れる
475名無しさん@おーぷん :2015/05/19(火)01:53:32 ID:hUy
>>455
>>456
読んでくれてる人がいたのか! ありがたいありがたい……
476名無しさん@おーぷん :2015/05/19(火)01:54:16 ID:hUy
途中送信してもうた
今停滞してるからなるべく早く続きを上げるように頑張るよ
477名無しさん@西村艦隊 :2015/05/19(火)21:24:00 ID:tG3
あぁ〜!
今までがんばって書いたのに一瞬ですべて消えたあぁ(´・ω・`)しょぼーん
478名無しさん@西村艦隊 :2015/05/21(木)20:48:25 ID:fjD
2日目


扶桑「西村艦隊をよろしくお願いいたします」
そう...今日からこの子達との生活が始まったのである

今この鎮守府にいるのは
西村艦隊. 扶桑 山城 最上 時雨 満潮 (山雲 朝潮)
夕立 瑞鶴 翔翮 その他諸々(持ってないのでキャラわかりません)

その後...
T「今より部屋割りを掲示する!」
掲示物バァァァン!!!
1 時雨 夕立 最上 満潮
2 扶桑 山城 瑞鶴 翔翮 
3その他諸々

時雨「やったね夕立!一緒の部屋だよ」
夕立「嬉しいっぽ〜い!」
最上「やったね僕も嬉しいよ」
ドアバーーーン!!!
「「「「ふぁ!?」」」」
満潮「何!?」
瑞鶴「あ!部屋間違えた...」
時雨「ちょ!? まさか執務室の提督にしようとしてた?」
瑞鶴「そうよ」ニコニコ
翔翮「瑞鶴!何してるの!?」
時雨「ヤッてもいいけどほどほどにね」

そしてこの日に提督は謎のけがで入院したのであった
(´・ω・`)更新と量が少なくてごめんなさい
479名無しさん@おーぷん :2015/05/28(木)22:37:02 ID:bhC
某月某日、雀のさえずりと朝の光で目を覚ます
窓をあけると木の枝から勢い良く雀がはばたいていった
肌にあたる空気はやや冷たく、澄んでいる
おもむろに吸い込んで吐き出すと
まだ顔も洗ってないのに頭が冴えていくのを感じる

提督「久々だな、こんな寝起きは、いつもこんなやさしい目覚ましでスッキリ起きれたらいいんだが」
今日はいい一日になりそうだ
何故そう思ったのかはわからないが気持ちのいい朝とはポジティブになるものだ
しばらく呼吸を堪能していると
ビシュッ!トン ビシュッ!トンと規則正しい音がわずかに聞こえてくる
ふ、と目をやると青い袴を着てサイドに髪を結った女性が的に刺さっている矢を片付けようと歩いていく後姿が見える
よし、と声がきこえんばかりの顔をして俺は今日の最初にやる事を決めた
提督(まだ仕事始めるにはちょっと早いしな)
着慣れた軍服を着てにっと笑いながら帽子を整えるとしっかりとした足取りで部屋を出て行った

ここはとある鎮守府
その一人の提督と数多の艦娘達のおはなし
480名無しさん@おーぷん :2015/05/28(木)22:39:41 ID:bhC
提督「おはよう、今日も早くから朝錬か」
加賀「あら提督おはようございます。提督は珍しく早起きですね」
提督「うっ、昨日は執務も出撃も無かったからな・・・妙高に任せて一日中寝てたんだ・・・」
加賀「そうですか、提督は普段お忙しいですものね。たまにはゆっくりするのもいいかと」
提督「そういって貰えると助かる、赤城はいないのか?」
加賀「赤城さんなら軽めに流して先ほどあがりました。何かご用事があるなら言伝しておきますが」
提督「いや特に用事は無いよ、君たちはいつも一緒にいることが多いからね」
加賀「・・・そうですね」

なにか間を感じつつも何か別の話題でも振るべきか、と考える間もなく
ドタドタバタンといかにも慌てているであろう足音がきこえる
「 急いで瑞鶴ー待ってー翔鶴ねぇー」
何か慌しいが・・・まあ大体察する事は出来た
が、加賀の顔が険しくなったのが俺は怖かった

バン!戸が壊れるんじゃないかというくらい勢い良く叩きつかれて盛大に開く
と同時に白い髪と赤い袴が映える綺麗な女性が飛び出してきた
翔鶴「お、おくれましたすみません」
加賀「・・・」
翔鶴「その瑞鶴がなかなか起きなくて、そっそのすm」
加賀「言い訳はいいわ、それより提督に挨拶なさい」
ズバッと翔鶴の話をさえぎって言い放つ
・・・険しい顔は相変わらず健在だ
481名無しさん@おーぷん :2015/05/28(木)22:40:36 ID:bhC
ハッと翔鶴が俺に気づく
まあ加賀より少し離れた所にいたとはいえ気が付かないとは余程焦っていたのだろうな
そりゃ怖いよな、わかるわその気持ち。と思わず噴出しそうになるのを笑顔で誤魔化しながら挨拶をする
提督「おはよう翔鶴」
翔鶴「おっおはようございます提督気付くのがおくれてしまい申し訳ありません」
提督「いやいや余程急いでたみたいだからな仕方ない、それよりほらあっち」
クイッっと目を加賀のほうに向ける
翔鶴が後ろを振り向いくと加賀とツインテールのこれまた赤い袴の少女がバツの悪そうな顔をしている・・・

加賀「なにか言う事があるのではなくて?」
少女「・・・遅れました」
ハア、と加賀はため息をつく
加賀「今日は朝からあなたたち五航戦の練習を見るから早めに来なさいと翔鶴に言っておいたはずだけれど?」
少女「・・すいません」
少女「でも昨日は遅くまで練習してたんです!それで・・・」
加賀「それで寝坊した?」
少女はうっと言葉を詰らせて顔を反らす
ハア、と加賀はさっきより大きなため息をつきながら続ける

加賀「そんなものは言い訳にもならないわ、あなたたちはまだここに来て日が浅く錬度も低い」
   だからこそ皆に追いつくために一日も早く戦力になる為に何倍も練習をこなさなくてはならない
   寝坊?そんな事だから七面鳥なんて言われる技量なのよ」
少女「なっ!?なんでそこまで言われなきゃならないのよ!」
がるるるとまさに噛み付きそうな顔で加賀を見返す
加賀は顔色一つ変えず見据える・・・こっちまで怖くなる
慌てて翔鶴が走り寄る
翔鶴「こらっ!瑞鶴!加賀さんは私たちの練習を見てくださってるのよ」
瑞鶴「で、でも翔鶴ねぇ」
翔鶴「でもじゃありません、謝りなさい!」
瑞鶴はまだしぶっている
ここらで仲裁しとくかなっと割って入る

提督「まあまあ翔鶴、寝坊は悪いがわざとじゃないし昨日頑張ってたんだろう、そういう事もあるさ
   だからもういいじゃないか」
翔鶴「で、でも・・」

ちらっと翔鶴が加賀の顔色を伺う
そう、彼女も加賀が苦手、というか怖いのだろう、少なくとも提督の俺よりずっと
その気持ちよくわかるよ
だから助け舟を出すのさ

提督「加賀ももう許してやってくれ、ここは俺の顔に免じて、な?」
俺も加賀の顔色を伺うように愛想笑いを作る、俺提督だぞ・・・まるで逆じゃないかと思うが俺だって怖いもんは怖い
加賀「・・・わかりました」
それだけ言うと踵を返してすぐ後ろにある道具を片付けはじめた
482名無しさん@おーぷん :2015/05/28(木)22:42:11 ID:bhC
提督「きょ、今日はもう上がるのか」
加賀「ええ、朝錬は無し」
加賀「あなたたち五航戦は勝手になさい」
翔鶴瑞鶴のほうを見もせずに言いながらテキパキと片付けると道場を出て行った

姿が見えなくなると同時に残された3人はふぅーっと一斉にため息を吐く
あまりに同時だったので互いの目をみて小さな笑いがでた

提督「いや~加賀は厳しいな」ハハハと愛想笑いを流しながら場を和ませる、ていうか和んでくれ
翔鶴「もうっ!だから早くに起こしに行ったのに瑞鶴ったら全然起きないんだもの!」
と、至極当然な不満がでるが先ほどのような緊張感は無くむしろホッとしている感が見受けられる
瑞鶴「もう~いいじゃない、大体あの人五航戦五航戦って名前で呼ばないし錬度が低いとか
   アレもだめコレもだめでなによあの上から目線!」
提督「ま、まあ実際お前らの先輩だし技量もかなりのものだからな」
フン!と瑞鶴はそっぽを向く
提督「それで今からどうするんだ?練習しないなら一緒に朝飯でも食いにいくか?」
瑞鶴「いえ練習はするわ!あの人がいなくてもやれる事はあるわ
   早く上達して見返してやるんだから!」
この子のこういう負けず嫌いな努力は感心する、加賀と同じだな、と思うが当然口には出さない
翔鶴「そうね、じゃあ昨日の基礎練習しましょう」
瑞鶴「ええ、わかったわ」
二人はピッタリの息で弓の組み立てを始める
その目はもう先ほどの怯えたり怒ったりした動揺さは微塵も感じられず、まさに真剣だった
提督(集中している、これはお邪魔だな)
提督「じゃ、頑張れよ」と一声かける
翔鶴「はい!」
瑞鶴「当然よ!」
これまたピッタリの息で返事が出る
流石に姉妹艦だな、と納得しつつ少し笑みを浮かべながら道場を出た

さて、少し早いが執務室で軽い朝食でも取りながらスケジュールに目を通しておくか

とりあえずなんの落ちもなく書いてみたが日常系という事でかんべんなw
483名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)23:07:12 ID:DlB
投稿させてもらいます
初SSなので拙いところはあると思うけど……
484大型艦になりたい少女 :2015/05/31(日)23:07:58 ID:DlB
「ここか……」
私の目の前には、立派なレンガ造りの建物。 そびえ立つ門には『横須賀鎮守府』の文字。
この門をくぐれば、私も遂に憧れの艦娘になれるのか……  そんな思いに胸を膨らませながら、恐る恐る門の中に足を踏み入れ、建物に向かってゆっくり歩いていく。

「あなた……そこで何をしているの?」
「ふぇっ!?」
いきなり声をかけられて、奇声をあげてしまった。振り返って声の主を見ると、短めの茶髪のお姉さんがいた。しかも巨乳。かなりの乳。溢れでる大人の色気。もしかしてこの人は……
「あ……あの、私は今日からここで艦娘になる予定の……」そんなお姉さんに、ついしどろもどろ。
「あら、貴方が! 話は聞いているわ。なんなら、私が提督のところまで連れていってあげましょうか?」
「え!本当ですか! ありがとうございます!」
「ちょうど私も提督室の近くまで行く用があったしね。そういえば自己紹介がまだだったわね。私はここで陸奥の艦娘として働いているの。」
「やっぱり陸奥でしたか!かっこいいなぁ…… 」
「あら、ありがとう。貴方は希望艦種とかあるの?」
「艦種は特にないですけど、む…じゃなかった、なるべく大型艦がいいですね」
「大型艦ね。戦艦は楽しいわよ。貴方明るそうだし、金剛とか合いそうね。」
「そうですか?ありがとうございます!」
と、話しているうちに提督室到達。
私は、陸奥さんにお礼を告げて、提督室の中へ入る。
485大型艦になりたい少女 :2015/05/31(日)23:08:39 ID:DlB
「あ、あの! 今日付けで配属になりました、名前を……」
「ああ、そういう自己紹介なんかは後回し、とりあえず検査受けて。 ほら、あそこにある機械、そこで寝ときゃ終わる」
「え!? あぁ、はい……」
随分といい加減な提督だなぁ…… と思いつつ、部屋の隅にあるMRIみたいな機械(執務室の中にぽつんと変な機械があるので凄いシュールだった)に寝転がって暫く待っていた。
「おい新入り、結果でたぞ。」
提督の声で飛び起きる。
「んぁー、これが結果の紙。これを持って一階の艤装管理室、ってどこ行って。」
486大型艦になりたい少女 :2015/05/31(日)23:10:51 ID:DlB
何の説明も無しに、やっぱ変わった提督だなぁ、と思いつつ管理室に入ると
「ええと、貴方が新入りの娘?」
と声をかけられた。着物を着てツインテール、かつ巨乳の少女だ。私の目測ではFはある。ということは……
「そうです。 あ、貴方は蒼龍さんで……?」
「うん。私のこと知ってくれてるなんて嬉しいなぁ。ええと、今から貴方の艤装を選ぶけど、その前に色々説明するね。」
「あ、はい! お願いします」
「まず、WW2 の戦地となった海に突然沸きだした化物―深海棲艦の駆除が私たちの仕事、ってのは分かってるよね?
その駆除に使う武器が艤装なんだけど、これは深海棲艦の死骸から採ったり、あとは遺品から作り出せる海で戦った様々な艦の記憶を具現化した存在したもの……
一般的には妖精さん、って呼んでるんだけど、その力によって本来ならミサイルとかで応戦しなきゃならない深海棲艦を、低コストで駆除できる、って訳。
ただ、記憶を使用しているせいで、自分と合った艦の記憶の艤装じゃないと使えなかったりするし、何より妖精さんが、艦を擬人化した姿に私たちの外見を変えてしまうのよ。だから、ほら」
蒼龍さんが艤装を取り外すと、ぽうっと蒼龍さんの身体が光り、アラフォーらへんの小太り茶髪巨乳女性へと変身した。
「この通り……どう?」
「すごい!すごいです! うわああああ!」
「凄い食いつくね……」
また艤装を付けながら蒼龍さんが言う。
「で、さっきの検査は貴方にどの艦の記憶が合うか調べたもの、ってワケ。じゃあ早速、どの艦にするか決めよっか!えぇと、適性のある艦は…うーん、駆逐艦ばっかだなぁ……」
「え?駆逐艦だけですか!?」
「あ、1隻ずつだけど、軽空母と正規空母にも適性あるね。」
「正規空母!正規空母でお願いします! む……大型艦がいいんです!」
「分かった分かった。分かったからちょっと落ち着いて……ええと、これかな!これが貴方に合う艤装。ちょっと付けてみて
487大型艦になりたい少女 :2015/05/31(日)23:11:22 ID:DlB
ヤバイヤバイ。今まさに私の長年の夢が叶う。心臓をバクバクと破裂させながら艤装を身につけて行くと、私の身体が光り出し、変貌を遂げた。
「お、ぴったり合ったみたいね! うん、今日から貴方は艦娘『瑞鶴!」
私は感動しながら、部屋にあった鏡で瑞鶴となった自分を眺める。ツインテールの髪。紅白の着物。飛行甲板。そしてスレンダーな身体……うん?スレンダー?
「えええええええええええええ!」
「ど、どうしたの!?」
「そそ蒼龍さん、これが瑞鶴で合ってるんですか?本当に、正規空母ですか?」
「そうだけど… 大丈夫?どっか不調とかあったの!?」
「ななななんでもありません…… あ、私提督に報告に行ってきます……」
488大型艦になりたい少女 :2015/05/31(日)23:11:45 ID:DlB
艦娘という仕事の人気はそれほど高くない。化物を殺すことや自分の姿が変わることに抵抗感を覚える人は多いし、少ないものの殉職(鎮守府では轟沈、と言うそうだ)する人もいる。なのに私が高校卒業後の就職先として艦娘を志望した理由、それは幼いころからのコンプレックスによる。
つまり、この、貧乳。圧倒的まな板。
この貧乳が嫌で嫌で、毎日キャベツやら鶏肉やら豆乳やら摂取したり、胸が大きくなるマッサージを試してみたりしたが効果は無かった。
そんなとき、たまたまネットで動画を見た。艦娘が深海棲艦と戦っている様子が映っていた。そして目を疑った。
なんだ! あの戦艦!空母! 重巡! みんなおっぱいがばるんばるん揺れてやがる!ばるん!ばるん!
そして私は艦娘となって爆弾おっぱいを手に入れることを決意した。例えそれがまやかしの乳だとしても……
なのに!なんだ!
「なんだこの仕打ちはぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ」 
そりゃ、私のAAカップの乳よりは瑞鶴はまだマシだ。でも、それでも!
「乳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
489大型艦になりたい少女 :2015/05/31(日)23:12:15 ID:DlB
「貴方……五月蝿いし邪魔なんだけど。鼓膜が破れるかと思ったじゃない。ああ、不幸だわ……」
廊下だろうが関係なく叫んでしゃがみこんでた私に、突如声がかけられる。見上げると、物凄い艤装の黒髪の女性……扶桑姉妹がいた。
「あの…大丈夫?大声で叫んでいたけれど… 何かあったのなら聞きましょうか…?」
そう言いながら私に視線を会わせるように少し屈みこむ扶桑さん。そして強調される豊満な胸。おっぱい。
「私の気持ちが分かってたまるかぁぁぁぁぉあ!今は私の方が不幸じゃああはああはあああ」
「貴方!なに姉さまに生意気な口聞いてるの…砲撃されたいの!?」
しまった!思わず叫んでしまった!
「山城、落ち着いて… 私は気にしていないし大丈夫よ? それで、瑞鶴さん? 先程、私の聞き間違えでなければ、その… 乳、と叫んでいたような… どうされたの?」
「あの…実は……」
扶桑さんの優しさのお蔭で落ち着いた私は、事の顛末を話始める。
「そう…つまり、巨乳を目指して艦娘になったのに、いざなってみたら貧乳艦だった、ということね?」
「随分と不純な動機ね……   何だったら、今から他の艦に変えてもらえばいいじゃない。」
「それが、他は駆逐艦しか適性がないみたいなんですよ……」
そう言いつつ、紙を見せる。
「ふーん……あら…… 貴方、全然不幸なんかじゃないじゃない」
紙を眺めていた山城さんがニヤリと笑う。
「姉さま、確かこの艦はうちの鎮守府にはいないわよね?」
「ええ、そうね… この子なら……  瑞鶴さん」
にっこり笑う扶桑さんが、紙に書いてあるとある艦娘の名前を示しながら言う。
「今すぐ艤装管理室に戻って、この艦娘の艤装を貰って来たらいいと思うわ」


そして私は、艦娘『浦風』として、豊満な乳を手に入れた
490大型艦になりたい少女 :2015/05/31(日)23:12:49 ID:DlB
お目汚し失礼しました。
オチが若干杜撰ですまない。
491名無しさん@西村艦隊 :2015/07/05(日)10:43:36 ID:NlJ
どうも!テスト帰還だったので 投稿できませんでした
またぼちぼち投稿していきます!読んでくれると嬉しいな〜
492名無しさん@西村艦隊 :2015/07/05(日)11:49:24 ID:NlJ
数日後...

夕立「おなかすいたっぽぉい〜」
提督「よ〜し午前のノルマも終わったしなにかたべにいくかぁ〜」
提督「いいよな時雨?」
時雨「いいよ!何食べにいく?」
赤城「食べにいくと聞いて!」│。+.窓。+.|ミヘ(`・ω・)ノ┌┛窓からパリィィィン!!!
提督「読んでない!!!」( ・`ω・)-○))~~~~~~~Ю ロケットパンチ
赤城「ぐぼぁぁぁ!ひどいです!提督!私も行ったっていいじゃないですか!」
提督「お前が行くとその日背が閉店するからダメだ!」
時雨夕立... ひそひそ
提督赤城「ぎゃーぎゃー!わいわい」
時雨「提督提案があるんだけどごにょごにょ」
提督「ほうほう...あ〜」
提督「赤城!飯行くぞ!」
赤城「いいんですか!?」
提督「ただしお前がこれをクリアしたらだ!」........
赤城「わかりました!がんばってやります!」
提督「よし!時雨夕立いこうか〜」
夕立.時雨「ぽい〜.うん」

それからそれから...
瑞鶴「提督いる〜?って...な!?」
赤城だったもの「はぁふいはふはんへいほふははひはへんほ」(あぁ瑞鶴さん提督ならいませんよ)
瑞鶴「ちょっと!そんなことよりなんでそんなおばあちゃんみたいによぼよぼなのよ!」
赤城ry「あははらはひもはへへはへん」(朝から何も食べてません)
ずいずい「しょうがないな〜間宮さんまで連れて行ってあげる!」
大食いさん「ほへはいひまふ」(お願いします)

それまたそこから
赤城「いや〜やっとおなかがふくれてきました!」
瑞鶴「それにしてもよく食べたわね〜83杯もあんみつ」
赤城「こんなん序の序の序です!いうなればアニメでopが終わるくらいです」
瑞鶴「そんなわけ...あるかも...」
ずいずい「ところで何で執務室にいたの」
赤城「それはかくかくしかじか」
瑞「なるほど朝ご飯てべてなくて提督に言いにいったら昼も食べずに午後の仕事をしたらバイキングねぇ〜 苦行だわ....」
赤「バイキングのためなら!朝と昼は抜きにできます!!!」
瑞「で!どこまでおわったの?」
赤「だいたい半分ですかね〜」
瑞「じゃあがんばってね〜私午後から翔翮ねえと買い物だから」
赤「ありがとうございました!楽しんできてくださいね」
493名無しさん@西村艦隊 :2015/07/05(日)11:49:29 ID:NlJ
そこから〜
赤「加賀さん手伝ってください!」
加「何をです?」
赤「カクカクシカジか」
加「いいですよ けれどそれは私もバイイングにいっていいとゆうことですか?」
赤「そうゆうことです」
プルプルプル...プルプルプル...がちゃ
加「はいもしもし」「はい.はい.わかりました」
加「提督から他の艦娘にたよるなだそうです...」
赤「BAKANA!」
加「じゃあがんばってください 稽古してきます」
赤「うぅ〜がんばります」(´・ω・`)しょぼーん

提督「とゆう訳で終わらなかったと」
赤「はい」
提「はぁ〜俺もそこまで鬼じゃない」
提「ほれ行くぞ」
赤「どこにですか?」
提「だからバイキング!」
赤「え?なんでですか?条件できませんでしたよ?」
提「忘れたのか〜今日はみんなで宴会の日だ!」
提「いつもならここでやるけど今日は店を貸し切って朝まで宴会だ〜!!!」
時雨夕立+西村艦隊+加賀+瑞鶴+翔翮「「「「わぁ〜〜〜〜!!」」」
提督「よし!あの店で!宴会だ!他の艦娘はもうおれたち待ちだ!」
提督「さぁ!行くぞ〜〜〜〜!」

そのあと無茶苦茶朝まで騒いだ...

はい!とゆうことで
がんばりました...これからもぼちぼちあげているので待っている方はおたのしみに!
山城「姉様...私たち出番ありませんでしたね」
扶桑「次はあげてくれるかも」
最上「そうだね次はあげてくれることを願おう」
翔翮「私も...」(小声) 
494名無しさん@西村艦隊 :2015/07/05(日)12:28:33 ID:NlJ
提「今日もいいてんきだな〜」
この2週間1度も雨が降ってないしかも夏のような天気である
なのでうちの艦娘は海やらプールで遊んでいる
提「俺も遊びにいこうかな〜時雨と夕立と西村艦隊をつれて〜」

提「とゆう訳で!今から海で演習といいわけをしてあそびにいく!準備するのです!」
全員「お〜〜!」
「姉様日焼け止めわすれずに」「時雨浮き輪もっていくぽい?」「僕はビーチバレーがしたいな〜」by最上

それから〜
「とゆう訳で「「「海だ〜〜〜!!!」」」
「「「fooooooo!!!」」」
そのあとめちゃくちゃ楽しんだ

用事があるのでここまで
495名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:39:19 ID:81f
深雪「司令官に忘れられてる気がする」


注意

※かなり短いです
※白雪ちゃんがキャラ崩壊してます

ss初投稿です。
文がおかしい場所などがあったら、コメントでご指摘して頂けると幸いです。
496名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:39:42 ID:81f
深雪「……っていうか、『気がする』じゃなくて忘れられてるんだよ……」

白雪「どうしたのよ深雪、いつになく弱気じゃない」

深雪「だってー……だってさぁー……」

深雪「私たちレベル9でずっと放置されてるじゃんかー……」

白雪「そこに私を混ぜないでよ」

深雪「だって事実じゃん」

白雪「……でも私たちの艤装を解体もしていないし、近代化改修の素材にも使っていないし……」

白雪「きっとこれから練度向上の予定があるはずよ」

深雪「それで7か月も放置するかぁ?」

白雪「…………」

深雪「(あっ黙った)」

白雪「……ふぇっ……うっ……だって……だってぇ……」

深雪「(な、泣き始めた!? あの白雪が!?)」
497名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:40:06 ID:81f


深雪「(6か月前に『カレーの味濃すぎない?』って叢雲に結構ツンツンした態度で言われてもしょんぼりした程度だった白雪が!?)」

深雪「(6か月前に初雪が出撃の時に布団から出てこなくて全責任を負ってもへこたれずに入渠ドックの掃除してた白雪が!?)」

深雪「(6か月前に私が白雪の大切にとっておいた伊良湖最中をこっそり食べたときも翌日の朝食のデザートの私のプリンを吹雪と話してる時にこっそり食べるくらいの可愛らしいお返しくらいしかしなかった白雪が!?)」

深雪「(まずい……まずいぞこの状況……絶対これ私が泣かせたように見える……いや実際そうだけどさ!)」

深雪「(と、とにかくフォローしないと!)」

深雪「ああっでも! もしかしたら改二の予定が来たらばんばん出撃させてくれるかもしれないな!」

白雪「私たちそんな武勲持ってないじゃない! しかも深雪に至っては開戦前に沈んじゃってるじゃない!」

深雪「ほ、ほら! 武勲がものすごいってわけじゃなくても改二になってる人もいるじゃん! 叢雲とか初春とか!」

深雪「(ごめん叢雲に初春! でもうちの艦隊では駆逐艦トップ2なんだから許してくれ!)」

白雪「叢雲も初春さんもキャラ立ちが凄いじゃない! その点私たちなんて似たような性格で容姿も目立つ人もたくさんいるのよ!」

深雪「」
498名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:40:22 ID:81f


白雪「……あ」

深雪「」

白雪「……その、ごめんなさい。 そんなつもりじゃなかったの」

深雪「……う、うん。 だいじょう――――」

白雪「別にあなたの容姿が地味とか、似たような性格でもっとかっこいい人がいるとか、そういうことを言うつもりじゃなかったの!」

深雪「」
499名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:40:37 ID:81f


白雪「(あぁっ! どうしよう! 一旦泣いてすっきりしちゃったせいかうっかり結構シャレになってないことを言ってしまったわ!)」

白雪「だ、だってほら……艦娘なんて100人以上いるのよ? 今では初代ポケモンの数くらいいるの」

深雪「……」

白雪「だからやっぱりね? 天龍さんだとか摩耶さんだとか加古さんだとか、そういう人たちにキャラを持っていかれるのは仕方のないことだと思うの」

深雪「加古さんに至っては必殺技の名前まで被っちゃってるもんな……」

深雪「いっそ加古さんに弟子入りして『師匠から受け継いだこの必殺技の力、見せるときが来た!』みたいにしたほうがキャラが立つかもしれないな……」

白雪「それはやめておきなさい、加古さんに弟子入りして覚えられるのはたぶん目を開けながら眠る技くらいよ」

深雪「最近改二になって『左目が髪で隠れるから常に左脳だけ寝ていられるんだ!』って言ってたぜ」

白雪「器用すぎるでしょ加古さん……まあ古鷹さんがいつも起こしてるけど……」

深雪「加古さんと古鷹さんか……そうだ、2人でひとつみたいにすればもしかしたら目立てるんじゃないか!?」

白雪「あら、それちょっと良い考えかもしれないわね……赤城さんと加賀さん、金剛さんと比叡さん、扶桑さんと山城さんみたいに」

深雪「そうと決まれば話は早いぜ! 白雪よ、今日からそなたが深雪さまのパートナーになるのだー!」

白雪「あ、私初雪のパートナーだから」

深雪「なんでだよ!」
500名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:41:10 ID:81f
白雪「だって昔も何かと初雪と一緒に行動すること多かったし……」

深雪「私が電と衝突したとき助けようとしてくれてたじゃんかー!」

白雪「そりゃあ目の前で沈みかけてる相手がいたら助けるわよ……」

深雪「私と白雪が着任したのもほぼ同じ日だったじゃんかー!」

白雪「……え、そうだったかしら?」

深雪「し、白雪が冷たい……ほら! 司令官が着任した日にさ! まだ叢雲と大淀さんと明石さんしかいなかった頃に!」

深雪「私たちは運命に導かれてこの鎮守府に着任して目と目が合ったじゃん!」

白雪「任務達成の報酬として着任した後同じ艦隊に編成されただけじゃない」
501名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:41:25 ID:81f

深雪「だーとーしーてーもー! 私たちが任務報酬艦として選ばれたんだぜ! 奇跡じゃん!」

白雪「吹雪型だから扱いやすいしちょうどいい戦力だったからじゃないの?」

深雪「むー、白雪は現実的すぎるんだぜ……っていうかさ、着任当初の白雪はもうちょっとこう……幼さが少し残るけど健気ないい子って感じだったはずなんだけど」

白雪「さあね……七か月放置されたせいでやさぐれちゃったんじゃないかしらね……」

深雪「じ、自分で言いやがった……」

白雪「……っていうか、ここまで話すならいっそ司令官に直訴してみましょうよ」

深雪「へぁいっ!?」
502名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:41:40 ID:81f


白雪「何よ、急に態度が小さくなったじゃない」

深雪「だだだって! だってさぁ!」

白雪「何? まさか『司令官が怖い』とか言うんじゃないでしょうね?」

深雪「だって絶対忘れられてるじゃん! 直訴して『で、あなた誰?』って言われたら悲しいし!」

白雪「(意外と深雪のメンタル装甲が薄かった!)」

白雪「それでも! ここまで深雪がいろいろ抱えてるならきちんと司令官に言った方がいいと思うの!」

白雪「司令官も女性だし、私が見ているといろんな人の相談に乗ったりしているわ!」

深雪「で、でも……私一人じゃ不安だしさ……」

白雪「じゃあ私が一緒に行けばいいんでしょう? よし話は決まったわ! 頑張っていきましょう!」

深雪「え、ちょっ、引っ張らないで、ちょ、ちょおおおおっ!」
503名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:41:57 ID:81f


~20分後~


白雪「……大丈夫だろうとは思っていたけど……まさかここまでうまくいくとはね……」

深雪「意外とすんなりだったな……やっぱり忘れられてたけど」

白雪「まあそこはすぐ思い出してくれたし、許してあげましょうよ」

深雪「ま、そうだな。 その……白雪さ」

白雪「急に改まったわね、どうしたの急に。 まさかお礼でも言うつもり?」

深雪「うん。 ありがとな、励ましてくれた上に一緒に執務室にまで来てくれて」

白雪「……まぁ、結構付き合い長いしね。 それに私も出撃の機会を手に入れられたし、こちらこそありがとう」

深雪「うわっ! 白雪がお礼言った! 長らく放置されて心が荒み叢雲レベルに気が強くなったあの白雪が数か月ぶりにお礼言った!」

白雪「さすがにそこまで荒んではいないわよ!」

深雪「ふっふっふ……とにかく明日からは深雪さまの本気をみんなに見せてやるぜ!」

白雪「出撃明後日なのだけれどね……」
504名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:42:15 ID:81f


~3週間後~




深雪「司令官に指輪を渡すことを忘れられてる気がする」(Lv99)


白雪「ちょっと本気を見せすぎでしょあなた」
505名無しさん@おーぷん :2015/08/06(木)19:44:10 ID:81f
これでおしまいです。

一気に投下してしまいましたが、何か文法ミスなどありましたらご指導ご鞭撻よろしくお願いします。
506名無しさん@おーぷん :2015/08/11(火)20:58:10 ID:MOJ
こんなとこにあったんか
507名無しさん@おーぷん :2015/08/14(金)03:16:57 ID:sv0
投稿しますね。
508処刑!!ビッグセブン :2015/08/14(金)03:21:52 ID:sv0
太平洋某海域。

激戦の末、戦艦棲姫を倒した我らが長門、だが、一瞬の油断をつかれ、酒匂が深海棲艦に捕らわれた!
深海棲艦隊は酒匂を助けたければ、ビキニ環礁まで長門一人で来るようにと言ってきた!
我らが戦艦長門は、周囲の反対を振り切り、罠を承知でただ一人、酒匂救出に向かう!
はたして、彼女の運命は!
509新棲鬼対ビッグセブン :2015/08/14(金)03:49:59 ID:sv0
酒匂「ぴゃー!長門さん!!来ちゃダメー!」
長門「酒匂!!ええい!深海棲艦!私は約束通り一人で来たぞ!酒匂を離せ!」

深海棲艦の指定した海域で長門を待っていたのは、艤装をはがされ、後ろ手に縛られた酒匂と、その手を握る2隻のタ級、そして、装甲空母姫の姿だった!

装甲空母姫「フフフ、本当にヒトリで来るなんテ」
戦艦タ級「長門よ、あれを見ろ!」
長門「む!な・・・なんだ!あれは!!」

戦艦タ級の指さす先を見る長門、そこには、2隻の見た事もない不気味な深海棲艦の姿があった。

長門(何だあの深海棲艦は、大きな…頭、そう、巨大な女の頭に羽根飾りのような艤装がついている。まだ眠っているようだが…)

装甲空母姫「長門、あの2隻こそ我々深海棲艦の技術の結晶、原子棲鬼だ!」
長門「原子棲鬼だと!」
装甲空母姫「その通り、力を見せてやろう」

そう言って、指を鳴らす装甲空母姫、すると、駆逐艦にけん引されて、先の戦いで長門に倒された戦艦棲姫が現れた。
既に息を引き取っているものの、急所をうまく撃ちぬけたためであり、艤装の多くは無傷で残っている。

長門(何をするつもりだ?まさか…)

じっと事の成り行きを見つめるながとの前で、二隻の内の一方の原子棲姫の目が開き、その巨大な頭が戦艦棲姫の死体の方を向いた。
そして次の瞬間、原子棲姫の口から超高熱の炎が発射され、艦娘達の砲撃でもさほどダメージを与えられなかった戦艦棲姫の体を、あっという間にどろどろに溶かしていく。

長門「な…」
装甲空母姫「驚いただろう、原子棲姫の力、次はお前の身で味わうがいい!」
長門「くそ!むざむざやられないぞ!!」

艤装を展開し、原子棲姫に砲を向ける長門、原子棲姫も、その真っ赤な瞳で長門の方を見て、ゆっくりと頭の向きを変え、長門の方を向こうとする。

長門「させるか!喰らえ!!」

長門必殺の41cm砲が原子性姫めがけ一斉に放たれた。
強力な徹甲弾が原子棲姫に襲い掛かるが、砲は早々に当たらない、そのすぐ横にむなしく水柱を上げる。
その間にも、原子棲姫の頭は長門の方へ向いていく。

長門「く!」

仕方無く、移動する長門、だが、原子棲姫の頭の回転速度はだんだんと増していく。
このままでは長門が捉えられるのも時間の問題だろう。
510新棲鬼対ビッグセブン :2015/08/14(金)03:50:07 ID:sv0
長門「やすやすとはやられん!喰らえ!」

水面を走りながら、長門は砲撃を続行する。
そして、遂に徹甲弾の一撃が原子棲姫に命中した。

酒匂「やったあ!」

装甲空母姫の手の中で、思わず喜びの声を上げる酒匂。
しかし、装甲空母姫は余裕の表情である。

長門「何!?馬鹿な!」

砲撃の煙が晴れた向こうを見て、長門は驚愕した。
数多の深海棲艦を沈めてきた長門の砲を受けて原子棲姫の巨大な頭には、傷一つついていないのだ!

長門「く!!何と言う奴だ!!」

原子棲姫、その圧倒的な力に、さしものビッグセブン長門の額にも汗が浮かぶ。

はたして、ビッグセブンはこの強敵に打ち勝つ事ができるのか!
そして、捕らわれの酒匂の運命は!

次回「無残!ビッグセブン大炎上」
511新棲鬼対ビッグセブン :2015/08/14(金)03:50:27 ID:sv0
とりあえず以上です。
512名無しさん@おーぷん :2015/11/04(水)02:16:24 ID:AMV
初投稿失礼します。
513或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)02:31:19 ID:AMV
私はとある鎮守府の艦娘だ。
私がこの鎮守府に着任して、もう2年以上になる。
私の提督は私に対して、殊更に優しい。
私が初期艦だとか、特別な思い出があるとか、そういった心当たりがあるわけではない。
出会った日からずっと、変わることなく優しい。
私の体調や成長を気遣い、常に気を配ってくれる。
一度その理由について尋ねてみた事がある。
しかし提督は曖昧にお茶を濁すばかりできちんと教えてはくれない。
先輩の艦娘に尋ねてみた事もある。ちなみに彼女は初期艦で、提督の事を一番理解しているように思える。
彼女いわく、提督は好きになった子には例外なく優しいわよ、あの浮気性は、と辛辣なご意見だった。
まあ重婚しているようだし、それは解らなくもない。
しかし提督の私に対する態度は好きとかそういった類いのものとは異質な感じだ。
「提督は…何故私に良くしてくれるのかしら」
私がこの鎮守府に着任して2年。
未だに良く分からない事だった。
514或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)02:45:56 ID:AMV
初期艦の彼女もケッコンには至っていない。
練度の問題もあるのだろうけれども、どちらかと言うと提督の良き理解者であれど、彼女はケッコン対象外、みたいな事を以前に聞いた事がある。
私はそれを聞いて「ふうん、じゃあ私はそのどちらでもないのか」
といった感想を抱いた気がする。
と言うのも、私の練度は99だからだ。
ケッコンカッコカリはいつでも可能である。
しかし提督は一向にする気配がない。
まあ、私の艦種が駆逐艦だからというのはあるかも知れないが、それで言うと提督は何人か、お世辞にも能力の高くない駆逐艦娘とケッコンしている。
私の立ち位置って何なんだろう。
ケッコン対象外で、能力が高い訳でもなく、初期艦の彼女ほど信頼が厚いわけでもない。
だけども提督は私に優しい。
こうなると、流石に提督からの下心があったほうがまだしも座りが良い。
というか、理由も分からず優しくされるのは少し気持ち悪くもある。
今度のイベントで活躍したら、理由を問い質してみよう。
私は密かに決意するのだった。
515或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)02:56:54 ID:AMV
そう決意した夏の大規模イベントは、有り体に言えば惨敗だった。

私を含めた多くの艦娘は傷つき、資材も涸渇し、甲種勲章も逃した。
新たな艦娘との邂逅は辛うじて死守したものの(ウチの提督の矜持らしい)、心身ともにズタボロだった。
私も正直、活躍出来たかは分からない。
むしろ幾度となく連合艦隊で大破し、艦隊の足を引っ張った気がする。
落ち込む私に提督は、
「いや、皆が、君が無事ならそれで良いよ。誰も欠けることなく済んで良かった」
と励ましの言葉をかけてくれた。
何でかな。
その時の提督の表情は、いつにも増して私の心に刺さった。
516或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)03:11:18 ID:AMV
長い入渠を終えて、私がドックから提督室に向かう途中、ケッコン駆逐艦娘の一人とすれ違いそうになった。
私は意を決して尋ねてみた。
「あの、突然すみません。尋ねたいことが…」
なにかしら、と柔らかな笑みを浮かべて彼女は振り向いた。

「提督は、何故…何故私に優しくされるのでしょうか?駆逐艦で初めてケッコンなさった貴女は、何かご存じではないですか?」
イベントでは活躍もできず、第一、提督でなく彼女に尋ねるのもお門違いという気はしたが…
果たして、彼女は答えてくれた。
確かにその理由は知っているけど、私の口から言うのは憚られるわね、と。
どうしても知りたいなら私から提督にそれとなく言っておくから、今度尋ねてみたら?
彼女は柔和な笑みを崩さないまま、少しだけ困ったようにそう言ってくれた。
やった。
少しだけ後ろめたさも感じたが、これでようやく提督の謎の優しさの理由が分かる。
この時の私はそんな風に考えていた。
愚かにも。
自分が優しくされる理由なんて、知らなくて良いことだったのに。
517或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)03:12:09 ID:AMV
一先ず此処まで。
518或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)03:54:12 ID:HFa
続きいきます
519或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:00:49 ID:HFa
「提督、教えて頂いても良いでしょうか」
なんだい、と提督はいつもの調子で私に微笑みかける。

先日のイベントが終わってからしばし。
提督の初のケッコン駆逐艦娘の方からそれとなく促してもらい、ようやく私は姿勢を正してこの質問を投げる事ができる。

「提督が私に優しくしてくれるのは…何故なのでしょうか」

その質問に対して、提督は顔を強張らせる。
逃げられない、と直感しているのだろう。
勿論、彼女に言い含めて頂いた事も効いてはいるのだろうけれど、何より私は今回ばかりは退く気にならなかった。

「…答えなきゃ駄目かい?」

それでも提督は困ったように微笑みながら、私に聞いて来る。
私は、駄目です、と笑って言った。

今にして思えば、笑って言うような台詞じゃあ、なかった。

それじゃあ、僕がこれから君に話す事実は、とても君にとって愉快な話じゃぁないのは、承知の上で聴いてくれるかな。
提督はそんな前置きをして、私に言った。

今にして思えば私はここで引き返すことも出来たのだ。
わざわざ、自分にとって愉快でない事実を知る必要など、何一つなかった。
理由もなく優しく、私に良くしてくれる提督の元で、ぬるい幸福に浸っていればよかった。

だけど―――私の性格はそれを良しとしなかった。
後悔はない、と言えば勿論嘘になるが、それでも。

知らないよりは、知っておいたほうが良かったのだろう。
きっと。
520或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:04:35 ID:HFa
昔の事だよ。

もう、10年以上前の話だ。

僕がまだ、『普通の』軍隊に所属していた頃の話。
戦争があったんだ。
深海棲艦?違う違う、言ったろう、『普通の』だって。

人間同士の争いだよ。
醜く愚かな諍いだ。

―――まあ、詳細は省くよ。
込み入った話をしてもしょうがないしね。

ある戦地で僕は、民間人の村を殲滅する命令を受けた。

―――大丈夫?もう大体、予想はついたような気がするけれど。
そう。じゃあ、続けるよ。

僕はね、命令に逆らえなかった。
逆らえず、殺した、
皆殺しだよ。

なんであんな命令が下ったのかなんて、もう考えたくもない。
でも、戦時だからね―――ともあれ、僕は村人を全滅させるという命令に従った―――

たった一人の女の子を除いては。
521或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:12:46 ID:HFa
震える私の手を提督はそっと上から覆う。
私は反射的にその手を振り払いそうになるが、提督の泣きそうな目を見て、されるがままにした。

―――続ける?

私は、頷いた。
聴かねばならない。
最後まで。
事の顛末を。

私が、何故優しくされるのか。
おおよその察しはついたが、それではまだ分からない事がある。

―――私は何故この鎮守府に着任した?

それについても、おいおい話していくよ。
提督は苦渋を顔に滲ませながら言った。

僕が村を全滅させるという命令を遂行した―――
したと思っていたその直後、たまたま村にいなかった女の子がいたんだ。
お使い?お出かけ?理由は分からないけれど、とにかく難を逃れた子がね。

それが君だ。
僕が君の両親を殺した現場を君は目の当たりにしていた。
―――勿論、君は発狂した。怒り狂った。
僕が君の両親を殺した現場を目撃したわけだからね。
僕が君を殺さなかった理由?
なんでだろうね。
とにかく僕も混乱していてよく憶えていない。
気付いたら僕は、僕を殴り殺さんばかりに噛み付いてくる君を抱えて
―――逃亡していた。

軍法会議ものだ。

それからはとにかく逃亡生活だ。
いつ軍の追っ手がかかるか分からない、そんな中で僕は君との共同生活を始めた―――

君はもう憶えていないだろうけれど、それはもう嫌われていた。
蛇蝎の如くね。
当たり前だ。
文字通りの、親の仇なんだからね。

―――大丈夫?
そう。

そんな生活がいつまで続くか分からなかったけれど、僕は君の一生だけは何とかして救いたいと思った。
そのためなら自分の全てを犠牲にしてもいいなんて、本気で思っていた。
とんだ自己満足だよね。

でも、そんな自己満足すら、運命は許してくれなかった。
522或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:19:11 ID:HFa
「久しぶりだな、少佐」

ある日の事だった。
僕の元に、軍からの追っ手がかかった。
いや、この言い方は正確じゃないな。

目的は僕じゃなかったんだから―――

「生きていてくれて嬉しいよ。またお前には活躍してもらわねばならん」

僕は勿論拒んだ。
今更僕に何ができる。

「お前にしか出来ない事があるんだよ―――それと、その娘をこちらに寄越せ」

娘?

彼女との共同生活は長かったが、未だ彼女の警戒心は薄れてはおらず
僕に対する敵愾心は強かった。

とはいえ―――
見ず知らずの、それも軍属風の男が現れて―――

さすがに、怯えていたのだろう。
まだしも、僕のほうを彼女は信頼していたのだろう。

「いや」

行きたくない。

彼女の意思は明白だった。
だが、かつての上官である大佐はお構いなしだった。

「五体満足でなくとも良いと言われているからな。抵抗はためにならんぞ」

恫喝するように彼は、僕と彼女を引き離した。

「なあに、平和になったらまた二人で暮らせばいいさ。
―――いつになるやら、だがね」

大佐は肩を竦めて、僕を取り押さえて言った。
彼女は…君は、連れて行かれた。

何処にって?

僕には分からない、どこかにだ。

僕?
―――僕はこうして、提督になった。
深海棲艦と戦う、『提督』にね。
523或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:23:28 ID:HFa
これが僕と君の馴れ初め…というには、血生臭い話だったかな。
ごめんね。
ずっと黙っていて。

そう、僕は君の両親の仇で、かつて一緒に暮らしていたんだよ。

君が手足の伸び切るまでは育てて…幸せになって欲しかった。
でも、それも叶わなかった。

君は艦娘にされ、僕は提督にされた。

この再会を僕が喜んだかどうかは、正直分からない。
君の配属時には、懐かしむ想いと、同時に罪悪感で綯い交ぜになったよ。
―――今でもだ。

僕が君に優しくするのは、そういう事だ。
だから僕は君とケッコンなんて出来ないし、君を好きだと言う資格もない―――
今、君が僕を殺したければそうすれば良いとすら思ってる。

規律はいいんだ。

これは提督と艦娘としての僕と君の間柄として話す事じゃなくて、個人的な問題だ。
本来僕が君から受ける罰を先送りにしていただけの事なんだから―――
524或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:27:08 ID:HFa
「…ずるい」

私はずっと俯いていたが、全てを聞き終えて提督に向き直って、言った。
多分みっともなく顔はぐしゃぐしゃだっただろう。

「そんな事言われて…今更嫌いになったり、殺したいなんて思えないし…
―――そう思うには、提督は優しすぎました」

きっと素直になれなかった当時の私もそう思っていたのだろう。
艦娘にされた後遺症だか何だか知らないが、幸か不幸か私はその記憶をすっぽり失っていた―――

でも、思い出した。
身体が覚えているのだろう。

二人で過ごした日々を。
あの頃の記憶を。

「提督」

私が呼びかけると、彼は複雑な表情をした。
そして私が次に発した言葉で、彼は更に混乱した。

「ケッコンして下さい。私と」
525或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:31:27 ID:HFa
「…本気で言っているのかい?」

困惑が隠せないようだった。
まあ、そりゃそうだろう。
これまでずっと罪悪感から私に優しくしていた提督だ。
私の親の仇なのだ。
私自身、それを聞かされてこんな言葉が出てくるのも不思議だったが、でも。

私と提督の過ごした日々と、二人の絆は嘘じゃない。
―――私の気持ちも。

だから。

「本気も本気です。ケッコンしてくれなかったら、許さないんだから」

それを言われてしまうと、断れないな。
私のトーンが冗談めかしたものだったからか、提督もやや和んだ様子で言った。

―――待ってて。今、明石さんに言って、指輪を貰ってくるよ。

そうと決めたら即断即決なのがウチの提督のいい所だ。

なんて…それも、私は10年以上前に、知っていたんだ。
なあんだ。

私は―――もうずっとこの人の事を―――

「…提督。あなたにとって私との出会いは哀しいものだったかも知れないけれど」

私はあなたに出会えて、幸せでした。
きっと、これからも。
526或る艦娘の場合 :2015/11/04(水)04:31:46 ID:HFa
以上です。
527名無しさん@おーぷん :2015/11/12(木)01:37:41 ID:QpO
燃料枯渇でバラムツ食う話たのむw
529名無しさん@おーぷん :2016/01/19(火)23:48:52 ID:lEY
最近投稿なくて寂しいので私から短いのをひとつ
530或る男の手記 :2016/01/19(火)23:49:31 ID:lEY

XXXX年X月X日

ついに私の研究が実を結ぶ時が来た。
これを活用すれば、現代の兵器が束になっても敵わない深海凄艦に対抗することも可能だろう。

このシステムは…そうだな、シンクロ型軍艦装備システム(Synchronized Warship Rig System)とでも仮称しておこうか。
以下に、このシステムの概要を記す。

過去に沈んだ軍艦には、その長い艦歴の中で、付喪神のようなものが宿るようになるらしい。
とりわけ、日本においては、数多くの犠牲者を生み、数多くの悲劇が生まれたWWⅡ時代の艦艇には、皮肉にも自我を持つほどに強い付喪神が宿るようだ。

それを具現化し、人体とシンクロさせることで人間サイズのまま軍艦の火力を持たせようとしたのがこのシステムの目的である。
531或る男の手記 :2016/01/19(火)23:51:05 ID:lEY
具現化された付喪神は、人間でも装備できる小さな軍艦のような形状をしている。
これに触れることで、触れた人間の中に、その軍艦の記憶が宿り(以下、これを『シンクロ』と呼称する)、
軍艦と同じように海上を移動し、砲を撃ち、魚雷を発射し、艦載機を発艦させることができるようになるのである。

シンクロに成功すれば、人間一人が軍艦一隻分の戦闘力を獲得できるばかりか、サイズも小さいため修理にかかる資材や時間は圧倒的に少なくて済む。
このシステムは正に、海上戦闘に革命を引き起こす存在だと言えるだろう。

さて、私はこれからこのシステムの被験者の第一号となる。
シンクロによる影響が正しく発現してくれるか、シンクロ自体が成功するのかすら分からないが、
私にもしものことがあった時のために、ここまでの研究過程を以後のページにまとめておく。
願わくは、人類がいつか、平和な海を眺めることができる日が来たらんことを。

P.S.
親愛なる明美へ。
実の娘にこのようなことを言うのは申し訳ないのだが……、ぜひとも、私と同じ道を進んで欲しい。
私がいなくても、明美なら必ずいつか、立派な研究者になってくれると信じているよ。

532或る男の手記 :2016/01/19(火)23:52:16 ID:lEY
***

「―――石、明石」
「ふぇ?」
「全く、いつになっても工廠から戻ってこないから何かと思えば……随分お疲れのようね」
「あら、寝てたのね私。大淀、ありがとう」
「ま、いいけれど。それだけ開発に熱中してくれれば艦隊としてもありがたいから。いい夢でも見れた?」
「うーん、なんか、懐かしい夢だったな。艦の頃の思い出じゃないと思うけど」
「あら、それじゃ、体の方の記憶かもね。珍しい」
「体の方、ねえ…つくづく、艦娘って不思議な存在よね。軍艦が人の体や記憶まで乗っ取って動かすなんて」
「シンクロ型軍艦装備システム、って言うらしいわよ、それ」
「知ってるわよ。開発した石坂彰博士が自ら被験者第一号になったけど、始めた瞬間に血まみれで死んでいた、っていうやつでしょ?
全く、こんな時代になってまで戦争に駆り出されるなんて、余計なことしてくれたわね」
533名無しさん@おーぷん :2016/01/19(火)23:52:43 ID:lEY
以上です。

艦娘が殆ど出てないだって?ははっ、気のせいだよ
534陽炎型の悲劇 :2016/01/30(土)17:03:26 ID:BR9
陽炎「陽炎型は家族と同じよ! みんなで助けあうのは当然よね!!」

黒潮「いきなりどないしたん、まぁ、悪いことちゃうけど…」

陽炎「ということで、ネームシップの私が当然長女よね! 陽炎姉さんって呼びなさい!!」

陽炎「それと、なんか困ったことがあればお姉さんに相談しなさい!」

不知火「またいつものビョーキですね… 放っておきましょう」

天津風「そうね~」



磯風「陽炎! 困ったことがあれば相談に乗ってくれるって本当か?」

陽炎「ええ、もちのロンよ!」

磯風「それと… 陽炎型で協力してくれるとも…」

陽炎「それも当然!」

雪風「なんか嫌な予感がするんですが…」

磯風「そうか、助かった… それでな」

陽炎「なになに?」

磯風「食生活が偏りがちな提督の為に管理栄養士を取ろうと思うのだが、受験資格を満たすために陽炎型の皆で協力してほしいのだ。一応、実務経験は3年だな」

陽炎「……えっ」

陽炎型(除く陽炎・磯風)「ギャァー!∑(ll゚Д゚ノ)ノ」

磯風「いや、持つべきものは同型艦のしまいだな! 助かった!! じゃぁ、ちょっと手続きに行ってくるから」

陽炎「ちょ、ちょっっまっ…!!」

舞風「突風のように行っちゃった…」

陽炎「………………」

陽炎型(除く陽炎・磯風)「(#`д´)ナニヤッツトンジャァ!ボケェ!!」
535陽炎型の悲劇 :2016/01/30(土)17:03:49 ID:BR9
陽炎「あ、あは… あははは…」

浦風「あはは… ちゃうわボケェ!! 何やってくれとんじゃワリャア!!!!」

陽炎「堪忍してーーー!! こんなの予想できなかったのよーーー!!」

谷風「谷風さんたちを殺す気かな?かな? 陽炎さんは?」

初風「天国の妙高お姉さん… わたし、もうすぐそっちに行きます…(遠い目)」

浜風「司令… 長い間お世話になりました… 浜風は… もう駄目です…」

野分「舞風… 地獄まで一緒よ…」

舞風「野分… もちろんだよ…」

萩風「短い人生だったな…」

嵐「おら、秋雲! 何逃げようとしてるんだ!!」

秋雲「この制服見えないの! 私は夕雲型よ!!!」

嵐「お前は陽炎型だろうが!!」

不知火「とりあえず、陽炎の落ち度ですね… 今回は…」

黒潮「これはお仕置きやなぁ…」

陽炎「ひっ!?」

浦風「提督さんにお仕置き頼もうか?」

陽炎「止めてぇ!! アレされると三日は足腰が立たなくなるのよ!?」
536名無しさん@おーぷん :2016/01/30(土)17:04:07 ID:BR9
短いですが、以上です
537名無しさん@おーぷん :2016/03/23(水)22:51:34 ID:4Lt
おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
4-4ボス前10連続でそれるじゃねええかよおおおおおおおおおお

これほんとにらんだむなのかよおおおおおおおおお
538名無しさん@おーぷん :2016/04/18(月)20:36:08 ID:sWk
>>536
乙でした
お仕置き……気になります……
539名無しさん@おーぷん :2016/04/29(金)19:10:42 ID:ssQ
タイトル「提督が艦娘たちとブラを買いに行くだけの話」

 ランジェリーショップというのをご存じだろうか?
 その名の通り、ランジェリー、すなわち下着を売る店のことである。
万人がランジェリーショップと聞けばまず女性用下着専門店を思い浮かべるであろう。
男性用のランジェリーショップもなくはないらしいが、その場合はメンズランジェリーショップ、と言うそうだ。男女不平等ここに極まれり、だろう。
 さて、件のランジェリーショップであるが、男性諸君においてはまさしく魔窟と言うべき場所であろう。
まず、入るのに抵抗がある。例え夫婦やカップルであったとしても、男性陣は入店することに拒否感を示すのではないだろうか?
 ましてや成人男性一人で入るとなると、最早罰ゲームの領域である。
 鼻から熱々のミートボーススパゲティを啜るか、一人でランジェリーショップに出向いて女性ものの下着を買ってくるか。
罰ゲームとしてその二択を迫られたのならば、自分は間違いなく前者を選ぶであろう。それぐらいに嫌なのである。

「おー、ここがランジェリーショップかぁー」
「? てーとくさん、ここにご用事?」
「う、うぅ……」

 それを踏まえた上で、現状を確認しよう。
 自分はとある鎮守府で提督をしている成人男性である。日夜、艦娘と呼ばれる女の子たちと共に深海棲艦と呼ばれる化物たちと戦っている身分だ。
本日は休日。普段であれば現在ヒトマルマルマルであっても、布団の中で微睡んでいるだろう。
 しかし、今の自分は外出着姿で、三名の艦娘たちと共にランジェリーショップの前にいる。
 自分の右隣には純粋無垢とも言える顔をこちらに向ける白露型駆逐艦、夕立。
その外出姿は黒色のジャケットに赤地に黒白のチェック柄ロングシャツ、薄い紺色膝上スカート、濃茶色のブーツ姿である。
 夕立の更に右には夕雲型駆逐艦長波が、その可愛らしくも整った顔の顎に手を当てて、ランジェリーショップを興味深く見つめている。
薄手のメープル色をしたコートに、白の長袖シャツ。その襟元には藍色リボンが蝶結びされている。
下は膝上まである青色ジーンズのハーフパンツと黒色のつま先低ヒールの靴の姿は中々にカジュアルだ。
 そして、自分の左隣にて、こちらの袖口を掴むのは綾波型駆逐艦、潮だ。目の前にあるランジェリーショップを前に、今にも泣きそうな顔をしている。
内心、泣きたいのは自分のほうである。
 彼女は藍色の長袖ボレロコートにクリーム色のシャツ。膝下どころか足首付近まであるベージュ色のロングスカート。
一見地味ではあるが靴は白色のストラップシューズ、腰に付けた可愛らしいピンク兎のワッペンと、彼女なりのお洒落が見て取れる。

「さぁー、提督、入ってみよーぜ」
「?? この店に入るっぽい?」
「ほ、本当に、入るんですかぁ……?」

 意気揚々と店に入ろうとする長波。未だに状況が分かっていない夕立。突けば涙が零れ落ちそうな潮。
この三人を引き連れて、何故自分がランジェリーショップに来たのか?
 一見姿性格がバラバラな彼女たちにはある共通点があり、その共通点故に、こうして貴重な休日を彼女たちのために費やすこととなったのだ。
彼女たちの共通点、それは……全員が全員、普段からブラジャーを付けるのを嫌がる艦娘なのである。
 事の発端は今より二日ほど前、我が鎮守府の提督執務室より始まったのだ。


以上、思いつき書き殴り設定ガン無視駄文。誰かこんな感じのSS書いて下さい! 何でも島風!
540名無しさん@おーぷん :2016/04/29(金)22:23:49 ID:B5J
>>539
言い出しっぺの法則というものがあってだな
541忍法帖【Lv=19,だいまじん,C4Z】 :2016/05/11(水)22:22:57 ID:wNS
すんません、めちゃくちゃ超短編の鳳翔さんSS投入します、多分1レスで終わります

思い付き&深く設定を練っていないのでグダグダです


それでもよろしければ
542名無しさん@おーぷん :2016/05/11(水)22:30:10 ID:wNS
タイトル「初めてのお使い」

こんにちは、鳳翔です。今日は二人でお店の準備中です
後一人?後一人は弥生ちゃんです
私がある日お店の外を掃除していたら、お手伝いしたいと言ってくれたんです
弥生「鳳翔さん、お店の中も掃除終わりました...」
鳳翔「早かったですね。じゃあ次はおつかい、お願いしてもいいかな?」
弥生「おつかいに...いいけど」
鳳翔「ふふ、ありがとう。じゃあ買って欲しい物はここに書いてあるから間違えないようにね?」
弥生「わかった...弥生頑張る...」
相変わらず表情は硬いままだけど、どこか誇らしげで目を輝かせているようにも見える弥生ちゃん
弥生「それじゃ...行ってきます...」
鳳翔「気を付けてくださいねー」
さて、私も後からこっそりついて行って様子見ようかしら
バレないようにバレないように...
~繁華街~
弥生「凄い...人...」
弥生「えっと...鳳翔さんから頼まれたのは...」
あら、凄い人混み...大丈夫かしら?弥生ちゃん。
弥生「あ、あの...これ、ください...」
今は八百屋さんに居ます、でも周りの人達の声にかき消されて弥生ちゃんの声が聞こえてないみたい
弥生「すみま...せん...あの...」
あぁ、瞬く間に涙目になっちゃった...どうしようかしら...
弥生「弥生...頑